2016年4月23日

レスキューRVパーク
〜災害出動型トレーラーハウス

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、清水国明さんです。

 芸能界きってのアウトドアズマン・清水国明さんは、アウトドアの経験をもとに、山梨学院大学の客員教授として学生さんにサバイバルの技術を教え、現在は“防災”というテーマで授業を行なっています。そんな清水さんが今一番力をいれてらっしゃるのが、トレーラーハウスを災害が発生したときに速やかに被災地に運ぶプロジェクトなんです。そのモデル・ケースとなる“レスキューRVパーク”が河口湖の森の湖の楽園にあるということで、先日、取材に行ってきました。実は熊本の震災が発生する2日前のロケで、奇しくも“災害に備える”という取材内容になりました。今日は“災害出動型のトレーラーハウス”そして瀬戸内海にある無人島“ありが島”のお話をうかがいます。

動く家を備蓄


レスキューRVパークの受付。事務所もトレーラーハウス

※“レスキューRVパーク”がどんなところなのか教えていただきました。

「自然体験施設の隣に新たに作ったものなんですが、トレーラーハウスを10台設置して、ここに泊まってもらったりして“防災のためのアウトドア体験”をしてもらえるようになっています。自然災害に対して自らの力で生き抜けるように力を付けてもらうための施設となっています」

●防災とアウトドアが一度に体験できるんですね。

「そうですね。僕は昔から“100回の防災訓練より1回のサバイバルキャンプがいい”と言っているんですが、それをまさに体験してもらうために、楽しみながら自助力を身につけてもらえたらと思っています。いざ自然災害が発生したときには、その“自助力”と“共助”と“公助”が一体となる必要があるので、それらを底上げしていけば、日本が災害に強い国になるんじゃないかと思って始めました」

●それを体験できる施設が、ここにあるんですね。

「“レスキューRVパーク”という名前を付けました。RVは“レクリエーショナル・ビークル”の略で、アメリカにはたくさんあるんですよ。去年アメリカに行ったら、RVパークがたくさんあって、キャンピングカーやトレーラーハウスが集まったコミュニティがあちこちにあったんですよ。それらがいざ災害が起きたときに被災地に行きます。それをすることによって、あっという間にインフラが整備された住居が集まるというシステムなんですよね。
 日本は残念ながら、災害が起きても仮設住宅がなかなかできず、できたとしても隣のティッシュを抜く音が聞こえるほどプライバシーの問題が出てきたりと、後手後手に回ってしまっているんですよ。どうやら、日本は先進国の中では復興に対して一番遅いみたいなんですね。そのためには、このRVパークをレジャーとして使用して備蓄しておいて、いざというときに全国から寄せ集めれば、あっという間に快適な暮らしができるようになるし、それが必要じゃなくなったら元のところに返せばいいので、そういうシステムを日本中に広めていきたいと思っています」


ここの敷地に10台完備。見た目は「家」そのもの。下に車輪がある。

●トレーラーハウスを実際に見るのが今回が初めてなんですが、家ですね。これが車で引っ張ることで移動できるんですね。

「これをレッカーで引っ張るんですが、30分で移動できるようになっています」

●そんなに早くできるんですね!

「むしろ、そのぐらいで移動できるようにと法律で定められています。とはいえ、10センチの断熱材を使っていて、床暖房・窓は二重サッシと、これで暮らすのに十分な設備が整っています」

●では、中がどんな風になっているのか、実際に見せていただいてもいいですか?

「どうぞ!」

まさに家!

※実際に中に入ってみました。

●お邪魔しまーす! えー! 本当に家ですね! 床がフローリングでしっかりしてますね!

「床暖房で、壁も断熱材を使っています。車の中とは思えないでしょ?」

●はい! キャンピングカーのようなものだと思っていたので、車の中に泊まるイメージがあったんですが、家ですね。

「立ち話もなんですから、お座りください(笑)」

●失礼します(笑)。トレーラーハウスの中にダイニングテーブルと椅子があるなんて思わなかったです!

「今は宿泊用に外していますが、ユニットバスを付けることができるので、被災地に持っていくときには取り付けて使ってもらえるようにします」

●水道・ガスを引くことができる上に、電気も通っていますね。

「ちなみに、ここにあるのは日本製なので、メンテナンスもすぐできるようになっています」

●それはすごく安心ですね!

「細かいことをいうと、屋根が斜めになっているんですが、そうじゃないと雪が降ったときに屋根に積もってしまって最悪の場合壊れてしまうんですが、これだと雪が地面に落ちるようになっているんですね。軽井沢の別荘地だと、屋根が平らなキャンピングカーは停めてはいけないという条例があったりします」

●日本の気候にもマッチした設計になっているんですね。

「そしてなにより、全国各地に引っ張っていくので、丈夫な造りにしておかないといけないんですよね。実は、このレスキューRVパークの隣に僕と国太郎と両親が住んでいるトレーラーハウスがあるんです。そこで4年間暮らしています。大豪邸じゃないけど、慣れれば過ごしやすいですよ。“大きな家に住むと、大きな人間ができる”と昔から言いますが、息子の国太郎はちまちました子になって、細かいことをツッコむようになってしまいました(笑)」


水色のハウスの中。ロフトもあって4〜5人は眠れる。エアコン、床暖房も完備。

※トレーラーハウスを設置したレスキューRVパークを清水さんは全国に広めたいと考えています。

「基本的に、それぞれの地方自治体にRVが分散されて備蓄されてたら日本全国でフォローできるようになるんですよ。ここはそのRVパークのモデルケースにして、ここに視察に来ていただいて、『自分の地域にも設置したい』と思ってもらえるようにしたいと思っています。今では、山口県周防大島町という僕の無人島“ありが島”があるところなんですが、そこの町長さんが気に入ってくれて、議会の方たちにも理解していただいて、そこにも設置していただきました。あと長野や和歌山にも設置していただいていて、ぼちぼち浸透し始めています」

目指せ! 自給自足

※清水さんは瀬戸内海の無人島“ありが島”で、訪れる人たちにサバイバルキャンプを体験してもらったりしていますが、ありが島に通うようになって3年ほどが経って、本当にやりたいことがなにか分かってきたそうです

「無人島を手に入れて何がしたいのかが、ようやく分かってきました。僕は“自給自足がしたい”んですよ。自分で魚を捕ったり、今では塩や醤油を作ったり、稲を植えてお米を作ったり、野菜を育てたりして、お金のかからない生活をしたら、人間として安らかな自由を手に入られるんじゃないかということにようやく気づきましたね。
 これまではお金をたくさん手にすることによって“安心と自由”を手に入れようと思って頑張ってきましたが、儲けようとすればするほどお金に縛られている気がしたんですね『それから開放されるには、お金を使わなくてもいい環境を手に入れて、しかも人に何かをやってもらうのではなく、自分で全て調達できたら、本当の自由を手に入れられるんじゃないか』と思ったんですね。今無人島でやっていることは、その生活を目指しているんじゃないかと思えてきたんですね。もちろん後付けですよ(笑)。“なんでこんなことをしているのか?”と考えたら、お金をなるべく使わなくて、しかも好きなことをしている。好きなことをしていると、誰かが来たときに楽しんでくれてお金をくれたりしてくれるんですよ。好きなことで誰かを喜ばせてお金を多少いただいて生活していけるという暮らしぶりができたら、“世の中金じゃない”っていうことが言い切れますよね。そういうことを実践しているところです」

●ありが島では、自給自足の生活で回せそうな感じですか?

「おかげ様でこれまで色々な人の協力を得て、ソーラーパネルで電気を溜めるので使い放題だし、水はポンプで井戸から汲み上げるのでお金はかからない、食べるものは自分で作るから、お金が全然かかりません。飛行場からありが島に行くための船のところまで車で1時間ちょっとぐらいかかるんですが、僕の親父が高齢で免許を返上しないといけないぐらいなので、その車を移動用として使っているんですが、駐車料金が月4,000円なんですよ。僕が東京で仕事で車で移動していると1日で4,000円ぐらい使っているので、『こういう暮らしってあるんだなぁ』って思いますね。月4,000円で停めている駐車場に車を停めて、シニア料金で飛行機に乗って、魚を釣ったり野菜を作ったりしながら生活をしているといった感じです。家も仲間の協力を得てログハウスを造ったので、衣食住を自分の力でできると、初めて自由になれるのかなって思いますね」

●お金じゃないんですね。

「結局、なんのために努力していたのかというと、“自由になりたかった”んですよね。嫌になったら嫁さんからも逃げてたからね(笑)。そういう、自分を縛るものがあるのが嫌なんですよね。他人に何かされるのではなく、自らすることが好きだし、それが自由だとすると、『やってみよう!』と思いますね」

“草のことを云う”芸能人

※清水さんがプロデュースしたありが島は、住んでいるのはヤギだけの何もない島。決して交通の便も良くないこの島に人は来るのでしょうか?

「それが来るんですよ! あるとき、ボランティアでガイドしているような女性の方たちが団体で15人ぐらい来るということでお迎えしたら、全員50代以上なんですよ(笑)。うちには絶景ポイントがあるので、そこに案内しようとしたら、みんな途中でリタイアしました(笑)。そういう人たちが最終的に自然と共に暮らす生き方があるみたいなんですよ。だから、この暮らしに関心を持って来てくれてますね」

●その方たちはそこで色々な体験をされて、どんな感想をおっしゃっていましたか?

「『ここで暮らしたい!』とか『こういう生活に憧れてた』って言ってましたね。まぁ、8割ぐらいお世辞だと思いますが(笑)。中には『国明さんの顔を見にきた』っていう人もいたんですが、そんな人たちにお茶を出したり、貯めてたアワビやサザエやカキを焼いて出したら、感動してくれましたね。
 皆さんご存知じゃないかもしれませんが、僕は芸能人なんですよ(笑)。芸能人の生き方って、歌や踊りが上手かったり顔がよかったり芝居が上手いとか色々あるじゃないですか。そういうところに憧れを持ってもらわないと存在できないんですが、僕はその生き方に関心を持ってもらっているということで、そういうところも芸能人かなと思っています。芸能の“芸”って、くさかんむりに云うって書くじゃないですか。“草のことを云う”っていうことで、自然のことを伝える芸能人がいてもいいんじゃないかと思っています」

●これからもそういうことを発信していくんですね。

「そうですね。そして、この島はインターネットとか入らないので“無ネッ島”とか言ってますけど、今後サマーキャンプを予定してるんですが、ゲームにハマっている人たちがそこで1週間ぐらい過ごしてくれたら、多分立ち直ると思うんですよね。国太郎がまさにそうで、無人島にいる間は一度もゲームしないんです。帰りの新幹線とかに乗るとすぐゲームしますが(笑)。そういったヴァーチャルな世界じゃない、リアルな世界での感動を身につけて、そういったことが分かった上で成長していくと、それらを後押しするようなパワーが秘められるんじゃないかと思っています」

●ありが島は、お子さんにもオススメですね!

※この他の清水国明さんのトークもご覧下さい

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 アウトドア施設として活用できるトレーラーハウスが全国に備蓄され、災害があったときにはそのトレーラーハウスが避難所として活躍する。今後そんなシステム作りが本当に必要になってくると、今回改めて感じました。先日、熊本に向けて出発したトレーラーハウスを、私も微力ながら応援させて頂きたいと思います。

INFORMATION

オフィシャル・ブログ

 清水さんのブログには先日出動したレスキューRVパークの今後の動向も含め、清水さんの最新の活動の情報などが載っています。是非ご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. 遠くまで / DO AS INFINITY

M2. DRIVE MY CAR / THE BEATLES

M3. BOOM! / MAIA HIRASAWA

M4. FIGHT SONG / RACHEL PLATTEN

M5. FREE / DONAVON FRANKENREITER feat. JACK JOHNSON

M6. 青春旅情 / あのねのね

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」