2001年11月25日

自然音録音の第一人者、中田悟さんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは中田悟さんです。
中田悟さん

 自然界は魅力的な「音」がたくさんあります。その音を録音することを仕事としているのが自然音録音家。欧米ではネイチャー・レコーディングスといって、癒し系音楽の一つのジャンルともなっています。その分野の日本での第一人者が中田悟(ナカダ・サトル)さん。今までも宗次郎さんのオカリナと共演したり、月光写真家・石川賢治さんのDVDに参加したり、写真展の空間音として使用したり、中田さんの「音」は様々なところで活躍しています。その中田さんがこのほど「中田悟・自然音シリーズ:VOICE OF THE EARTH:ISLANDS」とタイトルがつけられたCDを4枚発表しました。「タヒチ」「ハワイ」「屋久島」「バリ」の4作品。番組ではこの4作品の音を聴きながら、自然音録音についてのお話を伺いました。

●「中田悟・自然音シリーズ VOICE OF THE EARTH:ISLANDS 楽園の島、タヒチ」には、薄くコーラスが聴こえる部分があります。

「これはタヒチのタハア島というところに行ったときに録ったもので、きれいなコーラスとはまた違う、ソウルフルというか、ゴスペルのような感じがして辺りに響いていたんです。タハア島というところはすごく穏やかなところで、島の人も会うと気軽に挨拶してくれる穏やかな感じ。日曜の教会に行くときは、みんなおしゃれをして、白とか黒とかに統一された服を着てかっこいいんですが、夕方同じ人と会うと、いかにも南国らしくパンツ一丁でゴロっとしていたりしてるんです」

●そもそも中田さんが自然音を録音するようになったきっかけは何なのでしょうか。

「以前宗次郎さんやEPOさんのバックをやってたときに(註:中田さんはもともとパーカッショニストです)宗次郎さんがいつも元気で、なぜこんなに元気なのかと思ってたんです。宗次郎さんは山の中に住んでて、オカリナ工房も山の中にあって、環境もいいんですよね。それで、僕も東丹沢にスタジオ作って、ドラムやらシンセやら入れて。そこでいろんな楽器の音を録るんですけど、あるとき、外で鳴いているヒグラシの声が気持ちいいなと思ったんです。単純に音色として。波の音なんかはわかりやすいと思いますけど、一定の周期があるじゃないですか。それって滝とかせせらぎとかにもあるんです。その意味ではパーカッションも揺れているビートだから共通点があるんですかね。そのうちスタジオからマイクが玄関に出ていって、そのうち楽器の音を録るのも家の外でやるようになって、楽器がだんだん減っていったというか。それがきっかけですかね」

●続いてハワイです。タイトルは「鼓動の島、ハワイ」。静かな虫の声が聴こえます。

「これはキラウェア火山なんですが、高周波の虫の声が気持ちいい場所でした。それにキラウェアは、海まで溶岩が続いている火山なんですが、その溶岩の上をいい感じで風が吹いてきて、その音も少し入っています」

●風の音って録音するのはすごく難しいんじゃないですか?

「コツということでいえば、場所を探すしかないんです。あまり風の影響を受けないような、影になっている場所とか。雨もそうですけど、よけ方が難しいんですね。何回もフィールドに出ているうちに、どっちからどういうふうに風が吹いてくるかというのはわかるようになってきましたけど。実は、風って、何分かに一回強く吹くんですよ。波もそうですけど、場所によって一定の周期みたいなものがあって、吹かれているときでもちょっと待つとやんでくれたり。まぁ、時間帯にもよるんですけど。不思議なことに月に雲がかかっているときは、風が止むんです。それで雲が晴れてきて月が姿を見せると、数秒すると風が吹いてくるんですよね。まぁ、波も録るのは難しいと思いますけど、風も難しい。生き物のように動いていますからね」

●3枚目にご紹介するのは「生命の島、屋久島」です。

「屋久島は樹々から出たエッセンスが空気中に充満していて、甘い香りがするようなところですね。水も軟水ですし、いつ行ってもエネルギーをもらえるところでもあります。たとえば小笠原の父島は硬い感じで音もクリアーなんですね。いつも起こされてるような感じで、寝なくても大丈夫という雰囲気。ところが母島に行くと空気が柔らかくて、コロンと寝ちゃう。母島も屋久島と同じようなところがありますね。初めて行ったときは、体を元気にしたかったんで、録音もせずに島の周りを歩いてました。そのうちにカンも戻ってくるんですね。圧倒的な自然ですから、歩くときも根っこを踏まないように気をつけたり、お邪魔しますって感じですよね。で、ロケハンするときに気持ちいい場所を見つけるんです。そこにいて気持ちいいときは、録音した音も気持ちいい。そういう場所を見つけるのは得意なんですよ。なんというか、「陰」と「陽」のバランスがいいというか、独特の空気感を感じられる場所。だから、録ろうという気持ちよりも感じようという気持ちの方が強いですね。屋久島にはもう何度もいきましたが、いくたびに樹々も草もコケさえも違って見えるので、本当にはまれるポイントですね」

●最後はバリ島。「神秘の島、バリ」というタイトルがついています。

「今回のバリではちょっと違ったイメージを出したかったんです。バリというとオリエンタルとか、ガムランとかいったイメージがありますが、もっとジャワ近辺のジャングルの音を出したかったんです。ジャワのイジェンというところでは、虫の高周波の声が頭の上に抜けていくような音が録れました。自然の中には音楽的な要素が入ってると思うんです。虫の声も鳥の声も、音色的な意味でも音楽的な要素がありますよね」

●今回4枚の作品を発表した中田悟さん、今後はどういった音を録っていこうとしているんでしょうか?

「まずはやっぱり島ですね。島は小宇宙のようで、分かりやすいと思うんです。もちろん島以外の音も色々録っていきたいと思います。テーマということで言えば「地球の音」というか、自然の中にも、たとえば民謡や古い音楽の原形になっているものがありますから、それを感じて欲しいし、聴いているうちにリラックスして細胞にしみていくような、魂の中に入っていくというような音を録っていきたいですね」

※中田悟さんは2007年9月に急逝されました。2008年3月9日放送の中田悟さん追悼企画「世界自然“音”遺産」もご覧ください。
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中田悟・自然音シリーズ「VOICE OF THE EARTH: ISLANDS」

(発売元:ユニバーサル ミュージック)
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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. DEAR EARTH / HENLY LEE SUMMER

自然音:タハア島ティバ/中田悟

M2. MOTHER NATURE'S SON / THE BEATLES

自然音:ハワイ島キラウェアボルケーノ/中田悟

M3. DUST IN THE WIND / KANSAS

M4. PACIFIC SUNSET / CHARLES MICHAEL BROTMAN

M5. I CAN HEAR MUSIC / THE BEACH BOYS

自然音:白谷雲水峡/中田悟

M6. 23夜 / しらいみちよ

自然音:ジャワ・イジェン/中田悟

M7. ISLAND OF LIFE / KITARO feat. JON ANDERSON

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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