1999.6.12放送
カヌーイスト
野田知佑(ノダ・トモスケ)さんを迎えて

吉野川河口堰反対集会でお会いしてから久しぶりに再会した野田さん。雑誌『ビーパル』に連載していた、『のんびり行こうぜ』をまとめられたものが新刊『こぎおろしエッセイ、ハーモニカとカヌー』として出版されたすぐあとのことでした。その中にアラスカの川のことが多く書かれています。
野田さんの本
「アラスカには一般の人でも行ける、ちょっと危ないところがあって、少し頑張れば面白くなる。日本の川であれほどの川ってのはもうないし、あまり危険がなさ過ぎるのもつまんないし、ちょうど適当に危険があって、適当に熊も出てくるし、いいんじゃないですかねえ、あそこは。以前、ガク(野田さんの愛犬)が、熊を逆に連れてきちゃった こともあるんだね。気の強い犬だとどうしても熊と喧嘩して、負けて主人のところへ帰ってきて、またテントの中へ走ってくるから、それを追っかけて黒熊が来て、テントの中へ誘い込むと。アラスカではもうみんな知ってる話で、みんなそういう体験持ってるんですね。」

そんな危険な場所、日本だったら立ち入り規制がかけられそうです。

「あっちは規制、規則がゼロなんですよ。日本の場合は、ありとあらゆるところで規則、規制があけど、向こうの場合は何にもない。ありとあらゆる自由があるわけですね。死ぬ自由も含めて。ああいうのはいいですね。ああいう緊張感っていうのは日本ではまず味わえないですね。いいもんですよ、なかなか。日本の場合ねえ、事故が起きたら途中で帰ることできるんですが、向こうでは途中で引き返せないんで、用意周到に色々やっていくという、そういう自己発見ね、楽しいですよ。
 カナダ、アラスカの人達は立派ですよ。我々は川で魚を釣って、はらわたを出して、料理するでしょ。日本人はすぐ、はらわたをポンと川ん中に捨てる。そうすると熊が来て、人間がキャンプしたところにはそういうエサがあると思い込んじゃうんだ。日本人は気が付かなかったですね、そんなこと。そこまで気を使ってるんですよ、向こうの人は。だから熊と人間の関係がすごくいいですね。星野道夫さんがカムチャッカで死んだでしょ。あれなんかソ連の人があんまり乱暴だったから、ああいう風に事故が起きたわけで、だからほんとは、滅茶苦茶なロシアの人達に星野さんが負けたわけですよ。非常に残念ですね。」
野田さんの本2
野田さんには他にも『旅へ』という作品があって、現在文庫本になっていますが、これが大学を出て2年くらいからの、色々なところを回られたものが書かれています。後書きには『日本の大人っていうのは、そんなことやっちゃだめ、もっといわゆるマトモな仕事に就いて、ある意味では安全な道へと導いている』ということも書かれています。

「旅が多かったのは、あんまり幸福じゃあなかったんでしょうね。幸福だったら結婚して、子供ぼろぼろ産んで、一ケ所にいて、旅なんかしませんよ。だけどそうじゃなかったから、あっちこっち、ここじゃないどこかに行ってしまうわけでしょ?まぁ、僕が若い時は周りの大人が全部僕に反対して、僕の夢を全部そんな甘くないって言ってね、摘んでしまっていたんだけど、外国行くと逆に、若い時はみんなそうなんだから、頑張れっていう思想ですよ。外国へ行って僕は初めて、俺の生き方は間違ってなかったんだって、非常に自信を持ったですよ。日本ではみんなに憎まれていたしね、親、大人から。日本は自由に生きる若者を憎むわけですね。今でもそういうところありますが。ああいう大人はホント許せないですね。僕は怒っているんだけども、子供に受験勉強しかさせないでしょ、今の日本の親は。外国に行くと、受験勉強以外のことは全部やってるんですよね。あの差は大きいですよ。だから若者が非常に大人なんですよね、向こうの。先進国は。日本は人生体験ゼロでしょう。大学出て、22〜23で、人生体験ゼロで、そこから出発だからしんどいですねえ、日本人は。だからもう、大人の言うことは聞かない方がいいですよ。大人はもっと全然軽蔑していいと思うんですよ。やりたいこと見付ける、そのことだけ考えればいいんで、周りの大人がなんだかんだ言うのは全然気にしない方がいい。一言で言えば過保護で、親自身が幼稚ですね。だから、子供は更に幼稚であると。今日本の青年を外国に出して、ズラッと並べて見たら一番低いんじゃないですか、程度が。それは親が悪いんです。今は職に就いてない若い人でも、世間から迫害されることがあんまりないでしょ。アルバイターなんて名前で。昔はひどかったですからねえ、親達の圧力が。でもだんだん住みやすくはなりつつあるんですよ、若い人達にとって。」

野田さんは『日本にはいい川がもう何本かしか残ってない』と常々言ってますが、そんな野田さん、現在は徳島県に居を構えています。

「四国は山の木が、雑木林が多いんですよ。四万十川の例にしても。そうすると雑木林の山っていうのはいい水を出します。きれいな水を。僕が住んでた鹿児島の川っていうのも気に入ってるんですが、ひとつだけ難点は杉が多すぎる、植林をした杉の。それから、川の水が元々茶水なんですね、温泉地帯ですから。それで水が澄んでないんですよ。四国の川はみんな素敵ですね。1メートル以上深いところはみんなコバルトブルーで、アマゴが泳いでいてね、上から見えますね。違うんですね川の美しさが。」

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