2016年12月10日

新しい山旅「トレイルトリップ」!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、石川弘樹さんです。

 アスリートとして海外のレースにも参戦していた日本初のプロトレイルランナー石川弘樹さんが今年『トレイルトリップ ガイドブック〜ファストパッキング入門』という本を出され、トレイルランとキャンプを合体させたような新しい山旅を提案されています。
 今回はそんなアウトドアのトレンド“トレイルトリップ”をご紹介します。

きっかけは「ジョン・ミューア・トレイル」

●今回のゲストは、日本初のプロのトレイルランナー石川弘樹さんです。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします」

●石川さんは11年前にこの番組に出ていただいているんですよね

「それだけ歳をとってしまいましたが(苦笑)、この番組のことはしっかりと覚えています」

●またこのように出ていただいて本当ありがたいです。前回出ていただいたときは、トレイルランという言葉がまだ浸透していませんでしたよね?

「これからだというときに呼んでいただきました」

●11年経った今、トレイルランニングがどういう状況になっているのかを教えていただけますか?

「当時に比べればトレイルランニングの人口が増えましたし、大会も大きいものから小さいものまで、僕からしたら爆発的に増えています」

●それほど人気になった理由は何なんですか?

「当時もお話しましたが、山で遊ぶ、自然を見て楽しむことと、走ることがミックスされたのがこのスポーツで、“山で走れるスポーツ”として普及してきたのかなと思います。レースに関しては、スキー場や温泉地など、山に携わるようなところで行なうので、地域活性に繋がっているんですね。例えば、スキー場は冬がシーズンだと思いますが、夏場に色々なイベントを立ち上げないとお客さんが来ないんですよね。それに対して、トレイルランは山と道があればできるスポーツですので、そういったところで行なわれることが多くなっています」

●石川さんはなぜ、トレイルトリップを始めようと思ったんですか?

「アメリカにジュン・ミューア・トレイルという340キロぐらいあるロングトレイルがあるんです。そこをアメリカのランナーは“どれだけ早く進めるか”ということにチャレンジしているんですが、僕が行った2005年ころのランナーは3日ぐらいで行っていたんですね。ジュン・ミューア・トレイルはヨセミテ国立公園からスタートするんです。確かに3日で行くのはすごいですが、僕は5日ぐらいかけて楽しみたいと思って行きました。実際に歩くと3週間ぐらいかかるんです。普通だとテントや寝袋・食料や水など持っていくことになるので、荷物が20キロを超えるんですね。それだけ持っていったら走れないし、5日じゃ行けないと思ったので、当時出ていた最軽量の装備を揃えて走りました。それがトレイルトリップのキッカケです」

山でキャンプ、自分の部屋!?

●トレイルトリップということは、山でキャンプするんですよね?

「そうですね。そこが醍醐味だと思います。トレイルランニングって、一般の人からしたら、その日の朝に行って夕方には帰ってくると思っていると思います。それでも十分楽しめますが、宇山で過ごす時間って日中だけじゃなく、夜もまたよくて、夕陽を見たり星空を見たり、朝日を見たりすることができて楽しいんですよね。テントで泊まったことありますか?」

●あります!

「それは1人ですか?」

●いや、仲間と一緒でした。

「それもいいんですが、1人用のテントだと、完全に“自分の部屋”なんですよね。自分1人しかいない山の中で自分のテントしかない中で自分1人だけいるというのを怖いと思う人がいるかと思いますが、僕はその時間が好きだったりします」

●どんなことをして過ごすんですか?

「全ての明かりを消して空を見上げれば、満天の星空なんですよ。もちろん、気配がしたら“何かがいるな”と思うわけですが、“こんなカリフォルニアの山奥に自分1人でいるなんて贅沢だなぁ”って思いますね。ただ、もちろん天候への注意は必要になってきます」

●そういうところも、準備をしておくのが大切なんですね。

「もちろん大事ですし、最低気温がどのぐらいになるかもチェックして、それに対応する準備も必要になります。テントも機能を損なわずに重量を3分の1ぐらいに抑えたりして、そういう準備が必要になってきます」

山にいるときは自分の時間

※石川さんにオススメのトレイルトリップ・コースを教えていただきました。

「1つ挙げるとすると、この書籍にも載せていますが、新潟県と福島県、山形県の三県にまたがる“飯豊(いいで)連峰”ですね。ここは標高2000メートルいかないぐらいの山がずっと続いているんですが、初夏あたりに行くと花がすごくキレイに咲いているんですよ」

●どんな花が咲くんですか?

「チングルマが咲いたりと、高山植物が好きな人にはたまらない花が無数に咲いています。そして、山深いところなので、夏であっても雪が残っているんですよね。なので、雪が残る風景の中に花が咲いているんですね。しかも、木々が生える高さを超えているので、稜線が開けているんですよ。なので、“あそこまで行けるのか”と思うのと同時に“あそこまで行かないといけないのか”と思ったりもしましたが、非常にコンパクトにまとまっているところです。アクセスが悪くて、山の中にあまり人がいないので、自分たちの時間を楽しめるところだと思います」

●どのぐらいの日数がかかりますか?

「コースが数多くあるんですが、僕らは50キロのコースを1泊2日で進みました。ただ、30キロぐらいでやめることもできます」

●50キロのコースを1泊2日で行くとなったら、どのぐらいのペースで進めばいいんですか?

「半分歩いて半分走るぐらいなので、登りは全部歩いています。そのときは僕も仲間と行っているので、話しながら歩いて、気持ちよく走れるところは走っています。気持ちよく走っているときは“ヒュー”って言いながら走ってますね(笑)。先ほども話したとおり、周りに人がいないので、自分たちの時間を過ごすことができます」

●無理せず、自分のペースで進むことができるんですね。

「走ったりするところもありますが、そこは自分のペースでいいです。大会であれば制限時間がありますが、トレイルトリップは、山にいるときは自分たちの時間なので、今日はどこで泊まるのか、翌日はどこまで行くのかという、自分なりのプランニングをしていただけたらいいんじゃないかと思います」

●それは最高ですね! ちなみに、この千葉でトレイルトリップができるところがあれば、教えてください。

「僕は千葉でこのスタイルで走ったことがないんですが、千葉には“自然歩道”が長い距離であるんですね。千葉の南の方から利根川の方まで通っていたりするんです。色々なところを通るので、里山みたいなところから街に抜けたりしますし、オートキャンプ場に立ち寄ってキャンプして、翌日にまた里山に行くということができるんですね。起伏もあまりないので、走れるところがたくさんあります」

●そういうところを走っていいんですか?

「問題ないです。もちろん、お寺があったりと人が混むところもあるので、そういうときはモラルを守っていただければと思います」

●そういう方法であれば、千葉でもトレイルトリップができそうですね。

「これは新しい楽しみ方じゃないかと思います」

山を知ってポジティブに!

※最後に、トレイルトリップでどんなことを一番感じてほしいかうかがいました。

「“山を知ってほしい”ですね。山の中に長時間いる分、天候が頻繁に変わります。たとえ朝晴れていたとしても、夕方になると荒れてきたりするんですよね。ただ走るだけなら下りてしまえばいいんですが、泊まっている間にそういうことが起きてくるので、そのときに自分はどう対処すればいいのか、そのときの自然はどうなのかを体感できるんですよ。
 人によっては、それが不安に思うかもしれませんが、そこを“貴重な時間だな”というようにポジティブに思っていただけたら、そういった時間も楽しくなるんじゃないかと思います。“泊まる”ということは、そういったときには逆に留まらないといけないので、いい緊張感も生まれてくるので、僕はそういった時間も楽しかったりしますし、そういった体験を通して色々学べた気がしますね」

●それはトレイルランに限らず、普段の人生においても役に立ちそうなことですよね!

「そうですね! 1人でやっていることも多いですが、仲間と一緒のときも多いので、その日1日で走り抜けるんじゃなく、テントから顔を出して仲間と一緒に夕陽を見ながら語り合ったり、絆を深め合ったりできますね。1人で走っているときもできていましたが、仲間と過ごすことで、山の中で見る景色を改めて感じることができるんですね。山を下りてきたら“いい時間を過ごせたな。また頑張ろう!”と思うようになりましたね」

●11年前にお話をうかがったときには「トレイルランをこれから頑張って流行らせます!」とおっしゃっていただきましたが、それと同じように、きょうお話をうかがって、トレイルトリップが流行りそうな気がします!

「もちろん、色々な知識が必要になってきますが、歩くと走る、山でキャンプをして泊まるということは、もっと気軽に楽しめることだと思っています」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 山登りをしていた時、ゆっくり歩くのと早く歩くのでは見えてくる景色が全然違うなと思ったことがあります。“歩く”“走る”“泊まる”という3つのスピードで自然を楽しむトレイルトリップでは、きっとたくさんの自然の景色を見ることができるんでしょうね。ぜひ今度、石川さんとトレイルトリップ〜千葉編〜を行なってみたいです。

INFORMATION

『トレイルトリップ ガイドブック〜ファストパッキング入門』

新刊『トレイルトリップ ガイドブック
〜ファストパッキング入門

 講談社/本体価格1,400円

 石川さんの新刊となるこの本は、オススメのコースや装備の選び方、そしてトレイルトリップを行なう際のノウハウなどが満載です。

オフィシャルサイト

 石川さんの活動については、オフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. EVERYDAY IS A WINDING ROAD / SHERYL CROW

M2. DOWN THE ROAD〜MOUNTAIN PASS / DAN FOGELBERG

M3. TALKING TO THE MOON / BRUNO MARS

M4. 晴れたらいいね / DREAMS COME TRUE

M5. RUN AWAY SUN / Caravan

M6. WINDING ROAD / 絢香×コブクロ

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」