2001年12月16日

動物写真家・園原徹さん、第二の故郷アラスカを語る。

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは園原徹さんです。
園原徹さん

 我々THE FLINTSTONEは、園原さんのことを、オーロラ写真家の坂本昇久さんから聞きました。その時の坂本さんの弁。「凄いやつがいるんだよ。まさにクマ男!」。以来どんな人なんだろうと興味津々だったんですが、ようやく出演が実現しました。園原さんは坂本さんとは飲み友達で、何でも話せる友人だそうです。そんな園原さん、アラスカに魅せられて、通うこと14年。1年のうちの半分以上をアラスカで過ごす撮影活動をしています。

●そもそもなんでアラスカだったんでしょうか?

「実はちっちゃい時から「原始」の世界が好きだったんです。「はじめ人間ギャートルズ」って漫画があって、それが大好きで、はじめはカナディアン・ロッキーとかのイメージだったんですが、「けむくじゃら」の世界はもっと北だろう、みたいなものがあって、気がついたらアラスカだったんです。今年で行きはじめて14年なんですが、もう、行かないといられないくらい。だからこうして日本にいても気持ちは向こうにあると。置いてきちゃってますね。体だけこっちにあって、心は向こうにありますね」

●雑誌「ニュートン」の2002年1月号で、“聖域”という形でアラスカの写真を発表されました。いろいろな動物の写真が載っているんですが、やはりクマがメインですよね。クマの魅力っていうと?

「まぁ、クマ男といわれてるぐらいですからクマが好きなんですけど、魅力ということでいえば、まず「でかさ」。とにかくでっかいということが魅力です。あと、「ぜったいかなわない」と思うんです、クマには。他の動物なら戦ってもなんとかなるかもしれないけど、クマだけは「ごめんなさい」っていう、カミさんと同じような感じですね」

●私「ニュートン」読んでびっくりしたクダリがあるんです。「クマの巣穴を見つけた。掘りかけだったから入ってみちゃった」と。掘りかけということは、いつ戻ってきてもおかしくないんですよね。

「そうですね。もしくは中で掘ってるとか。だから、一応入る前に声かけるんです。“HELLO!”って。一応アメリカなんで英語でかけちゃったりして。“HELLO!”って言っても“HELLO”って返してくれるわけじゃないんですが、いれば何か反応があると思うんですけど、何もなかったんで、じゃぁ、ちょっとお邪魔してみようかなと」

●どうだったんですか?

「やっぱり壁にツメ跡があったり、クマの毛とかがついてて、温もりを感じました。出来れば次の春まで一緒にそこで冬眠なんかしてみたいなぁと」

●そういうところに入るとクマの気持ちとかもわかるものですか?

「こんな暗くて深いところで、半年ぐらいの冬を越すために狭いところにいるのかと思うと、僕は今狭いところに住んでますが、まだ我慢できるなと。自分に置き換えて考えることが多いですね」

●撮影旅行は一人で行かれるんですか?

「国立公園なんかだと友達と一緒の時もありますが、だいたいは一人ですね。怖いし寂しいし、寒いし。でも行っちゃうんです。行かなきゃいられないんですね」

●この「ニュートン」にはオオカミの写真がありませんが。

「ここでは載ってないですね。でも、今年の冬に2ヶ月ぐらい行ってたときに、スキーはいて雪原に入っていくんですけど、そこで毎晩のようにオオカミの遠ぼえを聞きました。テントの周りで。感動的です。ホントにテントのすぐ近くで聞こえて、だんだん増えていくんです。テントから顔出して「いないかな」と思って見るんだけど、やっぱり暗いから見えなかったりとかするんですけど、ちょっと言葉じゃ形容できないですね。たまんないですね、オオカミという動物も」

●以前、アラスカにお住まいになって写真を撮られていた、お亡くなりになりましたけど星野道夫さんが、本の中で書かれていたんですが、国立公園内の野生動物は、ある意味人間に慣れているから、かえって危険だと。星野さんは銃などは持たずに撮影するんですが、その星野さんが国立公園内では持っていたいと思うほどだと。園原さんは危険な目にあったことはありますか?

「ありますね。僕の場合は公園の外の方が多かったすねぇ。あの、クルマで寝てたんですよ。北極圏でした。で、明け方ドカーンという衝撃で目が覚めたんです。パッと目を開けたらハッチバックの後ろのガラス窓にクマが両手を置いて揺すりながら、口を開けて中を見てるんですね。クーラーボックスを後ろに置いて食料を入れておいたんで、その匂いで来たと思うんですけど。で、僕が目を開けたらガラス1枚隔てて目が合って、「ウワァーッ」っていって飛び起きたら天井で頭をぶつけて、またびっくりして。クラクションをたたいたんですけど、キーが入らないとクラクションが鳴らないクルマで鳴らせなくて。あと、スプレーがあるんですよ。クマ撃退用のスプレーってやつ。それもあったんですけど、スプレー高いしな、待てよと思って。で、左手はカメラ・バッグに手をかけていた。さすがプロだなぁなんて自分で思っちゃった」

●で、撮ったんですか?

「撮れなかったですね、さすがに。心でシャッター切りました」

●でも、そう考えると、食べ物の匂い、こわいですね。

「そりゃぁもう、キャンプの時は絶対外に置いとかなきゃいけない。木の上に吊るすとか、フード・コンテナっていって、クマが噛めないプラスティックで出来てるやつがあるんですけど、その中にいれるとか。クマは頭が良くて学習能力があるんで、一度ゴミとかあさったクマは必ず戻ってくるんです。次にそこに入ってくる人に迷惑がかかっちゃうから気をつけないといけないですね」

●まぁ、観光にせよ、撮影旅行にせよ、野生動物のエリアに入っていくわけですから、お邪魔しますって入っていく・・・。

「絶対的に自然というのは強いもんだし、クマも強いものだから、謙虚になりますよ。さっきの銃の話だけど、撮影に行って銃で動物を殺さなければいけないなら撮影に行く必要はないなんて思いますよ。実際に銃を持っていくカメラマンもいますけど、僕も星野さんと同じで銃なんて持って入りたくないなって感じです。謙虚に」

●星野さんにお会いになったことはあるんですか?

「何度かあります。メシ食わしてもらったりとか。星野さんは理想ですね。ああいうふうに写真が撮れて、ああいうふうに文章が書けたらたまんないすね」

●撮影を通して動物達に教えられたことって何ですか?

「動物は自然保護とかじゃなくて、何も考えないで自然を大事にしてる。人間はすぐ理屈で考えるじゃないですか。そうじゃないだろと。動物達はそこにある自然を最低限利用しながら、自分の体だけで生きてますよね。お金もからんでないし。人間はどうしてもお金がからむから無駄が出たり欲が出たりしちゃうのかなと思いますけどね」

●さて、2002年の抱負といえば?

「アラスカでシロクマの写真撮りたいです。カナダとかで撮れるところはあるんですが、ここまでアラスカにこだわってますから、アラスカ内でシロクマを撮りたいですね。あと、オオヤマネコ。今年初めて撮影したんですけど今一つ自分で納得できていないんで。それにシロフクロウ。真っ白いフクロウ、撮りたいっすね。白いものに憧れちゃいますね」

●じゃぁ、2002年は真っ白で。

「真っ白い心で生きたいなと。撮影に成功したらまた白い服着てきます」

●近い将来、真っ白な服を着て、シロフクロウやシロクマの写真を持って、また番組に遊びに来ていただける日をお待ちしています。

 園原さんが撮ったアラスカの素晴らしい写真は、科学雑誌「ニュートン」の2002年1月号にどど〜んと掲載されています。企画のタイトルは「極北の聖域〜アラスカ」。夕陽に染まるマッキンリーの写真やダイアモンド・ダストを捕らえた写真、そしてグリズリー、カリブー(トナカイ)、ムース(ヘラジカ)、ハクトウワシ、マウンテンゴート(シロイワヤギ)などなど、素晴らしい写真が16ページにわたって掲載されていますので、ぜひご覧ください。

■このほかの園原徹さんのインタビューもご覧ください。

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. WINTER WONDERLAND / EURYTHMICS

M2. AURORA NOVA 〜THE WILD PLACES / DAN FOGELBERG

M3. LIFE IN A NORTHERN TOWN / DREAM ACADEMY

M4. THE ANIMAL SONG / SAVAGE GARDEN

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. MOVIES IS MAGIC / BRIAN WILSON & VAN DYKE PARKS

M6. HERO / DAVID CROSBY & PHIL COLLINS

M7. I STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR / U2

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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