2015年7月18日

アシカ、カエルウオ、マンタ
〜多様性に富む世界の海に潜って

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、古見きゅうさんです。

 水中写真家の古見きゅうさんは、国内外の海に潜り、独特な視点で海の中の生き物や美しい海の世界を撮り続けてらっしゃいます。そんな古見さんが先日『THE SEVEN SEAS』という写真集を出されました。タイトル通り、世界の海で撮った奇跡のような素晴らしい写真が掲載されています。今回は古見さんと一緒に7つの海に出かけたいと思います。

アシカは草食系男子!?

●今回のゲストは、水中写真家の古見きゅうさんです。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします」

●古見さんは先日『THE SEVEN SEAS』という写真集を出されましたが、表紙の帯に掲載されているアシカの写真を見た瞬間にキュンとなってしまいました。クリクリっとした黒い目でこちらを見ているようで、すごく可愛いです!

「僕はアシカの写真をたくさん撮ってきましたが、正直言って、一番好きな写真です」

●どこでどんな風に撮影された写真ですか?

「これはオーストラリアのパースという街の沖合いに“カーナック島”という無人島があるんですが、そこに若いオスのアシカたちが集まってくるんですね。オスしかいないので、奪い合うメスがいないから凶暴化しないんですよ。今みたいにいうと“草食系男子”みたいな感じですね(笑)。波打ち際でゴロゴロとしていて、穏やかな時間が流れているんですよね。アシカたちは波打ち際でずっと寝ているので、僕は起きるのをずっと待ってます。彼らは起きて海に入ると、遊んでほしくてねだってくるんですよ」

●人になつくんですね。

「なついているというより、興味があるんだと思います。寄ってきてはどこかに行くみたいな感じの繰り返しです」

●じゃあ、仲良くなったりしたんですか?

「仲良くなったつもりではいますが、実際はどうなのか分からないです(笑)」

●この写真を見ると、友達を見ているような感じがします(笑)。今回の写真集には、他にもたくさんの海の生き物の写真がありますが、どれもすごく近くて、自然な感じで撮影されていますよね。これはどうやって撮影されているんですか?

「僕がいつも心がけていることとして“自分の撮りたい形だけで撮りたくない”と思っています。どういうことかというと、被写体になる生き物たちを受け入れるように撮りたいんです。なので、ひたすら待ちます」

●海の中でひたすら待つのって結構大変なんじゃないですか?

「大変なときもありますし、撮れないときもありますが、それはそれでいいと思っています。だって、カメラを顔の前に持ってこられて“笑って”って言われても笑えないじゃないですか。それと一緒だと思うんですよね」

●人間と同じなんですね。

「と思いたいと思っています」

“まずは受け入れる”インドネシア

※海の中でたくさんの生き物に出会っている古見さんですが、その中でもどんな生き物が好きなのでしょうか?

「僕は“カエルウオ”という魚が好きなんですね。小さくてカエルみたいな顔をした魚なんですが、この写真集の38ページを見てください」

●黄色い縁取りがされている可愛い目をしたカエルウオちゃんですが、キレイなホヤの上に、立っているように見えますが、表情が可愛いですね!

「彼らは海の中でじっとしながら上をずっと見ているんですよ。なので、海の中で一番物事を客観的に見ているのはカエルウオじゃないかと思います」

●そう思って改めて写真を見てみると、じっと何かを見ているような目をしていますね。ちなみに、これはどこで撮ったんですか?

「これはインドネシアのコモドですね」

●そのコモドで撮影された写真でもう1枚キレイな写真がありまして、そのことについてもうかがいたいと思います。サンゴがブルーとオレンジと黄色のグラデーションのようになっていて、手前にはトロピカルな南国の魚が写っていて、カラフルな1枚ですよね。

「竜宮城には行ったことないですけど(苦笑)竜宮城みたいですよね」

●まさにそうですね! コモドに潜ると、この世界が広がっているんですか?

「そうですね。ただ、全体的に見ると、僕たちは大きな魚の群れにしか目が向かなかったりするんですね。でも、ある部分を切り取ってみると、こういう景色が浮かび上がってくるんですよ。だから、広く見るだけがいいのではなくて、ある部分を自ら切り取る目線を持つと色々と見えてくるんじゃないかと思います。世界中の海の中でもインドネシアの海ってすごく好きなんですね。どうしてかというと、こういうカラフルな景色に出会いやすいんですね。なので、インドネシアはオススメです」

●今回の本の中にもインドネシアの現地の人たちが“多様性に富んだ文化だ”ということを書かれていますよね。

「よく読んでいただいてありがとうございます! インドネシアに住んでいる知人から聞いた話ですが、インドネシアはフィリピンやマレーシアなど隣り合っている国が多くて、他国からの移住者も多いので、彼らは“他国の文化や宗教をまず受け入れる”んですよ。そして彼らはそれをもとに新しいものを作り出すらしいんですね。だから、芸術や文化で独特なものが出来上がっていくらしいんですよ。だから、海の中もそういうところがあるんじゃないかと思っています」

●国の文化などが海にも影響してくるというのは不思議ですね!

“お魚が美味しい”日本の海

※『THE SEVEN SEAS』という写真集には日本の海の写真もたくさん掲載されています。世界中の海を潜っている古見さんが感じる日本の海のいいところはどんなところでしょうか?

「日本の海のいいところは、まず“お魚が美味しい”というところです。世界一だと思います! あと、日本の海は環境が豊かです。例えば、北海道と沖縄の海って全然違うじゃないですか。それは入ってくる海流が全く違うわけなんですが、そういったたくさんの海流が混じりあって日本独特のいい海が出来上がってるんですね。だから、美味しい魚もたくさん獲れますし、温かい海にいる魚と寒い海にいる魚が同じ島国にいるのって、考えてみたらすごいことですよね」

●他の国ではそんなところはないんですか?

「無いですね。沖縄にはサンゴ礁がありますが、サンゴ礁がある国に流氷がたどり着くのって、世界中を見ても日本しかないんですよ。生き物の発生源が南からも北からもあるというのは日本の特徴だと思います」

●海の生き物たちにとって、天国のような場所なんですね! あと、日本には四季があると思いますが、海にも四季があるんですか?

「あります。季節によって水温の幅が広いのはもちろんですが、見られる生き物もかなり変わります。冬になれば葉山や伊豆の方では海草が森のように生えてくるんですが、夏になると水温が高くなるので海草が溶けて、南から黒潮に乗って魚たちがたくさんやってきます。そういうサイクルが1年間にあるんですよね」

●今回の写真集にも、森のような海草を写した1枚がありますが、森のようにうっそうと生い茂っていますよね。これを見て「海の中にも森があるんだなぁ」って思いました。

「これが陸上にある森と同じように光合成をして海をキレイにしてくれているんですよね。だから、海草も僕たちが生きていく上で重要な役割を担っていて、海の生き物たちにとってはもっと大切な存在だと思います」

追いかけない

※1年のほとんどを海に潜って写真を撮っている古見さん。普通の人ではなかなかできないことですが、そのことをこんな風に感じているそうです。

「よく“海に潜って写真を撮っているって幸せなことじゃないですか?”ってよく聞かれるんですが、すごくいいんですよ! なので、そういう喜びみたいなものを写真で表していきたいという気持ちがあります」

●今まで撮影した写真の中で一番幸せを感じた写真ってありますか?

「この本の表紙のアシカの写真もすごく嬉しかったですね。アシカって動きがすごく早くて、僕が寄っていこうとすると逃げてしまうんですよ。でも、僕が止まっていると、それを遠くから見ていて、体をクルクルさせながらゆっくり近づいてきたんですね。まさに写真に撮られに来てくれた感じでした。そこで、ファインダー越しに目が合っているときはすごく嬉しいですよね」

●生き物とファインダー越しで通じ合った瞬間なんですね。そういった瞬間はよくあるんですか?

「ありますね。さっきご紹介したカエルウオのときもそうですが、魚たちの目線をすごく意識しますね」

●モルディブでマンタも撮影されてますよね。そのときはどうですか?

「実は僕、マンタが好きなんですね。マンタはエイの仲間なんですが、海の中を羽ばたくように泳ぐんですよ。その動きがすごく好きで、20年近く海に潜っていますが、マンタには未だに憧れがありますね。このときもマンタの方から近づいてきてくれたので、すごくよかったです」

●向こうから寄ってくることってあるんですね!

「逃げられることがほとんどなので、追いかけることを止めたんです」

●深いですね!

「いや、浅いですよ(笑)。追いかけずに待つようにしたんですね。それでも近寄れなかったら“そのときは縁がなかった”と思うしかないなと思っています。僕らが頑張って泳いだところで、彼らの方が何倍も早いですから、絶対に追いつかないですよね」

※この他の古見きゅうさんのトークもご覧下さい。

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 古見さんは世界の海に潜って“海に境界線はなく、海はひとつ”ということも感じたそうです。私も今回の写真を見せていただいて、世界の海、日本の海それぞれ特徴はあるんですが、生き物だったり、色合いだったりどこか共通するものも多くて、世界の海は繋がっているということを改めて感じることができました。ぜひ、みなさんも古見さんの写真集で美しい海の世界をご覧ください。

INFORMATION

THE SEVEN SEAS style=

写真集『 THE SEVEN SEAS

 パイインターナショナル/本体価格1,900円

 インド洋・南太平洋・日本海・南極海などの海で撮った奇跡のような素晴らしい写真が掲載されています。多様性のある海の世界に改めてビックリすると思います!

写真展『TRUK LAGOON〜閉じ込められた記憶〜』

 古見さんは近々もう1冊写真集を出されますが、その発売を記念したこの写真展。8月7日(金)の14時から古見さんのギャラリートークが予定されています。

◎開催:8月6日(木)から8月19日(水)まで
◎会場:キヤノンギャラリー(銀座3丁目)
◎詳しい情報:キヤノンギャラリーのホームページ

 古見さんのその他の情報などは、オフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. SEVEN SEAS OF RHYE / QUEEN

M2. WAITIN' ON THE DAY / JOHN MAYER

M3. SEE YOU AGAIN / WIZ KHALIFA feat. CHARLIE PUTH

M4. NEXT TO YOU / ASWAD

M5. 海 / サザンオールスターズ

M6. RIGHT HERE WAITING / RICHARD MARX

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」