2013年8月3日

カマキリは、さすらいながら狩りをする!?

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、筒井学さんです。

筒井学さん写真

 群馬県立ぐんま昆虫の森の筒井学さんには4年前にも出ていただいたことがあります。そのときは、カブトムシの写真絵本を出されたときで、カブトムシの興味深いお話をしていただきました。そして今回は「さすらいのハンター カマキリの生きかた」という写真絵本を出されたということで、再び番組にお迎えいたしました。ということで今回は、知っていそうであまり知られていないカマキリの一生に迫ります。

カマキリは仕草が独特!?

●今回のゲストは、群馬県立ぐんま昆虫の森の筒井学さんです。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします。」

●先日出版された写真絵本のタイトルが「さすらいのハンター カマキリの生きかた」ですが、この“さすらいのハンター”というのが、すごくカッコよくていいですね!

「このタイトルにするまでかなり悩みましたが、カマキリの生き方を見ていると、さすらいながら狩りをするという印象があったので、このタイトルでいこうと決めました。」

●その生き方に惹かれたから、今回のテーマを“カマキリ”にしようと思ったんですか?

「カマキリという虫自体、物心がついた頃からの付き合いなので、カマキリに対して特別な愛着がある中で、コツコツと撮り溜めたものを出せるタイミングがきたという感じですね。」

●なぜ、カマキリに特別な愛着があるんですか?

「カマキリって、すごく好きな人とすごく嫌いな人の両極端に分かれると思うんですね。嫌いな人って“怖い”というのが主な理由なんですけど、好きな人は“虫にしては仕草が独特で、表情があるところがカマキリらしくて面白い”というのが主な理由なんですね。カマキリが他の生き物と何が違うのかというと、獲物を捕らえるカマを持っているというところはもちろん、首がよく回るのも特徴ですね。他の昆虫は首があまり自由に動かないのがほとんどな中で、上下左右自由に動かすことができるんですね。虫って、何考えているのか分からないものが多い中で、カマキリは仕草から予測できるんですよね。なので、虫の中でも、他の虫とは印象が違うんじゃないでしょうか。」

●そんなカマキリなんですが、日本には何種類ぐらいいるんですか?

「種類はあまり多くなくて、身近で見られるものでいえば代表的な4種類で、小さいものを含めると5〜6種類、そして南西諸島まで範囲を広げると、十数種類生息しています。」

●具体的には、どういった名前のカマキリがいるんですか?

「まず、今回の本のモデルにもなった“オオカマキリ”という名前で、身近にいる中では体が一番大きくてよく見る種類です。そして、都内の中にちょっとした公園緑地があれば、“ハラビロカマキリ”という、少し小さくて黄緑色が鮮やかでキレイなものも見ることができますね。」

●私たちのイメージでは、他の虫を捕って食べるというイメージがあるんですが、実際はどういったものを食べているんですか?

「大きいものでは、バッタやチョウなど、自分の体の大きさの半分ぐらいまでのものを捕まえます。稀にカエルも食べますね。カマキリがまだ小さいときはアマガエルなどに食べられてしまいますけど、大きくなったら、逆に食べてしまったりするんですよね。なので、虫だけを食べるのではなく、カマで捕まえられる範囲のものであれば、どの動物でも捕まえます。」

●小さいときは食べられていたのに、大きくなったら食べるっていうのはすごいですね!

「実際に、僕が草むらを歩いているときに、そのシーンを見たことがありますね。」

●カマキリって面白いですね!

ドラマになるぐらい壮絶なカマキリの人生

※カマキリの一生についてうかがいました。

筒井学さん写真

「冬の間はスポンジのような塊になって冬を越すんですが、包まれたスポンジの中に約200個の卵が入っていて、暖かくなった5月の中旬ころに卵から出てきた小さな幼虫が一斉に出てきます。生まれたばかりのときは、幼虫たちでまとまっているんですが、大きくなるとバラバラになって、そこから1匹での人生がスタートします。」

●比較的早めに1匹になるんですね。

「すぐバラバラになってしまいますね。また、カマキリが生きるということは、他の虫を捕まえて食べていかないといけないんですよね。なので、1匹になったら、自分の力で食べられる虫を探して、捕まえて食べるということを繰り返しながら体を大きくしていきます。お盆を過ぎたあたりの、秋の気配が近づいてきたころに成虫へと羽化します。
 成虫として生きている間になすべきことは、オスはメスを探し出して交尾をして、自分の遺伝子を残すことで、メスはたくさんの獲物を食べて、それを体の中で卵に変換して、卵を生み残すことですね。そういうことを、春から秋にかけて行ないます。そして、冬の訪れと共に一生を終えます。簡単にいえばこういうことですね。ただ、最初に生まれた200匹中、親になれるものは1パーセントいるかどうかなんですよね。」

●一生は1年間なんですね。

「そうですね。ただ、成虫になってから実際に活動しているのは半年間ぐらいですね。これもカマキリの生き方ですね。」

●そう考えると、すごくドラマチックですね。

「これはどんな生き物でも、卵から生まれて親になるまでの間は、人の目に見えていないだけで、それをドラマに仕立てれば、いくらでもドラマにすることができるぐらい壮絶な状況の中で生きているんですよね。」

カマキリみたいにシンプルに生きよう

※カマキリといえば、大きなカマと三角の目だと思いますが、あの目にはどんな秘密が隠されているのでしょうか?

「頭は小さいんですが、目の面積が広いんですね。なぜなら、目で獲物を探すので、よく見えるようにした結果なんですね。」

●どんな風に見えてるのか分かるんですか?

「これだけ科学が発達した現代でも、虫の視点でモノを見ることができないんですね。ただ、様々な学者さんが色々な形で想像した話はあります。でも、人間が見ているものとは全く違うと思います。昆虫は必要な情報だけ得られればいいので、相手との距離と相手の動きが分かれば十分なんですよね。なので、人間ほど鮮明には見えてないと思います。
 それと、意外にも見えてる範囲が人間より広いかもしれないですね。人間は正面しか見えないですけど、カマキリは後ろを少し越えるぐらいまで見えるんですよね。そこにエサになるようなものがあったら、首をそっちに向けるんですよ。それで相手との距離が分かって、カマが届くと分かったら、カマを使って捕まえるといった感じですね。そして、ある学者さんが調べたものでは、首の付け根に毛があって、その毛と首の触れ具合でカマを使う距離を測るそうなんですね。これも、生きるために研ぎ澄まされたカマキリ特有の機能ということになると思います。」

筒井学さん写真

●筒井さんがカマキリを長年観察してきて、一番感じることってどういうことですか?

「この本の中に、メスがオスを頭から食べるシーンがあるんですね。子供向けの絵本にしては、少し衝撃的なシーンだと思ったんですが、これもカマキリの生き方の中では重要なポイントの一つなんですよね。そこで僕なりに感じることというのは、オスのカマキリはメスを見つけると近づくんですが、無防備に飛び乗ったりはしないんですよ。なぜなら、食べられてしまうかもしれないことを分かった上で飛び乗るんですね。交尾を終えた後、うまく降りて逃げていくオスもいるんですが、乗っている間にメスが食べてしまうこともあるんです。
 人間的感覚で虫の生態を見ると『残酷だ』とか『人間だと考えられない』とか思うかもしれませんが、カマキリにとっては、それが普通なことなんですよね。オスは『食べられてしまうかもしれない』と分かっていても、自分の子孫を残すことが仕事であって、やり遂げないといけないことなんですね。その様子を見ていて、寂しい気持ちと、あとがきにも書いたことですが、“生きることに迷いがない”ということを感じますね。食べられても交尾をちゃんとして、遺伝子を残すことが、自分の生きた証なんだというたくましさを感じますね。それぐらい迷いなく生きられれば、人間も強くなれる気がしますね。

 色々な情報とか恐怖感とかあって、余計に考えてしまったりしますけど、カマキリぐらいシンプルに生きればいいんじゃないかなと思いますね。なかなかうまく言えませんが、“カマキリのオスはすごい”ということですかね(笑)。虫は虫の世界でしかないですが、そんなこともこの本を見ながら、色々と感じてもらえればいいなと思いますね。」

(この他の筒井学さんのインタビューもご覧下さい)

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 カマキリは英語でmantis(マンティス)と呼ばれていますが、この語源はラテン語の預言者、または僧侶だそうです。確かに、獲物を狙っている姿はどこかお祈りしているようにも見えますね。そんなカマキリですが、筒井さんはぜひこの本をキッカケに、本物に出会いにいって欲しいとおっしゃっていました。この夏、筒井さんの写真絵本を読んで、草むらの中でさすらいながら獲物を狙っているカマキリ探しに出かけてみてはいかがでしょうか。

INFORMATION

著書情報

「さすらいのハンター カマキリの生きかた」

新刊『さすらいのハンター カマキリの生きかた

 小学館/定価1,365円

筒井さんの新作となる写真絵本。5年の歳月をかけて撮影した決定的な写真や生き生きとした写真、美しい写真が満載。カマキリの一生が分かりやすく、丁寧に表現されていますので、是非ご覧ください!

群馬県立ぐんま昆虫の森

 筒井さんが勤務されている「群馬県立ぐんま昆虫の森」は、里山を復元した広大なフィールドがあり、そこには「昆虫観察館」という大きなドーム状の建物で、標本の展示はもちろん、探検ツアーなどもあり、お子さんが体験しながら楽しめる施設となっています。

オフィシャルサイト

 筒井さんのオフィシャルサイト「昆虫ヴィジュアリウム」には、色々な昆虫の写真が掲載されていますので、是非ご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. VENTURA HIGHWAY / AMERICA

M2. さすらい / 奥田民生

M3. ALONE / HEART

M4. EVERY BREATH YOU TAKE / UB40

M5. WHAT COULD HAVE BEEN LOVE / AEROSMITH

M6. 星のかけらを探しにいこう〜Again〜 / 福耳

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」