2011年4月16日

震災学童疎開「生きるチカラ キッズキャンプ」

 今週のベイエフエム「NEC presents ザ・フリントストーン」のゲストは、清水国明さんです。

清水国明さん
(清水さんのコメントが動画でご覧いただけます

 今回のゲストは、毎年4月にご出演いただき、定点観測をさせてもらっている、芸能界きってのアウトドアズ・マン・清水国明さんです。清水さんは現在、代表を務めるNPO法人「河口湖自然楽校」で東日本大震災によって避難を余儀なくされた子供達を無料で受け入れる震災学童疎開「生きるチカラ キッズキャンプ」を行なってらっしゃいます。
 先日、そんな清水さんを、代々木公園で開催されていた「アウトドア・デイ・ジャパン2011」の会場にたずねて、お話をうかがってきました。

「アウトドア・デイ・ジャパン2011」「アウトドア・デイ・ジャパン2011」
「アウトドア・デイ・ジャパン2011」「アウトドア・デイ・ジャパン2011」
「アウトドア・デイ・ジャパン2011」
 

“いそたのしい”日々

※清水さんは、避難を余儀なくされた子供達を無料で受け入れる震災学童疎開「生きるチカラ キッズキャンプ」を行なってらっしゃいます。清水さんはバスを調達し、物資を積んで、福島や岩手、宮城に行き、帰りのバスに疎開を希望する子供達やご家族を乗せて、河口湖の自然暮らし体験村「森と湖の楽園」まで連れていき、そこを拠点にボランティアの方達の協力を得ながら、子供達の世話をしてらっしゃいます。そのことについてうかがいました。

●子供たちが疎開してきたときと今とでは、表情に変化はありますか?

「僕が迎えにいったんですが、子供たちはマスクをして、下を向きながらバスに乗る列に並んでいたんですね。震災のショックのあとに行っているので、家族が寄り添っているところを引き離す形になるので、『こういうときに親と子を離すべきじゃない』と、色々なところから言われましたよ。ただ、被災した場所の悲惨さを実際に見ると、絶句してしまうぐらいの風景なので、こういうところに子供を置いておく必要がないんですよ。
 逆に、一刻も早く、そこから避難しないと、一番傷つきやすい子供の心の中に深い傷を負わせてしまうんですよね。そうすると、最初の数日間でついた傷って、トラウマとかPTSDとなって、癒すのに何倍もの時間がかかるんですよ。なので、できるだけ早く疎開をしてもらいたいと思ったんです。

 中には『寂しいから嫌だ』っていう親もいるんですが、子供の20年後、30年後に体に与える影響などを考えると、やっぱりここは親がぐっと我慢してもらって、子供を安全なところへ避難させてもらいたいと思いますね。中には、一緒に行くという方もいらっしゃるんですけど、やっぱり子供が一番傷つきやすいから、できるだけ早く子供を避難させるべきだという考えが、少しずつ親御さんのご理解をいただいています。実際に、うちで過ごした人が現地に帰って、口コミで『酷い目にはあわなかったよ』とか『清水国明は悪いやつじゃなかったよ』という評判で、徐々に増え始めていますね(笑)。そういった感じで、送り届けて、お迎えするという形をずっと続けています。」

●震災学童疎開「生きるチカラ キッズキャンプ」なんですけど、具体的にはどういったことを行なっているんですか?

「うちへ招いた子供たちの生きる力が育まれて、『僕が復興させてやる!』というような、たくましい子にしようとして、自分で焚き火をして、飯を作って、掃除をして、魚を釣ってくるというようなプログラムをたくさん用意して待っていたんですが、『これは違うな』と直感的に感じたんですよね。僕は今でも子供たちを鍛えたいと思っているんですが、『今じゃないな』と思ったんです。最初のうちは、こちら側が用意したプログラムを提案する雰囲気じゃなかったですね。
 じゃあ、何をしていたかというと、近くにある富士急ハイランドとか、今回のイベントも子供たちと一緒に朝からバスで来たりしているんですね。あと、魚釣りに行ったり、近所にお祭りがあれば、そこに連れていったりして、ずっと遊んでばかりで、鍛えるプログラムは全くないですね(笑)。だけど、そのスケジュールは、ボランティアさんが音を上げてしまうぐらいのもので、『とてもじゃないけど、体が持ちません!』とか『こんなスケジュールは子供たちもかわいそうです!』などという意見がミーティングに出てきましたね(笑)。
 ただ、自分が体験してきたから言えることがあるんですけど、すごく嫌で、思い出したくもないようなことがあったときって、人間ってじっとしているとダメなんですよね。」

●それは色々と考えてしまうからなんですか?

「そうなんです。僕もすごく辛いときがあったときって、一人になりたくなかったですね。そこで何をしたかというと、毎日忙しいことばかりしていたんです。『何でそんなにバタバタしているんですか?』と聞かれるぐらい、色々なことをしていたんですよ。そのときに『人って忙しくしていると、辛いことを忘れられるんだな』と思いましたね。それから段々と元気が出てきたら、他のことをすればいいんですよ。その経験から、今の子供たちって、嫌でも思い出してしまって夜泣きをしたり、急に大きな声を出したりするんですよね。
 あと、メディアが取材に来て『どうだったんですか?』『お家は? 友達は?』って子供たちに聞いたりするんですが、それで子供たちは思い出して泣き出すんですよ。それはダメですよね。僕たちはそれには絶対に触れないですし、子供たちが言いたいときには、僕たちは徹夜をしてでも聞くんですけど、自分が言いたくなるまで聞いちゃいけないだろうと思って、思い出させないように気を遣っています。」

●だからあえて、次から次へと色々なことをして、忙しくしているんですね。

「そうなんですよ!そういう、忙しくて楽しいということを、僕たちは“いそたのしい”と言っています。そういう、いそたのしいという状況を、今はあえてやっています。楽しいことを毎日たくさんやって、そこから、子供たちを鍛えるプログラムを徐々にやっていこうと思っていますけど、今はまだ、そのプログラムに入れる状況じゃないですね。」

野菜に触って、生き返る!?

※清水さんは震災学童疎開「生きるチカラ キッズキャンプ」以外にも、たこ焼きのチェーン店「銀だこ」と、地元のNPOと一緒に、「東北キッチントレーラー 生きるチカラプロジェクト」を行なっています。温かいものが食べたいという避難された方々の要望に応え、たこ焼きをたくさん配った後、避難所にキッチントレーラーを置いてきて、使ってもらうことにしたそうです。

清水国明さん

「僕はリースしていたキッチントレーラーを『被災地で使わせてください』と借りていた人に頼んだら『タダでいいですよ』といってくれて、タダでいただきました。そのキッチントレーラーを一台、避難所の横に置きました。最初は僕らが使うけれど、僕らが帰るときには『皆さん、このトレーラーを自由に使ってください。お好み焼きやたこ焼き、焼肉を作りたい人はここで作ってください』といって、置いてきました。そうすると、『たこ焼きでも今日一日焼いてみるか』という気分になるんですね。食材は本部からと、僕らが食材メーカーさんから支援していただいた物を使って、被災者の方たち自ら作ってもらうんです。」

●それは、ただ支援されるだけじゃなくて、自立にも繋がってくるから、いいですね!

「このトレーラーでたこ焼きを焼いているとき、現地のおばちゃんに手伝ってもらったんです。野菜を切ってもらったんだけど、『いやぁ、生き返るわぁ!』『私は野菜に触っただけで生き返るわ!』とか言ったんですよ! 毎日料理をするような生活をしてきたのに、急に何もしないで食事を届けてもらうような生活になると、ストレスが溜まっていたんでしょうね。
 それから男の人に『はーい! こっちに並んでー!』と声をだしてもらうようにしてもらったら、おばちゃんたちはがすごく生き生きとしてきたんですね。それを見て『これだな!』と思ったんです。そこで、その避難所の前で焼きそばを作っていた人がいて、そこにお手伝いにいったんですけど、そこにみんな取りに並ぶのかなって思ったんですけど、できた焼きそばをプラスチックの容器に入れて、役所の人が避難所の中に運んでいって、中で寝ている人に配っていくんですよ。でも、『それは違うな』と思ったんですね。僕は外で並ぶと思っていたら『こんな寒いところに並ばせるのはかわいそうだから』と言われたんです。それは親切心からでたものなんでしょうけど、ずっと寝ていて、時間になったら自動的にくる食べ物を食べていたら、美味いものも美味く感じないと思うんですね。

 でも、たこ焼きを作ったときは、ほこりだらけの中、みんな並んだんです。中には『30人前ください!』っていって、自分と、自分の周辺の人の分まで取りにきてましたね。もらえたときはすごく喜んで、みんなで争うように食べていたんですけど、人間の食欲ってそういうものだと思うんですね。だから、食べ物を食べるときも、もっとアクティブに動いてもらうことが必要だなって思いますね。
 だから、今疎開している子供たちも、一つの方針として、魚を食べさせるのではなくて、“魚の釣り方を教える”ということをしています。これを基本として、“自分で生きていく”、“自分の足で立つ”ということへのサポートをしていくことが大事だと思うんですね。手厚いおもてなしをしてしまうと、そのおもてなしができなくなってしまって、自分の力で立たないといけなくなったときに、立てないんですよね。」

 

僕の“天命”

※清水さんは被災した子供達を無料で受け入れ、河口湖の自然暮らし体験村「森と湖の楽園」を拠点に、「生きるチカラ キッズキャンプ」を行なってらっしゃいます。

●この「生きるチカラ キッズキャンプ」はいつまで続けるつもりですか?

「本当はもう期限が過ぎているんですよ。でも、こういうのって、やり始めたら、イベント企画のように期限を設けたらいけないんですよ。受け入れ開始日の前から人は集まりだしたし、出ていく日の前に出ていったりもしていたので、随時出入りする感じで、途切れることがないんですよ。ということは、『これでお終い!』って言えないんですよね。だから、何年でも続けていかないとダメなんですよ。だけど、それが続けていけるかどうかって、皆さんからのご支援にかかっているんですよ。
 うちの場合は、4人送り届けて、6人連れてくるとか、5人帰って、22人来たりしているんですね。そんな感じで、増えたり減ったりするんですけど、そういうニーズがなくなって、支援がなくなるならまだいいんですけど、僕たちのような支援が必要なのに、皆さんからの支援がなくなると、4人送り届けるけれど、2人しか連れてこられないとか、10人送り出すけれど、1人しか連れてこられないとなって、最後には、送り届けるけれど、連れてこなくなって、フェードアウトしていくんですね。そういう風にならないように、僕たちの活動を皆さんに知ってもらって、継続的に支援してくださるような人に協力をお願いしている感じですね。」

清水国明さん

●今日は色々と勉強になりました。

「それにしても、いきなりいい人になっちゃいましたね。ガンになって、手術で取ることになったとき、腹黒いところを取ったから、いい人間になったなんていう話がありますけど(笑)、そのときに、何かやり残したことがあるから、ガンの手術をしても生かせてくれたと思っていたんですね。その“何か”って何だろうなと、この1・2年ずっと考えていたんですね。『もっと遊ぶことがそうなのか』と思って、多毛作倶楽部を作ったり、トライアスロンに挑戦しようとしてみたりしたんですが、今回の震災が起きたときに『これだったのか!』と思って、『これに自分の残った命を注がないと、生かせてもらった甲斐もない』と思ったんです。
 “天命”ってあるじゃないですか。今回のことが僕の“天命”だと思ったんですね。なぜそう思うかというと、自分のミッションに沿って、動いているときって、ものすごい応援がくると言われているじゃないですか。そういう意味では、僕は今、すごく多くの人から応援してもらっているんです。ホームページのアクセス数とか見て、応援してくれている人のエネルギーをすごく感じるんですよね。それは自分が“やりなさい”と言われていることをやっているからだと思うんですね。あと何年やるか分からないけれど、僕の命がある限り、これを完全燃焼するまでやったら、大万歳じゃないかと思ってやっています。」

(このほかの清水国明さんのインタビューもご覧ください。)

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 今回の震災で、心に傷を負ってしまった方も多くいらっしゃるかと思います。特に子供達は大きなトラウマを抱えてしまうのではないかと、私もとても心配をしていました。そんな中、清水国明さんの「生きるチカラ キッズキャンプ」のお話を伺って、ただ避難するだけでなく、子供達の笑顔を取り戻す上でも、素晴らしい取り組みだと感じました。
 今後、長期的にこの活動が継続出来るように、私も出来る限り協力をさせて頂きたいと思います。

INFORMATION

清水国明さん情報

震災学童疎開プロジェクト「生きるチカラ キッズキャンプ」活動支援のお願い

 今回のお話にもあったこのプロジェクトでは、“被災されたご家族に、しばらくの間、被災地を離れ、ゆっくり休養してもらうこと”と、“今回の震災で傷ついた子供たちの心のケアをすること”を目的として活動しています。
 このプロジェクトは、長期的な活動になりますので、活動支援のための義援金ほか、ボランティアや生活物資も募っています。ご協力していただければと思います。

復興チャリティー・イベント開催

 河口湖にある「森と湖の楽園」で、復興チャリティー・イベントを開催することが決定しました!
 支援活動の報告ほか、清水さんのトークライヴ、フリーマーケット、チェーンソー・カービングのショーなどが予定されています。

◎開催:5月3日(火)〜5日(木)
◎申し込みの締め切り:4月20日(水)必着

 震災学童疎開プロジェクト「生きるチカラ キッズキャンプ」およびチャリティー・イベントに関して、詳しくは「森と湖の楽園」のホームページをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. PEACEFUL EASY FEELING / THE EAGLES

M2. WE ARE GOLDEN / MIKA

M3. WHEN TOMORROW COMES / EURYTHMICS

M4. ありがとう / SAKURA

M5. REASON FOR LIVING / RODDY FRAME

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」