2009年7月19日

「OCEAN GREEN」を合言葉に海を正す
〜一般社団法人・海洋緑化協会のキャプテン・内田正洋さんを迎えて〜

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、内田正洋さんです。
内田正洋さん

 海の日の前日、7月19日に海洋ジャーナリストの内田正洋さんをゲストに迎えて、内田さんが立ち上げた一般社団法人・海洋緑化協会の設立趣旨や、海の砂漠化を防ぐ方法などうかがいます

 

海の森の減少が、温暖化を加速させた!?

●どうも、ご無沙汰しています。内田さんにちょっと会わないうちに、今年、一般社団法人・海洋緑化協会というのを立ち上げたそうなんですけど、この団体はどういう団体なんですか?

「一言で言うと、コンセプトはOCEAN GREEN。緑の海。豊かな海っていうのは、緑の海なんですよ。海は青いってよく言うけど、ブルーというよりも緑に近い青。本来の豊かな海っていうのは、緑の海であるにもかかわらず、今や海は青くなっている。変な言い方だね(笑)」

●(笑)。要するにブルーになっている?

「そうそう。要するにちょっとダウンしているっていうか、疲弊しているというか、海から生命が消えつつあるって言ったほうがいいかな。そういう海になりつつあって、それを本来の豊かな海に戻さない限り、我々人間にとって都合のいい海じゃなくなる。例えば、あと40年したら海の魚が消えるっていう説とかハッキリ出ているでしょ。それはなぜかっていうと、本来あった海の緑が消えつつあるからなんだよね。それは明らかで、実際に温暖化の原因である二酸化炭素とかの温室効果ガスが大気中に増えているのは、海が吸収しきれなくなっているからじゃないかと言われているんだよね。で、海にはもともと膨大な海の森があったわけですよ。ところが、この100年も満たないくらいで海の膨大な森をどんどん消滅させていったのが、今の人類の文明だって気がついたんですよ。

 要するに、どういうことかというと、例えば、東京湾とか50年前まで藻場とか湿地がいっぱいあったでしょ。これ、俺がデータ的に知っているのは伊勢湾なんだけど、昭和30年代の伊勢湾の藻場、いわゆる海藻が生えているところが、今は100分の1になっているんですよ。瀬戸内海もそうなんだけど、それはなぜかというと、埋め立てをしたからなんだよね。埋め立てをするところっていうのは全部浅い海。で、浅い海っていうのは埋め立てやすい。だけど、浅い海っていうのが実は海藻がいるところ。海藻っていうのは光合成をする植物ですから、光が届くところじゃないと海藻はいないわけでしょ。その浅い海を埋め立てちゃったってことは、要するに藻場を、海の森を全部消滅させてきた。今、日本中全部埋め立てでしょ。そこがあまり見えないから、みんな気がつかないんだけど、藻場をいかに消滅させてきたか。これは世界中同じ動きなんだよね。だから、その藻場が消えたことと、温暖化っていうのはひょっとしたら関係があるだろうなみたいな」

 

俺は海洋緑化で海を正すために生まれた<内田正洋>

●一般社団法人・海洋緑化協会という団体を立ち上げようと思ったキッカケってなんだったんですか?

「キッカケはものすごく簡単なんだけど、ザ・フリントストーンにも出ている漁師の畠山重篤さんっているじゃないですか。彼が去年『鉄が地球温暖化を防ぐ』っていう本を書いたんですよ」

●この番組でもお話をうかがって、目から鱗でした!

内田正洋さん

「目から鱗でしょ?で、彼がそうやって書いて、あれは実は科学的に実証されていることなんですよ。実証されているけど、それが世論になっていないでしょ。ハッキリ言うと、あの本を読んで、俺は『言わなきゃダメだ』っていうふうに思ったわけですよ。で、植林をしていて、陸上の森は50年くらいかかるでしょ。ところが、海藻の世界っていうのは、もともと動物も植物も海から上がってきたわけだから、それと同じように、動物も海から上がってきて酸素を使うようになった。でも、その酸素を作ったのは植物だし、海の植物っていうのは非常に成長が早い。だから、昆布とかでも1年もすればバーンと大きくなるしね。だから、いわゆる海の中の森を、今はあまりにも無視している。気付いていない。で、そこに気付かせることが第一で、藻場を回復させるための養分として、鉄分が大事だということを畠山さんは書いたわけですよ。これはある意味、ものすごく単純なことだから、人間だって鉄分がないと、血液の真ん中には鉄分があるわけだし。鉄分がない限り、人間は生きていけないし、それは当然、植物もそうだし、全ての生命体は鉄分がないと存在しないわけだから。で、鉄って人類はものすごく活用しているでしょ。だから、あらゆる生活、あらゆる産業に鉄って関わっているし、理論として成り立ったのは最近だけど、そこに気づいて実践実証して出来た科学的な理論を、今これだけ地球温暖化がどうのこうのといっていて大騒ぎしているくせに、なんでそこにパッと目を向けられないのかなっていうね。

 そこで突然、俺は畠山さんのところに行ったんですよ。そうしたら、なんと4時間くらいずっと俺に延々喋ってくれたからね(笑)。それで帰ってきてから、『俺はこの鉄の話を広げるために、社団法人を立ち上げます』って言って、翌月くらいに立ち上げたんですよ。それで、その団体を作ったのは、俺は一生これをやるぞっていう話で、まず自分がそれを覚悟しないといけないっていうんで立ち上げたんですね。で、俺はそのまま、畠山さんの本にも出てくる山口県の宇部の鉄人・杉本幹生さんっていう人に会いに行ったんですよ。で、畠山さんの本にも書いてあるのと同じ現場を見せてもらったのね。で、さらに杉本さんが協力して、山口水産高校が3年前からその実験をやっていたんですよ。で、その山口水産高校っていうのが、俺が住んでいた家の隣なんですよ」

●これまた、必然という名の偶然が・・・。

「そう、必然なのよ。俺が泳いでいた仙崎湾でその実験をやっているわけですよ。ここまで自分と接点があるってそのときは気付いていなかったんだけど、行ったらそういう話だったわけね。で、『これはすごいな』と。だから、自分が導かれちゃったっていう話ですよ。だから、もともと仙崎湾で育って、水産の世界に行ったとか、親父が海上保安部だったとか、ずっとシーカヤックをやってきたとか、ホクレアのことを10年やってきたとか、そういうことも全部含めて色々と関係を考えると、『俺はこのために生まれたんだな』っていうくらいに思ったんですよ。しかも名前がね、正洋でしょ。正しい太平洋って書くでしょ。で、『僕は正しい太平洋です』みたいな意識で育ってきたけど、実は海を正すって名前だったんだよねって気付いたわけ。逆だったのよ(笑)」

●雰囲気的には“洋正”のほうだったわけですね(笑)。

「そうそうそう(笑)。『あ、そういうことか!』みたいな。だから、海を正すための名前だったんだね。そこにもちょっとひらめいて、それで『今までやってきたことの全てがここに集約されるな』って考えたっていうのがあるんですよね」


“エコノミー”の話題を“エコロジー”に

●内田さんは一般社団法人・海洋緑化協会の理事長になるんですか?

(笑い出す内田さん)
「理事長になっちゃうわけよ(笑)。でも、恥ずかしいじゃん!(笑)」

●(笑)。でも、肩書き的には理事長になるんですよね?

「そうなんですよね。でも、その呼び方は恥ずかしいから、キャプテンにしてくれる? って言っているんだよね(笑)。日本サッカー協会もキャプテンって言うじゃないですか。川渕キャプテンみたいな。じゃあ、内田キャプテンにしてくださいみたいなね(笑)」

●(笑)。じゃあ、内田キャプテン! この協会では具体的にどういうことをやり、どういうメンバーが揃っていて、これから活動していきたいって考えていらっしゃるんですか?

「今いるメンバー、副理事の連中はみんな金融関係の連中ですよ。で、去年、金融恐慌が起こったじゃないですか。あれを予見していた連中で、要するにお金の使い方を間違っているよねって話なんですよ。で、その連中がすぐに反応したんですよ。そういう連中と一瞬で話が通じたんですよね。この話ってエコロジーの話でしょ。でも、今エコエコって言っているけど、あれはみんなエコノミーの話をしているわけであって、本来のエコロジーの話をしていないんですよ。だからやっぱりエコロジーの話にもっていかなきゃいけない。
 それで、連中と考えている最中ですけど、実はもうすでに横浜市と連携して、実際に鉄を入れる作業をするための口説くっていう立場、行政を口説くっていう立場、そういう関係ですよ。だから、やってみないと話が分からないでしょって。論より証拠だからっていう、そこを誰がやるの? っていったときに、今やる人がいないんですよ。だから、俺達は論より証拠でしょってことを言っていくのよ。じゃあ、あなた達やりましょうよと。我々はそれをサポートするっていうかね。杉本さんなんかが鉄と炭を混ぜたもので、鉄イオンを海に供給するみたいなやり方っていうのは非常に分かりやすいし、海に対してもともとあるものだからなんてことないし。

 これ、アメリカあたりではすぐ大規模にやろうとするんだけど、そこは日本的なやり方で、細かく細かく小さな湾でやったりっていうような、そういうことを積み重ねていくことをやらないとみんな納得しないから。山口県にある水産高校はこの実験結果を、去年の暮れに全国大会で発表したんですよ。で、2位になったの。それをハッキリと実証した経過があって、それでちょっと足りないところがあった。で、あれから半年経ったらさらに実証ができたっていうのもあるんだけど、これって高校生が出来る実験だし、高校生が出来る方法なわけで、その方法を今、日本の水産高校、全国で40校くらいあるけど、その子たちがすぐに出来るわけですよ。お金もほとんどかからずに。だから、そういうことを我々は言っていく。当然、やっていけば結果は出てくるし、そうすると、山口県ではもうすでに漁師さんたちが一緒になってやってくれているんですよ。そういう動きを全国津々浦々に水産高校があるわけだから、その子たちと一緒にやらせるような環境作りっていうのをやっていこうかなという感じですね」

●すごくいいアイディアだし、逆に「どうして今までやっていなかったの?」って疑問だし・・・。

「疑問でしょ? だから、そこをいかに転換するかなんですよ。世論にするっていうことですよ。そうしないことには動かないから、世論にするには実際的な行動が必要だからね。結局、行動する人が畠山さんしかいなかったりとか、杉本さんしかいなかったりしたわけですよ」

●しかも、遠く離れていたりしてね。

「それを、いかにみんなが自分のこととしてやれるかっていう環境を作るように、煽るって言ったら変だけど、『煽りてぇな俺は』っていう感じ(笑)」

 

子孫のためにも、
シーカヤックは自分たちの文化だと自覚することが大事

●今、内田さんは東京海洋大学でシーカヤックの先生もやっていらっしゃるということで、今回「シーカヤック教書」という本を出されました。野田知佑さんが帯に「これはシーカヤックのバイブルと呼ぶべき本だ」と書いています。

「持ち上げすぎですよね!(笑)」
(と、照れる内田さん)

●照れていらっしゃいますけど(笑)、シーカヤックの文化論から始まって、装備とか、ストロークのこととか色々書いてありますね。

「これは論文ですね」

●論文的な長さですよね。でも、イラストもついていて分かりやすい!

「教科書というか、参考書というか、大学のシーカヤックの授業で使うことを念頭に技術論を書いたんですよ。技術のノウハウを書いたんじゃなくて、技術の意味を書いたんですよ。例えば、『この漕ぎ方はこういう意味がある。だからこういう漕ぎ方になる』っていう感じ。例えば、真っ直ぐ進んでいて、前に漕ぐっていうのが99パーセントなんですけど、時には波が荒くて船がひっくり返りそうになるっていうときに、それは抑えなきゃいけないでしょっていう話。抑えなきゃいけないのがこの技術ですよっていう話を書いているだけであって、これを読んだからといって出来るわけではないんですよ。だから、これを読んでその技術の意味を理解するように、シーカヤックの技術全てを日本語にしたんですよ。例えば、フォワード・ストロークってあるんですね。要するに、アメリカから来たわけだから、全部英語で言うわけですよ。それじゃ分からんだろうと。だから前漕ぎにしたんですよ」

●そのまんまで分かりやすいですね!(笑)

「(笑)。バック・ストロークとか、リバース・ストロークとか言うんだけど、後ろ漕ぎだろうと(笑)。ドロー・ストロークとか言うけど、それは横漕ぎだろうみたいな。そういう名前をまず日本語に変えていったわけ」

●日本語で書かれていると、元々シーカヤックの文化って西洋から入ってきたものっていう感じがしていたのが、今後はシーカヤックというものの文化自体が、同じ海洋民族である、海に囲まれた国の民である私たち日本人の文化のひとつとして、もっともっと日本に根付いていくのかなぁっていう気がしました。

内田正洋さん

「はい。そのために書いたんです。野田さんには帯も解説も書いてもらって、そこにも書いてあったんだけど、結局、元々が自分たちのものなんですよ。要するに、シーカヤックって言葉を考えたジョン・ダウドは、『日本人がシーカヤックに気付いたのは非常に遠回りだったけど、これからは日本人がカヤックに対しての責任を持たなきゃいけないポジションにある』と言っているのね。だから、そういう意味で我々の文化として、シーカヤックを捉えていかなきゃいけないと思って書いているんですね。だから、決して西洋の文化じゃないんですよ。シーカヤックを始めた人たちは西洋系の人たちだけど、彼らはアメリカ大陸の先住民族の人たちから学んで、こういうものを始めたわけですから。で、アメリカ大陸の先住民の人たちと我々は非常に近い人たちですから、そういう意味ではシーカヤックというものは我々にとって非常に大事なものだし、ホクレアと同じですよ。ホクレアがハワイの人たちのアイデンティティを作ったように、日本人のアイデンティティの一部をシーカヤックが、特に北の人たちには非常に近いだろうし、だからある意味、我々のためっていうか、我々の子孫のためだね。日本列島にこれから生まれてくる子孫のために、こういうものを自分たちの文化として自覚するというのは非常に大事かなと、シーカヤックをやっていたから気付いたってことですよね。
 だから、ユーミンの曲は『瞳を閉じて』ですけど、俺は瞳を明けて漕ぎ続けてきたら(笑)、海の青さを伝えなきゃいけないっていう気持ちになったわけですよね。シーカヤックをやっていたから気付いたことですよ」

●私たちの子孫、日本の次世代、そして未来を担う子供たちにも、海の青さが目を閉じても浮かぶくらいの青さを伝えていかなければなりませんね。

「そうなんだよね。僕たちの世代はまだ覚えているでしょ。春になるとホンダワラが湾中に生えて、船が動かなくなるような海になってみたいな。それこそ、波が来ても海藻があるから穏やかだったりするわけですよ。そういうのを本当に覚えていて、瞳を閉じたらそういうのが見えてくるんですよね。でも、今の子供たちは見えないわけでしょ。見たことないんだから。だから、そういうふうにせめて30〜40年前の世界に戻さないとっていうのは、これから生きる糧でしょうね」

●ザ・フリントストーンも海洋緑化協会を応援して、あちこちで広めていきたいなと思いますので、今後も色々なイベントがあったら教えてください。

「一緒にやってもいいしね」

●そうですね! キャプテン、フリントストーンと一緒にやりましょう!

「やりましょう!(笑)」

●今日はどうもありがとうございました。

(注) 内田キャプテンによると、今のところ海洋緑化協会では企業・団体としての支援(海洋緑化協会評議委員会、または、サポータープログラム)のみで、個人会員は受け付けていないそうです。なので、個人として協会をサポートしたいという方は、ぜひあなたの会社や周りの企業の参加を呼びかけてくださいとのことです。

 

このほかの内田正洋さんのインタビューもご覧ください。

 

AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 子供のころ、ビーチから海に入ったとき、ヌルヌルした海藻に足を取られるのがとても嫌いでした。でもそんなヌルヌルさんたちが温暖化に一役かってくれるのであれば、おおいにヌルヌルしてもらおうじゃないですか(笑)。
 ちなみに、内田さんだけでなく、ザ・フリントストーンにも大きな影響を与えた気仙沼の漁師さん、畠山重篤さんの本『鉄が地球温暖化を防ぐ』(文芸春秋)をまだ読んでいない方はぜひこの機会に読んでみて下さい。きっと内田さんが海洋緑化協会を立ち上げようと思った理由がわかるはずです。

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内田正洋さん情報

「一般社団法人/海洋緑化協会」
 内田さんが設立、キャプテン(理事長)を務めるこの団体。
本来の緑の海を取り戻すことで、海洋生物を増やし、二酸化炭素を吸収、固定化し、新しいエネルギーまで創造。更には、地球温暖化を効率よく抑制する可能性、という考え方のもと活動する団体。
 尚、詳しくはホームページをご覧下さい。

  一般社団法人/海洋緑化協会のHPhttp://www.oceangreen.or.jp/


新刊『シーカヤック教書』絶賛発売中!
海文堂出版/定価1,470円
 シーカヤックの技術論を綴った本。
カヌー界の重鎮、野田知佑さんも絶賛!シーカヤックの初心者もベテランもぜひ持っていたい一冊。
 

 内田正洋さんの写真ブログhttp://fotopus.com/naviblog/uchida/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. SEA OF LOVE / THE HONEY DRIPPERS

M2. ONCE UPON A TIME / BOBBY CALDWELL

M3. MY DESTINY / LIONEL RICHIE

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. 海へ来なさい / 井上陽水

M5. SHOUT TO THE TOP / THE STYLE COUNCIL

M6. 瞳を閉じて / 荒井由実

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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