2009年5月17日

鴨川自然王国で農的な暮らしをする歌手のyaeさんをゲストに迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンはyaeさんのインタビューです。
yaeさん

 千葉県鴨川の自然王国を拠点に、農的な暮らしをしながら、歌手としても活動されているyaeさんをゲストに、里山での暮らしや歌手活動のことなどうかがいます。

踏んだ土の感触と、
子供のころの思い出がリンクした

●以前、お母様の加藤登紀子さんに「鴨川にいらっしゃい」って言われてから、早何年経ってしまったことやらで、どんどん敷居が高くなってしまって、行けなくなっているフリントストーンなんですけど・・・(笑)。

「いえいえ(笑)、いつでも気軽にいらしてください。私も今、鴨川自然王国の中に住んでいるんですけど、住み始めたのも去年くらいからなんですね。父親(藤本敏夫さん)が鴨川の中で、自分のフィールドというか農業の実践をしていく場所として、大山千枚田で有名な鴨川の平塚というところに、鴨川自然王国というのを建国して、田んぼと畑と自分の小さな家を建てたんですね。それが、私が小学生のときだったんですけど、しょっちゅう遊びに行っては、田舎の大自然の中を走り回ったりして、トンボを捕ったり、カエルを捕ったり、田舎の子と同じように走り回って、とても素晴らしい体験をしたんですね。そのときの体験っていうのが今、自分の中で宝物のように輝いているんですね。子供のときの意識って潜在的に深いところに残っていて、自分が歌手としてデビューしてから、その感覚とか思い出みたいなものが、歌になって出てきたんです。で、『私の原風景だったり、ルーツみたいなものは、鴨川にあるのかな』って気がして、2005年くらいに再び鴨川に移り住んだんですね。それまではずっと都会暮らしだったんですけど、私の父親が亡くなってもう7年経ちますかね。2002年に他界しているので、そのときは農的なものとか全然知らないし、いいとも思っていないし、行きたいなぁとも思っていなかったんですけど、そういう自分のルーツが段々見えてくる中で、ふらって休みがたまたま10日くらいあって、おばあちゃんもいるしなぁと思って遊びに行って、初めて農業体験をしたんですね」

●小さい頃からフィールドがあったのに、子供のころ遊んだ程度だったんですね。

「田植えもそのときに初めてして、感動的でしたね。その土の心地よさ。東京の中心に住んでいたので、ほとんど土がなくてコンクリートじゃないですか。で、私の育った小学校の校庭も土じゃなくて、アーバンコートっていうゴムなんですよね。だから、土を踏むっていう経験が体に全くなかったんですけど、子供のときの思い出で培ったものが、懐かしく思えたというか。でも、みんなありますよね?」

●ありますね。

「心の中に『田舎のふるさとの原風景はこれだ!』みたいな。それが未だに残っているのが、鴨川の山のほうなんですね」

●それを体が思い出したときに、求めたときに、戻れる場所があってyaeさんは幸せですよね。

「そうですよね。本当に素晴らしい財産を私の父は残してくれましたね。素晴らしい思い出もそうだけど、お金では買えないものじゃないですか。今、野菜とお米はほとんど自給できているんですね。で、食の不安もないし、すごくおいしい採れたてのお野菜が毎日たくさん食べられるっていうのは、この上ない幸せというか、感動でしたね」

子供は自然そのもの

●鴨川自然王国で子育てをなさっているじゃないですか。下のお子さんは鴨川に移り住まれてから、出産されていますよね?

「上の子も下の子もそうですね。29歳くらいのときに鴨川に行き始めたんですけど、『あぁ、あと1年で30歳かぁ』って漠然と思ったんですね。で、『やっぱり子供も欲しいし、結婚もしてみたいなぁ』って気持ちがあって、でも東京で自分の将来のヴィジョンっていうのが全く見えなかったんですよ。子供を都会で育てるとか想像できなくて。で、環境のいいところがいいよなぁ、お金もかけたくないなぁって思って(笑)。だって、子育てに1人1千万円かかるって一般的にはいわれるじゃないですか。そんなにお金をかけなきゃ子供って育てられないんだろうかとか思って。私自身が小さいときに自然の中で色々なことを学んでいたと思うし、感動をいっぱいもらったって、そういう思いを子供にもさせてあげたいなって、無意識のうちに考えていたんですね。で、自然の中で子育てして、食べ物をみんなで作ってっていう、子供にとって一番いい教育、食育ができる。まさに、種を蒔いたら芽が出て、実がなって、それをその場で食べたらこんなにおいしいんだよーみたいな。
 今、本当に食って目に見えなくて、どこから来ているのか、誰が作っているのか、種すらどんなものかが分からない。遺伝子の組み換えがあったり、種を取れないF1種っていうのがあったり。普通は種がこぼれて、また次の芽が出てくるものなのに、どうしてこんなに変な世界になっているんだろうって自然の中に行くことによって気がつくんですよね」

●逆に今、息子さん達を見ながら、自分の子供のころの思い出だったりとか、新たな発見っていうのもありそうですね。ましてや、yaeさんはあちこちにもお出かけになっていらっしゃるから、都会の他の子供たちを見ると、自分のお子さんと比較して、驚きや発見ってたくさんあるんじゃないですか?

「そうですね。子育てをしていて、私自身も『自分もまだ子供だ』みたいな部分もあって(笑)、でもそれでいいやっていうかね。子供の目線にどれだけなれるかっていうのが、より自然の中でどれだけ環境と共生できるかみたいな、自然と共に生きられるかみたいなところに、最近みなさんが思い当たると思うんですね。『どうやったら自然に戻れるんだ?』みたいなことを考えていらっしゃる方も多いと思うんですけど、子供って自然そのものなんですよ。だから、子供の視点に帰ることで、色々な世の中の歪みだったり、矛盾だったりに気がつくし、より人間として生きるにはどの環境がいいのかって、本能として分かると思うんですよ。私は子供と一緒にいることで、大切なものを教えてもらった気がします。本来、子供ってそういうものだと思うんですよ。
 今、鴨川の自然王国で、子供の王国というのをやっているんですね。自主保育というのがあって、同じ世代の子供を持つお母さん達が集まって、子供をただ自然の中を走らせて遊ばせるみたいな感じなんです。そういった試みもちょっとずつしながら、そこで保育園ができたらいいなと思っているんですね」

●子供にとっては一番いい環境ですよね。

「もう『泥だらけになっていいよ!』みたいな。今、子供たちってすごいじゃないですか。学習塾に行き、習い事があり、忙しくて忙しくて、ご飯もコンビニで食べるみたいな。今の大人と変わらないぐらい忙しい時間を過ごしていて、『疲れたー』っていうのが口癖になっていたり(笑)、小学生とか幼稚園生が言うんですよ!(笑) 私はそういうのいけないと思うんですね。子供には子供らしくというか、子供のときにしか味わえない、無我夢中で、怪我をして転んでも痛いのも忘れるくらい、時間を忘れるくらい走り回って遊ぶとか。それで、お腹がすいたらおいしいものをいっぱい食べるとかね。どれだけ子供たちを自然環境の中に置いてあげられるかっていうのが大切になってきますよね。今、体験で自然王国に来る都会の子も増えていますね」

人間らしい生き方の答えは土の上にある

●私とyaeさんは歳が離れているんですが、子供時代にお父様とお母様との鴨川の思い出がある分、同じ昭和の人間にさせていただきますけど(笑)、土が身近にあった時代に育っているから、昔の思い出があるからこそ、今、戻りたいとか、体が欲することってあると思うんですけど、今の20代くらいの方から子供たちも含めて、そういう体験もなければ、土の上を素足で歩いた経験もほとんどないまま育った人達っていうのは、戸惑いしかないと思うんですね。要するに、戻れるところがないから。「何かが違う、でも何が違うのか分からない」っていう人たちもすごく多いんじゃないかなと思うんですね。

yaeさん

「そうですね。『具体的にどうしたらいいんだろう?』みたいな。『このモヤモヤ感はどうしたら晴れるんだろう?』とかね。確かに私自身もそういう感覚ありましたけどね。『ここ(都会)にずっと住んでちゃいけないんじゃないか』みたいな。本能としてあるのかもしれないですけどね。でも、ひとつ言えるのは、そのモヤモヤを吹き飛ばしてくれる答えのひとつは、土の上にあるんじゃないかって思ったんですね。土が答えなんだなって。自分の生き方の不安を解消してくれるもの、その答えはきっと土であり、その上に暮らすこと。土に触れることで気付くことっていうのもあったりするんですけど、今、田舎に住んでみて、農的な生き方を選んでみて、ものすごく忙しいんですけど、忙しいって“心”を“亡くす”って書くじゃないですか。でも、心を失う忙しさではなくて、逆に暮らすっていうことのために体を動かすっていう、すごく健康的なんですよね」

●田舎のおじいちゃん、おばあちゃんが元気なのはそこにも理由があったんですね。

「そうだと思います。あのエネルギーって生き方に映し出されるっていうか。デスクワークで一日中パソコンの前で電磁波を浴びて生活しているよりは、全然気持ちのいい忙しさなんですよ」

●生きるために毎日ストレッチングしているようなものですもんね(笑)。

「(笑)。やっぱり人間の体っていうのは、動くために筋肉があるわけで。それ本来のDNAの細胞みたいなものが目覚めるってところはありますよね。人にもよるでしょうけど、モヤモヤがある人は是非、土を触ってみてください。
 5月はちょうど田植えのシーズンなんですけど、うちの王国も田植え体験とかで、土の上を踏むんじゃなくて泥の中に入るっていう体験ができるのはすごい快感ですね」

●最近、アウトドアでの体験教室や自然教室って色々あるじゃないですか。色々な方にお話を聞いていると、子供はもちろんなんですけど、若いお父さん、お母さんが子供以上にはしゃいでいるってよく聞くんですね。

「そうですね。大人になって汚れるってあまりないじゃないですか。私は日々汚れていますけど(笑)。でも、汚れる気持ちよさみたいな」

●是非、親子で、家族全員で泥まみれになって、体験してもらいたいですね。

「そうですね。私が今住んでいる鴨川自然王国というところは、父がこれから団塊の世代の人たちが退職して、第二の人生として農的暮らしをするっていうストーリーを作ったわけですよ。で、鴨川自然王国に団塊の世代の人たちが農的暮らしをするための里山帰農塾っていう塾を開いて、ジャーナリストの高野孟さんが塾長なんですけど、『農的とは何ぞや』っていう講義をしたりして、みんなで討論したりして、農作業体験をするっていう里山帰農塾なんですね。今でも継続してやっているんですけど、そういう団塊世代をイメージしていたんですけど、実際、扉を開いてみると、若い参加希望の方がすごく多かったんですね。10代の子とかもいたりして、ヘソ出しの女の子とかも来たりして(笑)、こっちがビックリするくらいだったんですね。だけど、その子たちは真剣で、『私、こういう暮らしをしたいんです』みたいな。『爪、伸ばしていたんですけど〜』みたいな。『今はこういう生き方がかっこいいかなぁって気がして』とか言って来るんですよ」

●今の若い子、やりますね!

「すごいですよ。意識が高い! しかも意識が高い上に、ややこしいことを考えずにスポーンと来るんですよ。結構いつも女性のほうが多いんですけど、今、研修生で20代の女の子が2人いて、その子も『突然会社辞めてきちゃいました』っていう子がいたりして、『大丈夫なの? 不安じゃないの? 給料出ないよ!』みたいな(笑)。『大丈夫です。お金から開放されたいんです』みたいな感じで来る人が多いですね。今、若い人たちがそういう感覚に移行してきているんだなって感じますね」

おいしい=幸せを感じる

●生き方自体が自然ベースのライフスタイルになっているんだなって思うんですけど、yaeさんは種まき大作戦っていうアクションも起こしてらっしゃるそうですね。

「はい。2007年からスタートしたんですけど、環境に対する運動って世の中で色々起こっていて、東京のほうでも行なっているんですけど、打ち水大作戦っていうのがありまして、打ち水すれば気温も下がるよみたいな。打ち水大作戦の仕掛け人でもある、ハッタケンタローという男が『今度は種まき大作戦っていうのをやろうじゃないか』と。人は食べなきゃ生きていけない。その食をもっとクローズアップさせて、みんなでムーヴメントにして、みんなで楽しんでどんどん広めていこうよ。日本の自給率が4割を切っていてって、ニュースですごくいわれるんですけど、『そのためにどうすればいいのかが分からないんだけど』っていう人たちのために、『こんな方法があるよ』って分かりやすくて楽しくて、もっともっと広まっていくような仕掛けを種まき大作戦でやっています。種まき大作戦の棚田チャレンジとか、はじめる自給とか、米をみんなで作ってみる。米と大豆さえ作れれば、大体の日本の味は作れるだろうみたいな。豆腐ができるし、納豆ができるし、醤油ができるし。そういう意味で大豆を作ろうみたいな話で体験をやるんですけど、一般の人たちがたくさん参加してくださったりして、この間、アースデイで呼びかけたら結構応募があったりして、私のファンクラブでも田植え体験とかやっています」

●楽しそうですよね! やっぱり楽しみながら覚えるっていうのが大切ですよね。特に大人になると「今さら聞くの恥ずかしいな」って思ってしまいがちなんですけど、みんなで一緒にやるんだから、初めてでいいじゃんっていう(笑)。

「そうそう(笑)。私たちはみんな初めてのことばっかりだから、それをみんなで共有して、そこで、おいしい=幸せを感じましょうみたいな。私の場合は幸せ=おいしいなんですよ。『幸せを感じる瞬間ってどんな瞬間?』って聞かれたら、『食べているとき!』って答えますね(笑)」

●(笑)。でも、本当においしいものを食べたときって、つい「ふふっ」って笑っちゃいますよね(笑)。

「幸せ感じますよねー。おいしいケーキを食べているときとか、『あぁー、幸せ!』とか思うんだけど、本当のおいしいを感じられる瞬間を作れるのは自分自身だから、人が作ってくれるんじゃなくて、自分自身で作るっていう。それが体験できるっていう機会をみなさんで企画しながらやっていけたら面白いねって話しています。私のファンクラブでもやっていますので、是非ホームページを見ていただければと思います。www.yaenet.comです」

●今日はどうもありがとうございました。

AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 「子供は自然そのもの」とyaeさんはおっしゃっていましたが、子供には将来苦労させたくないという親心から、小さいころから塾やいろいろな習い事をさせ、もしかしたら子供たちの“自然”な部分を取り除いてしまっているのかもしれませんね。
 私には子供がいないですし、子育ての経験もないので偉そうなことはいえませんが、親御さんたちにはぜひ子供たちに学ばせる“いろいろ”なものの一つに自然体験を加えてあげて欲しいと思います。そしてぜひ子供たちに清々しい疲れを経験させてあげて下さい。

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歌手、yaeさん情報

ライヴ情報
 千葉県鴨川市にある鴨川自然王国で農的な暮らしをしながら、音楽活動を続けてらっしゃる歌手のyaeさん(父:藤本敏夫さん、母:加藤登紀子さん)の今後の音楽活動としては、6月21日(日)に増上寺(東京・芝)で開かれる『100万人のキャンドルナイト』のイベントに出演するほか、6月28日(日)には鴨川自然王国でライヴを行なう予定。詳しくはyaeさんのオフィシャル・サイトをご覧ください。

 yaeさんのオフィシャル・サイトhttp://www.yaenet.com/

鴨川自然王国・会員募集中
 yaeさんのお父さんが築いた多目的農場。美しい里山の自然を背景に「食」と「農」を中心とした、自然共生型の暮らしを実践している鴨川自然王国では会員を募集中です。
 年会費は、一口1万円から。会員になると月一回開催の王国主催イベントに参加できるほか、会員みんなで育てたお米5キロと、大豆、または、お味噌がもらえます。

「里山帰農塾」
 里山での農的な生活を楽しむ方法を学ぶ教室。今年はすでに始まっていますが、6月は5日(金)〜7日(日)まで、7月は、18日(土)〜20日(月・祝)まで。
 参加費は3万円(2泊3日の受講料と滞在費込み)

 鴨川自然王国のホームページhttp://www.k-sizenohkoku.com/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. WIDE OPEN SPACES / DIXIE CHICKS

M2. COUNTRY ROAD / JAMES TAYLOR

M3. RUN, BABY, RUN / SHERYL CROW

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. 田舎の生活 / スピッツ

M5. GOT TO BE FREE / THE KINKS

M6. きがつけば(LIVE) / yae

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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