2007年8月19日

「ゴミじゃない鳴らせば楽器」
〜廃品打楽器協会会長・山口ともさんを迎えて〜

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは山口ともさんです。
山口ともさん

 日本廃品打楽器協会の会長、打楽器奏者の山口ともさんをお迎えし、廃品を使って楽器を作るワークショップのことなどうかがうほか、廃品楽器の魅力についてうかがいます。

誰でも入れる
日本廃品打楽器協会!

●日本廃品打楽器協会っていうのは、どういう団体なんですか?

「どういうって、聞いたまんまなんですけど(笑)、日夜、散歩や買い物をして街を歩いているときに落ちているゴミを拾ったり、自宅にある使わなくなったものを利用して、楽器を作ってみようじゃないかという団体でございます」

●どこからそういう発想が生まれたんですか?

「何でも楽器になっちゃうという目線からそういうグループを作って、団体ではあるんですけど、結局、私1人しかおりませんので(笑)、やりたいっていう人がいれば是非、声をかけてくだされば、どなたでもすぐなれるというわけですね」

●協会の会員になれるんですね(笑)。実は今日、スタジオにいくつか廃品楽器を持ってきていただいているので、どんな音なのか聞かせていただけますか?

(廃品楽器を演奏する山口さん)

●いやぁ、目をつぶって聞いていると、廃品から生まれる音だとは思えないですね! リスナーの方は今のスタジオの中の雰囲気が想像できないと思います。

「そうですよね」

●フリントストーンのホームページに楽器の写真もアップしますので、是非、見ていただきたいと思います。1つずつ紹介していただけますか?

「一番最初に鳴っていたへんちょこりんな音っていうのが、バイオリンの弓で、ある楽器を擦った音なんですね。その擦った音が今の音なんですけど、叩くとチーンって音がします」

●南無阿弥陀仏〜ってやつですね(笑)。

「大体お家に1つはあるリンという楽器です。そのチーンってやつをバイオリンの弓で擦ると、あのような神秘的な音になるんですね」

●しかも、山口さんのリンは下にフェザーと傘の柄がついているので、ルックス的にかなりかわいい、立派な楽器ですよね。

「これは売れますね」

●売れますね!

「売れません!(笑) 誰も買わないと思います(笑)」

●次にいっていただきましょう(笑)。

「ガラス琴」と「鉄琴」
木の箱の上に、スポンジ状のクッションをかませて、
ガラスを置いた「ガラス琴」(左)。
各種パイプや金属棒を切って並べた「鉄琴」(右)。

「これは何かというとガラス琴です。ガラス琴っていうのは、木琴とか鉄琴とか色々ありますけど、ガラス琴です。これは幅が8センチくらいのガラスの板でございます。クルクルってハンドルを回すとブラインドのように開く、ルーバーガラスというお風呂場、洗面所に多く使われるガラスの1枚ですね。その長さが色々ありまして、それを日本酒が入っていた桐の箱でしょうかね、その箱の上に扉用スポンジ・テープ、これは廃品ではありません。100円ショップとかでも売っているので買ってください(笑)。箱とガラスの接点のところにスポンジの役目として置くわけですね。で、そうすると鳴るわけなんですけど、ガラスは持って鳴らすと音が響きません。宙に浮かせると、浮いている間だけ音が響くんですけど、ずっとこうやって演奏しているわけにもいかないので、この箱の上に載せて叩くと響くわけですね。この箱の中に音が響くわけですね。
 その隣にいきますと、風が竹の楽器を鳴らしているような音がしますが、これは押入れの中で洋服のハンガーをかけるパイプでございますね」

●スチール製のつっぱり棒ですね。

「そうです。それが言いたかったんです(笑)。それがいくつかの長さに切ってあって、9本並んでおりますね」

●パイプ同士をくっつけているからこういう鈍い音になるわけですね。

「これを放すとこんな澄んだ音になりますね」(パイプを叩く山口さん)

●うわぁ、楽しい!

「くっつけるとこのようなやや鈍い音なんですね。そういった楽器でございます。これが私の鉄琴でございます(笑)。
 あと、このチャラチャラいっていたのがビール瓶のふたチャイムです」

「ビンキャップ・チャイム」
ビール瓶のフタを焼いて、内側のビニールを取り除き、
ぺしゃんこにしたもの。

●あ、ビール瓶のふたなんですか!

「ええ。これは、ビンキャップ・チャイムといいます」

●一見、銭形平次の銭をガーッとひもに通しているように見えました。でも、廃品ですもんね。

「これも、ビール瓶の栓をポンっと抜くと中にビニールのパッキンがついています。あれがついているとこういう音がしないので、1回火で焼くんですね。そうすると、地球上にはダイオキシンがいっぱい出てしまって、あまり環境に優しくないんですけど、この音を得るためには止むを得ないかなというところでございますね。ふたを叩いて平らにして、穴を開けてひもでつるしてあるというものです」

●ネックレスにしてもかわいいですね。

「首のあたりが血だらけになっちゃうんじゃないですか(笑)」

●あ、そっか!(笑)

「宇宙の音」
宇宙の音を出す優れ物。

「最後にご説明するのは、この不思議な音なんですけど、これは私が12年前に宇宙に行ってきたときに、この音が上のほうでしていたので、真似して作ってみました(笑)。これはどういうものかというと、糸電話を想像していただいて、糸電話っていうのは両側に紙コップがついていますけど、それが私は直径が15センチくらいの業務用のトマトの水煮の缶を使っています。その真ん中の糸の代わりにバネがついているわけですね。そのバネっていうのが直径2センチくらいで長さが80センチくらいのものでございます。テンションかけていますので、長さが120センチくらいになっていますけど、それを叩くとこのような宇宙の音になるんですね」

●不思議ー!

「どうしてこのようなものを思いついたかというと、昔はスプリング・リバーブっていう、カラオケ屋さんなんかに行くと、エコーっていうつまみがあるじゃないですか。あれは電気処理をして、お風呂場で歌っているように声が響くんですけど、これはトマト缶のところで叫ぶと、カラオケのリバーブのように響くんですね」

(トマト缶に向かって山口さんが叫ぶと、声が響く)

●みなさん、これは決してエンジニアの方がスタジオの向こうで処理しているわけではありません。何もいじってないです。

「そうですね。今のはバネの響きだけで、声がこんなふうになってしまうんですね」

●しかも、その缶をつるすのにハンガーを使っているのはさすが廃品打楽器演奏家ですね!(笑) でも、これをこうするとこうなるだろうって・・・。

「やってみないと分からないんですよ」

●じゃあ、本当に試行錯誤なんですね。何かインスパイアされたら、とりあえず作ってみるっていう感じなんですね。

「そうですね。あとは大体、従来ある楽器の構造を少し知っていると、その響かせ方っていうのが分かってくるわけですね。ちょっと壊したりして、中を見て、そういうところからも大分ヒントを得ていますね。だから、街を歩いていても色々な素材のものが落ちていますよね。それを見ただけで頭の中で、『大体こういう音がするな』っていう想像はできますね。なので、それを拾い集めてきておいて、ストックして、色々なものと組み合わせて、楽器を作っているんですね」

宇宙の音とは!?

山口ともさん

●今までに何種類くらいの廃品楽器を作っていらっしゃるんですか?

「小さいのまで数えると100個以上、200くらいあるかもしれませんね」

●通常、打楽器奏者とかミュージシャンっていうと、家にスタジオっぽいところがあってっていうイメージがあるんですけど、山口さんは廃品を使ってこういうものを作っているっていうことを考えると、DIY製品もたくさんあるのかなって思ったんですが(笑)、実際はどうですか?

「いっぱいありますよー(笑)。ボール盤とかグラインダーとかね(笑)」

●ミュージシャンのお家とは思えないものがあるんですね(笑)。

「物を作るのが好きなんですよ。だから、家具を作ったり、今、自分がいる事務所も内装は全部自分で作ったんです。オフィスの机から、何から何まで」

●それも叩いていい音が出るかチェックしながらなんですか?(笑)

「それはあまりなかったけど(笑)、みんな廃材で、引き出しとか拾ってきて事務所に合うように白と赤のペンキで塗ったりして、統一感をはかって、インテリアとしていいかなと。色を塗ると一体感が出てくるので、そういうのも面白くてやっていますね。そんなことばかりしています(笑)」

●試行錯誤で作っている廃品の楽器なんですけど、廃品を拾ったときに「こういう音がするな」って思い通りに仕上がることはどのくらいあるんですか?

「割合からいったら、60〜70パーセントは思い通りにいっていますね」

●逆に一番の失敗作っていうか、これは楽器にはならないって思ったものってあるんですか?

「失敗作というか、私はあまり失敗とは思わないんですけど、全然想像と違った音が出る場合もありますよね」

●例えばどんな感じですか?

「紙コップの中にビール瓶のふたと鈴とかボタンとか細かいものを入れて、振ってみたらシェイカーっぽくなるかなぁって思ったら、馬の歩く音がしたんですよね(笑)。『あれっ!? これってシェイカーじゃなくて馬じゃん!』って(笑)。そういう風にやってみないと分からないところが、一番面白いところでもありますね」

●今、夏休みですから工作や自由研究などにもいいですね。

「そうですね。いくらでも音は転がっていますし、多分、地球上にある全てのものには音があるんですよ。空気があるから音が伝わってくるわけじゃないですか。さっき宇宙に行ったときに上でああいう音がしたって言ったんですけど、今年、お台場にある科学未来館のプラネタリウムで曲をやらせてもらったんですね。1年間上映されています。そのときに東京工業大学の先生に『宇宙ではどんな音がしているんですか?』って質問を投げかけたら、『空気がないから音はしてませんよ』って言われて、『あ、そっか!』って気がついたんですけどね(笑)。そりゃ、もちろんなんですけど・・・(笑)」

●科学的にはそうですけど(笑)、イメージとしてはさっきのトマト缶のボヨヨーンって音がしそうですよね。

「どうしても、ああいう音が宇宙の音じゃないかなと思うわけでして」

●少なくとも地球人としては、ああいう音が聞こえてほしいですよね。

「はい」

廃品楽器には音楽の原点のような楽しさがある

「スティックセット」
打楽器奏者の商売道具(?)。各種揃ったスティックやバチ。

●廃品を集めてこういう楽器を作るときに、今すぐは作らなくても、「あ、これ、どうにかなりそうだな」と思って拾ってきちゃうというパターンも結構あるんじゃないですか?

「そればっかりですね(笑)」

●山口さんにとっては宝の山のように楽器の材料が転がっているんじゃないですか?

「そうとも言いますね。でも、やっぱりその職種にならないとその現場にいけないっていうのがあるじゃないですか。そういうところに行きたくなっちゃいますね。普通に落ちているものじゃ飽きちゃったかなみたいな(笑)」

●だんだんマニアックなところにまで興味が向いているんですね(笑)。

「そうですね。でも、普通にあるものをこうやってきれいな音の出る楽器に変えることによって、音楽っていうのはちゃんと既製の楽器を買って、きちっとレッスンしてやらなくちゃ音楽ができないんだなって概念を置いておいて、もっと簡単に楽しめる楽器としてこういうものを提供していきたいなと思っているんです」

●本当に音を楽しむ音楽っていう感じですね。

「本当にそう思います。決してゴミだから汚い音とか、臭いとか、触りたくないなんていうイメージは絶対にあってはいけないことなので、まず拾ってきてはそのものをきれいに磨いて、触れる状態にしてから色んな風に加工して、いい音を出していってるわけですね。昔、音楽がこれだけ世の中に広まっていないときっていうのは、お酒を飲みながら楽しくなって、そこにある器を叩いて、それに合わせて歌って踊ってたっていうのが音楽の発祥のような気がしているんですね。そういう原点の部分で、もっと単純なものでも楽しむことができるよっていうことを、忘れ去られてしまっているのが寂しいなって思うんですよ。こういうのを作っていて『すごくいい音だなぁ』って思うし、例えば、このガラス琴とかを叩いていると、気がついたら2時間くらい経っていたりするので(笑)、飽きが来ないっていうか、すごく入り込めちゃうんですね。そういう色々なものがあればあるほど、楽しみが増えると思うので、皆さんも是非、家にあるいらないもので楽器を作ってみたらいかがかなと思います」

●山口さんはDVDを発売する予定だということなんですけど、どういったDVDなんですか?

「3月に私、廃品打楽器のTicobo(ティコボ)っていう3人組のグループをやっているんですけど、私は東京の目黒区に住んでいまして、そこでごみ減量課というところのイベントのお仕事を頂いて、Ticoboで出させてもらったんですね。で、そこで、演奏させてもらったら『面白いことをやっていらっしゃいますね』って言われて、私、某子供番組に出ていたもので、子供が非常に多く集まってくれるし、今後を担っていく子供達にメッセージとして、曲を作ってくれないかっていわれて、『ごみごみ あ!ミーゴ』っていう曲を作ったんですね」

●『ごみごみ あ!ミーゴ』!?

「はい。自分で廃品で作ったドラムと、ベースは水道管でボンボンボンって叩いたっていう2つのバッキングだけで、あとは私が歌っている音楽なんです。ごみ減量課の人たちがすごく面白がってくれて、『こんなに面白いならDVDにしましょうよ』っていうので、DVDになったんですよ(笑)」

●この「ごみごみ あ!ミーゴ」はライヴで歌ったりとかするんですか?

「そうですね・・・(笑)、できればやりたいんですけど(笑)」

●(笑)。実は、今月の26日に舞浜のクラブ・イクスピアリでも、「ともとものガラクタ音楽会」というのが行なわれるそうですが、これはイベントっぽい感じになるんですか?

「私1人のパフォーマンスなんですけど、そのときにちょっと早めに来ていただいて、ロビーで私が演奏するときに一緒に使うためのペットボトルのシェイカー、カシャカシャって呼んでいるんですけど、それをみんなで作ってから、中に入ってきてみんなで演奏しようじゃないかっていうイベントです」

●この日のイクスピアリはカシャカシャだらけですね!(笑)

「カシャカシャの嵐ですね(笑)。『人の話聞けよ!』みたいな(笑)」

●(笑)。これからも演奏会を含めて色々な予定が入っていらっしゃるんですね。

「そうですね。結構あちこちに顔を出しています。ワークショップをやったりして、子供達を洗脳しております(笑)」

山口ともさん

●(笑)。今、作っていらっしゃる最新の楽器っていうのはあるんですか?

「今、作っているのは、ちょうどDVDを発売するので、制作が終わったんですけど、楽器というよりも『ごみごみ あ!ミーゴ』のDVDの中で着ているコスチュームを一番最近に作りました。一斗缶を切り刻んで、ロボットを作りました」

●私も早く見たいです!

「これは見たほうがいいと思いますよ。もう撮影は終わっているんですけど、目黒区の現役の清掃局員さんに踊ってもらっています(笑)」

●それもまた見ものです!(笑) ライヴの方も楽しみにしています。DVDが出たらお知らせください。今日はどうもありがとうございました。


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■日本廃品打楽器協会会長/打楽器奏者、山口ともさん情報

ライヴ『ともとものガラクタ音楽会』
 「ゴミじゃない、鳴らせば楽器」というサブタイトルが付けられた今回のライヴは、ペットボトルを使って楽器作りも行なうという、お子さんも参加できる夏休み企画。ぜひご家族でお出かけ下さい。

  • 日時:8月26日(日)
       開場:午後1時30分〜、楽器作り:午後2時〜、ライヴ:午後3時〜
  • 会場:クラブ・イクスピアリ(JR京葉線・舞浜駅すぐ)
  • 料金:小学生以下1,300円、中学生以上2,625円
  • 問い合わせ/予約:クラブ・イクスピアリ
『ともともと遊ぼう! ガラクタえんそう会』

DVD&グッズ販売中!
 山口ともさんが暮らす東京目黒区のゴミを歌った“ごみごみ あ!ミーゴ”の映像と曲が収録されているDVDは、区制作のものはすでに配布されています。また山口さんも現在DVDを制作中。出来上がったらご紹介しますので、お楽しみに!
 尚、DVD付き書籍『ともともと遊ぼう! ガラクタえんそう会』はすでに販売されています。また、他にも絵がとてもかわいい「ともちゃんシール」や「ともちゃんマグカップ」などのオリジナルグッズも山口さんのオフィシャル・サイトより販売中!

・山口ともさんオフィシャル・サイト
 http://www.terra.dti.ne.jp/~tomoyama/main.html

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. GET RHYTHM / RY COODER

M2. TAKE A LITTLE RHYTHM / ALI THOMSON

M3. ACROSS THE UNIVERSE / THE BEATLES

M4. ごみごみ あ!ミーゴ / Ticobo

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M5. 純愛のテーマ / ウォン・ウィンツァン

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M6. SUMMER, HIGHLAND FALLS / BILLY JOEL

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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