1993年1月30日

独自の古紙リサイクル・システムを発案
〜オフィス町内会の半谷栄寿さんを迎えて〜

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは半谷栄寿さんです。

 1992年12月11日に放送した環境特番「PULSE OF THE EARTH IN CHIBA」でも、ご協力をいただいたオフィス町内会の事務局・代表、半谷栄寿(はんがい・えいじゅ)さんをゲストにお迎えします。半谷さんはビジネスマンという立場で、オフィスから出る大量の紙ごみに着目。複数のオフィスとともに、共同回収する新しいリサイクル・システムを作られて、大変注目されています。今回はそんな半谷さんに、紙ごみの回収と、再生紙の有効な活用についてお話をうかがっていきます。

人々の良心に訴えかけて成功しました

●半谷さんはオフィスの紙ごみという身近な問題に目を向けられて、古紙の回収、リサイクルに取り組んでいらっしゃるわけなんですけど、始めたきっかけはなんだったんですか?

「ベイエフエムのスタジオからも東京湾が見えますけど、あそこの中央防波堤沖に大きなゴミ処分場があるわけですよ。それが満杯になって、余命いくばくもないといわれているわけですけど、その原因がオフィスの紙ごみなんですね。実は、そのオフィスの紙ごみは私達が毎日勤務するオフィスの中でも紙洪水を起こしていまして、その紙洪水をきれいにしようということと、東京湾のゴミ処分場の満杯に代表されるようなゴミ戦争にも寄与、貢献していきたいということで、身近なオフィスのゴミ問題が大きなゴミ問題に繋がっているというところに着目したところから始まりました」

●日頃は、東京電力の文書課というところでお仕事をしていらっしゃるんですけど、1つのオフィスの紙ごみって大体、どれくらいの量になるんですか?

「私の本業は紙で意思決定をしたり、情報管理の効率化なんですけど、いずれにしても紙を使う。それが、集まると溜まりに溜まって、東京の23区だけでも150万という途方もない量のゴミになってしまうんですよ。東京のゴミの3割以上がオフィスから出る紙ごみだといわれています」

●私達もラジオをやっている上で、原稿やFAXなど紙は色々と使いますし、かなりの紙は使うわけなんですけど、古紙の回収システムっていうのは具体的にどういうふうに行なっていらっしゃるんですか?

「最も大切なのは、今まで私達は使い終わった紙をゴミとして捨てていたわけです。そうすると、10年、20年勤務している私達が、新しい習慣として、ゴミにするのではなくて古紙としてリサイクルされるように、オフィスの中で分別するという習慣をつけなくちゃいけない。その習慣をどうやってつけるかがこのシステムの基本なんです。だから、私達は古紙を分別するボックスを『免罪箱』なんて言い方をして置くんです(笑)。なぜ、免罪箱なんて呼び方をするかというと、紙をゴミにしてしまったら、紙の大量消費の罪は許されない。でも、紙を無駄遣いしたかもしれないけど、リサイクルに回すようにボックスに入れてくれれば、その無駄遣いの罪が少し許されるんですよってことを社内で説きまくったわけです(笑)。そうしたら、社員の良心に訴えまして、リサイクルに協力するっていうのは、意外と気持ちがいいもんなんですね。そんな形で、新しい習慣を作るということからはじめないといけないんですね。それと、ビルにはそのゴミを集めていただく清掃会社の方とか、または、ビル管理会社の方、そういう関係者がたくさんいらっしゃる。または、テナントとして入っていらっしゃる方、オーナーさんの立場もある。そうすると、ビルの中のリストラクチャリングといっては大げさかもしれませんけど、紙をリサイクルに回すには関係者がたくさんいまして、その調整役を私共オフィス町内会の事務局が、ひとつひとつのビルでお手伝いしています。だから、具体的な仕組みっていうのは、みなさんで作っていくということが大切になってきますね。しかし第一は、我々自身が分別をすることに尽きます」

●アタマから「紙の無駄遣いをしないように!」って言っちゃうと、「だって、使うもん!」ってなっちゃいますけど、それをせめてリサイクルの方に入れるだけで、気持ちも楽なんじゃないかって思うと、確かに気持ちも楽になってきますもんね。

「本来は無駄遣いしちゃいけないんだけど、仮に使ったものでも、リサイクルに回そうっていうのが必要ですね」

●意識の問題ですね。こうして集められた古紙なんですが、現在はどのように活用されているんですか?

「私達の日常生活の身近なところに非常にたくさんあります。新聞もそうですし、物を買ったときのダンボールもそうです。週刊誌なんかも古紙からリサイクルされた再生紙です。そういう意味では非常に生活に密着しているわけです」

●私達は知らず知らずのうちに活用していたんですね。

「すでに、紙の50パーセントは古紙で作られた再生紙が生活にも産業にも溶け込んでいます」

こだわりは「白さよりもリサイクル」

●オフィス町内会というくらいですから、幾つかの会社が集まってやっていらっしゃることだと思うんですけど、今、何社くらいが参加なさっているんですか?

「東京都内の企業を中心に91社175事業所の参加企業がありまして、私達がもっと喜んでいるのは、協力していただいている回収会社さんが39社にまで拡大していることなんです」

●それは結構な数ですね!

「月間で450トンくらい回収していますが、関東地区の1200分の1くらいの回収量になっています」

●これはパートナーでもある回収業者にとってもメリットになるんですか?

「なります。今、回収会社さんは古紙相場が低迷したり、転廃業の傾向があるんですよ。で、いくら私達が熱心でも古紙回収業まではできないわけです。そうなると、古紙回収業は不可欠なパートナーなんですね。ということで、私達は従来の古紙回収の経済とは違いまして、回収経費を企業側、紙を出す側がお支払いするシステムを作っているわけです。ですから、回収会社の皆さんにとっては、安定してパートナーとして古紙の回収をしていただける仕組みを作りました」

●空き缶なんかもそうなんですけど、分別まではすると思うんですけど、その大量なオフィスの紙を誰がまとめて、出すまでのプロセスをやってくれるのかっていうのは、管理人さんだったり、清掃会社の方だったりして負担がかかるじゃないですか。でも、それをやってくれるのがオフィス町内会なんですね。

「そうです。一方で経費まで負担して、回収に協力する企業にはどんなメリットがあるかというと、一過性のブームではなくて、企業として経済的にも継続するのかっていうのがポイントになるわけです。ということで、私達オフィス町内会のシステムっていうのは、企業側にもメリットがありまして、意外と知らない方が多いんですけど、企業っていうのは紙ごみを出す際にも、東京都で申しますと、1キログラムあたり、22円50銭の負担金をお支払いしているんです。ですから、この22円50銭を基軸にしまして、これよりも安い回収経費のシステムを作ったわけです。平成3年度の決算で申しますと、1キログラムあたり15円ほどの回収経費で、企業としては経費の負担が済んでいるわけです。ですから、ゴミにするよりもリサイクルに出した方が7円以上経費が削減されるわけです。だから、企業にとってもブームとか、経済状態に関係なく、長続きできるシステムなんですね。そういう意味で企業と回収業界のパートナーシップを作り上げていると考えています」

●それがビジネスとして成り立っているんですね。

「私達は営利性というよりも経済性がないとリサイクルは定着しないという発想ですね」

●半谷さんがおっしゃるとおりですよね。そこで、リサイクルした古紙を有効に活用するために色々と行動なさっていると思うんですが、現在、どのような活用法を考えていらっしゃいますか?

「『オフィス町内会がそこまでやるのか!?』って言われることがあるんですが、私達は今、オフィス町内会印のトイレットペーパーを試作していまして、それを是非、一般の方達に使っていただこうと。それを最も力を入れた私達の仕事にしています。なぜかと申しますと、今、経済がよくないとよくいわれますけど、経済がよくなくなると、例えば製紙メーカーさんで使う古紙の量も少なくなっちゃうんですよ。例えば、経済が悪い。電気製品の売れ高が少なくなる。すると、電気製品を梱包するダンボールもそれだけいらなくなりますね。すると、ダンボールを作るための古紙もいらなくなると。ということは、せっかくゴミを減らすためにリサイクルをしていても、分別した古紙がまたゴミに戻ってしまうという壁ができてくるわけです。だから、リサイクルはその壁を乗り越えなくちゃいけない。ということは、逆に古紙の需要、使用量を拡大しないといけないんですね。で、その具体的な一環として、再生紙を使ってできたトイレットペーパーをもっと使っていこうじゃないかという運動を、一般のみなさんとオフィス町内会がしてみたいなと思っているので、是非、ご協力をしていただきたいのです」

●スーパーにも再生紙を使ったトイレットペーパーって置いていなくもないんですが、そこまで普及されていなかったり、高かったり、「きれいなほうがいいかな」、「柄があるもののほうがいいかな」って再生紙ではないものを買ってしまうことも多いと思うんですね。でも実は、うちも再生紙のトイレットペーパーを使っているんですけど、使い心地も全然変わらないんですよね。

「そうなんですよ。今、スーパーの話が出ましたが、大体7割はニュー・パルプ100パーセントのトイレットペーパーが売れているんです。例えば、よく牛乳パックを奥様方に集めていただくんですけど、意外にその方達がニュー・パルプ100パーセントのトイレットペーパーを使っているというお話も聞くんですよ。だから、集めるだけがリサイクルという意識が我々の中にまだあって、それを原料にした物を使うっていうライフスタイルが定着していないんですね。おっしゃる通り、古紙から作ると汚いんじゃないかとか、硬いんじゃないかとかっていう意識の壁を越えなくちゃいけない。古紙で作っても充分柔らかくて、清潔なものなんですよ。大体、120度で殺菌滅菌する工程を踏むわけですから、牛乳だって60度くらいの殺菌をしているものを我々は飲んでいるわけですよ。120度で殺菌しているんだから、汚いなんてことはないんです」

●私、以前にテレビか何かで見たんですけど、ニュー・パルプの場合は色を白くするために色付けをしていたりするから、かえって再生紙のほうがきれいだって聞きました。具体的な活用法としてトイレットペーパーを作っていらっしゃるんですね。

「こだわりは白さよりもリサイクル! そんなライフスタイルを定着させたいですね」

●そうですね。今日はどうもありがとうございました。

■このほかの半谷栄寿さんのインタビューもご覧ください。

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■オフィス町内会のホームページ

 身近なゴミ問題から地球規模の環境問題の解決に貢献するため、企業が共同してオフィス古紙のリサイクルに取り組む環境NPO、オフィス町内会のホームページ。細かい料金システムや、どういう仕組みで成り立っているかなど、図入りで詳しく掲載されています。
・オフィス町内会のHPhttp://www.o-cho.org/

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オープニング・テーマ曲
「ARMS / JOHN HALL」

M1. LOVE SOMEBODY / RICK SPRINGFIELD

M2. DON'T GET ME WRONG / PRETENDERS

M3. THAT WAS THEN, THIS IS NOW / THE MONKEES

M4. ランチタイムの恋人 / 大本友子

M5. DON'T STOP / FLEETWOOD MAC

M6. 君のいる星 / 中西圭三

M7. THE BEST OF ME / DAVID FOSTER

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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