2008年8月24日

「鉄が地球温暖化を防ぐ」
宮城県気仙沼の漁師さん、畠山重篤さんをお迎えして

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは、畠山重篤さんのインタビューです。
畠山重篤さん

 今週のゲストは、宮城県気仙沼で、カキやホタテの養殖業を営む漁師さんで「牡蠣の森を慕う会」の代表、畠山重篤さんです。畠山さんは、気仙沼湾に注ぐ川の上流の山に木を植える“森は海の恋人”運動で知られていますが、そんな畠山さんが先ごろ、文藝春秋から『鉄が地球温暖化を防ぐ』という凄いタイトルの本を出されました。いったいどういうことなのか、いろいろお話をうかがいます。

森と川と海をつなぐ指標生物はウナギ

●畠山さんというと、ザ・フリントストーンでは、“森は海の恋人”運動がすぐ頭に浮かぶんですけど、この運動は宮城県気仙沼湾に注ぐ大川上流の室根山に植林活動をするというもので、今年で20年になるそうですね。

「ええ。6月1日に20周年の植樹祭をやりました」

●おめでとうございます。

「ありがとうございます」

●20年経つと、森も大分立派になったんじゃないですか?

「ええ。もう最初に植えた木はとうに背丈を越しまして、ふっくら膨らんだ森になっています」

●延べどれくらいの木を植えられたんですか?

「なんだかんだで5万本近くなりましたね」

●種類的にはどうなんですか?

「今、大体40種類くらい植えています」

●最初は漁師さんが山に木を植えるっていうこと自体が、「えーっ!?」っていう方もたくさんいらっしゃったんじゃないかと思うんですけど、今では大分、浸透していますよね。

「そうですね。日本全国の海に面した県で、漁師が山に木を植えるっていうことをやっていない県は1県もないんですよ。今、日本全国でやっています」

●山からの成分が川を下って海に流れて、それが海を豊かにするというのは、漁師さんの間では昔からの常識だったんですか?

「そうですね。雪や雨が降らないと、海の生き物の育ちが悪いっていうことはみんな知っているわけですよ。昔から魚つき保安林っていって、海の近くの森の木を切ってしまうと、魚が寄り付かないっていうことは分かっていたんですけど、海から遠く離れた山奥の木も海まで届くっていうのは、なかなか理解されていませんでしたよね。それが、私たちがやることになって、『あっ、そうか!』とみんなが思うようになったんですね」

●「それで、あのときそうだったんだ!」って改めて気付いたりしたんですね。

「今、思えばそうだということですね」

●20年、運動を続けていらっしゃって、室根山での植林を続けたことによって、大川が注ぐ気仙沼湾に変化はありましたか?

「よくなりましたよ」

●目に見えて変わりましたか?

「ええ。もちろん3万本とか5万本植えたって、実際には点に過ぎないんですけど、川の流域に住んでいる人々の意識が随分変わってきて、特に子供達を海に迎え入れて体験学習っていうのを続けていまして、もう1万人を越えたんですね。やっぱりそういう子供達の意識が親に伝わって、親から行政に伝わるということで、今、うちの地域は森と川と海はひとつのものだっていうふうに考えるようになってきたわけですよ。だから『じゃあ、早く下水処理の施設を整えよう』とか、『上流の村でもなるべく合併浄化槽をやろう』とか、『農薬はなるべく使わないようにしましょう』とか、子供達も日常の生活で『海の生き物に迷惑をかけるようなものを、なるべく流さないようにしましょう』とか、そういうふうになるもんなんですよ。
 あとは、今までは杉ばかりを植えていたけど、広葉樹も大事だっていうことで、上流の村が広葉樹を見直すとか、そういうことがだんだん浸透してきて、私がずっと待っていたものがあるんですよ。それは森と川と海をつなぐ指標生物のウナギなんですよ。ウナギさえ戻れば大丈夫だなってずっと思っていて、それを待っていたんですね。そしたら、これは嘘のような本当の話なんですけど、去年の植樹祭の前の日に、私は孫と一緒に小魚をとる仕掛けの餌にカキを入れて、桟橋からドボンと海に下げておくわけですよ。それを引き上げたら、背中が青くて、私の腕みたいなウナギが2匹入っていたわけですよ。もう、なんともいえない喜びでしたね。ウナギがなぜ大事かというと、サケは海から川に上がってきて産卵をして、次の年の春にはすぐに北洋の海へ旅立って、その一生のほとんどを海で過ごすわけですよ。ウナギは逆なんですよ。ウナギはご存知のように、フィリピンの辺りの南の海で親が産卵して、そしてシラスウナギが川に上がってきて、川で5年から10年育つわけですよ。だから、その一生のほとんどを川で過ごすわけですよ。だから川がよくならないと絶対にウナギは戻らないんですね。だから、ウナギが戻ったっていうことは、川がよくなったっていう証拠なんですね。つまり、川の流域の森林と人々の気持ちが、自然に対してやさしい気持ちを持つ人が増えてきたっていう何よりの証拠なんですよ。いやぁ、本当に嬉しかったですね」

地球は鉄の惑星!?

●『鉄が地球温暖化を防ぐ』という本を出された宮城県気仙沼の漁師さん、畠山重篤さんにお話をうかがっているザ・フリントストーン。なぜ鉄が地球温暖化を防ぐのか、という本題に入る前に、基礎知識となるようなお話をうかがってみたいと思うんですが、まず、畠山さんが鉄に着目したきっかけはなんだったんでしょうか。

畠山重篤さん

「私が、海にとって鉄が大事だっていうことを知ったのは、今から約20年前に当時、北海道大学の教授をされていた松永勝彦さんにお目にかかって教えられたことなんですね。で、人間の体にとっても、血液の中のヘモグロビンの中心は鉄ですよね。で、鉄はどういうことをしているかというと、酸素をくっつけて体の隅々まで運ぶ役目をしているんですね。それから、人間のエネルギーを体の中に取り込む化学作用っていうのは、酸化還元反応っていうことの連続なんですけど、その酸化還元反応がスムーズに行なわれるにはどうしても、鉄が触媒のような形で必要なんですよ。だから我々、人間にとっても、動物にとっても鉄は不可欠なものなんですね。ところが、海の中や植物にとっても鉄は不可欠なものなんですね。どういうことかといいますと、例えば東北の場合、赤土の崖がありますね。それを冬になって雪が積もると、そういうところの崖の赤土をそりに積んで、田んぼへ持っていって、田んぼに入れるんですよ。これを客土っていうんですね。なぜ、そういうことをやるかといいますと、農家の方は鉄分が不足してくると、作物の肥料の吸収が悪くなるっていうことを経験的に知っているわけですよ。盆栽の松をやっている方なんか、盆栽の松の緑が悪くなると、釘を刺すのを見たことないですか?」

●あります!

「おじいちゃんがよくやっていたでしょ! ま、私もおじいちゃんになっちゃいましたけど(笑)。それは盆栽の中の鉄分が減ったっていうことなんですね。だから、鉄釘を刺してやると、松の緑がふわーっと戻るんですよ。つまり、それは肥料を吸収する力がつくっていうことなんですよ」

●なるほど! 要するに生きものにとって鉄は大事っていうことなんですね。

「もう大事どころじゃないですね! 鉄がなければどうしようもないっていうことですね」

●その鉄が温暖化を防ぐ!?

「ええ。鉄は海の中でものすごく不足しているんですよ。なぜかというと、鉄って錆びるでしょ。錆びるっていうことは酸素と出会うと、酸化して酸素と鉄がくっついてしまうわけですね。そうすると、例えば、川から鉄が流れてくるんですけど、川の中には酸素が溶け込んでいて、海の中にも酸素があるんですけど、水に溶けた鉄が流れてきても、川とか海の酸素と出会うと、酸化してしまって、粒々の粒子になってしまうんですよ。すると、これが重たくなって海の底へ落ちていってしまうんですね。
 地球の歴史にさかのぼってみると、46億年前に地球ができたっていわれていますね。で、色々なことがあってだんだん地球が冷めてきて雨が降ったんですよ。で、降った雨は酸性雨だったわけですよ。で、地球ってよく水の惑星だっていわれるじゃないですか。ところが、実質的には地球って3分の1は鉄でできているんですよ。だから、地底へ行けば行くほど、どんどん鉄になるんですよ。ですから本来、地球は『鉄の惑星』って言わなきゃいけないそうですよ。そこへ、ものすごい酸性雨が降ったわけです。酸は鉄を水に溶かすでしょ。だから、海ができたんですけど、海に溶け込んでいた成分っていうのは、圧倒的に鉄が多かったんですね。ところが、当時は酸素がないから、酸素がなければ、お砂糖をお湯に入れるとすっと溶けるでしょ。ああいう形をイオンって言うんですよ。鉄は同じように酸素がなければ、そういうふうに水の中に溶けるわけですよ。だから、水の中に鉄がウヨウヨ溶け込んでいたわけですね。ところが、35億年前に地球上にシアノバクテリアっていう、炭酸ガスを酸素に変える、つまり植物の光合成をする元祖が現れるわけですよ。で、炭酸ガスだらけですから、炭酸ガス、つまり二酸化炭素を吸って、お日様の光と水の力で炭酸同化作用をやって、酸素を出すようになったわけですよ。CO2って二酸化炭素って言うでしょ。で、CO2のCは炭素っていうことですから、これで植物の体は炭素でできるわけですね。それから、O2は外へ出すわけです。すると、待ってましたとばかりに、海の中には鉄がウヨウヨしていますから、鉄と酸素が結びつくと、粒子になって重くなって、全部、海の底に沈んだわけです。なんと、15億年かかって海から鉄が全部取り除かれてしまったわけです。こういうドラマがあるんですよ。これは知らなきゃいけないんですね」

鉄が地球温暖化解決の鍵を握っている

●畠山さんは、海の中に鉄分が不足していることを発見したアメリカの博士にも注目。そして、鉄が温暖化を防ぐという核心にいよいよ迫ります。

「アメリカにジョン・マーチンって学者がいるんですよ。で、その前に世界の海の七不思議のようなことがあって、HNLC海域っていうものがあるんですね。『H』は『HIGH』で高いとか、いっぱいあるっていうことですね。で、『N』は栄養塩ってことなんですね。『L』は『LOW』で低いっていうことですね。それから『C』は『CHLOROPHYLL(クロロフィル)』で葉緑素のことですね。ちまり、これは植物プランクトンっていう意味なんですよ。窒素、リンのような栄養塩はいっぱいあるんだけど、『CHLOROPHYLL(クロロフィル)』が『LOW』だから、植物プランクトンが増えられない広大な海域が、世界の海の中にあるっていうことが、50年前から分かっていたんですよ。ところが、原因が全然分からなかったんですね。分かったのが20年前で、どうしてそうなったのかというと、天然の大洋(海)に含まれている鉄の量があまりにも少なすぎて分析できなかったんですよ。つまり、酸素と出会うと死んでしまうから。海水1リットル中に鉄がどのくらい含まれているか想像できますか?」

●できません!(笑)

畠山重篤さん

「できないですよね(笑)。なんと、鉄は海水1リットル中たった10億分の1グラムだそうですよ。これはナノグラムっていう単位なんですよ。こういうことを分析している専門家に聞くと『中国の人口の中から1人を選ぶようなもんだ』って言うんですよ。それで、20年前にジョン・マーチンという学者が、その分析にやっと成功するわけですよ。そしたら、やっぱり鉄が足りないために、プランクトンが入れない海域があるっていうことが分かるんですね。ジョン・マーチンはアメリカ・カリフォルニアのモス・ランディング海洋研究所っていうところの所長だったんです。で、アメリカのカリフォルニアのずっと北にアラスカ湾っていうところがあるんですね。サケなんかがいっぱい獲れるところです。ここも、窒素やリンがいっぱいあるんだけど、どういうわけか、プランクトンの発生が少ない海域だっていうことが分かるんですね。それで、その鉄を量る技術で、日本のほうへどんどん行ってみると、どういうわけかプランクトンが増えてくるし、鉄濃度も濃くなってくると。
 北洋海域ってサケ、マスがいっぱい獲れたり、スケソウダラが獲れたり、タラバガニが獲れたりってすごいでしょ。『どうしてだろう!?』と。鉄はどこから来ているんだろうと思ったわけですね。それで分かったことは、北洋海域に鉄を運んでいるのが、なんと黄砂だっていうことが分かるわけですよ! あの悪者だと思っていた黄砂。黄砂の黄色っていうのは黄鉄鉱の鉄の色なんですよ。黄河の上流域の黄砂を作っているようなところは、すごく豊かな農地なんですよ。分からないことだらけですよね。それがジェット気流に乗って、日本の上空を通って、北洋の上を通って、アラスカのほうへ黄砂が降ってくるわけです。で、アラスカまでは距離が遠いから、届きにくいでしょ。で、その中に鉄が含まれていて、海の底からは窒素、リンがくる。これで、プランクトンが大爆発で増えると。黄砂(鉄)が来なけりゃ話にならないんですよ。
 風塵学(ふうじんがく)っていう学問があるんですね。ジョン・マーチンは、海に鉄を含んだ風塵、黄砂が供給されて地球の気候が変わる、それから温度が変わるということをふっと思うわけですよ。それで、ジョン・マーチンは急いで南極へ行くわけですよ。南極海っていうところは世界最大のHNLC海域なんですよ。世界の海の20パーセントを占めている南極海が、窒素、リンはあるんだけど、鉄がないから植物プランクトンが増えない海域だと。だけど、今は間氷期(かんぴょうき)っていって暖かい時季だけど、今から約2万年前くらいの時代は氷河期っていって、すごく寒い時期でしょ。彼はひらめいて、そのとき植物プランクトンが大爆発で増えれば、CO2を吸収するわけですよ。暖かくなるっていうのは空気中の炭酸ガス濃度が濃くなるから、暖かくなるっていわれているわけでしょ。我々は光合成っていうと陸の植物のことだけ考えるけど、圧倒的に海のほうが広いわけですから、植物プランクトンの発生が世界の気候を支配するっていうことを感じまして、南極へ行って、ボストーク基地っていうところの氷柱を調べるわけです。南極大陸には約2000メートルの氷が積もっているんですね。そして、氷河期の氷柱を調べたら、今の30倍くらいの鉄を含んでいて、塵が南極海に注いでいたっていうことが分かるわけですよ!」

●すごーい! 壮大なドラマを見ているみたい!

「それで、今から20年前にジョン・マーチンは『南極海にたった30万トンタンカー1杯分の鉄を供給してやると、地球は氷河期に戻る』って言ったんですね。これが、大騒ぎになるんですよ!」

●それは、大騒ぎになっちゃいますよね!

「20年前に世界中が大騒ぎになった。我々はそんなことも知らないでいますよね。だから、海のプランクトンの発生が、地球温暖化の鍵を握っている可能性がかなり高いんですよ」

 畠山さんの本を参考に補足説明をすると、植物プランクトンは樹木と同じように葉緑素を持っていて、光合成をしています。植物プランクトンは、太陽光線と、海水に溶け込んだCO2を使って光合成をするわけですが、その過程で、温暖化防止に役立つ2つの大きな役割を果たすそうなんです。
 ひとつは、酸素を作り出すこと。そして、もうひとつはCO2を固定化すること。つまり、植物プランクトンを増やせば、温暖化を防ぐ効果があるというわけなんですが、そのためには、海の中に鉄分を供給してあげることが必要だということなんです。
 畠山さんも注目するジョン・マーチン博士は、こんな実験を行なったそうです。

「ジョン・マーチンは、鉄が少ないために植物プランクトンが発生できないということが分かって、ボトル実験といって、世界中の海水を集めてきて、鉄を入れたものと鉄を入れないものを並べておいて、プランクトンの種を入れて陽に当てておくわけですよ。すると、鉄を入れないほうは何の変化も起きないんですね。ところが、鉄を入れたほうはプランクトンがうわーっと増えてくるわけですよ。
 今、深層水って色々なところで汲み上げているじゃないですか。そこには、窒素、リンがものすごくあるわけですよ。それを買ってきてペットボトルに入れて、片方には鉄を入れて、もう片方には鉄を入れずに陽に当てておくと、鉄を入れていないほうは何の変化も起きないんですよ。鉄を入れたほうではプランクトンがワーッと湧く。私のような素人でもそういうことができるんですよ。で、そのことが分かって、残念ながらジョン・マーチンは56歳でガンで亡くなるわけですね。その遺志を継いだ研究者達が、実際に海に鉄を撒くっていう実験を、今まで十数回世界中でやるわけですよ。なんと海に鉄を撒くと牧草の匂いがするそうですよ」

●海からですか?

「うん。人工衛星から写真を撮ると海が緑になるんですよ。何十倍と増えるんですから。それだけ海って鉄が足りないっていうことなんですよ」

鉄がエネルギー問題も、CO2問題も解決してくれる!?

●陸の森も大切ですけど、同じように海の中にも森があるわけですし、“森は海の恋人”運動でも証明されているように、山、川、海、自然全てが繋がっていることを考えたら、確かに地球って海が占める面積が大きいですから・・・。

「7割ですからね」

●その海で温暖化を防ぐ対策ができれば・・・。

「そういう研究がどんどん進んでいるんですよ。それからもう1つ可能性があるのは、日本列島を見てみると、真ん中に脊梁山脈があって、日本海と太平洋に、2級河川まで入れると、2万1千本、川が流れ落ちているんですよ。で、森の中で腐葉土が積もってくると、空気の通りが悪くなって、鉄がイオン化する、つまり水に溶けるわけですね。そして、森林の腐葉土ができるときに、フルボ酸っていう酸が出来るんですね。酸が水に溶けた鉄と結びつくんですよ。そして、フルボ酸鉄という形になるんですね。別な言い方をすると、『キレート』とも言うんですよ。今、『キレート・レモン』っていうジュースが売っているのを見たことあるでしょ?」

●はい、あります。

「その『キレート』ってどういう意味か分かりますか?」

●分からずに、「なんだろう?」と思って見ていました。

「お肌がキレーになるって女性が言ったらしいですよ(笑)。それが違うんですよ(笑)。つまり、イオン化した微量の金属と酸が結びつく状態のことをキレートっていうんですね。で、こういう形の鉄になると、それが川から海に供給されて酸素と出会っても、酸がくっついているから酸素がくっつけないんですよ。だから、海の植物が利用できるんですね。それで、日本列島は2万1千本の川が流れていて、2000キロもあるでしょ。この海の周りに、日本の面積は38万平方キロなんですが、日本の1割の面積、3万8千平方キロの日本海と太平洋側に海の縁に養殖した海藻を生やしてやるんですよ。昆布なんかは養殖できますから。そうすると、日本が出しているCO2の全部を吸収できるだけの力があるんですよ。バイオマスっていうんですよ。海に森があるんですよ。そこで採れる海藻はエタノール化できるんですよ。ここでとれるエタノールの量は、今ブラジルで作っているエタノールと同じくらいの量がとれるんですよ」

●一石二鳥じゃないですか!

「もう二鳥、三鳥ですよ!(笑) だって今、エタノールはトウモロコシとか食べ物で作っているから大騒ぎしているでしょ。ところが、沿岸域の海は木を切ることもないし、開墾することもないし、肥料をやることもないし、別にものを動かす必要もない。しかも海藻の場合、秋に種を撒けば半年後の春先にはバーって伸びるんですよ。あくまで計算上ですけど、そういうことも可能なんですよ。
 新日鉄の方から聞いたけど、鉄鋼会社っていうのはCO2も出すし、錆って見栄えがよくないでしょ。でも、君津製鉄所の目の前に行くと魚が釣れるって有名な話ですよ。そういう目で見ると、なるほどと納得することがいっぱいあるんですよ。昔から『鉄船が沈んでいるところは魚が釣れる』ってよく漁師が言っているじゃないですか」

●鉄ってスゴイ!

「そうですよ! 私は何も鉄鋼会社の回し者でもなんでもないですよ!(笑) でも、こういうことが分かって、私は今『鉄錆にほおずりをしたい男』って言われているんですよ(笑)。5年に1回くらい夢中になるものがあるんですよ。今は鉄に夢中になっているんです(笑)」

●(笑)。じゃあ、そのうち“森は海の恋人”運動が、“鉄は生物の恋人”運動になる日もそう遠くないかもしれませんね。“カキの恋人”とかって、新たな恋人運動が・・・。

「カキだって鉄分多いですからね。カキ食べてくださいよ!(笑)」

●私たちが体に摂る鉄はカキから摂って、そのカキたちはいい鉄分を含んだ・・・。

「それが森から来るわけですからね。だから、森と川と海の関係をちゃんとしておけば、日本は食いっぱぐれしないっていうことなんですよ。エネルギー問題はOK、CO2問題はOK、それから海藻が増えるっていうことは、海藻だけが増えるわけではなくて、お魚から貝から何から何まで増えていくっていうことを意味しているんですよ。そういう海のものがいっぱいとれていくと、ご飯のおかずになるっていうことなんですね。そうすると、米の消費に繋がるっていうことなんですね。これは、色々な意味がありますよ」

●今、日本は食料自給率が低いですもんね。

「米だけはあるんですよ」

●色々な意味で危機的状態って言われちゃっていますけど・・・。

「何が危機ですか!(笑) 鉄を使えば何も危機じゃないですよ。本当に大丈夫ですよ(笑)」

●畠山さんにそう言われると本当に大丈夫に思えてきますね(笑)。

「国会議員に聞かせたいね!(笑)」

●(笑)。今日はどうもありがとうございました。

このほかの畠山重篤さんのインタビューもご覧ください。
AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 私にとって世界一物知りの漁師さん、畠山重篤さんの“森は海の恋人”に続く新しいフレーズが“鉄は森と海のキューピット”。そんな鉄を海に撒くと牧草の匂いがするそうですが、畠山さんのお話をうかがいながら思ったことは、将来“牧草の香り”が豊かさの象徴になるかもしれないということ。そして同時に、先ごろ番組にご出演くださった版画家、名嘉睦稔さんの版画展のタイトルにもなっている『命の森』という言葉も思い出していました。陸でも海の中でも、命の森の源ともいえる鉄。不足している鉄分を補うことが、私たちが抱えている多くの問題の解決策につながるのだとしたら・・・。未来が明るく思えてきます。

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『鉄が地球温暖化を防ぐ』
『山に木を植えました』

宮城県気仙沼の漁師さん、畠山重篤さん情報

新刊『鉄が地球温暖化を防ぐ
文藝春秋/定価1,300円
 宮城県気仙沼で牡蠣や帆立の養殖業を営む漁師さんで「牡蠣の森を慕(した)う会」の代表でもある畠山重篤さんは、気仙沼湾に注ぐ川の上流の山に木を植える“森は海の恋人”運動で知られていますが、そんな畠山さんが世界的な海洋学者、故ジョン・マーチン氏の唱えた「鉄仮説」をわかりやすく説明しながら「海に鉄を供給することが地球温暖化を防ぐ一助になる」と提唱。日本でもいち早く“鉄”に着目したお百姓さんのユニークな実験のお話など、読みごたえのある1冊。
 

畠山さん監修の絵本『山に木を植えました
講談社/定価1,365円
 今年20周年を迎えた“森は海の恋人”運動をモチーフに、森・川・海、そして人と生き物のつながりが愛らしいイラストと分かりやすい文章で綴られている絵本。フルボ酸の働きをテーマにした「すごろく」も付いているので、ぜひお子さんと一緒にお楽しみください。
 

「牡蠣の森を慕う会」
 気仙沼で牡蠣や帆立の養殖業を営む畠山重篤さんが代表を務める会。同会のHPでは“森は海の恋人”運動のことや海辺の生きもの紹介、畠山さんの著書紹介ほか、カキやホタテの注文もできるようになっています。
 牡蠣の森を慕う会のホームページhttp://www.kakinomori.jp/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. FOREST FOR THE TREES / HUEY LEWIS & THE NEWS

M2. WATCHING THE RIVER RUN / LOGGINS & MESSINA

M3. OLD DAYS / CHICAGO

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. YOU LEARN / ALANIS MORISETTE

M5. EVERYTHING'S GONNA BE ALRIGHT / SWEETBOX

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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