2007年6月10日

タンザニア・ポレポレクラブ代表、藤沢俊介さんの「森は命」

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは藤沢俊介さんです。
藤沢俊介さん

 NGOタンザニア・ポレポレクラブの代表、藤沢俊介さんをゲストに、タンザニアで村人と一緒に行なっている植林活動や、長く続けるためのコツなどうかがいます。

1980年代の後半から植林に取り組んできた珍しい村

●まず、タンザニア・ポレポレクラブという団体について教えていただけますか?

「タンザニア・ポレポレクラブは東アフリカのタンザニアという国で、植林に取り組む村の人達に協力しているNGOです」

●タンザニアってケニアのすぐ下で、キリマンジャロでおなじみのタンザニアですね。タンザニアというと、野生動物のイメージが先にくるんですけど、そこで植林活動をなさっているんですね。

「そうです。今、おっしゃられたようにアフリカというと、野生動物、サファリっていうイメージが結構あるんですが、一方で砂漠化とか森林減少が深刻に進んでいるところでもあるんですね。そして、失われた森林が生活に直接影響を及ぼし始めていますので、アフリカの中では植林に立ち上がった村の人達っていうのも結構います」

●タンザニアの森林がなくなっていく現象は、木材の輸出が大きいんですか? それとも、気候の問題なんですか?

「木材の輸出もされているんですが、一番はそこに住んでいる村の人達が、日々の生活に煮炊きとして使う薪を得たり、炭を得たりするために切られているっていうのが、一番大きな原因になっています」

●昔からそこに住んでいた人々が、昔から同じように薪や炭として使っていて、森林がなくなってしまうものなんですか?

「はい。なくなっていっているんですね。なぜかというと、まだ人口が少なかったときは、木を切って薪として使っていても全然問題なかったんですね。自然の再生産能力の内側で木を使っている間は、切ってもまた木が回復します。日本でも街路樹を冬になると剪定して、春になるとまた元通りに戻るのと同じですね。その能力の内側で使っている分にはいいんですが、発展途上国と呼ばれているような国では人口爆発、急激な人口増加が起きていますので、そうすると増えていく分だけ薪の消費量は多くなっていくわけですよね。で、自然の再生産能力を上回って消費が始まったときに、森林の原資を食いつぶしていくことになりますので、そうすると森林がどんどん減っていくということになります」

●先ほど、ポレポレクラブのスタートのキッカケが現地の人々を応援することだとおっしゃっていましたけど、そもそも藤沢さんがポレポレクラブを立ち上げたのはいつぐらいで、どういうキッカケからだったんですか?

「私、もともとサラリ−マンをやっていたんですけど、どうしても自然分野の仕事に就きたくて、会社を辞めて別のNGOの職員になったんですね。そのときにタンザニアとベトナムの担当を任されまして、何も分からないままタンザニアに行ったりしたんですが、今、一緒に活動しているテマ村の人達と出会いまして、彼らは本当に熱心に自分達で植林をやっていたものですから、自分がもし力になれるのだったら一緒にやっていきたいということで、今日まで至っているという感じです」

●テマ村は場所的にどの辺になるんですか?

「キリマンジャロの山の中ですね。標高1600メートルほどのところにあるんですが、キリマンジャロ山の東南部にあたります」

●そこが、タンザニア・ポレポレクラブの活動のベース地なんですね。

「そうですね。テマ村の中に本当に熱心に植林に取り組んできた村の人達がいて、彼らの村のすぐ隣尾根までは森林がないような状況になってきているんですが、彼らは1980年代の後半、私達が入る前から既に植林に取り組んでいたんです。そのテマ村が今、緑の防波堤になっているという感じです」

●日本では植林活動って、国内でも国外でもよく耳にする言葉じゃないですか。タンザニアでは現地の人達が立ち上がってこういうことをやっているというのは珍しいことなんですか?

「そうですね。もちろん、タンザニアの村の人達が環境のことを考えないわけではないんですが、やはり、ほとんどの人というのが日々の生活に手一杯の状況で、木を植えて育てるっていうところまでなかなか考えが回らない、あるいは、手が付けられない状況なんですね。そういう中で既に植林に取り組んで、しかもある程度長く取り組んでいたというのは、なかなか珍しいことだと思います」

将来、キリマンジャロ・コーヒーがなくなってしまう!?

●番組のゲストの方ともお話をするんですが、ボランティア活動とか、海外での活動の一番難しいところって、私達が手を貸したり、寄付をしたりするじゃないですか。驕った言い方をすると、私達がやってあげてしまって、そのまま「みんなできたよ! よかったね。使ってね!」って言って帰ってきて、何年か経つとそのものがダメになっていたりして、結局は善意の押し付けのようになってしまいがちじゃないですか。でも、ポレポレクラブのように現地の人々がやっていることをバックアップするっていうのはすごく大切なことだし、これが本来あるべき姿なのかなぁって思いました。

「そうですね。植林に関しても、お金や資材をこちらからたくさん導入して、村の人達に『やりましょう!』と言って、そのときは、もしかしたら短い期間に大きな成果を出せるかもしれないんですが、結局、私達が未来永劫支援しますよっていう約束はできないわけですし、それがなくなったときに結局また消費が始まって、長い目で見たら元の森がない状況に戻ってしまうんですね。そういう意味では、村の人達がやりたい植林活動を、自分達の力だけでやっていけるようにするための協力のあり方っていうのは大事だと思います。ちょっと変な例えかもしれませんけど、私達は食べ物のスパイスみたいな存在であればいいなと思っているんですね。スパイスっていうのはその食べ物の旨味をより引き出したり、強調したりっていうもので、主役はその食べ物なんですね。食べ物は食べ物として主役であり続けることができますけど、スパイスはスパイスだけでは何もできないですから、そう自覚して関わっていくっていうのはものすごく大事だと思います」

●スパイスとして活動に関わるタンザニア・ポレポレクラブとしては、テマ村をはじめとした植林活動の中でどういうポジショニングをとっているんですか?

「活動を始めた頃は、例えば、キリマンジャロの山の中であれば、そこの雨量や土壌に合った木を植えるのがいいだろうと私達が自然に考えて、彼らに『この木を植えたらどう?』っていうことで入るんですが、初めの頃は彼らがそれを全然理解しないんですね。『そんな木はいらない。俺達が植えたいのはこういう木なんだ』と言うわけですよ。例えば、果樹であったりするんですが、既に森林がなくなって荒れてしまったところですから、オレンジを植えたいといっても根付かないんですね。ですから、こちらは『それは無理だ』って話をしますし、彼らは『そんな木はいやだ』って言いますし、なぜ相手がそう言っているかというのが、お互い分からないという状態が続いたんですね。でも、何年も活動を続けていくうちに、彼らは『環境も大事だけど、自分たちの生活も大事なんだ。なんとか自分達の生活をよくしていけるような木も植えていきたい』って考えているということが、社会的背景や彼らの文化や生活の背景を見ていくうちに理解できたんですね。理解できるまではお互いに何を言っても平行線なんですよ。なぜ、相手がそういうことを言っているのかも分からない」

●私なんかはキリマンジャロって聞いただけで、コーヒーの香りがしてきて、今すぐ飲みたくなってしまうんですけど(笑)、コーヒーの木とかそういうものはどうなっているんですか?

「今から7、8年くらい前までは、どなたでも知っているキリマンジャロ・コーヒーの苗木を育てて、村の人達に配布したりしていたんですが、実は今、このコーヒーの木を植えようという村人はほとんどいないんですね。しかも、キリマンジャロ・コーヒーはあと20年くらいすると、この世界からなくなるとすら言われているんです」

●えっ!? なぜなんですか?

「みなさん驚かれると思うんですが、私達にとってキリマンジャロ・コーヒーって高級ブランドですよね。飲もうと思ってもなかなか手が出ない。ところが、生産している村の人たちには、ほとんどお金が落ちていないんですね。しかもここ数年、なけなしの収入であるコーヒーの値段が、世界中で極端に落ちてしまいまして、村の人達が栽培放棄しているんですよ。私達が入っているテマ村でも、はじめはコーヒー畑が荒れてきたなぁと思って見ていたら、今度はコーヒーの木がないんですよ。みんな切っちゃうから、探さないとないんですよ」

●キリマンジャロ・コーヒーが幻のコーヒーになりつつあるんですね!

「そうですね。本当にそう言ってもいい状況になっていると思います」

●これは是非、復活させてもらいたいですよね。

「私達も、なにせキリマンジャロの村の人達にとっての収入源というのは、ほとんどがキリマンジャロ・コーヒーによるもので、それに頼って生活してきたんですね。で、『やっていられないから、やめてしまえ!』というのはいいんですが、それは収入がなくなるっていうことでもあるんです。現実的に村の中で起きていることは、例えば学費が払えなくて子供が学校に行けなくなる。それから、病気になってもお医者さんに行けなくなるわけですよ。そういう状況は決していい状況ではありませんので、私たちも何とかキリマンジャロ・コーヒーを復活させたいということで、今、化学農薬とか化学肥料に頼らなくても、いい品質のキリマンジャロ・コーヒーが採れるような苗木を、なんとか村の中で増やせるように、そういう取り組みもしています」

「森は命」がテーマ

●スワヒリ語で「森は命」ということを、「ミシトゥ・ニ・ウハイ」と言うそうなんですが、この言葉がタンザニア・ポレポレクラブの藤沢さんの名刺にも書かれています。これがタンザニア・ポレポレクラブのモットーというか、テーマなんですか?

「そうです。もともと村の人達が自分達の周りからどんどん木がなくなっていく中で、僕たちが『森が大事だ』って言うのは地球環境のためのような捉え方をするんですが、彼らにとっては地球環境のためである前に、自分達の生活そのもの、命そのものなんですね。キリマンジャロでも森がなくなっていくことによって、雨量がこの100年間の間に30パーセントくらい減っているんですね。で、雨が少なくなっていけば、自分達が使っていた泉がどんどん涸れていってしまうんです。で、泉が涸れれば飲み水がなくなります。家畜が育てられない。作物が育たなくなる。もちろんコーヒーだって育たなくなってくるわけですね。まさしく、『ミシトゥ・ニ・ウハイ』、『森は命』です。私達と村の人達はお互いに『ミシトゥ・ニ・ウハイ』を合言葉に鼓舞しあいながら植林活動に取り組んでいます」

●藤沢さんは実際に現地でそういう植林活動をしながら、「森は命」だって実感されることも多いと思うんですけど、具体的にどういったときにそう実感しますか?

「私がキリマンジャロであれ、タンザニアのその他の村であれ、入ったときに、森がなくなっていくことによって、水がだんだんなくなってくるんですね。で、ある村に入っているときに、地面をただ掘っただけの井戸があって、そこにしか水がないわけですね。で、そこをのぞいてみると茶色く濁っているわけですよ。ミルクが入ったコーヒーのような色なんですが、それを飲み水に使ったり、調理に使ったりせざるを得ないんですね。しかも、その水には塩が混ざってしまっていて、顔を洗うと目が痛いんですよ。で、ご飯を炊くとすでに塩味がついている。それしか水がないわけですから、使わざるを得ないんですね。村の人達に聞くと、『昔、雨が降っていた頃はもっときれいな水がいくらでも手に入ったんだけど、今はこれしかないからこれを使わざるを得ないんだ』って言うんですね。そういう状況を見ていると、雨をもたらしてくれる森の大切さ、お水の大切さっていうのがひしひしと伝わってきますね」

ゆっくりゆっくり、でも確実に!

藤沢俊介さん

●タンザニア、キリマンジャロのテマ村での植林活動を中心に活動なさっているわけですが、タンザニア・ポレポレクラブではワーク・キャンプといって、私達一般の人達も参加して現地でお手伝いすることもできるそうですね。

「はい。毎年、現地の大雨季の直前にあたる2月中旬から3月初旬の、大体3週間くらいの日程なんですが、キリマンジャロで植林活動にずっと取り組んできたテマ村の人達と一緒に、私たちも植林活動に参加させてもらうっていうプログラムなんですが、実際に私達も村の中に入って、村の一軒家を借りて、そこで寝袋に雑魚寝スタイルで、自炊生活を送りながら植林活動に取り組むというプログラムになります」

●ワーク・キャンプは2月ということなので、また年末にでも皆さんにご紹介したいと思いますが、これは誰でも参加できるんですか?

「はい。どなたでも参加できます。よく体力の問題とか、語学力のことを心配されて、こちらにお問い合わせいただくことがあるんですが、年齢的には今まで80歳の方まで参加されて、若い人より全然元気に穴掘りをやっていたりとか、語学に関しても『身振り手振りに、歌あり踊りありで私は行きます!』っていう人のほうが全然早く村の人と仲良くなれたりするんですね。ですから、全然心配ないですよ。そのくらいの気持ちでいたほうが仲良くなれますので、その辺は気に留めることはないと思います」

●タンザニア・ポレポレクラブをスタートさせてから結構経っていますよね。

「そうですね。10年になりますね」

●その間に起こった変化で、一番気になる変化ってなんですか?

「植林に関しましては、全ての場所ではないんですが、うまく木が根付いてくれたところでは、すでに樹高が15メートルくらいになっていまして、もう森のようになっているんですね。本当に涼やかな木陰を山肌に落としていて、村の人達がやってきたことなんですが『よくやってきたよなぁ』っていう感慨はありますし、そういう結果が出ることによって村の人達がやればできるっていう自信をつけてくるんですね。そういう彼らを見るのが嬉しいですね。人って色々な可能性を持っているんだなっていうことを彼らから教わりましたね。彼らからは毎回学ぶことが多いんですけど、そういう変化が見られるのはすごく楽しいし、すごく嬉しいですね」

●状況は確実にいい方向へ向かっているんですね。

「はい。課題山積ですが、タンザニアの未来はあると思っています。本当に素晴らしい人がいる素晴らしい国だと思っています」

●タンザニア・ポレポレクラブはこれからも植林活動を中心に活動を続けられると思うんですけど、タンザニアだけではなく、アフリカ中に「やればできる」という意識が広がっていくといいですね。

「そうですね。アフリカはアフリカで頑張ればいいと思いますし、私がタンザニアの人達と一緒に色々な活動を始めてみて、逆に教わったのは『で、お前は日本で何をやっているの?』っていうことだと思うんです。彼らは『俺達は自分達の周りでどんどん木がなくなっちゃって、このままじゃまずそうだから木を植えるべって言ってやっているんだ。で、お前は?』って、彼らは言いもしないし、思ってもいないとは思うんですが、僕は彼らを見て、そう問われているような気がしてしょうがないんですね。だから、国際協力っていうと、ものすごくおおごとになってしまうんですが、僕自身は『国際』を頭からとって、『協力』、お互いに力を合わせることだと考えています。最も根源的なところはそこだと思いますし、ポレポレクラブもアフリカでの活動はもちろん、村の人から『おい、お前は何をやっているんだい?』って言われたときの答えを何とかしなきゃなっていうことで(笑)、仲間と一緒に畑で有機で野菜を栽培してみたり、そこから日本の自然について考えたり学んだり、そんなことをやっています。日本のみなさんも国際って大きく考える必要は全くないと思いますので、自分たちができる身近なことに対して、具体的に一歩を踏み出すっていうことが大事だと思うんですね。それを、タンザニアの人達は教えてくれているなって思います」

●「Pole Pole but Sure!(スワヒリ語で『ゆっくりゆっくり、でも確実に!』)」ですね?

「ええ、そうですね。スワヒリ語でポレポレってとてもよく使われる、タンザニアの人たちにとってものすごく身近な言葉なんですが、ゆっくりゆっくりっていう意味で、とても大切なことだと思うんですね。ゆっくりゆっくりでも確実にやれば変わっていくっていうことだと思いますので、『ミシトゥ・ニ・ウハイ』と同じくらい、ポレポレクラブでは、『Pole Pole but Sure!』っていうのを大事にしています」

●また今後も現地からのリポートとか、おいしいキリマンジャロ・コーヒーも期待しています!(笑)

「今、村の人達が頑張ってとってもおいしいコーヒーを作っていますので、是非、お持ちします」

●楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました。


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■NGOタンザニア・ポレポレクラブ情報

 東アフリカ・タンザニアで村人とともに植林活動に取り組んでいる市民団体タンザニア・ポレポレクラブでは、随時、会員を募集しています。会員になると、年4回ニュースレターが送られるほか、キリマンジャロ・コーヒーなどの物品が2割から4割、安く買えるそうです。
 年会費:正会員1万円、賛助会員5,000円

 また、現地でのワーク・キャンプほか、植林活動に役立てるための国内での活動として、使用済みテレフォン・カードや使用済み切手、書き損じのハガキなども集めています。ちなみに、書き損じのハガキ1枚で3本の苗木、使用済み切手1キロで50本の木が買えるそうです。他にも自宅で眠っている本も役立てられるということなので、皆さんもぜひご協力下さい。

・NGOタンザニア・ポレポレクラブのHPhttp://polepoleclub.ld.infoseek.co.jp/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. AFRICA / TOTO

M2. U・LI・LA・LU / POI DOG PONDERING

M3. SOWING THE SEEDS OF LOVE / TEARS FOR FEARS

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M4. AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH / MARVIN GAYE & TAMMI TERRELL

M5. STILL WATER / DANIEL LANOIS

M6. IT WILL BE A GOOD DAY (THE RIVER) / YES

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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