2015年6月20日

NEC田んぼ作りプロジェクト取材リポート・田植え編

 NECグループでは“人と地球に優しい情報社会の実現”をビジョンに掲げ、色々な社会貢献活動を行なっていて、その中の1つに“田んぼ作りプロジェクト”があります。このプロジェクトは、耕作放棄地を再生し、稲を植え、無農薬・無化学肥料で育て、収穫したお米でお酒を作っています。今年3月には、1年を通して行なわれているこのプロジェクトの締めくくりとなる新酒の蔵出しイベントの取材リポートをお送りしました。
 そして今回はお酒づくりのための初めの一歩、“田植えイベント”の取材リポート! さらに、長澤初の田植えの模様もお送りします。今回のイベントには、自然環境再生のヒントがあるかもしれません。

愛情たっぷり田んぼ

※2004年から始まったこの田んぼ作りプロジェクトは、霞ヶ浦にも棲息する水生植物アサザを絶滅から救う活動を行なっているNPO法人アサザ基金と恊働で進めているプロジェクトで、現在は茨城県牛久市と石岡市の2カ所の田んぼを借りて、無農薬・無化学肥料でお米を作っています。
 今回の田植えイベントは、牛久市上太田地区の谷あいにある田んぼ、いわゆる“谷津田”で行なわれました。この場所は耕すのが大変で放棄されてしまい、荒れ放題になっていましたが、このプロジェクトを進めることで再生され、里山らしい風景が広がっていました。
 まずは、このプロジェクトの中心となって活躍されているNEC・CSR社会貢献室の松下直子さんにお話をうかがいました。

松下さん「おはようございます! きょうは来ていただいてありがとうございます!」

●前回、新酒の蔵出しイベントを取材させていただいたときに「次は田植えのときにお会いしましょう」と言ってましたので、すごく楽しみにしてました! きょうはたくさんの方がいらっしゃってますね。大体何人ぐらい参加されているんですか?

松下さん「今回、100人のグループ社員とその家族を募集したところ、150名ほどから応募がありまして、その中から110人ほど来ています」

●人気のプログラムなんですね!

松下さん「おかげさまで、皆さん楽しみに来ていただいているみたいです」

●目の前に田んぼが広がっていますが、かなり広いですね。どのぐらいの広さですか?

松下さん「面積は2000平米ほどになります」

●奥にある田んぼも合わせてそのぐらいあるんですね。田植えを始めてどのぐらいになりますか?

松下さん「今年で5年目になります」

●年々重ねてどうですか?

松下さん「耕したばかりの初年度は、湧き水が豊富だということもあって、ぬかるみがすごかったです。あとで(田んぼに)入っていただくので分かると思いますが、大人の膝丈ぐらいまでは完全に入ってしまいます。それでも、この5年で土がかなり落ち着いてきて、初めての参加者でも上手に田植えをすることができる環境になったかと思います」

●最初はすごく大変だったんですね。

松下さん「初年度から来ていただいている方たちは大変な思いをしたかと思います。最初は荒れ放題だったので、田んぼにするために草を刈り、根っこを掘って、土を耕すということをずっとやってきました。初年度から来ていただいている方たちは“今年も田植えができるな”という想いがあると思います」

●皆さんの愛情がたっぷりとこめられている田んぼなんですね!

スローシティのまちづくり

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※今回、田植えイベントに参加された牛久市長の池辺勝幸さんにお話をうかがうことができました。牛久市で進めている“スローシティのまちづくり”とはどんなものなんでしょうか?

池辺さん「“地産地消”をやっているイタリアの小さな街をイメージしているんですが、自然と人間が共生していく、昔からの知恵を街全体で今風に再現しています」

●市長は牛久市出身ということですが、牛久市の魅力を1つだけ挙げるとしたら、どんなところですか?

池辺さん「“里山”ですね。これを大事にしていきたいと思っています」

●市長も子供のころはこういった里山でよく遊んでいたんですか?

池辺さん「はい! 田んぼの土の感触もしっかりと覚えてますし、川でうなぎを獲ったりしてました。いつの間にか効率主義でおかしくなってしまったので、こうやって田んぼを再生することで、動植物と共生できる里山にしていきたいと思っています」

●ということは、このNEC田んぼ作りプロジェクトと共通する部分が多いんじゃないですか?

池辺さん「その通りです! なので、一生懸命応援させていただいております」

●このプロジェクトに、どんなことを期待されていますか?

池辺さん「市民の皆さんとNECの社員の皆さんとアサザ基金さんとが一緒になって、一度荒れた田んぼを再生して田植えしていただいています。そして、できたお米をお酒にしたり、食べたりして、自然と人間がより関わって、人間が自然に生かしてもらっていることを実感しています。そういう意味で、牛久市民も足元を見つめ直すいいキッカケになっていると思います」

牛久市長の池辺勝幸さんと記念写真。
牛久市長の池辺勝幸さんと記念写真。

谷津田→きれいな水→霞ヶ浦

※NPO法人アサザ基金の代表・飯島博さんに、なぜ谷津田を再生しようとしているのかうかがいました。

飯島さん「この谷津田という場所ですが、霞ヶ浦の水が湧いているとても大切な場所なんです。ところが、ここは谷あいの田んぼなので耕しにくいし、機械を入れにくいといった色々な事情があって、早くから耕すのをやめて耕作放棄地になってしまったんですね。荒れるとゴミが捨てられたり、藪になってしまったことで、昔いたホタルやトンボが棲めなくなってしまって、霞ヶ浦の大切な水源地がどんどん荒れてしまっている状況が20年以上前からあったんですよ。
 これは地域でも大きな問題になっていて、行政もなんとかしないといけないという認識はあったんですが、実際に手をつけることがなかなかできなかったんですね。
 “誰がやったってうまくいかないなら、新しい発想で取り組んでいこう”ということで、企業とNPOと行政が恊働することによって、今まで実現できなかったことが実現できるようになるんじゃないかということで、この谷津田を再生することにしようと1994年にNECさんへお話に行きました。そのときにNECさんから“是非やりましょう!”と言っていただき、それで始まったのが、この谷津田再生のためのプロジェクトです。これは、行政にとっても民間にとっても初めての取り組みでした」

●スタートしてから12年になるんですよね。

飯島さん「そうですね。これまで取り組んできた成果が上がってきていて、生き物がどんどん戻ってきているんですよ。昔、里山にいた生き物が次々に戻ってきていて、生き物の賑わいが戻ってきました」

●どんな生き物が戻ってきましたか?

飯島さん「多いのはトンボですね。最初は数種類しかいなかった場所に20種類以上見られるようになりましたし、チョウやカエルなどといった色々な種類の生き物が棲むようになりました。まさに“生物多様性”ですね。昔は普通にいましたが、最近では見られなくなったような生き物がまた見られるようになってきていて、本当に嬉しいです!」

●最終的な目標はトキを呼び戻すことですか?

飯島さん「そうですね。昔、あちこちの里山にいたトキを、まずこの地域に呼び戻したいと思っています。この牛久市は“スローシティ”ということで、行政が自然と共生する街づくりを進めていますし、各小中学校で谷津田をどうやって再生して守っていくのかを学習して提案しているんですね。そういう街の中にあるこの谷津田からトキが棲めるようにしたいと思っています」

●ネットワークがうまくいっているから、この谷津田がどんどん再生しているんですね。

飯島さん「そうですね。まさにネットワークの力ですね。自然というのは壁が嫌いだし縦割りが嫌いで受け付けないんですが、人間はそれを押し付けてきたわけですよ。それを僕たちがネットワークの力で消していきます。そのキッカケをNECの皆さんに作っていただきましたので、大変感謝しています」

NPO法人「アサザ基金」の代表、飯島博さん。
NPO法人「アサザ基金」の代表、飯島博さん。
自然や生き物のことなら、なんでも知っているので、子供たちに大人気!
生き物の絵をさっと書いてしまう達人でもありました。

※なぜ、谷津田の田んぼを再生することで、霞ヶ浦の水質がよくなるのでしょうか?

飯島さん「荒地になっていると、水が張れない状態になるんですね。それを田んぼにすると、水が張れて微生物や生き物が棲めるようになって、植物も生えてきて、生き物のネットワークができるんです。その繋がりの中で水質が浄化されていきます。また、この田んぼでは肥料を全く与えません。それは、お酒用のお米を作ることを目的としているので、酒米はできる限り肥料を与えないで作った方がいいんですね。なので、ここでは無肥料で水質を浄化させます。そうなると、霞ヶ浦にきれいな水が流れるようになります」

●なぜ、肥料を与えないと水が浄化されるんですか?

飯島さん「稲は栄養を吸収しないとお米を作らないわけですよ。その栄養分が窒素やリンなんですが、それが霞ヶ浦に流れていってしまうと、湖を汚す原因になるんですね。それを稲が全て吸収してお米に変えてくれるんです」

※このイベントでは、田植えのほかに、“踏耕(ふみこう)”という作業がありました。その“踏耕”について飯島さんから参加者の皆さんにこんな説明があったのでご紹介しましょう。

飯島さん「きょうは皆さんに“踏耕”というものをやっていただきます。昔は鍬(くわ)といった道具がなかったので、牛や人間が踏んでいたんですね。踏み潰してドロドロにして、田んぼのようにして、そこで田植えをしたんです。普通は荒地を田んぼのようにするには、ブルドーザーみたいな大きな機械を使って耕して田んぼに戻すんですが、そうすると、そこに棲んでいるカエルやヘビなどがみんな踏み潰されて死んじゃうんですよ。でも、足で踏んでいくと、少しずつしか進まないので、虫たちがみんな逃げていくんですよね。そうすると、みんな気づくじゃないですか。そうすれば、こちらも避けることができますよね。そうなると、後で残る生き物の種類と数が全然違うんですよ。なので、自然にとてもいいやり方だし、また新しい生き物が棲める場所も作ることができるということで、期待しています」

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長澤、田植え初体験!

※いよいよ、長澤初の田植え体験です! 指導していただいたのは、達人コースの常連、上田尚嗣さんです。

●今、1本植えてみましたが、こんな感じで大丈夫ですか?

上田さん「大丈夫です。100点です」

●やったー! 100点満点もらいました! この調子でやってみますね! 前の人とぶつかる手前まで植えればいいんですね。苗の根元がデリケートだから、気をつけないといけないですね。でも、根がしっかりしてますね。

上田さん「よく見てもらうと分かりますが、籾(もみ)がちゃんと付いてるんですよ」

●本当ですね。ここから発芽したのが分かりますね。こうやって見ると愛おしいですね。頑張って育てよー!

上田さん「心を込めて植えてください。彼らにとって、皆さんが植えたところが生きる場所になりますからね」

●責任重大ですね!

※一生懸命、心を込めて植えていきました。

●おおっ! 結構いい感じじゃないですか?

上田さん「きれいに植えてますよ」

●嬉しいです! こうやって、1つずつやっていくんですね。

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「まだ帰りたくない!」

※この日の田植えイベントは、午前中、神様に豊穣をお願いする“お田植え祭”という神事に始まり、メイン・プログラムの田植え、そしてお昼ご飯をはさんで、田んぼに生い茂った雑草を足で踏んで倒す踏耕や下草刈りが行なわれました。一方で子供たちが網やかごを持って、ザリガニや虫などの生き物を捕まえて観察したりと、盛りだくさんの内容でした。
 ここで、田植え体験に参加された方に感想をうかがいました。まずは竜ヶ崎市にお住まいの新山さんファミリーです。

●どうしてこのプロジェクトに参加しようと思ったんですか?

奥さまの新山裕子さん「去年の稲刈りのときから参加したんですが、すごく楽しかったので、田植えにも参加しようと思ってました」

●今回参加してみて、どうでしたか?

ご主人の新山薫さん「今までは風景としか見ていなかったものに実際に携わってみると、“こういう風にするのか”と実感しながらできましたので、勉強にもなりますし、運動にもなりました」

●美沙希ちゃんはどうでしたか?

美沙希ちゃん「楽しかった!」

※続いて、ジュニア達人の高木啓伍君に聞きました。

●ここで遊んでどうですか?

啓伍君「楽しいです!」

●どんなところが楽しいですか?

啓伍君「色々な虫を捕まえたりするのが楽しいです」

●今まででどんな生き物を捕まえた?

啓伍君「ヘビとか捕まえました」

●これからもここで遊んでいきたいですか?

啓伍君「はい!」

※最後に、川崎市の梁取広幸さんにお話をうかがいました。

●今回、どうしてこのプロジェクトに参加しようと思ったんですか?

梁取さん「子供を連れて田植えをしたいと思っていたので、いい機会だと思って参加しました」

●実際に参加してみて、どうでしたか?

梁取さん「子供たちは今回初めてでしたが、思ったよりちゃんとできたんじゃないかと思います」

●次回も参加したいですか?

梁取さん「また子供たちを連れて参加したいと思っています」

※最後に、NEC・CSR社会貢献室の松下直子さんに再びお話をうかがいました。


ピンクのウエアを着ているのが、NECのCSR・社会貢献室の松下直子さん。

●きょうは本当にありがとうございました! 今回初めて田植えをさせていただきましたが、すごく楽しいですね!

松下さん「そうですか! 足腰は大丈夫ですか?」

●今のところ大丈夫です! 土の中に苗を入れるあの感触はたまらないですね!

松下さん「みんなでここを耕すまで一生懸命やってきたのもありますし、田んぼとしては今年1年の始まりということもありますので、1つずつ丁寧に想いを込めて植えていただいたんじゃないかと思っています」

●今回植えた苗が育って稲になって、収穫できるところも体験できるのは本当に素晴らしいですよね!

松下さん「このプログラムは年間の自然体験型プログラムになっていますので、田植えしたらすぐに終わるのではなく、草取り・稲刈り・脱穀をして、最後にはお酒ということで、(お米作りの)1年間を体験していただくことで、環境や生物に対する気持ちを少しでも感じていただいて、田んぼだけじゃなく、家に帰ったあとでも生き物や自然を大切にするという気持ちを持ち続けていただけたらと思っています」

●今回、子供たちが生き物とかなり触れ合っていましたね。

松下さん「東京から来る方たちが多いので、田んぼはもちろん、土や昆虫を見る機会が少ないと思うんですね。私たちが子供のころは普通にありましたが、そういったことを子供たちが自然を通じて体験して楽しんでもらって、“まだ帰りたくない!”と言いながら帰っていく子供たちを見ると、この活動を継続してきてよかったと思いますね」

●私もまた来たいです!

松下さん「是非来てください! 作業はいっぱいありますので、人手があればあるほどいい環境になりますし、トキが少しでも早く来ることになると思いますので、みんなで力を合わせて、私たちが元気なうちにNECの田んぼにトキが来てくれたらいいなと思って、活動しています」

●私もまたこの田んぼにお邪魔したいと思います。

松下さん「次に来たときは、植えた苗が大きく育って、実をつけているかもしれません。その変化に感動するかと思いますので、是非またお越しください!」

参加者全員で記念写真!みんな楽しそうです!
参加者全員で記念写真!みんな楽しそうです!

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 新酒蔵出しのイベントの時に松下さんから「お米作りの田んぼには周辺環境をモニタリングするセンサーがある」とうかがっていたのですが、今回そのセンサーも見せていただきました。小さなソーラーパネルがついたセンサーで、気温・湿度・気圧・日射量・降水量・風向きなどのデータを10分毎に記録しているそうです。昔ながらの農法と最先端の技術が一緒になったこの田んぼは、これからの農業のモデルにもなりそうですね。


田んぼに設置されているセンサー。
10分おきに水温、湿度、気圧、日射量、風速などを記録する優れもの。

INFORMATION

NEC田んぼ作りプロジェクト

 このプロジェクトについて、詳しくはNECのホームページ内にある紹介ページをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. YOU BELONG WITH ME / TAYLOR SWIFT

M2. IT DON'T MATTER / DONAVON FRANKENREITER

M3. YOU GOTTA BE / DES'REE

M4. (I CAN'T HELP)FALLING IN LOVE WITH YOU / UB40

M5. WHEN WILL I SEE YOU AGAIN / THE THREE DEGREES

M6. a little waltz / DREAMS COME TRUE

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」