2012年7月14日

写真家・上野純さんの「東京・あきるの・里山LOVE」

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、上野純さんです。

上野純さん

 東京の里山にこだわって写真を撮ってらっしゃる写真家の上野純さんは、サラリーマンを経験後、カメラを持って自転車で日本一周の旅を行なったあと、プロの写真家に転向された方なんです。今回そんな上野さんに、大都会・東京に残された里山のお話をうかがいます。

“人と出会える”のが旅の面白さ

※上野さんは写真家になる前に、自転車で日本一周をしていますが、一体どんな旅だったのでしょうか?

「日本の東西南北の端を目指して、日本一周をするという旅でした。」

●それをしようと思ったキッカケってあったんですか?

「20歳から社会人として仕事を始めたんですが、その頃からずっとB-PALのシェルパ斉藤さんの『日本縦断耕運機の旅』というエッセイを読んでいたので、旅への憧れはずっとあったんですよね。何年かして、仕事を辞めることになったので、車で北海道を目指す旅をしました。そして、一度東京に戻ってきて、数ヶ月後には鹿児島を目指して走り始めたんです。
 鹿児島の佐多岬という、本州の最南端にあるところに行ったんですけど、そこに見覚えのある人がいたんですよ。相手も見覚えがあるみたいだったんで、二人で考えていたら、僕が一度車で北海道に行ったときに出会った人が、たまたま佐多岬にいたんですよ。その人は自転車で日本を縦断してきたそうなんですが、それにすごく刺激を受けて、翌年、自分でもやってみようと思ったのがキッカケでしたね。」

●その人もすごいですが、佐多岬で、北海道で出会った人とまた会うっていう上野さんもすごいですよね!

「本当にたまたまだったんですけど、お互いビックリしたことをよく覚えてますね。」

●ちなみに、シェルパ斉藤さんは、この番組によく出演してくださっているんですが、シェルパさんの旅のどういったところに一番惹かれたんですか?

「旅を始める前は、旅というものがどういったものなのか全然知らなかったので、エッセイを読んでて、『こんなにも人と出会うことがあるんだ』って思って、旅行とは違う面白さがあるんだって感じましたね。」

●その面白さが、最南端の佐多岬であったということなんですね! そんな偶然に起きた出来事を経て、自転車の旅をすることになりましたが、その旅はどうでしたか?

「車とはスピードが違いますし、止まりたいところがあったら、自転車だとすぐに止まれるので、風景をゆっくりと見ることができましたね。あとは、人とたくさん出会えましたね。」

●風景をゆっくり見ることができたということは、写真を撮りながら旅をしていたんですか?

「そうですね。気になったものを撮っていましたね。」

●どんなものを撮っていたんですか?

「僕は山が身近にある環境で育ってきたので、海をあまり見たことがなかったんですね。なので、海とか広い空などを撮ってきましたね。」

●日本全国を周ったということですから、海の景色も違ったんじゃないかと思うんですが、どうだったんですか?

「北海道の海と沖縄の海の景色は全然違いましたね。実は、自転車で日本一周をした後、北海道と沖縄にはもう一回自転車で行っているんですが、それぐらい魅力的な場所でしたね。」

●どんなところが魅力的だったんですか?

「北海道は自然がすごく豊かだったんですよね。例えば、キャンプ場で寝ていたら、隣でシカが草を食べている音が聞こえたんですよ(笑)」

●(笑)。それは北海道ならではの体験ですね! 沖縄はどうだったんですか?

「海がすごくキレイでしたね。実際に泳いでみたんですが、海の中の風景もとてもキレイでした。空もすごく広いので、『沖縄じゃないと見られない空だな』と感じましたね。」

今森さんの写真集がキッカケ

※上野さんの故郷は東京都あきる野市ですが、そこはどんなところなのでしょうか?

「西に山があって、北と南には丘陵があって、真ん中には川が流れているところですね。」

●私は一回だけあきる野市に行ったことがあるんですけど、東京と思えないぐらい、豊かな田園風景が広がっていましたね。上野さんは、以前この番組に出演していただいた里山写真家・今森光彦さんにすごく影響を受けたそうですが、何がキッカケで今森さんの存在を知ったんですか?

「昆虫を撮っていると、徐々に今森さんの名前を聞くようになってきたので、それで興味を持つようになって、今森さんの“里山物語”という写真集を買ったのが一番のキッカケですね。」

●その写真集を見て、どんなことを感じましたか?

「それまで里山というものをあまり聞いたことがなかったんですけど、写真集を見ると、人と自然の共存を感じることができて、そこに惹かれましたし、この写真集は滋賀県で撮られているんですが、一ヶ所を掘り下げるところにも魅力を感じましたね。」

●それを見て、「あきる野市もそうじゃないか?」って思ったんですか?

「そうですね。写真集に出てくるような棚田とかはありませんが、それに近いものは残っていることに気付いて、それから“里山”をテーマに写真を撮ろうと決めました。」

上野純さん

●色々な里山がある中で、主にあきる野市の里山の写真を撮っているということですか?

「あきる野市をメインに撮っているんですが、他にも八王子や日の出、青梅など、西多摩全般に行って、風景を探しながら歩いてますね。」

●どんな風景を撮っているんですか?

「田んぼや畑、雑木林など、人の手が入っているところを撮ってますね。」

●それは、自然も残っているんだけど、人の手も入っているところということですね。

「そうですね。里山って、人が管理していることで成り立っているものなので、撮るものも自然と人の手が入っているものになりますね。」

●どんなことを感じながら撮っているんですか?

「昭和30〜40年ぐらいの西多摩の写真集を最近見たんですが、そのときと今を比べると、今の方が里山の風景がなくなってきているんですが、『今見ているこの風景が、このままなくなってしまうのかな? そうなる前に記録しておかないといけないな』という思いがあって、僕が撮る写真は、記録という意味合いもあります。」

●里山がなくなってきているというのは、里山が都会化していっているということですか? それとも、人々の生活が変わってきているということですか?

「宅地開発や丘陵の開発など、主に人の生活のための開発によって、里山の風景がかなり減っていると思いますね。」

●そうすると、そこに住んでいた生き物なども少なくなってしまっているんですよね?

「そうですね。そこに住んでいた生き物たちは、そこではもう暮らしていけないので、確実に昔より減っていると思いますね。」

里山は子供達の遊び場

※上野さんは移り変わっていく里山の風景に対して、こんな想いを持っています。

「僕は小さい頃から、田んぼなどで魚を取ったりして遊んできたので、僕としては、田んぼがある風景は残ってほしいと思いますね。」

●田んぼって、日本にとって、なくてはならないものだと思うんですよね。でも、それも減ってきてしまっているんですね。

「昔に比べると、かなり減っていますね。」

●昔の子供たちは田んぼで遊んでいたんですよね。

「当時の子供たちは用水路で魚を取っていましたね。」

●ゲームとかしなくても、里山にはいっぱい遊ぶ場所があったんですね。今の子供たちは自然で遊ぶ機会が減っていると思いますが、上野さんが撮っているあきる野市や八王子では、子供たちが里山で元気で遊んでいたりするんですか?

「結構見かけますね。カエルを捕まえたり、網を持って用水路で魚を捕まえたり、雑木林や栗林に行ってカブトムシやクワガタを捕まえたりしてますね。」

●それは楽しそうですね!

「楽しいですね(笑)」

●“楽しい”ということは、上野さんも一緒になって遊んでいるんですか!?(笑)

「子供に負けじと頑張ってます(笑)」

●(笑)。一緒に遊んで、そこで写真を撮ったりしているんですね。

「一緒に遊んではいないんですが、同じ場所でカブトムシを探したりしていますね。」

上野純さん

●上野さんは、これからも里山を撮り続けていきますか?

「そうですね。時間があれば、もっと撮っていきたいと思っています。」

●海外で写真を撮ってみたいっていう気持ちはないんですか?

「海外で写真を撮ってみたいっていう気持ちはないですが、主に撮っている故郷の里山とは違うフィールドで撮ってみたいという思いはありますね。」

●どんなところで撮ってみたいですか?

「旅をして、いいところがあったら、そこで写真を撮ってみてもいいんじゃないかなって思いますね。」

●海外で写真を撮っている写真家の方が、この番組に出演してくださってお話をうかがうと、「やっぱり日本の自然の方がいいな」と思うらしいんですね。

「やっぱり、日本人にとって里山というのは、原風景なのかもしれないですね。」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 生物多様性の観点からも注目されている里山ですが、上野さんの写真にはそんな里山の生き物たちの写真もたくさんあります。中でも、私が特に素敵だなと思った写真は、トンボが太陽に向かって羽を広げているものなんですが、まるでトンボが逆立ちをしているように見えるんです! とても心温まる一枚なので、ぜひ上野さんの写真展に行かれた方はチェックしてみて下さい。

INFORMATION

上野純さん情報

写真展『東京里山日記』

 東京の里山にこだわって写真を撮っている写真家「上野純」さんの写真展「東京里山日記」が新宿のコニカミノルタプラザで開催されます。上野さんの故郷、東京のあきるの市や八王子で撮った里山の風景や昆虫、植物の写真など、およそ40点を展示するそうです。

◎開催:7月21日(土)から31日(火)まで
◎詳しい情報:コニカミノルタプラザのホームページ

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. BREAKOUT / SWING OUT SISTER

M2. 空はまるで / MONKEY MAJIK

M3. PHOTOGRAPH / RINGO STARR

M4. SHADOW DAYS / JOHN MAYER

M5. ALWAYS ON MY MIND / WILLIE NELSON

M6. I CAN BUY YOU / A CAMP

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」