2007年9月23日

オフィス町内会の事務局代表・半谷栄寿さんに聞く
新たな活動「森の町内会」

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは半谷栄寿さんです。
半谷栄寿さん

 ザ・フリントストーンが放送800回目を迎えました。その800回目にNPOやNGOを応援するシリーズ「エコシップ応援団」が復活! 環境NPO・オフィス町内会の事務局代表・半谷栄寿(はんがい・えいじゅ)さんをおよそ15年ぶりにお迎えし、新しい活動・森の町内会のことなどうかがいます。

リサイクルをする上で再生紙を使うことが重要

●大変ご無沙汰しております。

「確か、14年ぶりですか?」

●そうですね。14年と8ヶ月ぶりになりますね。

「お互いに元気だったなぁと思います。フリントストーンも800回だそうですね」

●そうなんですよ。ありがとうございます。

「私共、今1100社の会員企業にまで増えました」

●素晴らしい!

「ありがとうございます」

●1993年に出演していただいたときは、「オフィス町内会とは何ぞや!?」というところからお話をうかがったのですが、あれから14年も経ったということで、改めて簡単にオフィス町内会についてご説明していただけますか?

「はい。今、どこの企業でも紙ごみはゴミにせずにリサイクルに回すように、古紙の分別ボックスに分別するって当たり前になりました。でも、オフィス町内会を発足させた16〜17年前は、残念ながら私達企業人はそれぞれの企業の仕事を熱心にがんばって、それで社会貢献をしようと当然のように頑張っていましたけど、自分のオフィスで使った紙がゴミにならないようにというところまでは気が回っていなかったんですね。それで、東京湾の埋立地が私達のオフィスから出る紙ごみで満杯になるっていうことが心配されていた。または、そういう紙を作るために、熱帯雨林を伐採してしまうというようなことが心配されていた時代ですよね。隣同士の企業が助け合って、使わなくなった紙の共同回収をやろうと。やっぱり最初に習慣をつけるって大変ですから。足元にあったゴミ箱にポイッと紙を捨てていた私達企業に働く者が何メートルか歩いていって、分別ボックスに分別するわけですね。なぜ、分別するんだとか、どういう分別ボックスだとみんなに協力してもらえるかとか、どんな回収会社さんと連携すれば共同で回収してコストも下げられるのか。なにしろ、助け合って新しい習慣をつけようっていう古紙の共同回収の仕組みがオフィス町内会ですね」

●それが、今から16年前の1991年からスタートしたんですよね。

「そうなりますね」

●今でこそ当たり前になっていますけど、16年前なんてそんなこと一切考えていなかったですもんね。

「私の息子が今、大学生なんですけど、小学校4年生の時にパパがやっている分別ボックスのことが教育テレビで取り上げられて、社会科の勉強の時間に父親の私を映像で見て恥ずかしい思いをしたって、学校から帰って言いに来たんですね。誇らしく思ってほしかったんですけどね(笑)。そんな教材になるくらい、まだまだ社会には定着していない新しい取り組みだったんですね。今やどのコンビニの前にもちゃんと分別ボックスがあるし、駅の構内にも分別ボックスがありますよね。そんな習慣づけを何とかお役に立てるように、最初にやった団体、または仕組みというのがオフィス町内会だったと思います」

●そして、そんなオフィス町内会では集めるだけではなく、回収した古紙でトイレットペーパーを作っているそうですね。

「今でも私達が分別して回収した古紙からできたトイレットペーパーは、製品になって色々なところで使っていただいています。そのトイレットペーパーには『こだわりは白さよりもリサイクル』っていうメッセージを入れているんですよ。真っ白いTシャツって好きですよね。でも、ちょっとくすんだTシャツもカッコいいですよね。再生紙ってほんの少しだけ白さが欠けているんですね。でも実は、紙の機能には何の問題もないんです。私達が過度な白さにこだわらずに、適度な白さでもいいよっていうふうに習慣を変えますと、再生紙ってもっともっと使えるんですよ。で、私達はコピー用紙も再生紙にしようって活動を十数年続けているんですが、13年ほど前、その活動を始めたときにコピー用紙で再生紙の使用量っていうのは、全国的に20パーセントくらいしか普及していなかったんです。ところが今、55パーセントくらいのコピー用紙が再生紙に変わっているんですよ。そういう意味ではこの十数年間で企業も随分変わりましたね。リサイクル型の考えも具体的な行動も伴うようになってきた。リサイクル型の社会になってきたということを表す証明が、今の再生紙の使用の拡大ですよね。
 再生紙をみんなが使うようになると、その原料である古紙が必要になりますから。市場原理っていう言葉がありますけど、自然に世の中は経済的に古紙を集める業界が活発になって、古紙を集められるんです。ところが古紙を集める側だけ集めて頑張っても、再生紙を私達が使わなければ、流れが詰まってしまいますよね。そういう意味では、普段の生活の中で再生紙を使うというのは、リサイクルを進める上でとても大切なことですね」

平成6年に内閣総理大臣賞を受賞!

●オフィス町内会がスタートしたのが1991年。その活動がどんどん広まって、今では1000社以上の企業が会員となっていらっしゃるそうなんですが、平成6年には内閣総理大臣賞まで受賞されました。この受賞の理由というのが、オフィス町内会がやっているシステムが素晴らしいということでの受賞だそうですね。

「そうなんです。私達は継続するための経済性にこだわりを持っているんですよ。私達はノン・プロフィットの集まりですから、決して利益を求めてはいないんです。ただし、経済性がないと継続できないじゃないですか。やっぱり予算がなければどんないいことも繋がっていかないですよね。で、オフィス町内会には3つの経済性があるんです。それが総理大臣賞を受賞した所以なんですが、1つは1100社の会員企業が今、6000トンの古紙を回収しているんですけど、1キログラムの紙をゴミにしてしまうと、企業の廃棄物にかかる処理コストが28円もかかってしまうんです。ところが、一緒に共同回収しますと、企業の会費は1キログラムあたり16円で済むんですよ。12円もコストが下がるっていうことは、4割以上のコストダウンです。これだったら、非常に経済性があるから、継続しますよね。で、今1キロ当たり16円の会費を頂戴するっていう話をしたんですが、これをどういうふうに有効に活用させていただいているかというと、約10円はパートナーである40社の回収会社さんの回収経費できちっとお払いしています。
 古紙のリサイクルっていうと、古紙を出した側がティッシュペーパーをもらうっていうのが一般的だったんですけど、古紙回収業界っていうのはなかなか厳しい業界でもありまして、トラックを自分で持って運転して、高速代を払って、ガソリン代を払って、古紙を運ぶお仕事なんですよ。で、収入は古紙の問屋さんにお売りするのが収入なんですが、なかなかそれでは経済的に成り立たないっていうことが十数年前に非常に心配されました。だって、私達が分別したって、それを運んでくれるパートナーがいなかったら、リサイクルがまわりませんよね。ですから、オフィス町内会っていうのは、日本で初めて古紙回収会社さんに逆に回収経費をお払いした団体です。そのことによってパートナーが経済的に継続できる。今、2つ経済性を申しましたけど、3つ目の経済性は1100社の会員企業と40社の会員回収会社が毎日のように共同回収しているわけですから、このネットワークをきちっと管理する事務局が必要ですね。今、3人の専従スタッフが頑張ってネットワークを運営しているんですけど、この事務局の経費も実は独立採算でできているんですよ。例えば、特定の企業からの寄付とか、そういうものに頼るのではなくて、1100社の会員さんの広く薄い会費でまかなっているんですね。この3つの経済性が総理大臣賞に繋がったということで、大変嬉しく思ったことを記憶しています」

●そういうしっかりとしたシステムが出来上がっているからこそ、ここまで続いてやってこれたという面もあると思うんですが、そんなオフィス町内会からさらに広がりを持って、新しい活動として森の町内会というものがスタートしているそうですね。

「そうです。志っていう言葉をあえて使いますと、最初、私達は共同回収を始めました。その志がおかげさまで定着した。2つ目の志として、再生紙の啓蒙活動を進めてきた。実は、これはグリーン購入法っていう法律で、再生紙をもっと使おうっていう趣旨の法律なんですけど、白色度70っていう適切な白さの紙を使おうという考え方がグリーン購入法に位置づけられまして、いわば2つ目の志も社会的な仕組みになったわけです。私達がやってきたのは紙のリサイクルなんですけど、もう1つ、地球環境を考えたときに森のリサイクルっていう考え方がありまして、そこで間伐という作業を促進する仕組みをオフィス町内会の3つ目の志として、2年前に考え出したんです」

●その間伐のお話は後ほどゆっくりうかがいたいと思います。

紙代に少し上乗せして森を間伐

●オフィス町内会の新しい活動として、森の町内会というのが2年前にスタートしました。先ほど、間伐というキーワードが出ましたが、詳しく教えていただけますか?

半谷栄寿さん

「実は今、日本の森が荒廃している、森が荒れているっていうことが盛んにいわれるじゃないですか。で、それは私達日本人が日本の森から作られた木材を使わなくなって久しいからなんですね。今、日本の私たちが作る住宅に国産材が使われる比率は3割を切っています。日本の森の4割が人工林といいまして、植林された森なんですね。特にどの木が元気に育つか分かりませんから、植林ってものすごく密度を濃く苗を植えるんですね。ご理解いただけると思うんですけど、どんどん木が大きくなると枝を張りますよね。太陽の光も欲しいですよね。そうなると、10年とか20年に1回、いい意味で間引きをしないと、立派な木にならない。立派な森林にならないんですね。10年単位くらいで3〜4回間伐しなくちゃいけない。でも、誰も最後に日本の木を使ってくれないとすれば、林業のみなさんだって間伐をやろうっていう経済性がありませんよね。ということで、オフィス町内会の16年の経験が何か活きないかって真剣に考えたつもりなんですけど、今回の私達の仕組みはきわめて簡単でして、オフィス町内会がある意味、得意としている紙の分野なんですけど、間伐に必要な若干の経費を、私達が日常的に使う紙に森へのお年玉のような気持ちで、いつもの紙よりもちょっと割高な紙を使いましょうと。ちょうど、年賀状のお年玉つき年賀ハガキみたいにちょっと割高なんですけど、楽しいお年玉がついている。私達はいつも楽しく年賀状を書いて出しますよね。それと同じように私達企業が間伐を促進する経費をほんの少し乗せた紙を使いましょう。そのことによってそのお年玉を森の間伐経費に支援しましょう。これが、森の町内会の仕組みなんですね。極めて簡単です。
 ただし、オフィス町内会と違うのは、オフィス町内会はゴミにするよりも経費が下がりましたよね。企業的にいうと、コストダウン。今回はコストアップですよ。それを多くの企業に受け入れていただけるかどうかっていうのが、私達のチャレンジになります」

●森の町内会を始めてから2年経った今はどんな状況なんですか?

「2年っていうのは準備段階にかけてきた時間でして、本格的に始めたのは今年の6月からです」

●本当の意味で始まったばかりなんですね。

「はい。一方で、もうすでに23社の企業のみなさんがこの活動に参画しています。で、どのくらいコストアップかというと、約10パーセントくらいコストアップなんです。ところが、この10パーセントの負担によって、先ほど言った、経費が出なくて間伐が進まない状況を打破できるんですね。というのも、間伐というのは10年とか20年経った木ですから、一定程度で売れるんです。で、国からの補助金も出るんです。ですから、間伐した木材も売れるし、補助金も出るからできそうですよね。ところが、この金額だけでは、間伐するために山に入っていく道を作ったり、実際に間伐する作業の経費とかまでまわらないんですね。最後に大切なのは、せっかくの間伐木材をそこに切り捨てておくんじゃなくて、ちゃんと運送して、間伐材として利用することが必要なんです。残念ですけど、この経費よりも間伐材の売却代金はほんの少し下回ってしまうんです。それを私達が紙代として負担するお年玉を入れることによって、ちょうど経費と資金が一致するわけです。そうすれば、間伐ができます。
 ということで今、23社の企業のみなさんがすでに100万部以上の印刷物にこの紙を使ってくれています。で、そのことによって今、4ヘクタールの間伐を実施しました。ですから、企業は紙の無駄遣いをしちゃいけないけど、印刷物ってたくさん使いますから、その印刷物の一部に森の町内会の考え方を取り入れていただければ、あと10社集まると、また1ヘクタールの間伐ができる。また10社集まると、また1ヘクタールの間伐ができる。そういう組み合わせを町内会の助け合いのように、企業側も町内会で助け合う。そして、企業と森を管理される私達のパートナーは今回は岩手県の岩泉町というところなんです。この岩泉町の間伐をやっていただくみなさんと助け合う町内会でもあるんですね」

●今、お話をうかがっていると、オフィス町内会で参加している企業の方たちっていうのは、紙が割安になっているわけじゃないですか。では、その割安になった分を、森の町内会でちょっと割高になった紙を使って、例えばパンフレットを作るときにそっちを使うと、ちょうどチャラになるんじゃないですか?(笑)

「グッドアイディアですね!(笑) オフィス町内会で古紙の回収をすることによって、ゴミ代金が下がったっていうのと、じゃあその分だけ間伐の経費を負担しようかって、これから会員企業を説得していきます」

●コピー用紙はオフィス町内会で、パンフレット等々を作る場合は森の町内会でという感じで、ダブル町内会で本当の意味での大きな町内になるといいですね。

「ですから、再生紙を使うのも大切。こうやって間伐を促進するような紙を使うのも大切。間伐材ってバージン・パルプといってもいいし、フレッシュ・パルプでもあるんですね。一方で古紙からできた紙は再生紙じゃないですか。これが、どっちが大切かっていう議論に今、なりそうなんです。どっちが大切か。どっちも大切なんです。ですから、再生紙も適材適所で使おう。そして、間伐を促進するようなフレッシュ・パルプの紙も適材適所で使おう。そのことによって、古紙のリサイクルもまわるし、森のリサイクルもまわっていくんですね。私達はそういう意味では2つのリサイクルを、これからまわすお手伝いをしようと考えています」

最大の目標は森の町内会を100社の結集に

●オフィス町内会もそうですし、森の町内会もそうなんですけど、この番組を聞きながら「うちの会社も参加してみようかな」とか「もうちょっと詳しく聞いてみようかな」って思われている方もいらっしゃると思うんですけど、これはどんな企業さんも参加はできるんですよね?

「企業のみなさん、団体のみなさん、またはNPOのみなさんでも私達と是非、ご一緒に活動していただきたいですね。ホームページも最近新しくしまして、私達としては分かりやすくしたつもりではあるんですけど、ご覧いただけたら嬉しいです」

●この番組のホームぺージからも飛んでいけるようにしますので、是非、両方とものぞいていただきたいなと思います。森の町内会はこの6月、遂に動き出したばかりということなので、まだまだこれから活動が続くと思うんですけど、半谷さんとしての今後の抱負を聞かせていただけますか?

「今、おかげさまで森の町内会は23社なんですけど、なんとか1年以内に100社の結集にしたいんです。私達のシミュレーションでは、100社のみなさんに集まっていただけると、毎月パートナーである岩手県岩泉で1ヘクタールとか2ヘクタールの間伐ができるだけの紙を使っていただける集まりになるんですね。で、そうなりましたら次に、森の町内会っていう仕組みを、別な地域の自治体とか、企業とか製紙メーカーのみなさんに別な場所で使っていただきたいんです。そのことによって日本の森の健全な育成のために色々な地域で貢献できるじゃないですか。私達はNPOですから、そういう意味ではこの仕組みをご自分の町や、ご自分の地域でやってみたいっていう方がいらっしゃったら、そのお手伝いをしようと。そのためにまずは最初のモデルを成功させたい。そのためには100社の企業の集まりにしたい。これが最大の目標です」

●あっという間に集まるんじゃないかと思うんですけど、そうやって間引きされて健康になった森にいつかフリントストーンも半谷さんと一緒に遊びに行きたいなと思います。

「是非! 皆さんに来ていただけるような間伐促進の仕組みにするように頑張ります」

●今日はどうもありがとうございました。

「こちらこそ、十数年ぶりにありがとうございました」

●ありがとうございました。

このほかの半谷栄寿さんのインタビューもご覧ください。
このほかの「エコシップ応援団」シリーズもご覧ください。

このページのトップへ

オフィス町内会のホームページ

 身近なゴミ問題から地球規模の環境問題の解決に貢献するため、企業が共同してオフィス古紙のリサイクルに取り組む環境NPO、オフィス町内会のホームページ。細かい料金システムや、どういう仕組みで成り立っているかなど、図入りで詳しく掲載されています。
 オフィス町内会のHPhttp://www.o-cho.org/

森の町内会のホームページ

 森と企業をつなぎ、間伐を促進する新しい仕組みづくりに取り組む森の町内会のホームページ。活動の詳細などが載っています。
 森の町内会のHPhttp://www.mori-cho.org/

このページのトップへ

オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. (MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52'S

M2. THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY / THE KINKS

M3. US / WILLIAM LYALL

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. WALK IN THE WOODS / AMERICA

M5. PEOPLE GET READY / KENNY RANKIN

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M6. HERE COMES THE SUN / THE BEATLES

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
このページのトップへ

新着情報へ  今週のゲストトークへ  今までのゲストトーク・リストへ  イベント情報へ
今後の放送予定へ  地球の雑学へ  リンク集へ  ジジクリ写真館へ 

番組へのご意見・ご感想をメールでお寄せください。お待ちしています。

Copyright © UNITED PROJECTS LTD. All Rights Reserved.
photos Copyright © 1992-2007 Kenji Kurihara All Rights Reserved.