2004.03.28放送

君津グリーンセンター、
ガーデナー鳥飼さんと鹿野山の春


 千葉県の南部、鹿野山の北西にほとんど知られていない美しい森と庭園があります。その名も君津グリーンセンター。普段は一般公開されていない同センターを整備・管理・運営している内山緑地建設株式会社のガーデナー「鳥飼寛子」さんにセンター内を案内していただき、鹿野山の植生や同センターの見所などうかがいました。


◎鹿野山は雑木林!?

●今日はガーデンに来ているのにあいにくの雨です。私達はガーデナーズ・ハウスというところにいるんですが、ここは普段どのように使われているのですか?
「セミナーや小さな会議やスライド・ショーをこじんまりと行なっています。あとは外で作業をしてくださる方の休憩場所としても使っています」

●リビングが開放的でデッキもあって、ちょっとした別荘気分を味わいながらお話をうかがっているんですが、そもそもこの君津グリーンセンターとはどういうところなのですか?
「私共の会社は植木の生産から販売、造園の施行をしているんですが、昭和40年代に高度経済成長で工場などが緑化を必要としていて、そういう時に福岡からこちら(君津)にきて、鹿野山の麓に植木の生産圃場(ほじょう)を開墾したのが始まりです」

●内山緑地建設株式会社がここを全部管理しているんですか?
「そうです。あと、内山グリーンという生産専門の子会社があって、そこが主に植木の生産を行なっています」

●鳥飼さんはガーデナーということなんですが、どういった仕事内容なんですか?
「植え付けから刈り込みを含めたRHSJ(英国王立園芸協会日本支部)記念庭園の管理が主です。そのほかに散策路の剪定とか、草刈、管理を含めてやっています。あとは新しく整備する場所の企画やデザインもやっています」

●こちらにガーデナーさんは何人いらっしゃるんですか?
「私だけで細々とやっております(笑)」

●じゃあ、責任重大ですね!鳥飼さんがこういう仕事に興味を持ったきっかけってなんだったんですか?
「私はもともとここに来る前は大学で林学、樹木の方を専門に勉強していたんです。そういう方面から人に身近な樹木に携わりたいということで、森から庭へ身近になったようなところへ入ってきたんです」

●まさに、ここの雰囲気は鹿野山の身近な自然が凝縮されているところという感じがするんですが、そもそもこのあたりって森としてはどういう森だったんですか?
「一般的に雑木林と呼ばれる、人が入った部分もありましたし、スギももちろんありました。植生としてはコナラとかヤマザクラやクロモジ、ハゼノキなどが多かった森ですね。残すべきところは残して、畑として利用するところは開墾の方法も機械を使わず手開墾で、土壌をなるべく残して開墾していきました」

●ここで育てている珍しいものってなんですか?
「例えばハンカチノキといって、ゴールデン・ウィークくらいに真っ白なハンカチがヒラヒラと風にそよぐような花をつける木を作っています。あとはナンジャモンジャっていう木なんですけど(笑)、正式名称はヒトツバタゴっていう木なんですけど、4月終わりくらいの春に木全体を真っ白に埋め尽くすような美しい花をつける木も生産しています」

●そんな君津グリーンセンターを、我々もこれから鳥飼さんに案内していただいて見て回りたいと思います。
(このあと、雨の中を1時間近くかけて鳥飼さんに園内を散策路沿いに案内していただきました。)

◎オブジェっぽい木

●鳥飼さんに案内していただいてセンター内を見てきたんですが、凄い植物の数ですね。
「そうですね。圃場生産の木も含めると500種あります。散策路から見えるのはその一部です」

●しかも、至るところに名前が書いてありました。
「はい。木本(もくほん)はもちろんなんですが、春の芽出しの野草も普通に生えていて美しいので、草にもネーム・プレートを付けています」

●そうなんですよ!歩いているとふっとネーム・プレートがあって、全てのものが同じ“植物”であることを改めて実感させられました。
「ネーム・プレートを掛けるときも楽しく謙虚な気持ちで掛けています。何もつけていないときは何気ないんですけど、つけると全く見方が変わってきますね」

●目を向けるようになりますね。今日はあいにくの雨なので、ヤマザクラも膨らんだ状態で止まっていますが、サクラにも色々な種類があるんですね。
「そうですね。ヤマザクラと言っても、ここは自生の種類を主にしているので花の色と葉っぱの色で非常に個体差が激しくて、開花時期も全く違ったりしているんです。そのヤマザクラの亜種という形で他の種類も数々あります」

●小粒のサクラがかわいかったですね。
「マメザクラ?」

●マメザクラ!ちょこんと咲いている感じがかわいかったですねぇ。こちらの鹿野山で特徴的な植物もありましたよね?
「クロモジは林縁部に日当たりを求めていく木なんですけど、よく和菓子等についてくる楊枝の木として凄く有名で、切り口を切ってみると凄くいい匂いがするんですよ。花も3月の初めに黄色い花が、かわいらしい葉っぱと一緒に咲いて凄くいい木です」

●またこちらにはモクレンもあって、白い花の他に紫の花を咲かす種類もあったりして、モクレンにもたくさん種類があるんですね。
「中国や日本を原産地として、品種が凄く多様化しているんですね。うちの会社もその品種を集めている途中で、種類としては大体100種類くらいあるんですけど、そのうちの50種くらいが今、散策路に植えられています。3月の半ばくらいからポツポツと品種ごとに咲いていく感じになっています」

●あと、かわいかったのがマムシグサ。マムシが頭をクイッと持ち上げたような形をしていて、不思議な草ですね。
「鹿野山自体が日本の植生の南限と北限がちょうどぶつかるところなんです。この草は学名がヒガンマムシグサというんですが、彼岸の頃にちょうど咲くような草です。他のところではあまり見られないような珍しいマムシグサらしいんですが、ヘビが苦手な方は苦手かもしれないですけど(笑)、非常に美しい花ですね」

●今、私達はRHSJ記念庭園というこれはイギリスの・・・?
「RHSJというのは英国王立園芸協会・日本支部という名称なんですが、イギリスに本部があって支部が日本にあります。そこの方々のモデル・ガーデンとして作られたお庭がこちらに復元された形になっています」

●ニシキギというオブジェっぽい木もありました。
「枝の部分に翼(よく)という羽根のようなものが交互に飛び出していて・・・(笑)」(と説明に困る鳥飼さん)

●1cm幅の15cmくらいの長さのちょっと固めの画用紙みたいなものを、何枚も作って縦横に並べているような形をしています。何のためにああいう形をしているんですか?
「不思議ですねぇ(笑)」

●(笑)。今回、私はニシキギに一番興味を持ちました。
「枝も特徴的で非常に美しいんですけど、名前の通り秋の紅葉がすごくキレイな真っ赤な色になって非常にいい木だと思います」

★    ★    ★

 鳥飼さんに園内を案内してもらっているときに出会った、不思議な形の枝を持つ木「ニシキギ」は、高さが2メートルから4メートルほどになる「ニシキギ科」の落葉低木。
 鳥飼さんの説明にもあったように、秋になると真っ赤に紅葉することから、その美しさを錦(にしき)にたとえ、「錦の木」と書いて「ニシキギ」という和名がついています。
 5月から6月に緑色の小さな花をつけ、9月から10月に赤くなる実をつけるんですが、特徴はなんといっても枝にコルク質の翼のようなものが発達すること。そのため英語では「WINGED SPINDLE TREE(ウィングド・スピンドル・ツリー)」といわれています。
 その翼は薬草として「トゲ抜き」に使われていたといいます。作り方は翼を黒焼きにして、その粉末とご飯粒を混ぜ合わせ、良く練り、和紙か布にぬって、トゲが刺さった箇所に貼ると、トゲが抜けやすくなるそうです。
 また、ニシキギの実はシラミの駆除に利用されていたとか。そのため「シラミコロシ」の別名もある「ニシキギ」は庭や公園の樹木、盆栽にも使われています。
 日本全国で見られる木ですから、ぜひお近くの公園などで、翼のようなものがついた不思議な形の枝をもつ「ニシキギ」、探してみてください。葛西臨海公園やふなばしアンデルセン公園などにもあるそうです。

★    ★    ★

◎君津グリーンセンターの四季折々の魅力

●雨が降ってはいますけど、チップが敷いてあったりして歩きやすいですね。
「そうですね、足にやさしいですね。チップはウチの圃場で出た材を細かく砕いて使っています。ボリューム的にはいつでも持ってこれるようなものですね」

●ここは一般公開はしているんですか?
「電話で連絡していただければいつでもどなたでも大丈夫です」

●こちらでは4月3日に「君津花逍遥の会」というものが行なわれると聞いているんですが、こちらはどういう会なんですか?
「今年で6回目になるんですが、私共の圃場の一番のシンボル・ツリーであるヤマザクラの一番いい時期に、お客様に散策していただけるようなイベントになっています」

●今日見たかぎりでは植物達が「花逍遥の会」を待っているような感じでつぼみ達が咲かずに耐えているので、きっと4月3日には見事に咲き誇っていることと思います。
 この先1年の四季折々の魅力を紹介していただくとどんな感じになりますか?
「春はヤマザクラに始まり、ちょうどその頃にモクレン科のマグノリアの植物が50種類くらい次々に咲き始めて、5月くらいになるとハンカチの木が一斉に咲き始めます。夏は緑、緑、緑っていう感じですね(笑)。秋になると紅葉の植物が凄く多くて、モミジの様な赤系ではなくて、ウチはカツラやケヤキやイチョウ、コナラやモミジバフウといった暖色の黄色い感じの紅葉が凄くキレイに色づき始めます。冬になると静まって、大木が凄く多いので枝振りなんかも自然の形で凄く美しいですね。そういう目で見ていただければとても見応えのある場所だと思います」

●場合によっては鳥飼さんに案内していただくことって可能ですか?
「はい。全然大丈夫です」

●「花逍遥の会」は4月3日、翌日の4日は一般公開日ですね。
「動かずにずーっと見てらっしゃる方もいらっしゃいますね」

●では、みなさんも2日かけてじっくりと楽しんでいただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
RHSJ(英国王立園芸協会日本支部)記念庭園

 
■ I N F O R M A T I O N ■
 鳥飼さんによると、園内にはフクロウ、コゲラ、ウグイスなどの野鳥がたくさんいるそうで、朝は野鳥たちの鳴き声がうるさいほどだそうです。ノウサギ、タヌキ、ネズミ、イノシシ、モグラなどのほ乳類ほか、チョウチョウなどの昆虫も多く、君津グリーンセンターは、人間も含めて“生きものの楽園”といえる場所です。
・「君津花逍遥の会」
 今年6回目を迎える「君津花逍遥の会(きみつ・はなしょうようのかい)」が4月3日(土)に「君津グリーンセンター」で開催されます。
ヤマザクラをはじめとする春の風情を感じながら園内を散策できるチャンスです。
また、英国式庭園やこの日のために整備されたサンプル・ガーデンもお楽しみいただけます。さらにNHK「趣味の園芸」などで活躍されている園芸研究家・船越亮二(ふなこし・りょうじ)さんを講師にお迎えしての園内散策ツアーや、植木市もある「君津花逍遥の会」にぜひお出掛けください。
 開催は4月3日(土)の午前10時から午後4時半まで。参加費は無料。
最寄りの駅はJR内房線・君津駅。
当日は君津駅・南口から送迎シャトル・バスが運行されます。
なお、翌日4日(日)は一般開放日となっています。
また、普段の日でも事前にお電話で許可を得れば、園内を散策できます。
いずれも詳しくは「内山緑地建設株式会社」
TEL : 0439−50−1700
HP : http://www.uchiyama-net.co.jp/
までお問い合わせください。

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