2007年10月14日

キーワードは『亀は久美子』
NPO法人・宇宙船地球号の事務局長、山本敏晴さんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは山本敏晴さんです。
山本敏晴さん

 NPO法人・宇宙船地球号の事務局長で、お医者さんの山本敏晴さんをお迎えし、発展途上国での医療活動や、持続可能な社会や世界を創るためのプランなどうかがいます。

未来に続く病院を作るのがテーマ

●早速ですが、NPO法人・宇宙船地球号というのはどういう団体なのか簡単にご説明していただけますか?

「一言で言うなら、世界や社会のために何かをやっていただける、もしくはそういったことに興味を持っていただける人を増やすという活動をしております」

●いつくらいに発足されたんですか?

「NPO法人の認証を受けたのが2004年ですので、4年目になります」

●山本さんはそれまでにも海外でボランティア活動をされていたんですよね?

「はい。国際医療教育をやっている大手の団体がいくつかありますので、そのうちの5団体くらいに私、入っておりまして、アフリカとか中東、西アジアのアフガニスタンとか、東南アジアのカンボジアなどに行きまして、医療協力をやっておりました。私のテーマは一貫して、自分が作った病院がその国の未来にずっと残っていって、私が日本に帰ったあとも未来に続いていくということをテーマにやっていたんですけど、1人の医者がどれだけ頑張っても、残念だけど病院が続いていかない。例えば、戦争がある国だと造った病院が壊されちゃう。お金がないと薬を買うお金がないので、病院が続けられない。あと、学校がないし、環境が整っていなかったりするので医者がいない。そうやって色々なことをしないと、世界をよくすることはできないんだなと思いまして、そういった色々なことをする団体、色々なことをしていただく人を増やす団体ということで、宇宙船地球号を創設することになりました」

●壮大なプロジェクトですよね!

「そうですね。あまりに壮大すぎて、自分でも『何でこんな何をやっているか分からないことをやっているのかな』と思ったんですけど(笑)、やっていくうちに具体的な方向性が3つ見えてきまして、1つ目がプロの国際協力師という概念を提唱しておりまして、国際協力の最初の2年くらいはボランティアでやるんですけど、3年目くらいから、ちゃんとした専門性を持ったプロとして、年収500万円以上もらってやれる分野があるんですね。そういったプロの国際協力師になるためには、どんな学歴、経歴、経験が必要なのかというのを紹介するという授業をやっています。
 2つ目が、一般の会社で働いている人が一番多いと思うんですけど、一般の会社で働くときにも、主に環境問題に注意して、自然に優しく、資源を枯渇させないように、どのように商品を作ったらいいか。リサイクルする場合も、実はリサイクルはうまくいかないことの方が多いんですけど、どのようにするのが現段階ではベストなのかを考えながら、商品を作る会社にするということをしています。
 3番目が一番多い一般の皆様、市民である消費者の方々でできる社会貢献や国際協力は何なのかという3つです。国際協力、一般の企業でできること、消費者でできること、それをご紹介する団体を作りたいなという活動をしています」

キャッチ・コピーは「亀は久美子」

●山本さんは写真展や講演会などもやられていて、最近は環境問題に傾倒していらっしゃるそうで、持続可能な社会や世界についてのお話が多いというふうにうかがいました。この持続可能な社会や世界をつくるというのは、今の地球環境のことを考えると切実な問題になっていて、誰もが気になっていると思うんですけど、「私1人に何ができるんだろう?」って思う方もたくさんいると思うんですよ。何をすべきなのか、講演会でどのようにおっしゃっているのか教えていただけますか?

「まず、最初のキッカケから自分ですぐできることとしては、キャッチ・コピーを作っておりまして、ギャグに近いんですけど(笑)、『亀は久美子』というのを提案しております」

●「かめはくみこ」ですか?

「そうです。要するに、すぐできる項目が6つありまして、その6つの頭文字をとったものが『亀は久美子』なんです」

●1つ1つご説明していただけますか?

「『亀は久美子』の『か』は『買い物』の『か』で、みなさん、毎日必ずコンビニやスーパーなどで何らかのものを買っている人が多いと思います。実は一番重要なのは買い物をするときに、余計なものを買わないっていうことなんですね。先ほども話したように、実はリサイクルが現段階では残念なことに、なかなかうまくいっていないんですね。というわけで、ゴミを出さないために一番重要なのは、余計なものを買わず、それでもどうしても必要な場合は、環境によい製品になるように配慮して作られた商品をなるべく買いましょうと。具体的には、石油を減らしてしまうプラスチックやビニールをなるべく使わないもの。リサイクルがほぼ確実にできるもの。例えば、現段階ではアルミ缶はリサイクルできるんですが、ペットボトルのリサイクルに関しては、極めて難しい状況だというのが調べれば分かるようになると思うんですけど、そういった1つ1つの商品をインターネット等で調べて、本当はどれが一番いいんだろうってことを考えながら、買い物をする人になるのが一番いいかなと思っております」

●続いて「め」はなんでしょうか?

「『め』は『目を向けること』になっておりまして、人間、一番まずいのが無関心といいまして、興味を失ってしまっては元も子もありませんので、なるべく環境問題に関わる新聞記事とか、テレビのニュースを見たら、家族やお友達にそういった話をどんどんしていただくと。自分がそういう興味を持ち続ける環境を、自分の周りに作るっていうことが一番重要かなと思いますね。これが2つ目ですね」

●続いては「は」です。

「『は』は先ほどもちょっと出ましたが、『廃棄物』、ゴミのことですね。ゴミを出すときに、現在リサイクルが地方自治体の様々な回収ボックスに入れても、実はそのままゴミとして中国に輸出されていたり、リサイクルすると銘打っておきながら、実は焼却されていたりするケースの方が残念ながら多いんですね。というわけで、本当の意味でのリサイクル、ペットボトルはペットボトルにならないのが現状なんです。そのためには、例えばペットボトルを買ったら、買ってしまったのはしょうがないですから、しばらく自宅で麦茶なんかを大量に作って、買ってしまったペットボトルの容器を最低でも5回くらいは使うとか、できれば10回くらいまで使ってから、やむなく捨てるという風に、同じくゴミを出すにしても、量の問題ですから、その量を減らすというのを心がけるのがいいかもしれません。これが『亀は久美子』の『は』ですね」

●いよいよ「久美子」に突入ですね(笑)。「く」は?

「『く』は『クーラー』と『車』なんですけど、クーラーなどのエアコンの設定温度を夏は控えめにする。冬も控えめにする。車に関しては、もちろんアイドリング・ストップとか、なるべく公共の機関を使うとか、お金があるのであれば、ハイブリッド車のほうがいいのかもしれません。これまた議論がありますけどね。そういったのが『く』になります」

●次は「み」です。

「『み』は『水』です。日本は水が豊かな国なので、まだピンときませんけど、これからそのままで飲める水というのが世界的に大変不足する時代になっていくと思います。実は水をめぐった戦争や内戦というのが、アフリカや中東を中心に、水の奪い合いで戦争が起きているっていうケースも非常に多いんですね。これから、日本もそういった各企業が水をめぐった奪い合いの市場の獲得戦争、商品化することをめぐって色々な利権が絡んでおります。みなさんもこれから水を大切にされたほうがいいと思います」

●自分達の将来のためですもんね。では、「亀は久美子」最後の「こ」を教えてください!

「『こ』は一番しょうもないんですけど(笑)、夜、寝るときに、電源に刺さっている『コンセント』ありますよね。『コンセント』の『こ』です。このコンセントを全部抜いていただきますと、まず家計の節約にもなりまして、電気料金が1パーセントから2パーセント程度、減るはずです。同時に電気が節約されまして、現在、日本の電気を作っているのが、1に石油の火力発電、2にウランの原子力発電なんですけど、どちらも大体40年から70年の間に枯渇するといわれています。そういった資源を守るためにも、電気の節約をするために、寝る前にコンセントを抜きまくると。他の人から見ると一見、異常かもしれませんけど、奥様方に『環境問題に取り組んで!』って言ってもやってくれませんので、『お金も節約になるんですよ、奥さん!』ってことを強調して(笑)、最近、絡めてからやっていただく戦術をとっております」

ツバルは沈まない!?

山本敏晴さん

●山本さんはお医者さんとして、千葉県の病院でお仕事しながら、様々な活動をなさっているわけなんですけど、実は今年の2月から3月にかけて、南太平洋のツバルにも行かれたそうですね。この番組でもツバルのことは以前にも紹介しているので、リスナーの方でご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが、温暖化でツバルという島自体がなくなってしまうといわれている小さな島国ですよね。

「ええ、行きました。今年の2月くらいに行っていました。去年から1年くらいかけてコーディネートしまして、ツバルにある小学校、中学校、高校で大切なものの絵を子供達に描いてもらったんですね。で、200人くらいの子供達が描いたんですが、そのうちの5人くらいの子供が、僕にとって私にとって一番大切なものは、ツバルの島が沈んでしまわないことだって描いてくれたんですね。ツバルが未来もずっと残っていくことが、自分にとって一番大切だって描いてくれた子供達がいました。お金でもなく、他のものでもなく、ツバルが沈まないことだって絵を描いた子がいたんですね。で、そう描いた子の家を訪問してご両親はどう思っているのか。この子の家が沈んでしまうのがどのくらい先なのか。ツバルの政府やNGO、ボランティア団体の方々に話を聞きまして、今、写真の絵本や文章の本、映画など様々なメディアを作成しております」

●私達も色々な形で拝見できるようになるということですね?

「そうですね。少なくとも5種類のメディアでプロジェクトが決まっておりまして、一番最初にできるのが来年の1月22日に小学館から出版される写真の絵本です」

●年明けに次々と見られるようになるんですね。

「はい。1月に写真の絵本で全部ひらがなの、小学生から大人まで読めるもの。2月に映画が東京・広尾のJICA地球広場っていうところでやります。春くらいから写真展が全国で展開しまして、来年末あたりに文章の本っていう一番難しい本が出る予定です。実は、地球温暖化が本当かどうかも含まれる、本当の難しい現状の話を書いております」

●ツバルの問題はやはり地球温暖化が一番大きな原因なんですか?

「キッカケとして紹介する場合にはそう申しております。基本的には二酸化炭素を出したので、温暖化が進み、世界各地にある氷河がとけて、実は北極、南極はあまり関係がないんですが、世界各地にある氷河がとけたり、水が温かくなると熱膨張っていって、温かくなるとどんなものでも膨張するんですね。そのためにツバルが沈む可能性があると。それはなぜかというと、元を正せば日本やアメリカ、中国、ロシアなどが二酸化炭素を出しているせいかもしれないと申し上げております。で、それに伴いまして困っているのが、昔ツバルには井戸があったんですけど、海面が上昇してきたために、井戸に海水が滲入してしまって、水が飲めなくなってしまったんですよ。じゃあ今どうしているかというと、雨水が降るんですけど、屋根に溜まった雨水を大きなタンクに溜めまして、雨水を飲んで暮らしているという状態です。例えば、去年の夏に3週間雨が降らないときがあったんですけど、水が一滴もなくなりまして、トラックなどを使って陸路で水を運ぶということができなかったために、ツバルの人1万人全員が水がなくて亡くなりかけたんですね。という、とんでもない問題も起きています。
 実はツバルの人など、200人以上にインタビューしたんですけど、聞いたらツバルに実際に住んでいる人たちが心配しているのは、ツバルが沈むことよりもゴミの問題なんですね。なぜかというと、ツバルには焼却炉がないんです。一方で日本やアメリカ、オーストラリアやニュージーランドなどから、ビニールやプラスチック、缶などを使った商品が次々に輸入されています。具体的にはビールの空き缶、プラスチックに入ったスナック菓子とか、様々な食べ物、これが入っていた袋のビニールとかが山積みなんです。ツバルは東京都の100分の1にも満たないような狭い国なんですけど、そこにもうゴミが山積みになっていると。というわけで、地域によっては足の踏み場もないようなゴミ捨て場がたくさんあります。
 冗談なんですけど、ツバルは絶対に沈まないっていわれています。なぜかというと、ゴミが山のように溜まっていくので、ゴミだらけで夢の島のようになったツバルは、未来永劫残っていくだろうって地元の人達は、自分達のツバルを皮肉ってそう話していました」

水を大切に!

●以前、この番組でゲストの方が1990年代に「21世紀は水の世紀になる。水にまつわる戦争も起きるし、水がすごく大事な世紀になるよ」っておっしゃったことがあったんですが、今、山本さんのお話をうかがっていて、まさにその通りになっていっているなって感じました。

「そうですね。ツバルから話が飛びますけど、現在一番悲惨な戦争及び、内戦が起こっているのは、アフリカにあるスーダンという国なんですね。世界最大の難民や避難民を輩出した国がスーダンだといわれております。その原因が水なんです。簡単に言いますと、スーダンの中に農業をしている部族と、牛やヤギなどを飼って遊牧をしている部族がいまして、家畜の飲み水に水を使いたいという人もいれば、畑を育てたいっていう人もいて、この2つの部族がずっと戦争をしていると。もちろん、これには宗教やその背景にある先進国の利権などがありまして、戦争が続いているのは水が原因だと。こういう水をめぐる戦争が、私が知っているだけでも15ヶ所以上あります。というわけで、日本もこれからどうなるか分かりませんので、水に目を向けていただければと思います」

●自分に関わってくると思うと、人の意識ってさらに向上しますし、目も向けるようになりますもんね。山本さんが行なっている活動っていうのは、遠い国で行なわれている活動で、私達はニュースとかで見聞きして「大変なんだなぁ」って人事のように感じていますけど、実は全ての出来事は他人事では済まされないことっていうのが非常に多いんですよね。

「そうですね。正直、一見、直接は関係なさそうに見える問題を、将来日本でも、例えば50年後くらいに石油がなくなったとき、80年後くらいにウランがなくなったときに、原子力発電もなくなったときに、一体、電気をどうするのかなと本当に思いますね。そういったことを自分のお子さんがいる方、お孫さんがいる方、もしくはこれから好きな方と結婚されて子供を作る方とかは、未来の子供達のために、日本も間違いなくやばいことになるので、何かしていただければと思っています」

●これから講演会、写真展、来年はツバルの本、映画など色々でますので、この番組でもどんどん紹介していきたいと思いますし、山本さんにはまた是非、お話をうかがいたいと思っていますので、そのときは宜しくお願いします。

「よろしくお願いします。恐縮です」

●今日はどうもありがとうございました。

AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 国際協力は色々な形でできるものだと思います。実際に現地に行くことはもちろん、山本さんがおっしゃる「持続可能な社会や世界作り」が遠い国の人々だけではなく、私たち自身のためにもなるのであれば、実践しない手はありません。皆さんもぜひ「亀は久美子」を日々の生活に取り入れて下さいね。

このページのトップへ

■NPO法人・宇宙船地球号の事務局長/医師・山本敏晴さん情報

『あなたのたいせつなものはなんですか?・・・カンボジアより』
『世界と恋するおしごと〜国際協力のトビラ』

あなたのたいせつなものはなんですか?・・・カンボジアより
小学館/定価1,575円
 山本さんが進めている“お絵描きイベント”のカンボジア編の写真集。カンボジアの子供たちが“大切だ”と思っている絵には無邪気なものばかりではなく、戦争の傷跡も残っていて、考えさせられる1冊です。
 

世界と恋するおしごと〜国際協力のトビラ
小学館/定価1,680円
 世界をフィールドに働きたい人のためのガイドブック。世界で働く日本人の体験談が掲載されている、国際協力の仕事をしたい方には特にオススメの1冊。
 

 このほか、来年1月22日には、写真絵本『地球温暖化、しずみゆく楽園ツバル』が、こちらも「小学館」から発売決定!
 また、来年はツバル関係の映画や写真展なども開催する予定となっていますが、これらは日程が近づいたら、改めてご紹介します。お楽しみに!

山本さんの講演会も目白押し!
 10月27日(土)午前11時から「パシフィコ横浜」の展示ホールで開催される『横浜国際フェスタ2007』での講演決定!
 また、11月3日(土)午前10時からは、日本大学 医学部付属 看護専門学校(板橋区)でも講演を行なう予定。
 いずれも詳しくは「NPO法人・宇宙船地球号」のホームページをご覧ください。

・NPO法人・宇宙船地球号のHPhttp://www.ets-org.jp/
・山本敏晴さんのブログ
 http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/64819531.html

このページのトップへ

オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. SEE THE LIGHTS / SIMPLE MINDS

M2. IN YOUR EYES / LORI McKENNA

M3. THE FINAL ARREARS / MULL HISTORICAL SOCIETY

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. OOH CHILD / VALERIE CARTER

M5. MERCY MERCY ME (THE ECOLOGY) / MARVIN GAYE

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M6. STARDUST / WILLIE NELSON

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
このページのトップへ

新着情報へ  今週のゲストトークへ  今までのゲストトーク・リストへ  イベント情報へ
今後の放送予定へ  地球の雑学へ  リンク集へ  ジジクリ写真館へ 

番組へのご意見・ご感想をメールでお寄せください。お待ちしています。

Copyright © UNITED PROJECTS LTD. All Rights Reserved.
photos Copyright © 1992-2007 Kenji Kurihara All Rights Reserved.