2008年5月4日

ミニコミ誌「野宿野郎」の編集長、加藤千晶さんが語る「野宿の魅力」

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは、加藤千晶さんのインタビューです。
加藤千晶さん

 静かに部数を伸ばしているミニコミ誌「野宿野郎」の編集長、加藤千晶さんをお迎えし、野宿するようになったきっかけや、寝袋ひとつでどこででも寝る野宿の魅力などうかがいます。

野宿の1歩は青春!

●はじめまして、宜しくお願いします。私、「野宿野郎」の編集長と聞いて、男性だと思っていました(笑)。ごめんなさい!

「よく言われます(笑)」

●実際は小柄でかわいらしい女性なんですけど、そこで「なぜ野宿!?」っていう疑問が湧いてしまいました。まず、ミニコミ誌の「野宿野郎」っていうのはどういうキッカケで、いつごろ創刊されたんですか?

「2004年の10月に初めて作ったんですね。もともと、大学を卒業して働き始めて、大学生のときは周りに野宿をする人が結構多かったんですけど、みんな卒業と同時に忙しくなって野宿と離れていってしまうので、『あれ!? おかしいな』と思って(笑)、何か作って、また野宿をしている人と会って、野宿ができるといいなと思ったのがキッカケです」

●加藤さんが考案して、作ったんですか?

「はい。私が作りました」

●ということは、すでに大学時代には野宿を経験していたんですね?

「そうですね」

●最初の野宿っていつごろに、何がキッカケでやってみたんですか?

「最初は高校生のときに初めて野宿をしたんですけど、もともと『野宿をしてみたい』という思いがあったみたいなんですよね」

●ここで初心に戻って、野宿って日本語で聞くと凄くワイルドなイメージがあるじゃないですか。加藤さんが考える野宿の定義を教えていただけますか?

「私の場合は、とりあえず寝袋だけで寝るっていうのが野宿で、あとはお金がかかるところに寝るのは野宿じゃないなぁとか、それくらいですかね。あとは、どこでもいいんじゃないですか」

●普通に考えると、旅をする中で、テントを背負っていって道端や隅っこで夜を過ごすっていうのが野宿ですよね。そういうのを高校生くらいの頃からやられていたんですか?

「そうですね。寝袋を持ってどこかに行くという行為に憧れを持って始めてみたら、案外できるということが分かって(笑)、深みにはまっていったという感じですね」

●でも、男の子だったらそういうことが好きそうだし、結構やると思うんですけど、高校生くらいの女の子が野宿って、やっぱり危ないんじゃないかとか、周りが止めちゃうんじゃないかって思うんですけど、親御さんや周りの方から止められたりしなかったんですか?

「親は一応、心配していましたね(笑)。『やりたい』ということを『やめろ!』って言うのもエネルギーが要ると思うし(笑)、母親がそういうことを言うのが面倒くさい人だったので、『やりたいならしょうがない』という感じでしたね」

●やりたいっていうものは、やらせてみなければ分かりませんからね。初めてやった野宿のことって覚えていらっしゃいますか?

「高校2年の春休みに、高校が横浜にあったので、熱海に友達と2人で歩いて行こうって言って、寝袋を持って歩いていって、途中で寝たんです(笑)」

●何日くらいで行ったんですか?

「1泊野宿したら次の日に着いちゃって、何をするでもなく温泉に入って、『じゃあ、帰るか』って言って電車に乗って帰ってきて(笑)、あっという間でしたね」

●そのときの野宿はどんなところでしたんですか?

「とりあえずはじめは国道一号線を歩いていって暗くなったので、『ここなら車からも見えないし、安全に違いない』ということで、道路の脇の雨水を受け止める溝みたいなところに挟まって寝てみたんですね(笑)」

●寝心地はどうでしたか?(笑)

「いやぁー、よくなかったですね(笑)。風が溝を通るので寒いんですよ。で、その頃は下に敷くものの重要性とかを知らなかったので、下に敷くものが何もなくて、コンクリートで寒いし、眠れなくて、諦めて明け方からまた歩き始めたりして(笑)。そしたら、夜が明けてきて、高校生くらいの頃は夜通し外にいるっていうことはあまりなかったので、まず外に出て、そういうのが楽しかったんですよね。『これは青春っぽいぞ!』って2人で喜びましたね(笑)」

●まさに青春だね!(笑)

「そうなんですよ。『青春だ! 青春だ!』って(笑)」

●野宿の1歩は青春なんだね!

「そうなんですよ! ベタなことが好きで、青春っぽいことがやりたい年頃だったんでしょうね」

おまわりさんにも助けてもらいました

●今まであちこち行かれていると思うんですけど、一番長期の旅ってどれくらいの日数行かれていたんですか?

加藤千晶さん

「半年ぐらいが一番長いですかね」

●本州の下関まで50数日かけて歩いたことがあるそうですね。

「そうですね。高校のときの夏休みを使って、1泊2日で熱海に行ったときに、案外どこでも寝られるんだなっていうことが感触として分かったのと、そのときに歩いたことで、歩けばどこにでも着くという感じがあって、『これは本州くらいは歩けるな』って思ったんですよ(笑)。飛躍するんですけど(笑)。で、時間がある夏休みにでも行ってみるかと思って行ってみたんです」

●行けちゃうもんなんですね。

「毎日毎日歩いて野宿をしていたらいつかは着きますからね(笑)」

●(笑)。この番組のゲストの方でも、いろいろなスタイルで旅をしていらっしゃる方がいるんですけど、加藤さんほど飄々と野宿旅を語っていらっしゃる方もあまりいなかったです!(笑) つまり、野宿はそんなに意気込んでやるものではないっていうことですよね。

「そうですね。『やりたければやればいいし』という(笑)」

●(笑)。大体どういうところで野宿されているんですか?

「怒られない場所がいいので、公園とか河川敷とかですね。都心で数人で野宿をするときは、あんまり小さい公園だと、周りに住んでいる方の迷惑になるので、少し大きめの公園がいいですね。一応、公園の条例とかで、テントを張ってしまうと違法になってしまうので、寝袋だけで寝るとか、そういうのは策としていいんじゃないですか。時々ですけど、おまわりさんに職務質問されるときも、何とか言い逃れが出来るんです。『終電を逃して、朝まで休憩しています』とか」

●ということは、加藤さんも何度かそういう経験があったわけですね?(笑)

「そうですね(笑)」

●どういう風に聞かれるんですか? 「とりあえず交番に泊まりなさい」とか言われるんですか?

「旅先では言われますね。高校生のときとかは、まず『家出じゃないのか!?』っていうので心配されて、『こんなところで寝ていて何かあったら僕が嫌だから、ちょっと警察署に来なさい』って寝させてもらったことが結構あります。パトカーに乗せられて、おまわりさんの仮眠室みたいなところを借りたこともあるし、応接間みたいなところで寝させてもらったこともありますし、お世話になっているんですよ」

●野宿をしているのが分かっていて、放っておいて未成年の人に何かあったら問題になっちゃいますもんね。

「そうなんですよねぇ、申し訳ないことに。でも、その警察署から帰る道順が分からなくなったりして、朝困るんですよ。『どこに連れて来られたんだろう?』って(笑)」

●野宿した先からパトカーに乗せて泊めてもらうと・・・。

「やっぱり野宿した場所まで戻りたいんですよ」

寝るのが目的なので、宴が盛り上がりすぎると自制します(笑)

●ミニコミ誌「野宿野郎」を読ませていただいたんですけど、色々な方が同行して様々なテーマのもと、書かれているんですね。この番組にもゲストで出演してくださったバックパッカーのシェルパ斉藤さんや、冒険サイクリストの安東浩正さんも登場していて、シェルパさんなんかは野宿のプロですもんね。

「そうですよね」

●「野宿野郎」の中でも、やっぱりシェルパさんクラスは一目置かれる存在なんですか?(笑)

「まず、野宿っていう単語を使う方があまりいらっしゃらないので、嬉しいですよね」

●野宿メンバーって多いんですか?

「最近、増えているような気がしますね。でも多分、1度や2度やったことがある方っていうのはたくさんいると思うんですよ。で、今までそんなに野宿野宿って言う人もいなかったし、『私もやったことある』って言わなかっただけで、案外野宿しているんじゃないかなぁと思いますね」

●ある新聞の記事を読ませていただいたんですけど、結構層も広く、色々な方が集まって、いろいろなところで野宿会をされているそうですね。

「そうですね。10代の学生さんから、50代の方などたくさんでやることがありますね」

●学生さんだと「青春だ!」って楽しんでやってらっしゃる方もいると思うんですけど、社会に出てある程度年齢がいったお父さんお母さんくらいになると、ちょっと抵抗があったりとかして今まで控えていたものが、ミニコミ誌「野宿野郎」を機に、「まだ俺もできるぞ!」みたいなのでやっていらっしゃる方もいると思うんですけど、50代の方とかも多いんですよね?

「そうですね。幅は広いです。でも、結婚している人は少ないなぁ(笑)。だから、今後の課題は自分とかが結婚をしても、野宿が続けられるかっていうところですね」

●みんなで集まってどういう風に過ごすんですか?

「何をするって野宿をするだけなので、夜遅くに『今日は、どこどこで野宿をしよう!』ってなったら、そこに集まってきて寝るんですが、寝る前にみんなで食べ物を持ち寄ったり、まめな人がいるとガスコンロを持ってきたりして鍋をやったりしています」

●いわゆる花見の会みたいなものが夜通し続く感じなんですね。

「はい。ただ、夜通しは続かず、寝るのが目的なので(笑)。あまり盛り上がりすぎては『野宿じゃないじゃないか!』って自制して寝ます(笑)」

●(笑)。そっか! あくまで目的は野宿なんですもんね。

6月19日と、9月19日は野宿の日

●今、こうやって初めて「野宿野郎」のことを知り、「そんなに簡単にできるんだ」って思った野宿ビギナーがいるとしましょう! 何に気をつけて、どういうふうに野宿するといいですか?

加藤千晶さん

「難しいですねぇ。何がいいのかなぁ。とりあえず、やってみるのがいいんですけどね(笑)。初めての野宿は1回きりですので、あんまり万全にしていくと『つまらないのではないか』などと私は思ってしまうのですが、危険なことがあるといけませんからね。なんだろうなぁ・・・」

●特に女子に向けての注意点などありますか?

「やっぱり怖いのは人なので、寝袋に入るまで人に見られないとか、寝袋に入ってしまうと性別が分からないので素早く入るとかね。もしくは、周りの人にアピールをしてから寝るとか、どっちかですよね」

●そうですよね。それは、人里離れているところのほうがいいんですか?

「やっぱり、自分が『ここだったら大丈夫』って思える場所で寝ないとダメですね。例えば、公園とかで寝るときは、トイレを見に行くんですね。で、トイレに落書きがあったり、荒れていたりするところっていうのは、公園自体に怪しい人たちがたむろっているかもしれないので寝ないとか、そういうチェックが大事ですね」

●トイレチェック、落書きチェックっていうのはポイント高いかもしれないですね。無人駅だったら駅でも大丈夫ですか?

「無人駅で女の子が1人で寝る場合は、周りに民家があったほうが安心ですよね。ただ駅だけが離れていると、ちょっと危ないかもしれない」

●野宿旅をする場合って、食事ってどうしているんですか?

「普通のガスボンベをつけられるのが一番安いので、小さいガスヘッドみたいなものを持っていって、軽く調理をして食べます」

●シェルパさんとかと同じ感じですね。

「はい。割とアウトドアなんですよ。カセットボンベのシングルバーナーが経済的なんですよね。で、ボンベがどこでも買えますしね」

●シェルパ斉藤さんも今、あれが一番便利だって言っていました。

「やった!」

●どこでも買えるっていうのがポイント高いですよね。

「1人で野宿をするときは暇なので、食事でも作っていないと暇をつぶせませんからね(笑)」

●(笑)。どんなものを作られるんですか?

「などと言いながら面倒くさがりなので、袋ラーメンを作って、もやしとかを入れて毎日食べています」

●実は、加藤さんが決めた野宿の日っていうのがあるそうですね?

「はい。6月19日と、9月19日です。その6と9を左右に90度回転させるとひらがなの「の」っぽく見えるので、「の・19(じゅく)」ということで、これは野宿の日だと」

●一番近いのは6月19日ですね。ちょっと梅雨の心配がありそうですけど(笑)、9月はよさそうですね。

「気持ちいいですよ」

●野宿の日に何か特別なことってやるんですか?

「野宿の日は野宿をします(笑)」

●(笑)。曜日に関わらず?

「19日の前日から野宿をし始めて、野宿をしながら野宿の日の到来を祝い、というか寝るだけなんですが(笑)」

●(笑)。ということは、今年も6月18日の夜から19日にかけて野宿をするんですね。場所は毎回違うんですか?

「色々ですね。でも、いいんです! その辺で1人ででもやってほしいですね。みんなその辺で好きに野宿をする日になればいいなぁと(笑)」

●(笑)。加藤さんの夢としては日本中に広まってみんなで野宿をすることですか?

「はい。みんなその辺で野宿をしているみたいな(笑)」

●(笑)。そういう経験をするのもいいかもしれませんね。また、今後も面白い野宿の旅などあったら、番組にも知らせてくださいね。体に気をつけて頑張ってください。今日はどうもありがとうございました。

このほかの加藤千晶さんのインタビューもご覧ください。
AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 本業は介護福祉士だという加藤さんは“野宿野郎”というちょっとワイルドなイメージの言葉からは想像もつかないほど小柄でかわいらしい女性でした。そんな加藤さんがこの先どんなところで野宿をするのか楽しみです! 皆さんも6月19日と9月19日の野宿の日にはあなたなりの野宿を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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「野宿野郎」5号 別冊『野宿戦隊!シュラフマン<予告編>』

ミニコミ誌「野宿野郎」

 “人生をより低迷させる旅コミ誌”というキャッチ・フレーズがついているミニコミ誌「野宿野郎」は、現在5号まで発売中。毎回、編集長・加藤さんの連載記事「時にはトイレの中で・・・」ほか、ユニークな記事満載! 3号には雑誌BE-PALでもお馴染み、バックパッカー、シェルパ斉藤さんのインタビューも掲載。価格は号によって異なりますが、300円〜500円。
 また、創刊3周年を記念して別冊『野宿戦隊!シュラフマン<予告編>』(500円)もDVD付きで販売!
 ミニコミ誌「野宿野郎」のお買い求めは、書店、または「野宿野郎」の公式サイトからどうぞ。取り扱い書店名や「野宿野郎」のそれぞれの内容などについては公式サイトをご覧ください。

「野宿野郎」公式サイトhttp://www.nojukuyaro.net/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. HUNGRY HEART / BRUCE SPRINGSTEEN

M2. 空に星が綺麗 / 斉藤和義

M3. DON'T LET ME BE MISUNDERSTOOD / ELVIS COSTELLO

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. MY BIRD PERFORMS / XTC

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. ESCAPE (THE PINA COLADA SONG) / RUPERT HOLMES

M6. SUCH A NIGHT / DR.JOHN

M7. 風来坊 / はっぴいえんど

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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