2006年4月9日

オーシャン・セイラー、白石康次郎さん、地球3周目に挑戦!

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは白石康次郎さんです。
白石康次郎さん

 オーシャン・セイラー/海洋冒険家「白石康次郎」さんをゲストにお迎えし、前回の世界で最も過酷なヨットレース「アラウンド・アローン」から現在までを振り返りつつ、今年、名前が変わり再び挑む、単独の世界一周ヨットレース「5オーシャンズ」についてうかがいます。

地球3周目は上のクラスでチャレンジ!

●ご無沙汰しております。早いもので2年半ぶりになりますね。

「早いですね。出会ってからもう10年以上も経つんですね」

●白石さんも変わらないですよね。

「最初の世界一周からやっていることが変わってないですからね」

●そう! 初めてお会いしたときから世界一周していたんです。

「エイミーさんも変わってないですよね。お互いに変わらず(笑)」

●(笑)。色々やっていらっしゃる白石さんなんですけど、番組的には2年半ご無沙汰してしまったので振り返りたいと思うんですが、何をしてらっしゃったんですか?

「ご存知の通り、おかげさまで2002年、2003年のレースで初めてアラウンド・アローン、単独世界一周に参加させていただいて、非常に苦しい状況ではあったんですけど、無事に完走してクラス2で4位になりました。本当にあれは高校生の時に『このレースに出たいなぁ』と思って、ヨットの所作を弟子入りして学んで、17年間かかってやっとスタートラインに立って、見事完走してという、まさに素晴らしい思い出でしたね。
 そもそも僕、師匠のカバン持ちをしてあのレースに参加した頃は、クラス2といって15メートル以下の船だったんですね。だから小さいんです。で、やはり車でいうF1、最高級のオープン60フィート、18メートルっていうクラス1で出ることに憧れていたんですね。だから、前に世界一周をしたときは、多田(雄幸)さんが思い半ばで亡くなってしまったり、色々な人の支えがあってできたことなので、前回のレースは自分の中でまとめると、『白石康次郎、夢叶いました。』っていう感じなんです。文章で言うとね。で、いよいよここから自分のレースが始まる。前回は多田さんや造船所の世話になった人達、フリントストーンのみなさんもそうです、名も知らない僕が色々な人にお世話になって、やっと出て『ありがとうございました!』というレースだったように思います。これからはいよいよ、白石康次郎として師匠よりも上のクラス1に出場するわけですから、本当の自分が試されるものになるんじゃないかと思います」

●この2年半〜3年に渡っては夢をかなえて、白石康次郎としての準備をずっとしてたという感じなんですね。

「スタートが今年の10月で、スタートまでが4年ずつなんですけど、準備には3年くらいしかないんですね。で、今度は船の長さが3メートル長くなるんですけど、かかる費用は倍なんですよ。プロジェクトには3億2000万円の資金が要るんですよ。それを集めるために奔走してましたね。今のところ、2億2000万円集めました。だから、あと1億円足りないんです。『どこまで足りないんだ!?』って話なんですけどね(笑)。すごく足りないんですけど、この間、船買っちゃいました。もう後戻りできませんよ」

●新艇ですか?

「中古です。新艇は船だけで3億円します。プロジェクトでいうと、5億円のプロジェクトになってしまうんですね。最新艇は次の目標ですね。とりあえず、次はクラス1に出場して完走する。あわよくば表彰台を狙うという展開です。1億円弱でいい中古艇があったので、それを買いました」

●前回までは世界一過酷なヨットレース、レース名が「アラウンド・アローン」だったのが、今回から名前が変わったんですよね?

「はい、変わりました。『5オーシャンズ』っていう名前になったんですけど、レースは同じです。このレースは1982年に始まって今まで続いているんですけど、今年で第7回目なんですね。で、なぜ名前を変えたかというと、主催者が『アラウンド・アローン』と言うと寂しいんですよ(笑)。『世界一周、独りぼっち』みたいな(笑)。で、それではちょっと寂しいし、スポンサーが集まらないので、『5オーシャンズ』っていう名前に変わったんですよ。最初は『BOCチャレンジ』だったの。それで3回やって、次に『アラウンド・アローン』になって3回やって、7回目の今回から『5オーシャンズ』っていう名前になったんです。サブタイトルもアルティメット・ソロ・チャレンジになったの。カッコよくなりましたね。『5-OCEANS〜THE ULTIMATE SOLO CHALLENGE〜』になりました」

実体験で学ぼう!

●ここのところずっと温暖化や海面上昇が問題になっていますが、海に出ていると、肌で感じるんじゃないですか?

「最近、特に感じるのは日本にいて夏場のスコールのできかた、雨の落ち方を見ていると赤道に近い。ハワイとかグァム付近の雲の形、スコールにそっくり。亜熱帯が上昇したっていう感じ。それを感じます。だから、僕らが走っていって、赤道に向かって北緯20°付近に来ると、貿易風が吹いて貿易風の雲の形になって、スコールがよくあるんですね。それが今、夏に日本で味わえるね。異常気象って毎年あるんですよ。平均気温はあくまで平均だから、波打っているのを平らにしたら平均になるわけで、変化はあるんだけど、今年分析したり、子供の頃から見ている景色の十何年を考えると、確かに温暖化と言ってもいいのかなという現象は感じますね」

●ということは、急激に変化が見えてきているんですね。

「そうですね」

●急激に何かが変わっていくっていうのがよくないことですよね。

「そうですね。古代から徐々に変わってきているんです。自然が変わらないというのはおかしいんですよ。温度変化もあるし、地形も変わるし、海の流れも変わるんですけど、あまりにも変化の速度が速いということですね。それに人間は対応できないんですよ。そこら辺の抑えられるべきところは抑えないといけないなと思いますね。僕もチーム・マイナス6パーセントのメンバーで、そういうことを推奨していますね。特に、クーラーとか暖房っていうのは、自然の理に反するのね。要するに、自然の流れ、自然の掟、理に反したやり方なんですよ。エネルギーを持ってきて、暑いところを涼しくするんだから。それは非常に無理がある。で、必ず無理っていうのはどこかに出るんですね。無理だから。だからそれは、なるべく避けたほうがいいですね。自然とうまく付き合えないですよ。
 今の子供達って暑さに弱いのね。子供の頃にいっぱい汗をかかないと、毛細血管が発達していないから、体の温度変化に対応できないんですよ。『お前は爬虫類か!』っていうような人いるよね(笑)。汗をかかないと熱が体にこもってしまうんですよ。で、熱中症になって倒れちゃうんですね。それは、子供の頃に外で運動していないと、対応できない。本来、人の体っていうのは、ちゃんと対応するようにできているので、クーラーばかり使っていると、融通が利かなくなってくるから、それはよくないですよ」

●白石さんはアドベンチャー・レースの子供版とか、子供向けのスクールもやってらっしゃったじゃないですか。そういうのはこれからも続けていかれるんですか?

「続けていきます。帰ってきてからは、主に横浜と文部科学省の方で居場所づくり事業っていって、不登校の子とか引きこもりの子を集めて、フリースペースみなみっていう場を設けています。そういう子達をヨットに乗せたり、船をチャーターして乗せたりして、なるべく自然に連れ出すようにしています。僕の好きな言葉に『太上は天地から学び、その次に師から学び、その次に経から学ぶ』という佐藤一斎さんという方の言志四録に書いてある言葉があるのね。最も優れたものは、天地をお師匠さんとするんですね。次に師、先生から勉強して、その次に経。経というのは教科書とか経典といった本から学びなさいという教えがあるのね。僕ももっともだと思うんです。それを今の親御さんも学校もやらないでしょ。天地から学ぼうとしてるかっていうと、していないんですよね。それを学ぶにはどうすればいいかというと、教室であれこれ言ってないで、連れていけばいいんですよ(笑)。そうすると、僕が『海ってこういうもんだよ。危ないもんだよ』って言わなくても、マストに上らせれば『手を放せば死ぬな』って思うんですよ。『危ないぞー!』なんて言う必要ないからね。子供達がマストに登っているときは全員注意しますよ。手を放せば死ぬんだから。で、逃げ場もないしね。『我慢しろ!』なんて言わなくったって、我慢をしなきゃしょうがないから、そこは海の素晴らしいところですよ。
 今の子供達は情報過多なんですよ。情報が多いのね。なので、ものをよく知っていますよ。多分、僕なんかの子供の頃の10倍以上のものを知っていると思いますよ。ただ、味を知らないのね。情報はこっちが与えなくても、子供達は貪欲にインターネットなどで調べるので、とにかく今、必要なのは実体験。体得させること。それが一番大切だと思いますよ。最近、それが僕の天命かなぁと思ってるんです」

「水になれ!」

白石康次郎さん

●新たなレース「5オーシャンズ」が今年ついに10月から始まりますね。10月の何日から始まるんですか?

「10月22日にスペインのビルバオをスタートです」

●期間はどれくらいかかるんですか?

「次の年の5月までですね。7ヶ月です。みなさん、地球儀を思い浮かべていただきたいんですが、スペインの北側にあるビスケ湾のフランス寄りのところに、ビルバオっていうところがあるんですね。バスク地方ですね。そこをスタートして、アフリカの脇を通って赤道を越えて、ケープタウンの方に向かって、今回はケープタウンに寄らないで、一気にオーストラリアの西の方にあるパース、フリーマントルまで行きます。10月22日にスタートしてから、ゴールするのが12月の半ばなので2ヶ月くらい」

●結構、ロングランですね。

「ロングランです。それで、オーストラリアのパースを1月14日にスタートして、南極の周りを回ります。で、ケープホーンと南極の間を通って、ブラジルの脇を通って、赤道を越えて、で、マイアミのキーウェストまで行くの。これも2ヶ月以上です」

●そこが1番キツイところになるんですか?

「1番長いのでそうかも知れないですね。これが、1月14日にスタートして、ゴールが3月の半ばくらいかなぁ。で、4月15日にスタートして、今度は大西洋横断だけだから2週間くらいで4月の末から5月の頭くらいにスペインにフィニッシュするという3レグで争われます」

●前回とはコースが変わってるんですね。

「寄港地が減りましたね」

●参戦する側としてはどうなんですか?

「よくないですね!(笑) これは主催者のワガママです(笑)。これはよくないレースですね。寄港地を減らせば予算が浮くんだよね」

●でも前回、トラブルがあったりとか、自然が相手なので台風があったり色々なもので停泊を余儀なくされたりとかってこともあったじゃないですか。これだけロングランのレグが続くと、展開が見えにくくなるんじゃないですか?

「それは前回も今年も一緒ですよ。ヨットの装備は新しくなっていますが、海自体は変わってないからね。危険度も一緒なので、前回もリタイア3艇、真っ逆さまにひっくり返ったのが1艇、マストを折ったのが3艇いました。前回も非常に大きなサイクロンで僕らも避難しましたが、今回も何が起こるか分からないですね。それは何回やっても一緒ですね。ただ、船が大きくなったので、僕としては前回より安心ですよ」

●また、5オーシャンズの間にも余裕があったら、フリントストーンにもお電話で出演していただければと思います。

「そうですね。今回、少し宣伝をさせてもらうと、クラス1で、社会的な意義として、アジア人が、そして有色人種がクラス1に出場するっていうのが初めてなんですよ。で、あとはなんとか表彰台を目指して、今までよりいい船を中古で手に入れたので、優勝はなかなか難しいけども、しっかりした走りがしたいなというのがレース展開のテーマですね。あと、個人的には水になること。水になるっていうのが僕のテーマでね。これは居合道の先生から『水になれ』という宿題を頂いたんです」

●その言葉を聞くだけでも、かなり深そうですね。

「深い。水になるんです。『白石君、前回のレースは楽しかったか?』と聞かれて、『はい。楽しかったです』って言ったんですよ。すると『それじゃ、ダメだ。“楽しい”っていうのは水じゃないだろう。第三者だろう。お前が水になれ!』って言われたんです。大好きな師匠です。それが僕の心の中のテーマなんです。で、私のライフワークでもある子供達との冒険授業を、この前、僕の卒業校でもある付属鎌倉小学校でもやったんだけど、これからは全国に広めてもっともっとホームページも充実させて、教育プログラムを充実させながら、こういう番組にも出させていただきながら、乗るのは僕1人なんですけど、みんなで世界一周できるような教育プログラムが出来ればなぁと思っております」

●楽しみですね!

「是非、楽しんで下さい。せっかくやりますので、僕が真剣に走るのはもちろんのこと、ただ傍観するのではなくて、ヴァーチャル・クルーとして精一杯世界一周レースを一緒に走る意気込みで参加していただければと思います」

地球3周目をみなさんと共に!

白石康次郎さん

●今回もボランティア・スタッフのようにして参加することは出来るんですか?

「募集してますよ。各寄港地で軍手をもって待ってます(笑)。船の予定では、4月中にフランスに行って、フランス語が苦手なので、勉強します。で、ベース・キャンプはイギリスのポーツマスで張ります。そこで整備しています。で、10月22日にスタートですから、是非みなさん、スペインのビルバオ集合して下さい。現地集合、現地解散となっております(笑)。で、1月のパースは直行便があるので来やすいですよ。12月の半ばから1月の半ばまでずっとパースにいますので、よろしかったら遊びに来て下さい。これが、一番日本から来やすいかな」

●軍手が必要なんですか?

「こちらで用意します」

●じゃあ何も要らないんですね?

「握手したその手にスパナを渡します(笑)。雑巾とか渡しますんで(笑)」

●(笑)。体ひとつで行けばいいんですね。

「はい。あと、3月の人はマイアミに集合。で、フィニッシュは4月末ですので、生ハムを食べにスペインへ来て下さい」

●みなさんも体力をつけて、是非、行っていただきたいと思います。また、帰ってこられたら番組でお話を聞かせて下さいね。

「はい。フリントストーンのリスナーの皆さまと一緒に航海を楽しめればと思いますので、ラジオを通じて応援していただければと思います」

●ガンガン書き込みます!

「でも、『金返せ!』とかはやめて下さいね(笑)。金は返します。でも、いつかは分かりません。『返さない』とは言ってないから(笑)」

●(笑)。自分達もクルーですから、それはみんなの責任ですよ。みんな一緒。

「あ! 言いにくいことを言って下さいましたね(笑)。これ、僕からは言えないので、エイミーさんの方から強くお願いします(笑)」

●みんな、同じ船に乗った身だからね。

「そういうことですね。今後、ホームページを作ってうまく参加できるシステムを作りますので、ドシドシご応募下さい」

●フリントストーンからも飛んでいけるようにしたいと思いますので、是非、ご覧下さい。体が何よりですので、健康には気を付けて下さいね。

「はい。分かりました。元気に楽しんできます」

●水になって・・・。

「そう! 水になるのがテーマだからね。水になれてるかなぁ。これで地球3週目だからね。その意気込みでしっかりと走ってきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!」

●頑張って下さい! 今日はどうもありがとうございました。

■このほかの白石康次郎さんのインタビューもご覧ください。

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■オーシャン・セイラー/海洋冒険家「白石康次郎」さん情報

『アラウンド・アローン』

「白石康次郎」さんの本
『アラウンド・アローン』

文藝春秋社/定価1,600円
 たったひとりで航海する、世界で最も過酷なヨットレース「アラウンド・アローン」の第6回大会(2003年〜04年)に参加し、危険ととなり合わせの孤独な戦いを乗り切り、見事クラス2・第4位でフィニッシュした「白石」さんの勇気と希望をあたえる235日の航海記録。

「世界一周サポート・メンバー」募集中!
 この秋「白石」さんが再び挑むヨットレース「5オーシャンズ(旧:アラウンド・アローン)」で、「白石」さんをサポートしてくれるメンバーを現在募集中。
 資格としては、20歳以上の、普通免許を持っている、体が丈夫な方で、海外渡航や短期滞在が可能なこと、そして英語力と交渉力のある方。更に、ヨットの経験があれば、なおいいとうことです。尚、メンバーは契約社員(報酬あり)として採用されます。詳しくは「白石康次郎」さんのホームページをご覧下さい。

・「白石康次郎」さんのHP:http://www.kojiro.jp/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. SAIL ON SAILOR / THE BEACH BOYS

M2. SEVEN SEAS OF RHYE / QUEEN

M3. ALL AT SEA / JAMIE CULLUM

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M4. ANOTHER YOU / NATURALLY 7

M5. GET TOGETHER / BIG MOUNTAIN

M6. CALL OF THE WILD / AMERICA

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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