2013年2月2日

伝えたい!野生ゴリラの現状

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、ケースケ・ウッティーさんです。

ケースケ・ウッティーさん

 写真家のケースケ・ウッティーさんは、子供の頃から自然や動物が大好きで、たまたま見たテレビのドキュメンタリー番組で、ダム建設のために住処を追われる南米の野生動物の状況を知り、彼らが置かれている実態を広く伝えたいと写真家になる道を選んだそうです。先日、都内で開催していたアフリカで撮影された野生ゴリラの写真展では、絶滅の危機にある彼らの生態などが紹介されていました。今回はそんなケースケさんに、野生ゴリラのお話をうかがいます。

ゴリラは穏やかで寛容

※まずは、アフリカに何種類のゴリラが生息するのか、うかがいました。

「大きく分けると“2種類・4亜種”といわれてますね。ただ、研究が進んでくると、分類が変わってくるんですが、西側と東側で大きく2つに分かれますね。例えば、東側のゴリラに代表されるのは“マウンテンゴリラ”と“ヒガシローランドゴリラ”で、西側は“ニシローランドゴリラ”と“クロスリバーゴリラ”ですね。」

●ケースケさんは、どの種類のゴリラを、どの辺りで、どのぐらいの期間で撮影されたんですか?

「まずウガンダに行って、マウンテンゴリラを撮影してから、隣のコンゴ民主共和国に移動して、ヒガシローランドゴリラを撮影しました。その後に一度ケニアに戻ってからコンゴ共和国に飛行機で行ってから、ニシローランドゴリラを撮影しました。」

ケースケ・ウッティーさん

●全部で3種類のゴリラを撮影したんですね。それぞれのゴリラはどういった環境で住んでいるんですか?

「マウンテンゴリラはご存知の通り、高いところに住んでいるんですね。なので、撮影するときも丘を越え、谷を降りて、また丘を越えるといった感じでしたね。“ゴリラを撮る”という目標がないと、とても大変な道のりでしたね(笑)。ヒガシローランドゴリラはジャングルの中で植物を食べて生活しているので、その点はマウンテンゴリラとあまり変わらないんですが、高い山には生息していないので、移動面で考えると、楽ですよね。」

●とはいえ、山の木々を掻き分けて進んでいかないといけないんですよね?

「そうですね。でも、どのゴリラでも、撮影しにいくときは、毎回必ずレンジャーの方が鉈で切り開いて、道なき道を行きますね。」

●ゴリラを求めて、ジャングルの中を入っていくんですね。一般的に「ゴリラって、時には凶暴なのかな?」っていうイメージがあるんですが、実際に撮影をして、そういったことは感じましたか?

「特に凶暴っていう印象はなかったですね。それよりも、とっても穏やかで、常に何かを考えてる表情をしているんですよ。僕たちは彼らを撮影しようと、彼らの住んでいるところまで行くわけですから、言わば、彼らのプライバシーを侵害していることになるじゃないですか。なのに、それを受け入れてくれる寛容さがあって、とても大人しいっていう印象がありますね。」

1日1回1時間?

※ケースケさんが参加したガイドツアーには、ある規則があるそうです。

「ゴリラって、1日に1回、しかも1時間だけしか見ることができないんですよ。なので、必然的に1日1回1時間の間でしか撮影できないんですね。それで1ヶ国に5日ぐらいいたので、トータル1ヶ国5時間ぐらいの撮影時間で、先日までやっていた写真展で展示した写真は2ヶ国分なので、10時間で撮影したものなんです。」

●結構限られた時間で撮影されたんですね。

「そうですね。しかも、ゴリラに出会ってから1時間なので、そんなにじっくりと対峙することができないんですよね。それに、他の観光客の方と一緒に行くので、多くの方をゴリラを囲んでしまうので、ゴリラはとても嫌がりますよね。」

●その“1日1回1時間”というのは、規則で決められてたりするんですか?

「そうですね。ゴリラに会いにいくことを“ゴリラトレッキング”というんですが、これに参加するには、“ゴリラ・パーミット”という許可証を取得しないといけないんですね。取得したらトレッキングに行くことができるんですが、1回につき最大7〜8人ぐらいなんです。そういう決まりが国際的に定められているんですよ。」

●ゴリラとの距離も決められているんですか?

「距離は7メートルって決められてますけど、ゴリラから近づいてくるのは問題ないんです。自分から7メートル以内に近づくことは禁止です。」

●他に禁止されていることはありますか?

「飲食は、人が食べているものを認識してしまうので、ダメですね。あと、目を合わせると怖がりますので、これもダメです。とはいえ、僕は何度もゴリラと目が合ったことがあって、そのときは大丈夫でしたね。でも、やっぱり時と場合によりますし、撮影していて、僕の心を読んでいる感覚もありましたからね。。」

●ゴリラがケースケさんに心を開いたのかもしれないですね! あと、例えば、“大きな音を出していけない”といったこともあるんですか?

「それもありますね。ゴリラにとっては、人がいるだけでも気になる存在なので、大きな声とか余計な音が出たりすると、怖がったりしますからね。」

●ケースケさんも撮影するときに気をつけたのは、そういったところでしょうか?

「そうですね。人間と同じように、『今嫌がってるんじゃないか?』と、うかがいながら撮影してましたね。だから、ちゃんとゴリラと向き合えたのは、観光客が誰もいなかったコンゴ民主共和国ですね。そこでは僕とレンジャーの方3人ぐらいの構成でした。レンジャーの方はいつもゴリラと対面しているので、ゴリラにとっても安心できる存在だと思います。ただ、僕は部外者なので、最初は警戒されますけど、日に日に心を開いてくれた感覚はありましたね。。」

●そのときにどのぐらいの数のゴリラがいて、オスとメスの比率はどんな感じだったんですか?

「ゴリラは1頭のオスに対してメスがハーレム状態で囲っているんですが、さすがにジャングルの中なので、正確には数えられないんですが、見えた分だけでは7〜8頭ぐらいいましたね。」

●そのぐらいのゴリラが目の前にいると、結構迫力があるんじゃないですか?

「でも、ご飯を食べているときとかはバラバラで食べているので、そこまで迫力があるというわけじゃないですし、食べ終わった後は必ず昼寝をするんですよね(笑)」

ケースケ・ウッティーさん

●人間みたいですね(笑)。

「ゴリラの食べ物は植物質だから低カロリーなので、消化に時間がかかるんですよ。だから、消化を助けるために寝るんですよ。」

●そういう様子を実際に見られたんですね。他に撮影をしているときに印象に残っていることってありますか?

「草を切り開いて、ゴリラに会いに行くわけですけど、見えない状態の中、ゴリラの気配を感じるんですよ。そういったときから、ゴリラはこちらの存在に気づいていて、こちらに対して威嚇をしているんですよ。最初、僕たちのことを受け入れてくれたんですよ。その場にいることを許してもらえたので、もちろん撮影はできたんですけど、僕たちの行動が行き過ぎたのか、そこで威嚇されたんですよ。」

●その距離感というのが、重要なんですね。向こうが許してくれる範囲で、行き過ぎないようにするのが大事なんですね。

「僕たちもそうですが、家族であろうと、自分の部屋にいきなり親が入ってくると、嫌だったりするじゃないですか。それと同じだと思います。もしかすると、僕たちは、ゴリラに対して、それ以上のことをやっているんじゃないでしょうか。」

●そういったことを注意して撮影されてるんですね。

「そうですね。だから、ゴリラを撮影するときは、すごく緊張してましたね。やっぱり、ゴリラは美しいんですよ。」

●どんなときに美しいと思いますか?

「そのときの光の状態にもよりますが、毛並みの具合がキレイと思うときもありますし、目がオレンジ色っぽくて、とてもキレイなんですよ。」

●オレンジ色なんですか!?

「光の状態にもよりますけど、キレイな目をしてましたね。」

●そういったキレイなゴリラを見ていて、どういったことを感じますか?

「心臓がバクバクですよね。それを押さえながら撮影してましたね。」

●それは、恋をしているときのような感じですか?

「『どうしよう!』っていう感じですね。ジャングルの中は暗いので、撮影はすごく大変なので、ブレないように写真を撮ることを心がけますね。」

確実にジャングルは減っている

※ケースケさんが類人猿を主に撮影しているのは、ある想いがあるからだそうです。

「“絶滅の危機にある動物のことを知らせたい”という想いから、写真の世界に入ったんですけど、最初の撮影が、2003年のオランウータンだったんですよね。オランウータンは“四大類人猿”の一種で、他には“ゴリラ”・“チンパンジー”・“ボノボ”がいるんですが、『最初にオランウータンを撮影したので、次はゴリラを撮ろう』と思って、撮影したんですね。」

●改めて、なぜアフリカのゴリラが絶滅の危機に瀕しているのか、教えていただけますか?

「伐採やレアメタルなどの鉱物開発などで人がジャングルの中に入ってきて、居住区や畑などを作るじゃないですか。そうなってくると、森がなくなっていきますので、それで影響を受けたり、食肉目的でゴリラが狩られてしまうっていうこともありましたし、戦争も影響したりして、ゴリラが少なくなっていっているんですよ。 また、人がジャングルに進出してきたり伐採をしたりすることで、ジャングルがどんどんと無くなっていくことで、あるところと無いところに“分断”されてしまうんですが、そうなってしまうと、ジャングルの中を移動できなくなってしまうので、孤立状態になってしまうんですよ。それによって、他のゴリラと接触を持たなくなってしまうので、血が濃くなっていくという問題も発生します。そういうところも影響してくるんですよね。
 あと、僕たちは“エボラ出血熱”があるかと思いますが、あれってゴリラにも感染するんですよ。その影響で、一家族全て死んでしまうということもありますね。」

 
ケースケ・ウッティーさん

●ケースケさんが実際に現地で撮影をされていて、ゴリラが絶滅の危機に瀕しているというのは感じましたか?

「現地に行けば、そういうことはあまり感じませんね。ジャングルって、周りは木しかないんですが、国立公園の入り口付近に鉱山みたいなものがあったりしましたね。」

●他のエリアと比べて、ジャングルは減ってきているんですか?

「ジャングルって広大で、普通の人が見れば健全な森かそうじゃないかなんて見分けが付かないじゃないですか。自然が残っていると思ったら、その森は実は二次林で、原生林とは違っていたということが多々ありますからね。」

●目ではなかなか感じられないけど、着実に進んできているんですね。

「そうですね。衛星から見ないと、実際に少なくなってきている現状って分からないと思いますが、着実に進んでますね。」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 私もケースケさんの写真を拝見させて頂いたんですが、遠くを見つめているゴリラのその優しい表情に心を奪われました。例えて言うなら、母のような慈愛に満ちた表情。まさに、ケースケさんのおっしゃっていた「すべてを受け入れてくれているようだった」という言葉通りでした。遠いアフリカにいるゴリラですが、ケースケさんの写真を通して、もっとゴリアの事を知り、私たちになにができるのか、考えていきたいです。

INFORMATION

オフィシャル・サイトとブログ

 ケースケ・ウッティーさんのホームページには、オランウータンの写真などがたくさん掲載されています。気になる方は是非ご覧ください。また、日頃の活動は、ご本人のブログを見てください。写真付きでまめに更新されていますよ。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. ANIMAL INSTINCT / THE CRANBERRIES

M2. 春よ、来い / 松任谷由美

M3. GORILLA / BRUNO MARS

M4. ISN'T SHE LOVELY / STEVIE WONDER

M5. WHO'S CRYING NOW / JOURNEY

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」