2017年1月21日

「坂本家、6大陸大冒険!」
〜自転車の旅人、坂本達の夢プロジェクト

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、坂本達さんです。

 自転車の旅人、坂本達さんはミキハウスに勤めながら有給休暇を取って、自転車で4年3ヶ月かけて、世界一周5万5千キロもの旅をされた達人なんです。そんな坂本さんが今取り組んでいるのが、家族4人で、自転車で世界を旅すること。題して「坂本家、6大陸大冒険!」。8年かけて行なうこのプロジェクトは、既に2015年から始まっていて、第1ステージのニュージーランド編、第2ステージのヨーロッパ編は完了しています。今回はそんな坂本家の大冒険に迫ります。

家族で共有したい!

●坂本さんは今、家族で冒険されているんですよね?

「そうなんです。結婚するとき“家族ができたら、2回目の世界一周をしたい”と話をしていました。7年の間に長男と次男が生まれて4人家族になったので、2015年に2回目の世界一周の旅がスタートしました。最長で8年間のプロジェクトになりまして、今はその2年間が過ぎました」

●この「坂本家、6大陸大冒険!」ですが、既に第1ステージのニュージーランド編が2015年10月から12月にかけて、第2ステージのヨーロッパ編は2016年6月から9月にかけて行なっているんですよね。坂本さんは目的があって、家族と一緒に行きたいという気持ちがあるのは分かるんですが、それに家族が賛同してくれるかどうか分からないじゃないですか。

「最近それをよく言われるようになりました。“何を考えているんですか? 小さい子供を連れて、奥さんはどうお考えなんですか?”とよく攻められるんですが、“家族ができたら、家族みんなで世界一周をすること”が僕の夢で、それを話していたので、奥さんの方もなんとなく記憶にはあったみたいです。実際に始めたとき、長男(健太郎)は5歳、次男(康次郎)は一番手のかかる2歳で大変でしたが、“どうせ大変なんだったら、海外でやろう”と言ってくれて、すごく感謝しています!」

●なぜ、この「坂本家、6大陸大冒険!」をやろうと思ったんですか?

「家族ができて、色々なものを共有したいと思うようになったのが一番大きいことなんです。実際に現地に行ったとき、今日どこに泊まるのか、どの道を走るのか、いつ休憩するのかといったことを、子供も子供なりに考えていたりするので、色々なことを共有しつつ、目的地に行けなくてもそれは失敗ではなく、そこからどうするのかをみんなで考えて、家族みんなで作り上げることをやりたいと思っています」

●こういう風に家族で旅に出て発信している方って、他にもいるんですか?

「森本さんという家族が、うちと同じぐらいの子供2人連れて“子育て世界の旅”といった感じでやっている方がいます。それを知ったときは“同じようなことをやっている人がいる!”と驚いたんですが、その方も“色々な世界を見せたい”という同じような動機でした。日本って多様性ってよく言われますが、幼稚園に行っても価値観は似ていたりするので、他の世界を子供に見せてやりたいと思っている家族は他にもいますね」

●勇気がある行動だなと思うんですが、不安とかなかったんですか?

「このプロジェクトは1年間のうちの3ヶ月、夏休みを使って行っているんですが、夏休みは1ヵ月半なので、その前後ももらって、長めに休めるようにして行っています。幼稚園の方にも相談したところ、理解をしていただいて、子供がニュージーランドに行っている間もfacebookを通じて、今朝ご飯を食べているとか、ニュージーランドにいる動物のことなどをクラスの子たちに教えてくれたりしてました。あと、クラスの子たちが点呼のとき、息子の名前が呼ばれたときに“ニュージーランド!”って忘れないように言ってくれていたみたいです」

●自分のクラスに世界を旅している子がいるって聞いたら、その子がいるニュージーランドに対して興味が出てきますよね。

「そうですよね。私たちがそういうことをやっているとテレビに取り上げられたりするんですが、そのときに息子の後ろ姿が映ったりするので、それを見たクラスの子が“俺もテレビに出る!”といって、タレントのオーディションに行ったみたいですよ(笑)」

●みんなに影響を与えてますね!

「本人はなんとも思ってないですけどね(笑)」

ニュージーランド編〜農家に宿泊

※第1ステージのニュージーランドは、どんな旅だったのでしょうか?

「ニュージーランドには北と南に島があるので、最初に首都であるオークランドに入って、南のダニーデンという都市を目指しました。直線距離では1,100キロなんですが、途中で寄り道もしましたし、一部はバスに乗ったり、通った車に乗っけてもらったりしたので、走行距離は850キロぐらいです。主に安全な国立公園や海沿いとかを走りました。
 “オタゴ・セントラル・レイル・トレイル”というところがあって、そこは昔、線路があったんですが、その線路を取り除いたんですね。そうすると、そこに道が残るので、自転車で通ることができるんですね。そこにはトンネルや子供が好きな鉄橋もありますし、景色もすごくいい上に車が通らないので、最後はそこを通ってました」

●ニュージーランドで一番楽しかった場所はどこですか?

「家族全員で共通しているのは“WWOOF”という世界的な有機農家の組織があるんですが、それに所属している農家の方に泊めてもらったときですね。言葉はほとんど通じませんが、農業や家畜の世話は子供たちも好きなので、エサをあげたり卵を取ったりしてました。週末には教会に連れていってもらいましたし、その農家はちょっとした幼稚園もやっていたので、そこに子供を入れてもらって、半日一緒に過ごしたりしていました。あれは子供たちも楽しんでいたみたいですし、私たちも畑仕事をして自転車のことを忘れていましたね。 走っているときも色々な人に会うんですが、キャンプ場で会うのは旅行者ばかりで、ニュージーランド人には会えていなかったんですよ。なので、スーパーで買い物をしたり、図書館で勉強して知った気でいましたが、現地の農家のところに泊まったときに初めてニュージーランドの生活を知りましたね。本当に温かくて、家にある置き飾りを子供が壊してしまったときも“子供は子供らしくないといけないから、いいのよ。形あるものはいつか壊れるんだから。壊れちゃいけないものはちゃんとしまっておくから!”と、絶対にショックなはずなのに、言ってくださったんですよね。そういう温かい環境のところで、子供たちも楽しめていたと思います。本当にいい人たちに出会えたと思います」

ヨーロッパ編〜長男の成長に涙!?

※第1ステージのニュージーランド編から第2ステージのヨーロッパ編にかけて、ある大きな変化があったそうです。それは長男の健太郎君が、お父さんとの連結自転車に乗っての移動から、1人で自転車を漕ぐようになったこと。一体どんな旅になったんでしょうか?

「今回のルートは、“カミーノ”というスペインの北部にある巡礼路で、キリスト教の三大聖地の1つである“サンティアゴ・デ・コンポステーラ”を歩くルートなんですが、そこは車が来なくて歩いてる人ばかりなので、安全であろうということで、そこを走ることにしました。
 私たちが1日に走れる距離は、長男が初めての自転車単独走なので、30キロぐらいなんです。その距離って実は、巡礼者が1日に歩く距離と大体同じなんですね。彼らは自分のザックを背負って大体1,200キロ、さらに歩く人は1,600キロぐらい歩きます。

 私たちは道中を同じペースで走るので、毎日同じ人と会うんですね。こっちには3歳や5歳の子もいるので、みんなから“カンペオン!カンペオン!”っていうチャンピオンという意味の言葉で応援してくれて、それで子供たちもやる気になって、“あのお兄ちゃんまたいた!”“あのお姉ちゃんだ!”という感じで、笑顔で進んでいました。家族だけだったら最後まで走りきれなかったと思いますが、そういった巡礼者との出会いがあって、一緒に走ってるんだと感じられて、とても良かったですね。
 (巡礼者たちが)ゴールしたときは、欧米のヒゲを生やしたガタイのいい男性が、みんな感激のあまり涙を流してるんですね。そういう中で一緒にゴールしたので、色んな国籍の人たちでできたチームだったんですが、最後は他人とは思えないような気持ちでゴールしました。子供も500キロ走ったんですけど、25日間かけて、1日も休まずに毎日移動して、お兄ちゃんたちと走ることができたので、妻も“すごく楽しかった! あそこはよかった!”と言ってくれました。いいルート選択ができたと思いました。」

●ヨーロッパ編を終えて、お子さんたちはどんな成長が見られましたか?

「今回、スイスの物価が高くて、現地の家族の家に泊めてもらうことが多かったんです。私たちサイクリストの中で“ウォームシャワーズ”という組織がありまして、連絡を事前に取っていれば無料で泊めてもらえるんですね。シャワーも浴びさせてもらえるんですけど、通算6軒ぐらいだったんですが、どの家に行っても大事にしてもらいました。実は、長男は人見知り、場所見知りで、幼稚園でも挨拶をすることも1年ぐらいできなかったんですけど、最後は自分から同世代の子供たちの中に入っていって、友達を笑わせようとしたりしていて、親としては“すごいなぁ”と涙が出てくる思いでしたね」

●それは成長しましたね〜!

「去年までは、長男が怖がりで、トイレにも1人で行けなくて、弟が“俺がついてってやるよ!”と言うぐらい、どこに行くときも1人で行けなかったんですが、日本にいるよりも数年分ぐらいの経験を、色んな人たちと出会う中で一気にできたのかなと、すごく思いますね」

困っている人がいたら、どうする!?

※この旅を通して、家族のどんな絆が生まれたのかうかがいました。

「道が大変だったときに、子供が“あっちの道に行ってみない?”とか“こっちの道にしよう”という提案をしてきたり、妻が大変な状況になったときは“お母さんをちょっと待とうよ”と言ってくれたりしました。宿を決めるときにも長男に相談していたんですが、なかなかいい判断をしてくれて、僕がイマイチだと思ったところは同じように判断をしてくれますし、逆に“ここはすごくいい!”って言ってくるときは近くに自炊できる公園などがあったりして、いい判断を下してくれます。必ずしもうまくいくわけではありませんが、うまくいかなくてもそれは失敗じゃないですし、学ぶ機会でもあるので、いい体験ができているんじゃないかと思っています。
 次男は歌を歌って励ましてくれたり、応援してくれたりして励みになりました。子供は周りをよく見ていますので、タイミングよく声をかけてくれていたので、1つのチームみたいに役割を感じながら、なんとなくできてきたのかなという感じがしています。

 エピソードが1個ありまして、どうしても泊まるところがなくて、“教会に行こう”ということになったんですね。教会には世界一周中に何度も泊めてもらっていたので、今回も事情を話して泊めてもらおうとしたんですが“状況はよく分かったけど、ゲストが来るから場所がないんだ”と断られてしまったんですね。僕としては最後の希望だったので、すごく困ってしまって。子供もそれを感じていたのか無言になってしまったんですね。その教会から別の教会を紹介してもらったら、そこでは泊めてもらえたんですよ。

 それで妻が長男に“宿がなくて困っている人がいたら、どうする?”と聞いたら“うちに泊まっていってもいいよ”って答えたんですね。次男がそれを聞いて“おもちゃも貸してあげる!”って言ってましたね。僕たちが非常に困った状況にいて助けてもらったので、同じように困っている人がいたら助けるということを、こちらから言わなくても分かってくれているんですよね。
 キャンピングカーで世界一周をしている人たちがいたんですが、その人たちは親が勉強を教えていて、教科書やパソコンなど、子供3人分の教材を持っていました。本当色々な子育ての仕方があると感じていました」

●そういう風に教育を受けた子供たちが成長して、どんな大人になっていくのか楽しみですね!

「色々経験しすぎて、結果“普通がいい”って言い出すかもしれないですね(笑)」

●それはそれでいいじゃないですか(笑)。今後なんですが、今年もチャレンジされるんですよね?

「今年も夏休みにカナダとアメリカを走ろうと思っています」

●長男の健太郎君がもうすぐ6歳になるんですよね。そうなると小学校に入学することになるじゃないですか。

「この4月に晴れてピカピカの1年生になります」

●小学校に入ると、これまでみたいな長い休みをもらうことが難しくなるんじゃないですか?

「そこは校長先生とお話をして、応援してもらえるようにしたいと思います。もちろん、何かできることがあればやって、少しでも還元できるようにしたいと思っています」

●坂本さんならできそう! だって、自分の会社を説得して、幼稚園でも実績があるじゃないですか!

「勇気がわいてきました!」

●最終ゴールは2020年ですよね。それに向けて頑張っていただきたいと思います。今後はどういった予定になっているのか、簡単に教えていただけますか?

「残っているのがアジア大陸です。僕が幼稚園の支援をしているブータンやミャンマー、お気に入りだったトルコなどに行こうと思っています。南米やアフリカといった厳しいところは終盤にもってきて、南極まで行こうと思っています」


(この他の坂本達さんのトークもご覧下さい)

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 子供たちが「困った人がいたら助けてあげる!」と自ら言ってくれたというエピソードを今回紹介してもらいましたが、大人でも誰かに教えられたのではなく“自分で経験して感じたこと”はずっと忘れないので、きっと子供たちもその思いは大人になっても忘れないんじゃないでしょうか。世界一周はなかなか難しいかもしれませんが、私ももし子供が出来たら、坂本さんのようにたくさんのことを経験させてあげたいですね。

INFORMATION

公式サイト

 坂本家の旅の模様は、ぜひ坂本さんのオフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. BICYCLE RACE / QUEEN

M2. LA / OLD MAN RIVER

M3. GOLDEN LOVE / MIDNIGHT YOUTH

M4. 夢のヒヨコ / 矢野顕子

M5. ROCKSTAR / A GREAT BIG WORLD

M6. LIFE IS A JOURNEY / GAKU-MC

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」