2013年12月21日

持て余し気味のTOKIO LIFE!?

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、高野寛さんです。

高野寛さん写真

 ミュージシャンの高野寛さんは、環境やエコに造詣の深いアーティストとしてコアなファンを中心に広く知られています。今回はそんな高野さんが感じてらっしゃる都会暮らしの危うさなど色々お話をうかがいます。

健康も環境も全体のバランス

※高野さんが環境やエコに関心を持つようになったキッカケは、どんなことだったのでしょうか?

「僕、アレルギー体質なんですよ。30歳ぐらいまで喘息がなかなか治らなくて、薬を飲み続けないといけなかったんですね。それをきっかけに色々調べていったら、東洋医学がいいということを知って、針や整体に通い始めたんですよ。そうしたら、かなりよくなったんですよ。そのへんから、アレルギーへの見方が変わってきたし、友人・知人にそういった問題に関心がある人が多かったので、色々とお話を聞いたりしていたんですよ。なので、1980年代半ばぐらいから関心を深めていった感じですね。」

●どういう風に見方が変わったんですか?

「薬を飲んで治すという西洋医学は“悪いところを押さえ込む”という考え方なんですけど、東洋医学は“体全体のバランスを整える”という考え方なんですね。喘息だからといって、気管支に効く薬を飲めばいいということじゃないんですよ。血の巡りだったり、ストレスだったり、睡眠時の状態などの原因が重なりあって喘息が起きるんですね。だから、薬を飲むだけじゃなくて、生活全体を変えたり呼吸法を変えたりすることが大事なんですね。そういった発想の変化が、僕の中で環境問題と繋がっているところがあるんですよね。“世の中全体がバランスを取って、一つの動きをしていく”というのが、環境問題に関心を持った原点じゃないかという気がします。」

●高野さんにとって環境というのは、自分に密接しているんですね。

「キッカケはそこですね。沖縄の与那国島というすごくキレイなところに行ったことがあるんですけど、観光客があまり来ないようなビーチに行くと、海外の洗剤のビンなどのゴミが流れ着いていたんですよ。それを見たときに『環境というのは、日本だけの問題じゃなくて、海を通して世界と繋がっているんだな。やっぱり、全体を考えないといけないんだな』と感じましたね。」

●今回は、そういったことを聞かせていただきたいと思いますが、まずは高野さんが先日リリースした『TOKIO COVERS』から1曲聴いていただきたいと思います。どの曲にしましょうか?

「YMOのカヴァーで、“音楽”を聴いてください。」

※ここで、放送では“音楽”を聞いていただきました。

「YMOは、僕の音楽へのきっかけを作ってくれたバンドで、今回のアルバムのタイトル“TOKIO COVERS”も、YMOの“TECHNOPOLIS(テクノポリス)”という曲の冒頭に“TOKIO”という言葉が入ってるんです。そういった色々なリスペクトを込めて、カヴァーした曲ですね。」

●高野さんにとって、音楽へのキッカケはYMOでしたが、環境に目覚めたのは、ご自身の体のことがキッカケで、「全体的なバランスが大事」だと先ほどおっしゃいましたけど、具体的にはどのようなことなんでしょうか?

高野寛さん写真

「今の世の中って色々なところに情報があって、食べ物もどこにでもあるじゃないですか。そういったものがどこから来てどこに行くのかということをいつも考えながら暮らすようにしていますね。そういったことをちょっと考えるだけで、ご飯がより美味しくなるかもしれないし、『いただきます』や『ごちそうさま』がもっと自然に言えるようになる気がします。できれば、食材を作った人の顔が見えたりすると、もっといいんですけどね。なので、僕はツアーに行ったときに地元の食材で地元の人が作った料理を食べたりすると、『食べ物って、人の手を通じてありがたくいただけるんだな』と実感しますね。都会にいると、どうしてもそういったところがなかなか感じられず、食べ物が“物”になってしまうところがあると思うんですよね。」

●確かにそうかもしれないですね。ちなみに、ツアー中で印象的だった出会いとかありますか?

「いっぱいありますね。海外ツアーに何度か行ったことがあるんですけど、キューバとかは面白かったですね。」

●キューバですか! 現地の人がすごく明るいイメージがあります。

「明るいですね。キューバって、1990年代ぐらいから経済的な事情で農薬が輸入できなくなってしまったらしいんですね。農薬工場が自分の国にないので、農業がほぼ全てオーガニックになったらしいんですよ。」

●日本では、あえてそうしているところがありますけど、そういうわけじゃないんですね。

「そうするしかなかったからそうなったみたいなので、料理は凝ってはいないものの、すごく美味しかったですね。僕らからしたら、一見、質素に見えるかもしれないですけど、それは余ることもなく不足することもない、ちょうどいい感じで暮らしているんだと思って、印象的でしたね。」

●“ちょうどいい感じ”ですか。確かに、私たちのように都会に住んでいると、「ちょうどいいのか」分かりませんね。

「かなり持て余しちゃってるかもしれないですね。それに、都会は“速過ぎ”ますよね。すごく漠然とした話になってしまうかもしれないですが、日本でツアーをしているだけでも、街によって時間の流れ方が違うのを実感します。特に、今って交通機関が発達しているから、ゆったりした街からその日のうちに東京に戻ってくると、同じ日本なのに時差ボケのような感じがして、どこか居心地の悪さを感じることがありますね。」

●その感覚、分かる気がします!

「“TOKIO COVERS”というタイトルのアルバムを作るぐらい、東京に25年間住んでいますけど、色々な意味ですごい街だなって思いますね。それを感じながら、東京の中で気持ちよく暮らせるにはどうしたらいいのかを考えたりします。」

●どうしたらいいんでしょう?

「“情報を取りすぎない”のがいいのかもしれないですね。今、ラジオを聴いている方って、同時にスマホで情報を得ていたりするかもしれないですよね?」

●そうですね。スマホを見ながら音楽を聴いたりしていますね。

「そういう風にしていたら、いつの間にか忙しい気持ちになっている気がしていると思うんですよね。だけど、そこでブレーキをかけられるのは自分しかいないですから。そう言っておきながら、自分に言い聞かせているところもありますけど。そうすると、『無駄なことを少し省いていこう』とか『ちょっと休んでみよう』と思ったりすることに繋がっていくような気がしますね。」

空気だけを通して、歌を届ける

●高野さんは今年デビュー25周年ということで、色々な変化があったかと思いますが、どうですか?

「大きな変化といえば、デビューした頃は、年上のミュージシャンの方々に助けていただいて活動をしていたんですけど、自分が成長するにつれて、同世代から年下のミュージシャンたちと一緒に活動することも増えてきたことがありますね。ライヴも10年以上アコースティック・ギターだけでやっているんですよ。1人でやるライヴってすごく自由にできるので、体に完全に染みこんでいます。それは、デビュー当初ではなかなかできなかったことなので、大きな変化の1つですね。」

●ライヴが段々とシンプルになってきているということなんですか?

「その通りですね! 自分の歌とギターが段々としっかりしてきて、自分の芯が定まってきたので、周りの飾りを取っても音楽ができるようになってきたということかもしれないですね。」

●環境面から考えても、アコースティック・ギター1本でできるライヴってすごくエコですよね!

「そうですね。特に、今やっているツアーのアンコールの一番最後の曲はマイクを使わずに、空気だけを通して、生歌が会場に届くように歌っているんですよ。そういうことがやっとできるようになってきたと思いますね。」

●“空気だけを通して、歌を届ける”って、聴くほうとしては、すごくワクワクしますね!

「そこは、来てくれる皆さんも喜んでもらえているみたいですね。」

●私は“音楽”と“自然”ってすごく近いものだと思っていて、高野さんの環境に対する考え方などが、音楽を通して伝わっているんじゃないかなと思うんですが、どうですか?

「実際に、いくつか環境のことを歌っている曲があるんですけど、僕は今、MCで改めて内容を説明したりはしないんですけど、歌いたくなったら歌いますね。それでどのぐらい伝わっているのかは分からないけれど、それも“音楽のよさ”だと思うんですよ。なんとなく心に残って、ある日それが歌詞とメロディーとなって思い出されたりしたら、それでいいんじゃないかなと思います。環境だけじゃなく、いろいろ伝えたいメッセージが多いんですよ。でも、『それをどう伝えたらいいのか?』を試行錯誤しながら作っていたりするんですけど、この2、3年、『これは歌うしかないんだな』と思い始めていたりしますね。純粋に、音楽を楽しんでもらえたらなと思いますね。」

●そんな高野さんは今、デビュー25周年を記念した全国ツアー中なんですよね?

「2014年1月19日に追加公演が恵比寿ガーデンルームで決まったんですが、ありがたいことにソールドアウトしました。」

●そうなんですよ! 私も行きたかったんですが、チケットがもうないんですよね! その後の予定で、言える範囲で教えていただけないでしょうか?

「この25周年をアニバーサリーイヤーとして1年間続けてみたいと思っていて、今がそのファースト・シーズンなんですね。セカンド・シーズンを2014年の夏以降にやっていきたいと思っています。できれば、もう1枚アルバムを出して、ツアーもできたらと思っているんですが、今はそこまでしか言えないです。」

●2014年もますます楽しみですね! 今回リリースされたアルバムに関して、リスナーの方に伝えたいことはありますか?

「この『TOKIO COVERS』はカヴァー・アルバムで英語の曲もたくさんあるんですけど、自分のコアな部分を出せている気がしているので、新鮮な気持ちで聴いてもらえると嬉しいです。同時に、1999年にリリースした『tide』と、2000年にリリースした『Ride on Tide』というライヴ・アルバムのリマスター版もリリースしました。こちらもまだ聴いていないという方は是非聴いていただけたらと思います。」

●ファンの方にとっては、たまらない1年で、楽しみが尽きないですね!

高野寛さん写真

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 高野さんが環境やエコに関心をもったキッカケが、ご自身の体の健康からだったいうことには少し驚きました。だからこそ、自分に近いこととして環境やエコを考えてらっしゃるんですね。そんな高野さんがおっしゃっていた“ちょうどいい感じの暮らし”という言葉が印象的でした。余すことも不足することもない。そんな感覚を大切に生活出来たら、もっと体にも環境にも優しく生きられるのかもしれないですね。

INFORMATION

「TOKIO COVERS」

デビュー25周年記念アルバム
TOKIO COVERS

 SUNBURST INC/SBST-0002
/定価3,000円

 高野さんのデビュー25周年の記念アルバム『TOKIO COVERS』には今回オンエアしたYMOやビートルズのカヴァー他、ドノヴァン、矢野顕子、ジョージ・ハリスン、ストーンズ、トッド・ラングレン、くるり、ムーンライダーズほか、全16曲のカヴァーが収録されています。高野さんのルーツを垣間見れるアルバムになっています。

オフィシャルサイト

 その他、高野さんの情報など詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. LITTLE SAINT NICK / THE BEACH BOYS

M2. 音楽 / 高野寛

M3. ON CHRISTMAS MORNING / BENNY SINGS & CLARA HILL

M4. CHRISTMAS SONG / GILBERT O'SULLIVAN

M5. DRIVING HOME FOR CHRISTMAS / CHRIS REA

M6. IN MY LIFE / 高野寛

M7. WONDERFUL CHRISTMAS TIME / PAUL McCARTNEY

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」