2008年11月30日

ジャーナリスト・青柳光郎さんの「ニュージーランドエコ紀行」

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは青柳光郎さんのインタビューです。
青柳光郎さん

 “旅と地球環境”をテーマに執筆活動を続けるジャーナリスト、青柳光郎(あおやぎ・みつろう)さんをゲストに、ニュージーランドの自然や環境保護、エコツアーのお話などうかがいます。

ニュージーランドは風光明媚で、自然が豊かな国

●はじめまして、よろしくお願いします。青柳さんは先頃、「ニュージーランドエコ紀行」というご本を七つ森書館から発売されましたが、ニュージーランドってエコな場所ってイメージも強いんですけど、オーストラリアの近くっていうくらいであまり詳しくないので、まずニュージーランドってどんなところなのかをご説明いただけますか?

「分かりやすく言うと、地球儀を回していただいて、赤道を挟んでパタンとひっくり返してもらうと、日本列島が向こう側にもあるというような感じですよね。正確に言うと日本とは3〜4時間時差があるので、ニュージーランドのほうが少し東に寄っているんですね。で、形も日本で言う北海道から九州・沖縄までの形と、ニュージーランドの北島南島の形で、弓の弧になっているような国土の形をしているってところも似ていますよね。そういう意味では、赤道を挟んでパタンとひっくり返してもらうと、ちょうど同じくらいの距離にあるんですね。気候も北へ行くほど、日本で言うところの南に行くので暖かくなるし、南へ行くほど、日本で言うところの北へ行くので寒くなるし。四季の変化もありますし、地形的に言うとそんな感じでしょうかね」

●私なんかはニュージーランドっていうと、ラグビーが浮かんできて、オークランドって地名を思い出すんですけど、オークランドがあるのが北島でしたっけ?

「そうです。北島の中心都市ですね。ニュージーランド全体で一番人口が多い都市で、首都は北島の南にあるウェリントンですけど、最大の都市という意味ではオークランドですね。今出たラグビーではオールブラックスというチームが有名ですけど、イギリスとか南アフリカだとか、かつての大英帝国が地球上に広がっていますよね。そういう中でリーグ戦をやったりしています。一方でニュージーランドだけの目で見ると、先住民のマオリの人たちもニュージーランドの象徴なんですが、ヨーロッパ系の人たちと、マオリの人たちと共にチームを作っているんですね。で、ニュージーランド全体が、マオリと先住民とヨーロッパ系の人たちが共に暮らし、共に社会を営み、経済を構築しているという国でもあるんですね。先住民とヨーロッパ系の人たちが仲良くやっているひとつの国という面も挙げられますね」

●いろいろな意味で、共生とか共存という言葉がうまくまわっている場所ともいえるんですね。

「そうですね。共生:共に生きる、共存:共に存在するという、何と何が共になのか。例えば、人間と自然が共に共生する、あるいは人間と生きものが共生する、あるいは過去と現代が共生する、民族のヨーロッパ系の人たちとマオリの人たちが共生する、色々な意味の共生があると思いますね。そういう目で見てニュージーランドを旅すると、また違う発見もあるかもしれませんね」

●そんなニュージーランドの自然ってどれくらい濃いものだったんですか?

「これがまた難しい質問であり、簡単でもあるんですが(笑)、簡単に答えると、風光明媚でキレイです。どこへ行っても緑はあるし、空は青いし、白い雲がたなびいているし、青い海があるし、食べ物はおいしい。日本で言えば北海道とか、鹿児島とか沖縄とか、日本にも風光明媚で美しいところはいっぱいありますけど、大きな違いは、人口だと思いますね。日本は1億3000万人いて、ニュージーランドは400万人ちょっとですから、30分の1ですよね。人口密度が低いということは、それだけどこへ行っても、人間の数よりヒツジの数のほうが多かったり、緑の広がりが大きかったり、海へ行ってもたくさんの人が同時期に泳いでいるということはそうそうないんですね。そういうことで言えば、自然が豊かな国なんですけど、ま、話すと長くなります(笑)」

●(笑)。青柳さんのご本「ニュージーランドエコ紀行」は写真も豊富に載っているんですけど、ニュージーランドにはペンギンもいるそうですね。

「そうですね。野生で見られるペンギンっていうのは、南半球にしかいないんですね。もちろん、北半球でも動物園にはいます。地球上で18種類の野生のペンギンがいるんですけど、そのうち13種類がニュージーランドにいるんです。とても小さな、体調40センチくらいのブルー・ペンギンとか、目が黄色いイエロー・アイド・ペンギンとか、金目ペンギンっていわれ方もしますけど、そういうペンギンがいたり、様々なペンギンがいますね。それに、動物園とかではなくて、その辺を歩いていて出会えるんですね。そういう国なんですね。
 私が毎年のように行っているニュージーランドっていうのは、とても濃いニュージーランドなんですね。私は若い頃から旅が好きで、ニュージーランドに限らず、東南アジアだとかあちこちを回っていますけど、1カ所に長く滞在するという意味では、気がつかないうちに一番の国になりましたね」

●それは、青柳さんが旅と地球環境をテーマに取材されてきて、ニュージーランドがそのテーマにピッタリで、たくさんネタがある場所だったからかもしれませんよね。

「結果的にそうですね。最初から分かっていたわけではないのですが、行って色々な人に現場で教わってみると、自然とエコとか、自然を守るってどういうことなのかとか、暮らしの中で自然とどう接しているのかとか、見ていくとどんどん引き込まれるんですね。ですから、風光明媚でキレイな場所っていうだけではない、一皮、二皮めくってみると、『なるほどな』って考えさせられることが色々あるんですね」

ニュージーランドはこうして観光立国になった

●ニュージーランドって毎年、観光客が多く訪れる場所といえると思うんですが、日本でも世界遺産に指定された場所ってたくさんの観光客が訪れて、すごくいい反面、たくさん訪れるために起きてしまう環境破壊とか、色々と問題がありますけど、ニュージーランドでもその辺は問題になっていたりするんですか?

青柳光郎さん

「ニュージーランドは観光立国ですね。30年位前には外国から年間で25万人くらいの観光客が来ていたんです。で、1980年くらいになってくると、それが50万人になって、1990年ごろになると100万人になって、2000年に入ると200万人になって、10年ごとに2倍に増えてきているんですね。これは、色々な要素があるんですけど、大きな理由はニュージーランドが観光客が訪れる上で魅力的な国であるということ。それから、ニュージーランド側でも自分たちは観光立国を目指そうという意味で、自然にそういう政策をとるようになってきたこと。“自然に”っていうのは色々な成り行きがあってという意味で、何もしないままという意味ではないんですね。
 一番最初のきっかけといえるのが、1973年にそれまで母国だったイギリスが、EC(ヨーロッパ共同体)のグループに入ったんですね。だから、変な言い方ですけど、ニュージーランドから見ると、母国だったイギリスが自分たちの国よりも、ヨーロッパのほうを大事にするという関係になったんですね。逆にニュージーランドは母国イギリスに依存する経済構造ではなくて、むしろ自前の経済を作っていこう、自前の社会を作っていこうっていう、いい意味のきっかけになったんですね。これが1973年なんです。だから、あとから振り返るとちょうど時期が重なるんですけど、さっき数字を挙げましたけど、1972年〜1973年ごろは25万人だったのが、10年後には50万人になるという、これは観光で自分たちの経済は成り立っていくんだってことを、ニュージーランド人が意識し始めたんですね。で、それに伴って観光客にニュージーランドに来てもらうためには、どういうことをすればいいんだろうかって考えたんですね。
 例えば、遊歩道を整備するとか、あとは、環境破壊をしてしまうと、それまで持っている風光明媚なものがどんどん壊れていくわけですから、自分たちの首を絞めることになるわけですね。だからこそ、自然を守ろうという意識が自然に始まるんですね。例えば、ある島が牧場を作ったがために、木を全部切っちゃって、裸の島になっちゃったところがあるんですね。それは、牧場を始めて生計を立てていくという意味では、木を切ったり焼いたり、草原にするというのは必要なことだったんですけど、時代が変わって、そこが牧場として必要なくなった場所があるんですね。そこは、ほったらかし状態になっていて、これじゃあまずいと。そこで、木を植えて元通りにしようという動きがボランティア活動で始まるんですね。
 具体的にいいますと、北島のオークランド、ニュージーランド最大の都会から船で50分くらいのところにある、ティリティリマタンギ島という島があるんですね。これは今の話のひとつの例なんですけど、10年くらいかけて苗木を29万本植えるんです。これは、政府がお金を出したり、税金を使ってやったのではなくて、その地域に住んでいる人たちが、自発的にボランティア組織を作って木を植えたんですね。で、木を植えるにあたって、疲れる作業ですので、最初からせーのでみんなでやったわけではないんですね。やった時期もあるんですけど、疲れちゃうものだから、ボランティアで参加をする人の数がどんどん減ったんですね。で、ある人たちが考えて、午前中は木を植えて、午後は遊ぼうじゃないかということにしたんですね。先ほど言ったように、風光明媚な場所があちこちにあるわけで、その島も海はキレイだし、空は青いし、とてもキレイなんですね。で、海岸では泳ぐこともできるし、バーベキューもできる。そういう遊びごとを午後やったんですね。遊びとボランティア活動、苗木を植えるということを一緒にやったことによって、それがレジャーになったんですね。そうすると、一時減ってしまった参加者の数がまた増えて、友達を誘ってきたり、家族連れで来たのが、その親戚を連れてまた来たりということで、木を植えるという活動がどんどん盛んになっていくんですね。それが続いて10年くらいで、その島全部を緑に戻してしまったんですね。
 これなんかはすごいなぁと思いますね。誰かが拳を振り上げて、環境問題を訴えたからではなくて、楽しみながら、いい意味での遊び半分で緑の復活を果たしたわけですね。そこは今、観光地になっているんです。絶滅に瀕した鳥というのもニュージーランドにはいるんですけど、そういう鳥のヒナを放って、そこで育ってもらうように鳥の楽園にもしたんですね。今では、とても珍しい鳥が何十種類もいますから、そこに行けばニュージーランドのどこへ行っても見られない鳥が見られるという観光資源にもなったわけですね。だから、ハイキングをして、海を眺めて、空を眺めると同時に珍しい鳥を見る。そして、一日島で遊んで帰る。そういう島に育ったんですね。これはある意味ではニュージーランド全体の象徴なんです」

ニュージーランドが目指す「観光と環境の両立」

●9月に発売になった青柳さんのご本、「ニュージーランドエコ紀行」を読んでいると、水力発電所が地下にあるところもあるそうですね。地下に造るというのも、住民達の運動によって実現しているという、ニュージーランドの人たちが培ってきた意識が高いということを象徴するエピソードですよね。

「そうですね。地下の発電所っていうのは南島の南西部にあるマナポーリっていう湖があって、そこの地下にできている水力発電所なんですね。簡単に言うと、ダムを造って、水力発電で電気を起こそうっていうときに、日本のダムをイメージしていただくと分かりやすいと思うんですけど、せき止めちゃうわけですね。せき止めることによって水位が上がって、それまで木が生えていたところが水没する。もちろん、集落も水没する。こういうことが起きちゃうわけですね。ニュージーランド人の場合はそれを嫌がったんですね。水没するっていうことはそこに生きものがいるわけだから、自然環境を破壊することになるじゃないかと。水力発電も大事なんだけど、そういうやり方でやっていいんだろうかという疑問があって、署名運動が始まり、結果的には政府がその方針を変えたんですね。どういう風に変えたかというと、水位を上げないで、水位は今のまま。一方で電気を起こすためには、タービンを回すわけですから、水を高いところから低いところへ落とさなきゃいけない。それで、どこへ落とすかというと、地下へ落とそうと。そういうことで地下に水を受ける場所を作ったんですね。だから、水位を上げて、上げた湖面から下へ落とすのではなくて、水位を上げないまま、地下へタービンを置いて、そこへ落とすということで、物理的には発電ができるわけですね。それがマナポーリの水力発電所なんですが、今ではニュージーランドの環境運動の原点みたいにいわれている水力発電所なんですね。
 簡単に自然を壊してしまっていいのだろうか、壊さないで、できるだけ救う方法はないのだろうかと。一方で経済発展のためには電力を起こす必要があって、それを両立する方法はないのだろうか。一言で言うとバランスなんですね。いろいろな意味でバランスをとって進めていくという、いい例でもあると思うんですね。エネルギーを水力発電で起こすというのはもちろん必要。だからといって、ダムを造るのをやめてしまうのではなくて、両立する方法を探ろうではないかと。ニュージーランドの観光っていうのは、そこが共通だと思うんですね。観光客に来てもらうことは大事なことなんです。
 僕は行く先々でわざと聞くんですけど、『ニュージーランドの自然を守るんだったら、“観光客は来ないで下さい”と全部ブロックアウトするのがいいんじゃないですか? そうすれば自然は破壊されませんよね』って言うわけですね。そうすると、『いやいや違うんだ。来てもらわなきゃいけないんだ』って言うんですね。どうしてかというと、多くの人は『来てもらうことで、みんながここでお金を使うからだ』って言います。自然を保護するっていうことには当然、お金も必要なわけですね。それに必要なものを環境という産業を盛んにして、その中の何パーセントかを現地に回そうと。『来ちゃだめよ』じゃなくて、『どうぞ来てください。でも、自然を守るという両方のバランスを保ちましょうね』と。観光と環境の両立ですね。こういうことを目指している国なんですね」

●青柳さんのご本「ニュージーランドエコ紀行」で書かれている中で、私たちが観光で訪れたときにニュージーランドにお返しにもなって、思い出にもなる、“旅人の木”というのがあるとうかがったんですが、この“旅人の木”を紹介していただけますか?

青柳光郎さん

「これは、カイコウラという町が始めたんですね。地域全体の環境をよくしよう、同時に観光客にも楽しんでもらおうという両立を目指す町ですから、観光客の皆さんにも何か協力いただけないかなぁという話に転がっていくわけです。そういうときに出てきたのが、苗木を買ってもらおうじゃないかと。ニュージーランド・ドルが少し安くなっていますから、50〜60円を切っていまして、仮に60円だとして、40ドルほど払って、日本円で約2200円くらいで苗木を1本買うんですね。で、それを植えるのに1年で一番いい時期、地面がウェットになっている時期に地域の人がその町に植えてくれるんです。で、植えることによっていずれその木は育ちます。で、育つ途中で木は二酸化炭素を吸い込んで、酸素を吐き出してくれます。木が増えることによって、その地域の二酸化炭素が減り、酸素が増える、地球全体がそうなっていくということを象徴している木なんですね。彼らのネーミングで、“TREES FOR TRAVELERS(ツリーズ・フォー・トラベラーズ)”という名前がついていまして、旅人のための木、私はそれを“旅人の木”と訳してみたんですけど、そういう運動です。
 これが面白いのが、40ドル払って苗木を買って、『あなたの番号は400番ですよ』って領収書に書いてあるんですね。で、国に帰って、現地の人が植えたあとに『植えましたよ』ってメールが来るわけですね。あるいは、メールがない人にはハガキで届くわけです。で、 “旅人の木”のホームページを開いて、その番号を入力すると、自分の木が植えられた場所が地図にポッと浮かび上がるんですね。つまり、『ニュージーランドの南島の真ん中くらいにある、カイコウラという町のどこどこに植えてありますよ』という町の地図が画面に出てきて、『この道の脇に植えてありますよ』というのが地図で分かるんですね。自分の木がどこに植えてもらったかというのが、自分の国に帰ってきてからも分かるんです」

●そうすると、旅人の心情としては、また現地に友達を連れて行って、「これが俺が植えた木なんだよ!」って言いに観光客が戻ってくるっていう作戦にもなりますね(笑)。

「そうですね(笑)。植えたあるイギリス人のおじいちゃんが『この木を植えたっていうことを孫に話すんだ』って言っていましたよ。『そうすると将来、孫が“おじいちゃんが植えた木がここにあるんだ”って来てくれる。それがとても楽しみだ』と、とても楽しそうに言っていましたね。自分の何かを残す、そういう試みにも繋がって、旅に行って、旅先に何か残っているっていうのも、旅行に行ったときの楽しさのひとつですよね。で、この話はカイコウラに限らず、あちこちで始まっています」

エコツアーではなく、マオリツアー!?

●ニュージーランドというと、みなさんもマオリ族のことはご存知かと思うんですが、エコツアーを行なうときには、前々からいたマオリの人達がインタプリターやツアー・ガイドの役割を果たしているとご本に書いてありましたが、実際はどういった感じなのでしょうか?

「ニュージーランドの観光資源っていうのは自然なんですね。ディズニーランドがあるわけではありません。自然をどうやってみんなに見てもらうか、それで旅を楽しんでもらうっていうのが、ニュージーランドの基本なんですが、行く人たちも当然そういうことを求めるわけですね。そのときにマオリの人たちがとてもいい解説者になってくれるんですね。それは、彼らが勉強して、無理矢理頭の中に詰め込んだものではなくて、自然に知っているものを話してくれるわけです。お父さんから教わったもの、おばあちゃんから教わったもの、もっといえば先祖代々から教わったものがあるわけですね。
 ニュージーランドは、もともとは誰も住んでいない島だったんですね。そこへ1000年くらい前に南太平洋から、マオリの人たちがカヌーを漕いで移住したんですね。これが、先住民マオリの始まりなんです。で、1000年くらいかけてニュージーランドのあちこちに分かれて、暮らしています。
 で、18世紀末、19世紀になってヨーロッパからの人達が移住に来る。するとまた次の局面になるんですが、その前段で、先住民だったマオリの人たちがニュージーランドにたどり着いて、川のそばだとか、森だとか、海のそばだとか、そういうところで暮らし始めたんですね。なぜ、川のそばかというと、魚はいるし、森の中にはもちろん木の実はあるし、食べられる植物、鳥、自分たちの生活の糧になるものがいっぱいあるわけですね。海のそば、これも魚が捕れる。そういうところで彼らは暮らし始めて、何百年と千年近い歴史を育んできているわけですね。そのときに、この魚は食べられる、この実は食べられる、この草は薬草になる、あまり捕りすぎると魚はいなくなるということが、自然に身につくわけですね。木を切るにしても不必要なものは切らないわけです。家を建てるために木は切りますけど、それは自分たちが住めるだけの最低限の木を切ればいいわけですね。そういうことをやっていくうちに、自然の知恵を身につけていくわけですね。だから、そういうことが今は観光資源なんです。
 僕たち日本人がヒョイっとニュージーランドの森の中に入って、周りを見渡したって、木が生えていて奥深い。道がある。これしか分かりません。鳥の声は聞こえたけど名前は分からない。そういったことを一つ一つ解説してくれるわけですね。『この木は真っ直ぐ伸びるので、家を建てるのに一番いいんです』とか、『この葉っぱっていうのはお茶になるんですよ』とかね。例えば、カワカワっていう木があるんですけど、その葉っぱを熱湯で2〜3分煮ると、とてもいい香りのお茶ができるんですね。それを飲むと、適度のスッキリ感があって、『それが私たちのお茶になるんですよ』って言って、事前に魔法瓶に入れて準備をして、現場で飲ませてくれるんですね。そうやって実際に飲ませてくれる、香りが楽しめる、森の中でそれをさせてくれる。すると『カワカワってこういう匂いがして、こういう味がして、この森の中で何百年と伝わってきた葉っぱで、それをこの人達はお茶として飲んできたんだ』っていうことを理屈じゃなくて感覚で分かるんですね。これがとても楽しいんですね。
 いわゆるエコツアーって色々な定義がありますけど、エコツアーのとても大事なことって、感覚で分かるってことがひとつあげられると思うんですね。で、『これがその葉っぱだよ』って言ったときに、葉っぱを虫がたくさん食べていて、穴が空いているんですよ。普通、私たちはそれを取らないんですけど、彼らはそれをとってお茶にするんですね。つまり、虫が食べているということは、人間にとってもおいしいものなんだと。もちろん、虫がそばにいるわけじゃないし、葉っぱに虫が噛んだ跡は残っているけど、そんなことは全然害でもなくて、煎じてお茶にするという意味では、普通の葉っぱでも虫が食べた葉っぱでも同じで、『むしろ虫が食べた葉っぱのほうが、私たちにとっていいものなんだよ』っていうことで、『私たちはこれをつまんで持って帰るんだ』って現場で説明してくれるわけですね。
 1人、もしくは日本人の旅行者達だけでその森へ入ったら、そんなことは全然分からないわけですよ。そういう彼らが生活の中で学んできたこと、自然に知っていることを教えてくれるんですね。マオリの人たちと一緒に森に入ることを、マオリの人たちはエコツアーと呼ばずにマオリツアーというんですよ。あるときに『エコツアー、エコツアーって言うけど何なんだい?』って聞かれたんですね。で、解説したら、『なんだ! 俺達がやっていることと同じじゃないか』って言うんですよ。『俺達はエコツアーって言わずに、マオリツアーって呼んでいるよ』って。つまり、エコツアーっていうのは、エコの外側にいる人達が考えた言葉なんですね。内側にいる人たちは毎日がエコですから、改めてエコツアーというまでもなく、普通にマオリツアーって名前をつけていますね。西洋の人から見るとエコツアーだけど、現地の人たちにしてみれば、毎日やっていることだっていう面白い発見がありましたね。エコツアーって言葉ひとつにしても、外側から見ていただけで、内側から見ればこんな解釈もあるんだっていうようなことも感じるんですね」

●青柳さんはこれからもニュージーランド通いは続くと思いますが、今日はほんの一部お話していただいたので、この先も「こんなのがあったよ!」というのがあれば、是非、番組に来ていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 青柳さんの本『ニュージーランドエコ紀行』は、こんな部分に目を向けて旅をすると、いい思い出と共に旅先で何かを学んでくることができるという、そんな旅の提案にもなる一冊。また、ニュージーランドで行なわれている様々なエコな取り組みの中には、日本でも取り入れられるものも多いのではないかと本を読みながら感じました。ちなみに、本に載っているたくさんの写真にもそれぞれの物語があるので、キャプションもしっかり読んで下さいね。
 それにしても“旅人の木”は観光客のリピーターを増やすという意味でも本当にいいアイディアですよね。よく“旅の恥はかき捨て”といいますが、旅先に残すのは恥やゴミではなく、“旅人の木”でありたいものです。私もぜひ一度ニュージーランドを訪れ、マオリツアーに参加し、“旅人の木”を植えて来たいと思います。

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『ニュージーランドエコ紀行』

ジャーナリスト・青柳光郎さん情報

ニュージーランドエコ紀行
七つ森書館/定価1,890円
 旅と地球環境を主な取材テーマとして執筆活動を続けている青柳光郎さんが2001年から毎年取材を重ね、書き上げた本。観光のガイドブックでは見えてこないエコ的な話、住民の意識などが満載。自然を観光資源にしたいと考えている関係者の方にも参考になる一冊。
 

 ニュージーランド政府観光局の公式ホームページhttp://www.newzealand.com/travel/japan/
 青柳さんが書いた記事も掲載されています。

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. AROUND THE WORLD / EAST 17

M2. WONDERLAND / SIMPLY RED

M3. TAKE IT EASY / THE EAGLES

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. BACK TO THE ISLAND / LEON RUSSEL

M5. TRAVELLING BOY / ART GURFUNKEL

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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