2006年1月8日

アイルランドの歌姫・エンヤの自然観

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストはエンヤです。
エンヤ

 5年ぶりにアルバムをリリースしたアイルランドの歌姫エンヤをゲストに、新作『アマランタイン』にスポットを当てながら、エンヤの自然観に迫ります。
 アイルランドの首都ダブリン郊外にある、古いお城に住んでいるエンヤは、自然環境にインスピレーションを得て、音楽を創っているそうです。

『アマランタイン』の意味とは!?

●去年11月に、5年ぶりに発売したニュー・アルバムのタイトルにもなっている『アマランタイン』という言葉はとても美しい響きを持った言葉ですが、どんな意味があるんですか?

「『アマランタイン』は『永遠』、『ずっと薄れ去ることのない』という意味を持つ、詩的な言葉なの。この言葉は一般的な辞書にも載っているのだけど、今ではほとんど使われていないの。だからそんな古い言葉を蘇らせることができたのは、とてもステキなことだと思うわ」

●エンヤといえば、英語に限らず様々な言語で歌っていますが、何語で歌うかはどうやって決めているのですか?

「英語以外の言語で歌う場合は、何語で歌うか決める前に、まずは曲を書き始めた段階で、歌詞のテーマやストーリーを決めてしまうの。そして歌詞が出来てからメロディーに一番フィットする言語を選ぶのよ。つまり、英語では響きが硬すぎるって感じた場合はほかの言語を色々と試しながら、曲のイメージに一番合うものを採用するの。
 例えばファースト・アルバム『ウォーターマーク』ではラテン語やゲール語など、誰も分からないような、とても古い言語で歌っている曲があるのだけれど、多くの人は私の歌い方やパフォーマンスを通してそれぞれの曲の意味合いを感じ取ってくれたように思うの。だから例え何語で歌おうと、その言語がわからない人たちがその曲に込められたエモーショナルな部分を感じ取ってもらえるような、そんな曲作りを心がけているのよ」

架空の言語「ロクシアン」

●昨年、5年ぶりにリリースしたニュー・アルバム『アマランタイン』には全く聞いたこともない「ロクシアン」という架空の言語で歌った曲もあるんですが、この言語はどのように誕生したのですか?

「ロクシアンは(作詞家の)ローマ・ライアンが作り出した言語なのだけれど、そのインスピレーションは映画『ロード・オブ・ザ・リング』に携わって、架空の言語で詞を書くという経験をしたことで得たみたいなのよ。
 実は(アルバム『アマランタイン』に収録されている)『ウォーター・ショウズ・ザ・ヒドゥン・ハート』という曲を書いている時、私は鼻歌を歌うように、意味もない言葉や音を発しながらメロディーを書いていたのだけれど、それらの響きがとても気に入っていて、どうにか使えないものかって考えていたの。そうしたらローマが『だったら私たちだけの架空の言語を作り出したらどうかしら?』って提案したの。それはとても斬新なアイディアだと思ったわ。その時点ですでに英語で書かれた歌詞があったから、ローマはそれをロクシアン語という架空の言語を作り出しながら言葉を当てはめていくという作業を始めたの。ちなみに歌い出しは『シ・ウンブラ・エア』っていう歌詞なのだけれど、メロディーにもピッタリだったの。それですごいチャレンジだけれど、やってみようって思ったのよ」

●ロクシアンという言葉の由来は何なんですか?

「ロクシアンはローマが前々から気に入っていた言葉なの。実は彼女が初めてロクシアンという言語の話を持ち出したとき、彼女はロクシアン族という民をも作り出したいって思っていたの。つまり架空ではなく、実在する人々の言語のようにしたかったのね。彼女の作り出したロクシアン族は、自分たちの惑星に暮らしていて、私たち地球人が宇宙を見上げてほかの生命体の存在を夢見ているのと同じように、彼らもまた地球を見ながら自分たち以外の生き物の存在に思いを馳せているの。
 そんなロクシアン族は独自の文化、歴史、言語を持っていて、アルバムで歌っているほかのロクシアン語の歌は、“彼らがずっと歌い継いできた曲”という設定なのよ。だからたとえ架空のものとはいえ、全く新しい人々やその言語に触れてとっても楽しかったわ。実はロクシアン語の曲を書くたびに、ローマは新たな言葉やフレーズをどんどん増やしていったの」

●このままだとロクシアン語の辞典が完成しそうですね(笑)。

「実はローマはロクシアンのことやその誕生秘話を綴った本を書いているのよ。だからこのままロクシアン語の言葉が更に増えていったら、もっと多くの曲をロクシアン語で歌えるようになるかもしれないわね」

東京は静かで穏やかな街

●慌ただしい都会の生活を送っている私たちにとってエンヤの曲やその歌声は、様々な雑音を消し去り、ゆったりとした気分にさせてくれますが、エンヤ自身もゆったりとしたライフスタイルを大切にしているそうですね。

「レコーディング中は、スタジオワークは月曜から木曜の週4日だけに留めて、あとは自分のための時間として、週末や休暇をとるようにしているの。なぜなら私は仕事以外の、プライベートな時間に人と会ったり好きな場所を訪れることで、曲のインスピレーションは得られるものだと思うからなのよ。ただどんなインスピレーションを受けたのか、細かいことは自分でもよく分からないの。私の場合は何か美しいものを見て感動し、それについて曲を書こう! という発想ではなく、色々なことを吸収して、それらがスタジオに入ったときに自然と湧き出て、曲という形に仕上がるの。私はそういった自然のプロセスを大事にしているわ」

●エンヤは日本にも何度となく訪れているので、もしかしたら日本で得たインスピレーションなども曲の中に織り込まれているのかもしれません。ちなみにそんな日本、特に毎回訪れている東京にはどんな印象を持っていますか?

「東京は大都市にも関わらず、とても静かで穏やかな街のように感じるわ。同じような大都市、ニューヨークやロンドンの方がずっとうるさく感じるのよね。もしかしたら雑音の質が違うのかもしれないわね。日本に来て感動したひとつがその点なの。
 あともうひとつ感動したことは、日本の文化がアイルランドとはあまりにも違う点。日本独特の礼儀作法やそれらの意味合い。そして日本人ならではの暮らし方などがとても興味深くて、そういった違いを観察するのが大好きなの。ただ文化の違いを言葉で説明するのってとても難しいのよね。だから私はそういったものを視覚的に感じ、捉えるようにしているの」

●ニュー・アルバム『アマランタイン』では『菫草(すみれぐさ)』という曲を日本語で歌っていますが、いきさつを教えてくれますか?

「あれは自然の流れだったの。アルバムで特定の言語で歌おうって決めたことはないのよ。例えばゲール語で歌った曲がないのは、今回のアルバムが初めてなのだけれど、それは今回はゲール語の響きを必要とするような曲がなかったからなの。つまり何語で歌うかは曲次第なのよ。
 実はこの曲の歌詞は、ローマが松尾芭蕉の俳句にインスパイアされて書いたものだったの。それでゲール語、ラテン語、英語と、色々な言語で歌ってみたのだけれど、どれもしっくりこなかったのよね。そのとき菫草って響きがとても美しく聞こえて、日本語で試してみたらどうかしらって思ったの。そうやって日本語で歌うことに決まったというわけなのよ。
 私たちは常に歌う言語を選ぶ自由があるって感じているの。だから『日本語で歌ったら変かしら?』とか考えないわ。ゆったりとしたスローなメロディーに乗せて日本語で歌ってみたら、とってもいい雰囲気にフィットしたの。こういったプロセスはとても時間がかかるものだけれど、とても楽しい作業でもあるのよ」

自然からインスピレーションを得ている

アマランタイン

●最新アルバムは“永遠”を意味する『アマランタイン』というタイトルがつけられていますが、実は『アマランス』という“永遠の花”という名前の植物もあるんですよね。はかない命の花に“永遠の花”という名前をつけた人々は、どんな思いをこの名前に託しているのでしょうね。

「美しいものには永遠にその形を留めて欲しいというのはみんなの願いなのではないかしら。花を見た時には枯れることなんて考えず、その美しさに触れていい気分になるじゃない? みんなそんな気持ちが永遠に続いて欲しいって感じているのではないかしら」

●今ではフェイク・フラワーやフェイク・ツリーといった“作りもの”もたくさん出回っていますが、それらについてはどんな風に感じていますか?

「私はものごとを視覚的、つまりヴィジュアル的に捉える方だから、例え作られたニセモノであっても、美しいものを愛でることはとてもポジティヴで、いいことだと思うわ」

●でも本物の方はもっといいですよね?

「もちろんよ。本物なら香りも楽しめるもの」

●エンヤにとっての自然とはなんですか?

「この世の中には存在することが当たり前のように感じるものもあると思うのよ。でも私の場合、スタジオに入る前には必ず散歩をするの。そしてアイルランドの海を眺めながらその時間(とき)をじっくりと味わうのがとても好きなの。自然の風景は1分ごとにその姿を変えるのよ。太陽の光が差し込んだり霧に包まれていたりと、様々な表情を見せてくれるの。そんな時間を過ごし、尊ぶことはとても大切だと思うわ。こういった風景はお金を出して買わなくても、目の前にタダで広がっている景色なのよ。そんな贅沢なことってないじゃない? それに私は、そんな自然からたくさんのインスピレーションを得ているということを自覚しているから、余計に大切に思っているの。
 自然は様々な思いを反映させる力があるの。そして私自身、色々なことを反映させるタイプだから、自然の中での散歩やスタジオでの穏やかな雰囲気は全て私が作る音楽に表われるのだと思うわ」

●今日はどうもありがとうございました。


このページのトップへ

アマランタイン
アマランタイン(シングル)

■アイルランドの歌姫「エンヤ」

最新アルバム『アマランタイン』
ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-12221/定価2,580円
 5年ぶりに発表された「エンヤ」の最新アルバム『アマランタイン』は、オリジナル・アルバムとしては5作目。今回もヴォーカルの多重録音を中心とした浮遊感溢れるサウンドが楽しめるほか、芭蕉の俳句にインスパイアされて書かれたという日本語の歌詞や、作詞家ローマ・ライアンが生み出した架空の言語ロクシアンで歌った曲など、「エンヤ」の更なる魅力が楽しめる作品。
 また、タイトル・トラックであり、CMソングとしてもお馴染みのシングル『アマランタイン』も好評発売中(WPCR-12186/1,000円)。

・ワーナーミュージック・ジャパン内
 「エンヤ」のサイト:

 http://wmg.jp/artist/enya/

このページのトップへ

オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. WILD CHILD / ENYA

M2. AMARANTINE / ENYA

M3. MAY IT BE / ENYA

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. 島人ぬ宝 / BEGIN

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. THE SECOND STAR TO THE RIGHT / JESSE McCARTNEY

M6. SUMIREGUSA / ENYA

M7. THE RIVER SINGS / ENYA

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
このページのトップへ

新着情報へ  今週のゲストトークへ  今までのゲストトーク・リストへ  イベント情報へ
今後の放送予定へ  地球の雑学へ  リンク集へ  ジジクリ写真館へ 

番組へのご意見・ご感想をメールでお寄せください。お待ちしています。

Copyright © UNITED PROJECTS LTD. All Rights Reserved.
photos Copyright © 1992-2006 Kenji Kurihara All Rights Reserved.