2007年5月27日

レーシング・ザ・プラネットの日本事務局代表、藤崎保江さんに聞く
「砂漠を歩くレースの魅力」

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは藤崎保江さんです。
藤崎保江さん

 レーシング・ザ・プラネットの日本事務局代表、藤崎保江(ふじさき・やすえ)さんをゲストに、2003年に始まった世界の砂漠を歩くレースの魅力や、参加方法などうかがいます。

250キロの砂漠を7日間で歩くレース

●藤崎さんが日本事務局の代表を務めるレーシング・ザ・プラネットなんですけど、これはどういう団体なのかご説明いただけますか?

「この団体は香港に本部がありまして、ヨーロッパとか日本といった世界各国に事務局があるんですけど、基本の活動は年に4回、砂漠を舞台にした250キロ、7日間自給自足マラソンを開催することが基本活動になっています」

●かなり思い切ったマラソン大会ですね(笑)。

「そうですね(笑)」

●世界中ということで「レーシング・ザ・プラネット」という名前なんですか?

「そうですね。この名称は、おそらく代表の方がつけたんだと思いますが、日本語で言えば『惑星の中で競争する』という意味なので、多分、場所は選ばないっていう感じなんだと思います」

●いつぐらいから活動されているんですか?

「一番最初の大会が行なわれたのが2003年なので、4年前ですね」

●団体としては、まだ新しい団体なんですね。

「そうですね」

アタカマ砂漠
ゴビ砂漠

●年に4回行なわれるというこのレースは、砂漠が舞台なんですよね?

「そうです。基本、砂漠が舞台で、砂漠といっても荒野みたいなところがあったりとか、基本コンセプトみたいなものが、今まで人類が足を踏み入れたことがないところでレースをやろうっていうのが基本理念みたいなものなので(笑)、そういう場所ばかりです」

●マラソンですから、そういうところを車ではなく足を使って走るわけですよね?

「そうですね。そういうところを人間の足で行くっていうのが面白いところでもあります」

●他人事で聞いていれば面白そうですけど・・・(笑)。

「自分でやるとなるとかなり・・・ね(笑)」

●でも、そんなレースに藤崎さんは参加なさっているんですよね?

「はい。自分も選手で参加しています」

●レースが年に4回で、基本的な開催場所がエジプトのサハラ砂漠、チリのアタカマ砂漠、中国のゴビ砂漠、そして南極大陸。

「そうです。今、最初に言った3つの大会を完走した人だけが出場権を得られて参加できるのが南極の大会で、またちょっと違うんですね」

アタカマ砂漠
ゴビ砂漠

●基本は3つの砂漠のレースなんですね。

「ええ。これらのレースをクリアすると、晴れて南極へ旅立てるんですね」

●エリアやルートは毎年同じなんですか?

「例えば、開催地が同じゴビ砂漠でも、開催場所が毎年変わります」

●砂漠といっても、いささか広いですからね(笑)。

「そうですね(笑)。場所はいくらでもあります。ただ、7日間で250キロで自給自足という、基本ルールは一緒です」

●自給自足っていうことは、7日間の食事も持って行くわけですよね?

「はい、そうです」

●宿泊はどういう風になっているんですか?

「洒落た宿泊場所はないので(笑)、『ここで寝ていいよ』っていうテントと、それぞれの割り当てられた分だけの水が支給されて、それ以外に7日間必要なものは、全て自分で準備してレース中はそれを背負って走るっていうのがルールなんです」

●大体、どれくらいの重さになるんですか?

「個人差がすごくあるんですけど、例えばものすごく早く走りたい人は軽くしたいので、食料を極力減らしたり、必要なものも極力減らしたりするので、5〜6キロくらいなんですけど、逆に私なんかは食べ物をとことん持っていくので、10キロは軽く越えますね」

●荷物をどのくらい持っていくっていうのは自由なんですね。

「自由です。ただ、重ければ自分がつらいだけというだけです」

●藤崎さんの場合は約10キロを抱えて旅をされるんですね。

「はい。しかし食欲は満たされるという毎日です(笑)。だから、ひもじい思いはしないんですね」

本能の赴くままに歩いた

サハラ砂漠
サハラ砂漠・藤崎保江さん

●砂漠を7日間、自給自足で250キロを走破するこのレース。初めて参加されたときって、普通のマラソン大会とは全然違うじゃないですか。どうでしたか?

「想像はしていたんですけど、想像以上に何もないっていうことに衝撃を受けましたね。日本だとのどが渇いたときに、ちょっと歩けば自動販売機があったり、コンビニがあったりするじゃないですか。そういう感覚に慣れていたので、水が残り少なくなってくるたびに『もう死んでしまうんじゃないか』とか、とにかく最初は全てが衝撃でした」

●それはどこだったんですか?

「モロッコのサハラ砂漠でした」

●私達も、「サハラのレース」と聞くと、パリダカくらいしか知らないので、2輪と4輪がガーッと走るイメージが強いんですけど、コンビニや自販機はありませんもんね(笑)。そのときは無事、完走されたんですか?

「ボロボロに完走しました」

●でも、その1回でやめずに次の挑戦をなさったわけですもんね。

「そうですね。今思えば、最初は『人生で1回くらいはやってみたいな』と思って、最初で最後くらいの思いで参加したんですけど、その翌年に友達から誘われたんですよ。出る気はなかったんですけど、誘われたら急に行きたくなってしまったんです(笑)。2回目は多少、余裕があって、周りを見回したり、他の人とのコミュニケーションを楽しんだりして、1回目とは違う視点で見れたことにより、砂漠マラソンの魅力に取り付かれちゃいました」

●実は、藤崎さんにお写真を持ってきていただいて、先ほど見させていただいたんですけど、砂漠って永遠に果てしなく続くイメージってあるじゃないですか。でも、お写真を拝見していたら、起伏もかなり激しいんだなって感じたんですね。目印とかってどうなっているんですか?

「ピンクの旗が立っています。そんなに大きなものではなくて、大体30センチくらいのものが、数十メートルとか数百メートルおきに設置してあるんですね。ただ、それが天候によって、砂嵐の日とかはほとんど見えないですし、風で飛んでいってしまったり、埋没してしまったり、倒れてしまったりすると、もう見えないんですよ」

サハラ砂漠・藤崎保江さん

●えっ!? そうなったら、どうやってチェック・ポイントまでたどり着くんですか?

「私は後ろのほうなので、前の人の足跡を探りますね。犬みたいなんですけど(笑)」

●(笑)。砂漠で地図をもらってもどうしようもないですもんね。

「そうなんですけど、あることはあるんですよ。地図というか、線がただビヨーンと引いてあるだけのルート図のようなものがあるにはあるんですけど、今おっしゃった通り、道があるわけではないので、役には立たないんですよ(笑)」

●(笑)。それって、すごく不安じゃありませんか?

「すごく不安ですね。特に1人で歩いていて、前後に誰もいなくて、だんだん日が暮れてくるときとか、ものすごく不安ですね」

●だって、砂漠の真ん中でしょ?

「はい。怖いですよー(笑)」

●「怖いですよー(笑)」って笑っていらっしゃいますけど、実際に危ない思いとか、迷った経験はないんですか?

「小規模ではあります。大事に至らないうちに一応、復活しているので、今までに盛大に迷ったことはないんですけど、しょっちゅう迷っています(笑)」

サハラ砂漠・藤崎保江さん
サハラ砂漠

●(笑)。そういう場合っていうのは、普通にマラソンとかを見ていると、空にはヘリコプターがいたりとか、バイクで先導してくれたりするじゃないですか。この大会にはそういう方はいらっしゃらないんですか?

「スタッフのジープが一応、巡回はしているんですけど、なにせ台数が少ないもので、1日に1回見るか見ないかっていう感じです(笑)。あと、最終のランナーに現地の人とラクダがつくんですよ。だから、もし最悪ダメだと思ったら、そこに留まっていれば、後ろから来たその人達と合流して、どうにかこうにか死なないかもしれないですね(笑)」

●(笑)。でも、基本的にはそこまで危ない思いをするほどデンジャラスなレースではないんですよね?

「そうですね。私以外でも、そういう危険な目に遭ったっていう人はいないです」

●でも、灼熱の暑さがすごそうだし、イメージがしにくいレースですよね。

「そうですよね。2年前に出たゴビの大会で、気温が58℃の日があったんですよ。もう、思考も止まるし、全ての生命活動が止まってしまうというか、ただ本能だけで歩いているみたいなときはありましたね」

●それでも、歩くしかないですもんね。

「ええ。本能の赴くままに歩いていました」

●(しばし沈黙するエイミー)・・・なんか、絶句!(笑)

「(笑)。それでも、58℃は本当にしんどかったです」

この世界に砂と空と自分しかいない

サハラ砂漠

●2003年にスタートしたというレーシング・ザ・プラネットなんですが、年に4回行なわれるレースは250キロって決まっているんですよね?

「はい。南極でも同じです」

●どこでも、250キロの距離を計7日間で自給自足しながら歩くっていうのが決まりごとなんですね。お話を聞いていると、このレース自体はスピードを競ってとか、記録を狙ってというよりは、地球という惑星を自分の足で踏みしめて感じるレースなのかなぁって思いました。

「そうですね。私なんかはそういうふうに捉えていますけど、やはりレースなので、今おっしゃったようにトップを争う人達は熾烈ですよね。しのぎを削っています。ただ、私達のようなマイペース派は一歩一歩楽しんでいます」

●それは、本当に一歩一歩を楽しむという感じなんですね。

「はい。楽しむというか苦しむというか(笑)」

●(笑)。藤崎さんはレースをするごとに少しずつ余裕ができて、周りを見られるようになったっておっしゃっていましたけど、周りに見えるであろう砂漠の魅力ってなんですか?

「やっぱりスケールですよね。果てしがないっていうのはああいうことを言うんだなぁというか、見る分には素晴らしいですけど、行けども行けども変わらないっていうやつで(笑)。ただただ圧倒されるっていう壮大な風景は好きなんですけど、行くと『もういいよ』って思うときも結構ありますね(笑)」

●(笑)。それは、ずっとレースをしながら「いいなぁー」って思った次の瞬間、もう一歩歩かなくちゃいけないし、疲れるし、喉も渇くし、「もういいよ」ってなるけど、そのレースが終わると、次のレースに参加したくなっちゃうんですよね?

「そうですね。終わると、つらかった瞬間瞬間をあまり鮮明に覚えていないというか、忘れちゃっているので、それで次のレースに行けるのかもしれませんね」

●その苦しみを乗り越えられるモチベーションってなんなんですか?

「私、何もないところが好きなんですね。ふと気がつくと、この世界に砂と空と自分しかいないんですね。『わぁー、すごい!』って鳥肌が立ったりとか。あと7日間っていうのは、ただ歩いて、寝て、食べて、歩いて、寝て、食べての繰り返しで、究極にシンプルなんですね。余計なものが何もなくて、雑念も何もなくて、そういう無心になれるところが好きですね」

誰にでもできる冒険

藤崎保江さん

●今、お話をうかがいながら、大体、どの程度のレベルだったら参加できるんだろうって考えていたんですが、実際はどうなんでしょうか?

「レベルを度外視して、完走さえできればいいというのであれば、初めて来る方でも結構完走しています」

●それは普段、ジョギング程度をやっていらっしゃるくらいの方々ですか?

「ジョギングも元々はやっていなくて、このレースに参加するって決めてから、ちょっと走ったっていう程度の方も実際に来るんですけど、完走していますね」

●本当にランクさえこだわらなければ、フリントストーンのスタッフでも行けてしまうんですね。

「もちろんです」

●で、もうちょっと頑張りたいなとか、藤崎さんのように毎日、充実した食生活をしたいと思えば、10キロくらいの荷物を背負って歩ければ大丈夫なんですね。1日平均、どれくらい歩くんですか?

「だんだん増えていくんですけど、30キロくらいからスタートして、次の日が40キロ、その次の日が50キロというふうにちょっとずつ増えていって、全部で250キロという感じですね」

●では、それくらいを歩ければ完走もできてしまうんですね。

「ええ。やめずに続けていればたどり着けるというシステムです」

●ホームページの方に細かいルールが書かれていて、本当にすごく細かいんですけど、よく読んでみると、自然の中に人がお邪魔をすること自体で守らなくてはいけないマナーがほとんどですよね。

「そうなんですよ。一番それが基本ルールですね」

●それ以外っていうのも、本当に競技としてのルールなので、そんなに厳しくもないのかなぁって思いました。

「そうですね。ただ、今おっしゃったように環境にはものすごく配慮していて、足跡以外は何も残さないっていうルールで、ゴミが1つでも捨ててあったりしたら、その時点でペナルティを受けたり、ひどい場合は失格にもなってしまうんですよ。あとは、コース上に遺跡とかも結構あるんですね。そういうものを触ったり動かしたりしては一切いけません」

●来月にはゴビ砂漠でのレースがあります。これって、ゴビ砂漠、アタカマ砂漠、サハラ砂漠の3つを完走できた人のみが南極に参加できるという計4つのレースの内の1つなんですよね。

「そうです」

●これは「別に南極まで行かなくてもいいかな」という人は全部に参加しなくてもいいんですよね?

「もちろんです。ただ、南極に行きたいのであれば、今言った3つを全部完走しないといけないっていうルールはありますけど、必ずしも南極に行くというのが決まりではないので、自分が行きたいと思った場所だけ来る方もいらっしゃいます」

●6月のレースは今からではもう間に合いませんよね?

「ええ。これはもう締め切っちゃっています」

●その次が8月にアタカマ砂漠、10月にサハラ砂漠でのレースがありますけど、これは今からでも間に合いますよね?

「ええ。まだまだ募集中です」

●どういうふうに申し込めばいいんですか?

「私のところにご連絡いただければ、参加に必要な書類などを一式送らせていただきます。それをご覧になっていただいて、必要な書類を提出していただければ、私の方で全部エントリーの手続きを代行いたします」

●「ちょっと面白そうだな」とか、「参加してみようかな」って思っている方々にアドバイスやメッセージをいただけますか?

「大冒険ってなかなかできないですけど、これくらいの冒険でしたら誰でもできるというか、ほんのちょっとの勇気で行けちゃうんですね。で、実際に行けばやっぱり死にたくないので、みんな一生懸命頑張ります。なので結果、完走できるんですけど、その体験が後々財産になります。だから、もしほんのちょっとでも興味があったら、難しく考えず、是非、行ってみてはいいんじゃないかなと思います」

●頭でっかちに考えすぎないことですね。

「そうですね。行けば何とかなりますから(笑)」

●でも、砂漠ですよー(笑)。

「でも、そういっていたら死んでしまうので、みんな結構頑張ります(笑)」

●(笑)。レーシング・ザ・プラネットは4ヶ所で少しずつルートを変えながら開催されているということで、また是非、今度は現地からお電話か何かでレポートを入れてもらえると楽しいなと思っているので、期待しております。

「それ、いいですね。面白そう。ありがとうございます」

●今日はどうもありがとうございました。


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■レーシング・ザ・プラネット日本事務局代表、藤崎保江さん情報

レースの参加者募集中!
 レーシング・ザ・プラネットは7日間250キロを走破する砂漠レース。年4回開催されているレースの内、南米チリにある「アタカマ砂漠」を走破する『アタカマ・クロッシング2007』とエジプトの「サハラ砂漠」が舞台の『サハラ・レース2007』というふたつのレースでは現在、参加者を募集中!

日程:『アタカマ・クロッシング2007』8月19日〜25日
   『サハラ・レース2007』10月28日〜11月3日
集合/解散:現地
種目:個人、またはチーム(3人編成)
費用:各34万円(ただし、為替相場によって変わる場合あり)

「サハラ砂漠マラソン写真展」
 藤崎さんの写真家のご主人、藤崎将士さんが撮影したサハラ砂漠でのレースの写真を展示。砂漠レースの過酷さ、楽しさを写真を通して感じることができる。

日程:7月30日(月)〜8月5日(日)
会場:NHKふれあいホール・ギャラリー(渋谷)

 レース、および、写真展の詳細は「藤崎」さんのHPをご覧下さい。
・「藤崎」さんのHPhttp://www.fujisaki-web.com/
・レーシング・ザ・プラネットのHP(英語): http://www.racingtheplanet.com/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. IT'S THE NIGHTTIME / JOSH ROUSE

M2. WALKING IN YOUR FOOTSTEPS / THE POLICE

M3. DON'T WORRY, BE HAPPY / BOBBY McFERRIN

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. HOLD ON TO YOUR DREAM / STEVIE WONDER

M5. SIMPLE / K.D.LANG

M6. IN YOUR EYES / PETER GABRIEL

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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