2016年8月20日

長野県信濃町「癒しの森“森林セラピー”」体験リポート
〜忘れたものを取り戻す〜

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、河西恒さんです。

 長野県上水内郡(かみみのちぐん)信濃町は全国に先駆け、一歩進んだ森林セラピーを行なっています。そのきっかけとなったのが、信濃町在住の作家C.W.ニコルさんです。
 今週はそんな「癒しの森」プログラムの体験リポート! 森林メディカル・トレーナーの河西恒さんの案内のもと、黒姫高原の深い森を散策しながら行なった森林セラピーの模様をお送りします。

さあ、森の中へ

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●今回は“森林セラピー”を体験するということで、黒姫高原にある黒姫童話館の前に集合しました。案内していただくのは、森林メディカル・トレーナーの河西恒さんです。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします」

●早速ですが、私たちの後ろに石のベンチがあります。これはなんですか?

「ちょっとこれを見てください」

●文字が彫られていますね。“忘れたものを思い出すまでどうぞ…”と書かれています。これはどういうことですか?

「この童話館には“ミヒャエル・エンデ”という作家の作品がたくさんあるんですが、彼の代表作に『モモ』というものがあります。それは時間泥棒から時間を取り戻す少女の物語なんですが、これから体験していただく森林セラピーが、その“忘れたものを取り戻してもらいたい”という想いでやっていることなので、これはその象徴です」

●そういうことなんですね! 私も忘れたものがたくさんあると思うので、たくさん取り戻したいですね! 今回はよろしくお願いします!

※今回のコースは“御鹿池”という池をぐるっと周るコースで、約1.2キロ、所要時間は1時間半ぐらいです。それでは出発です。

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「今、道をまっすぐ進んでいるんですが、ここで右側の森の中に入ります」

●え? 道がありませんが入れるんですか? 木のトンネルのようなところを通っていますが、道が全然ありませんよ!? 入っちゃっていいんですか!?

「大丈夫です。入り口だけワサっとしていますが、入ってしまえばそうでもないですよね。本格的に森の中に入る前に、体をほぐしましょう。自分の呼吸に意識を持ってください。普段やっている鼻から吸って口から吐くことに意識を向けてみましょう。呼吸をしたまま、体もほぐしましょう。手を合わせていただいて、(体を)上に伸ばしましょう。呼吸は止めないでくださいね。
 この森の中でストレッチをしていただきましたが、周りに生えているのはスギなんですね。葉っぱや枝先、幹から“フィトンチッド”という薄いアロマオイルみたいなものが出ているんです。この木は虫に食われて腐らないように、自分の体を守るために出しているんです。それを呼吸によって人間の体内に入れると、脳内にα波が出てきたり、精神的にバランスが取れたりという研究結果が出ていたりします。なので、ここで準備体操をするだけでもリラックスできます」

●すごく山奥まで行かなくても、森の入り口で深呼吸するだけでも森林セラピーの効果は得られるんですね。

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※さらに進んでいきます。途中で、こんな質問をしてみました。

●河西さんの“森林メディカル・トレーナー”という肩書きですが、これは資格になるんですか?

「これは、森林セラピーに取り組んでいる、ここ信濃町独自で認定している資格です」

●気になるのが“メディカル”という言葉が入っていることなんです。

「今まで“森林浴”という言葉はありましたが、それに科学的な実証を積み重ねてきています。例えば、先ほどフィトンチッドのお話をしましたが、あれも実際に体の中に入れると、どういう効力があるのか論文もあります。有名な話だと“ナチュラルキラー細胞”ってあるじゃないですか。あれは3時間ぐらい森の中を歩くと活性化することが分かっていて、その活性の度合いがだいたい1ヶ月なんですね。なので、来月お待ちしていますっていう話にはなるんですけど(笑)。では、また横に逸れましょう」

●また道のないところに入っていきますね(笑)。

「遠くの方から水が落ちる音が聴こえませんか?」

●確かに聴こえますね。

「あの音を頼りに近づいてみますか」

●森の中では耳を研ぎ澄ませながら歩くと、色々なことに気づきますね。

「都会で満員電車に乗っている方は五感を閉じていないと乗っていられないじゃないですか。そういう方をこういうところに案内しても、こちらから促さないと気づけないことが多いんですね。なので、植物に触ってもらったり、匂いを嗅いでもらったりしてもらうと、段々と案内をしなくても気づいてくれるようになるんですよ。そうなると、こちらとしては(心の中で)ガッツポーズを取っています(笑)」

※小さな滝が見えてきました。

●あ、見えちゃいました! 奥にありますね!

「そばまで行きましょうか」

●行きましょう! 滝ですね! いいですね! マイナスイオンを感じている気がします。

「マイナスイオンももちろん、水の粒がより充満して濃くなっていますし、この周りにはスギや広葉樹もあるので光合成をしているじゃないですか。なので、すぐ傍らにできたての酸素があるということになりますよね」

●それは気持ちいいわけですね! なんか段々と体が軽くなった感じがします。

「人によって反応が様々で、僕は眠くなります。中には、手や足の先が温かくなったっていう人もいらっしゃいます」

●それは私も言おうと思ってました! 私、末端が冷え性なんですが、温かくなりました。

「これは深呼吸の効果かなと思っていて、自律神経に直接アプローチができるのは呼吸なんですよね。特にストレスが溜まると、交感神経の方が優位になるじゃないですか。なので、まずは呼吸を丁寧にゆっくりとすることが大事なんですね。
 実際に“長い息は長生き”らしいですよ。一呼吸が長いと長生きできるみたいです。循環器系のお医者さんが “しっかりとした深呼吸を毎日25回すれば長生きができる”とおっしゃっていました。今でいう体幹やインナーマッスルは、丁寧に呼吸をすることで鍛えられるそうです」

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五感が開く!?

※さらに森の奥に進み、階段を上がったらあるところに出ました。

「先に行って階段を上ってみてください」

●怖いものがあるとかじゃないですよね?

「それは大丈夫です!(笑)」

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●(笑)。ではお先に行かせていただきます。すごーい! キレーイ! 大きな池ですね!

「これが“御鹿池”です」

●森の中にある池だから、神秘的ですね! 金の斧と銀の斧を持った神様が出てきそうですね(笑)。

「よく“奥からシシ神様が出てきそう”とかいってくれる人はいるんですが、それをおっしゃった方は初めてです。特にきょうは、山に霧がかかっていて、森にも少しかかっているので、より一層幻想的ですよね。
 今回グランドシートを持ってきているので、せっかくですから、シートを敷いてゴロンとしてみましょう。ここまで森の中を歩いてきて感覚が開かれていると思うので、その状態で一人でたたずんでみましょう。何か物思いにふけていただいてもいいですし、横になってもらってもいいです」

●では、横にならせていただきますね! 草と土のいい香りがして気持ちいいです。

「きょうはしっとりとした空気なので、匂いも立ちますよね」

●私は今、草と一体化している感じがします。すごく開放的で気持ちがいいです。鳥とセミの鳴き声もすごく聴こえてきますね。これが先ほど話していた“五感が開いている状態”ですか?

「そうですね。随分開いていると思いますね。開いているからこそ、周りで起こっていることを自分なりにキャッチできるんだと思います。もちろん瞑想みたいなことをしてもらってもいいですし、今取り組んでいることがあれば、そのヒントになることへの気づきにもなったという方も多いですね」

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冷たい小川は刺激的!?

※御鹿池をあとにして、さらに森の中を歩きました。

「水の音を聴きながら移動してきましたが、せっかくなので(小川の)水の中に足をつけてみませんか?」

●つけてみましょう! 私、川に入るの何年ぶりなんだろう? かなり久しぶりです! 大人になると、川に入る機会なんてなかなかないですよ。少なくとも、ここ数年は入ってないですね。

「刺激的ですよ(笑)。どうぞ、準備ができたら入ってください」

●では、失礼します。あー冷たいです! 結構冷たいですね(笑)。慣れてくると大丈夫ですね。

「慣れてくると問題ないんですが、山の水は痛いぐらい冷たいんですよね」

●こんなに冷たいとは思いませんでした(笑)。冷凍庫に足を入れたぐらいの冷たさですね!

「まさにそんな感じですね! 実は手で触ったぐらいでは分からなくて、足をつけてみて初めてその冷たさがよく分かるんですよね」

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●不思議なんですが、今、足がポカポカと温かいんですよね。

「体の反応もうまくできていて、冷たい刺激があったら、体が温めようと反応するんですよね」

●さっきめちゃくちゃ冷たかったんですが、段々と体も温かくなってきました」

「もうちょっと入れるようでしたら、入ってみましょうか。あ、無理はしないでくださいね!」

●河西さんはずっと入っていますが、大丈夫なんですか?

「大丈夫になりました(笑)。人間の体って、普段使っていないところは“もういらないんだな”と勝手に思って退化させてしまう作用をするみたいなんですね。先ほどの深呼吸もそうなんです。ニコルさんは武道をやっているので深呼吸をよくするんですが、そのニコルさんが“人間は肺の40パーセントしか使っていない”とおっしゃってるんですよ。そうなると、残りの60パーセントは“いらないもの”と判断されてしまいますよね。そうなるとどんどん退化してしまって、肺の機能が弱まってしまいます。なので、こういう森の中でゆっくりと丁寧に深呼吸をすることで、普段使っていないところまで行き渡らせてあげるのは大事なんですね。
 こうやって、冷たいところに足をつけるのも大事で、普段、末端って血管が細くて、血の巡りが悪くなれば、冷え性とかになるじゃないですか。そういうところに刺激を与えてやることが、普段使われていない血管に刺激を与えることになって、開いたり閉じたりすることになるので、たまにはこういうことをしてあげることで、体の機能を保つ意味でもいいかなと思います、って思いながら、半分いじわるでやってます(笑)。本当に冷たいので、入る人が“冷たいー!”っていっているのを見て、僕たちは“しめしめ”と思っています(笑)」

●まんまとひっかかりました(笑)。

「いいリアクションでした(笑)」

森林セラピーの先進地「信濃町」!

●河西さん、あれがゴールですか?

「そうですね。戻ってきましたね。きょう体験してどうでしたか?」

●五感を使って感じるとおっしゃったように、全身で森を感じることができました。

「そこから出てくる感情や感覚って言葉にできますか?」

●“心が軽くなった”ような気がします。すごく癒されました。

「同じように“心が軽くなった”とおっしゃる方もいますし、“肩の荷がおりた”など人それぞれで反応は様々です。こうやって、日常から離れて森の中に入るという体験をすることで、バランスが整うと思っているんですね。医学的なデータでも、血圧が高い人も低い人も正常値になるということが実証されていますし、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが、その人が元々持っているちょうどいいところに戻してくれるという実証もあります。なので、自分の本来の体の機能や心のバランスが取り戻せて、日常生活で本来のポテンシャルを発揮することになってくれたらいいなと思っています」

●全国的に、こういう“癒しの森”ってあるんですか?

「森林セラピーという取り組みは行なわれていて“森林セラピーソサエティ”という林野庁が主導となっている団体があって、積極的な動きがあるんですが、この信濃町はその動きよりも前に、“故郷のウェールズでは、「体調が悪い人は森の中を歩いた方がいい」といわれていたから、それを日本でもやればいいじゃないか”とニコルさんがおっしゃって、それがキッカケで始まりました。一応、日本で最初に取り組んだといわれているので、“森林療法の先進地”といわれるようになりました」

●たくさんの方に来ていただきたいですね。

「そうですね。目の前のことを一生懸命やっている中で、こういう時間を作るのは難しいかもしれませんが、昨年12月に企業は従業員のメンタルヘルスをマネージメントしないといけないという法律が決まったので、労働時間の中にこういう時間も割いていただいて、日常でうまくそれぞれのポテンシャルが発揮できるようにしていただけたらと思います」

●冒頭で“忘れたものを取り戻す”とありましたが、なんとなく忘れていたものが見つかったような気がします。ゆったりとしたステキな時間を過ごすことができました。ありがとうございました!

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 今まで森林浴は行ったことがあったのですが、今回改めて森林セラピーとして河西さんと森を歩くことで、いつも以上に五感が開いた感じがしました。私たちが忘れてしまったもの、それはもしかしたら私たち自身の感じる力なのかもしれませんね。

INFORMATION

「癒しの森」プログラム

 今回ご紹介した「癒しの森」プログラムは、約1.2キロで所要時間1時間半の黒姫高原・御鹿池コースの他、黒姫高原から新潟県の県境まで歩く7キロで4時間半のコースや、野尻湖畔を歩く、2.5キロで1時間のコースもあります。また、体験されたい方の希望に合わせたオーダーメイドも可能。企業の研修やリフレッシュにも利用されています。

◎プログラムの基本料金:
 体験者が一人の場合・半日で10,000円、1日で15,000円
 (宿泊される場合は、別途費用がかかります)
◎詳しい情報:信州信濃町・癒しの森のサイト

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. THERE MUST BE AN ANGEL / EURYTHMICS

M2. BOOK OF DAYS / ENYA

M3. JUST WHEN I NEEDED YOU MOST / RANDY VANWARMER

M4. GROOVIN' / THE YOUNG RASCALS

M5. NEVER CAN DECIDE / ANUSHKA

M6. THE RIVER OF DREAMS / BILLY JOEL

M7. OPEN ARMS / JOURNEY

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」