2017年5月27日

地球の内部に大量の水!?
〜知られざる地球の謎に迫る!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、イェール大学教授・唐戸俊一郎さんです。

 唐戸さんは1949年、福岡県生まれ。東京大学卒業。89年にアメリカに移住し、ミネソタ大学を経て、現職のイェール大学教授に就任。「地球を知るにはまず宇宙を知る」、そんなポリシーを持って、地球や地球外惑星の物質の研究を通して、地球の起源などの解明に取り組んでらっしゃいます。
 そんな唐戸さんが最近出された本が『地球はなぜ「水の惑星」なのか』。今回はその謎について、たっぷりとうかがっていきます。

地球内部の水は海の10倍!?

※唐戸さんの新刊『地球はなぜ「水の惑星」なのか』の帯には「地球内部には海より膨大な水が眠っている」とあるのですが、これは一体どういうことなんでしょうか?

「地球の表面の7割が海なんですよ。海の深さもわかっていますから、そこから海水の全体量を計算することができますよね。計算して出てきた値を、地球全体の重さで割ってみると、確かに0.02パーセントなんですね。ただし今までは、“地球の水”というと海しか考えていませんでした。しかし最近、非常に大事なことがわかってきたんです。それが、今回の本の表紙にも書きましたが、地球の内部にも海の何倍かの水があるということなんです。僕は10倍くらいあると思っています。地球の水のほとんどは、地球の中にあるんですよ」

●え、そうなんですか!?

「それがわかったのは、ここ10年から20年の間、すごい進歩ですね」

●私のイメージでは、海水が地球を覆っていて、そのほかにわずかに淡水があって、氷の状態もあったりする程度だと思っていたんですが、実は地球内部にも水はあったんですね!

「地球内部の水は、海の最低5倍はありますね。恐らく10倍、もっと極端な説では50倍ぐらいあると考える人もいます。そして、地球内部の物質は、水を非常に好むということもわかりつつあります。それからもっと重要なことが、今から60年くらい前にある人が示したのですが、地球の表面にある海も、じっとしているわけではなく、実は地球の中にある水がゆっくりと地球の表面まで来て、逆に地球の表面にある水もゆっくりと地球の中に潜っている、というように循環しているんです。水はその場でじっとしているわけではないんです」

●海水が蒸発して雲になって、雨になるという循環は習ったことがありますが、地球の内部でも水の循環が起こっているんですね!?

「そういう循環は目で見てもなんとなくわかるんですが、地球の中は目で見られないんです。目で見ていないことを、僕はわかっていることのように言いましたが、これを言うのは大変なことなんですよ(笑)!」

※見えないからこそ、ますます気になる地球内部の水は、地下水のように液体の状態なのか、それとも凍っているのか。一体、どんな状態なんでしょうか。

「水は鉱物の中に微妙に溶けているんですね。鉱物によってできた結晶の中に、わずかに水素が入っているんです。水ではなく、水素として入っているんですよ」

●どのあたりに水素が多いんですか?

「地球内部400キロから600キロの深さに、特に水がいっぱいあるようです。これは僕の研究でもわかったのですが、この領域だけ異常なんですよ。そこが水の貯蔵庫になっていて、そこに海水の5倍くらいの量があるんじゃないかと思っています。また、地球の中心は核、あるいはコアといって、鉄でできているんですが、そこに大量に水があってもおかしくないんじゃないかとも思っています。今のところはまだ全然わかっていないんですが、ひょっとしたら核の中には海水の10倍ぐらいの水があるかもしれないです」

地球はとってもユニーク!

※地球の内部にそれだけたくさんの水があるということは、地球にいろいろな影響を与えている可能性もありそうですが、どうなんでしょうか?

「地球には“プレートテクトニクス”という、プレート運動に関する理論がありますが、それは水がないと非常に難しい運動だと言われています。また、水があると火山が出来やすいんです。日本にはいろんな火山がありますが、温度が高い場所に水が入ってくると、非常にマグマが出来やすいんです。逆に、水がほとんどないとマグマは出来にくいんですよ。
 それから地震のほとんどは水と関係していますね。プレート同士が滑ることで地震が起きるわけですが、その間に水が入ると摩擦抵抗が減るため、それが大きな地震が起こる原因だと大抵の人は考えています。
 プレートテクトニクスという理論ができる前は、地球内部は全く動いていないとみんな思っていたんですね。この理論が確立したことで、地球内部も動いていることがわかってきて、さらにはプレートの動きと地球内部の動きが、水を出したり、水を吸収したりといった、水の循環にも影響しているということがわかってきたんです」

●唐戸先生は他の惑星も研究されていますが、地球と同じように、内部にたくさん水があって、その水が循環している惑星はあるんですか?

「あるとは思うんですが、研究できる惑星が、金星、火星、月くらいしかないんですよ。なので、地球と同じように水が循環していて、プレートテクトニクスが起こっている惑星は、今のところ見つかっていません。以前までは、金星が地球と似ていると思われていたんですが、金星をよく調べてみると地球とは全く違っていて、プレートテクトニクスといった運動が起こっていないんです。
 なので、そう考えると地球って結構ユニークなんですよね。プレートテクトニクスが起こっているのは、地球だけなんですよ。“地球はなぜ、これだけユニークなのか”というのが今回の本のテーマの一つです。その理由が、僕は水に関連していると思っています」

月にも大量の水がある!?

※プレートテクトニクスが起こるのは地球だけのようですが、なんと地球とほぼ同じ量の水が月にもあることが、最近わかってきたそうなんです! 一体、どういうことなんでしょうか?

「これは驚きでしたね。月には水があるんですよ! まず、月ができた理由についてはいろいろ議論されていたんですが、“アポロ・ミッション”というのが60年代から70年代の間にあり、月から大量の石を取って来て調べていたんですね。その中で、何となく学会の一般的な考えとして、月にはほとんど水がないと思われていたんです。もしそうなら、月の形成の仕方として考えられているモデルとも合うのではないかと思われていたんです。
 月の形成のモデルというのは、地球が形成されていく途中で、最後の段階で何か大きな物体がぶつかったことで、ぶつかった部分がものすごい高温になり、そこから出た高温のガスから月ができた、ということです。ジャイアント・インパクト(巨大衝突)などと言ったりもしますね。もしそうなら、すごい高温だから水はなくなると思いますよね」

●蒸発しちゃいそうですよね。

「みんなもそう思っていて、“だから月には水がないんだね”と言っていたんですが、よく調べてみると驚くことに、月にも地球とほぼ同じくらいの水があったんですよ。これには僕もびっくりしました! 
 このことがわかった理由の一つには、月のサンプルを最新の測定装置を使って、非常に細かいところまで測定できるようになったことが挙げられます。これを使ってみると、今まで見逃していたものの中に結構な水があったんです。そして、それをもとに計算していったことで、月にも地球と同じくらいの水があることがわかりました」

●月にある水は、地球と同じように内部にあるんですか?

「そう思われていますね。ただ、月の表面にある岩石を調べてわかったことなので、内部にあるのか、表面にあるのかは、結構議論されているんですよ。そこで僕は、月の周りを回っている人工衛星から月の内部を少し見ることができるので、それを使って月にも地球と同じ程度の水があるということを示しました。 
 簡単に説明すると、地球から出た高温のガスなどから月ができたんですが、高温だった月はやがて冷えていき、冷えると水は外へ逃げていくはずが、地球の非常に強い重力が、月から水が逃げるのを止めていたんです。月はほとんど地球から影響を受けているんですね。これが今のところ、月に水がある理由として考えられています」

●なんで、地球と月には同じく内部に水があるのに、地球はプレートが動き、月はプレートが動かないんですか?

「非常に良い質問ですね! 答えは簡単で、月は小さいからなんです。小さいと早く冷えてしまい、冷えると硬くなってしまうんですね。しかし、内部には結構な水があるので、月の内部は物質が動いているんじゃないか、と今は考えています。しかし月の表面は冷えてしまったため、動くことがないんです」

●月のプレートが動かないのは、水だけでなく、熱の影響もあったんですね。そう考えると、地球は本当に奇跡的な条件が重なって、今の形になったんですね!

「確かにそうかもしれませんが、僕の考えは、もともと惑星には、少しは水があると思っているので、地球のような惑星はもっとあっても良いんじゃないかと思っています。だとしたら、宇宙人だっているはずだと思うんですよ。なぜ彼らは地球にコンタクトしてこないのか(笑)」

●そこは気になりますよね(笑)! 唐戸先生はどうしてだと思いますか?

「宇宙人は非常に賢明なんじゃないですかね。賢明だから地球を避けているんですよ」

一同「(笑)」

世界観を変えていく

※地球の内部には実は大量の水があったりと、私たちが想像もしなかった世界を知るということは、私たちの人生観をも変えてしまいそうな気がします。唐戸先生も世界観について、こんなことをおっしゃっていました。

「地球の中に水があって、その水が染み出したことで現在、地球には海水があり、だから僕らは地球にいるんだと思うんですね。こうして考えていくと“世界観”は変わっていくと思いますが、これが変わるということはものすごく大事なことだと思います。これは、科学が貢献したことの一つだと思っています。もちろん科学は、病気を治したり技術を新しくしたりといったことにも貢献していますが、それに加えて世界観を変えていくことも大事だと思います」

●本当にその通りだと思います。

「例えば、惑星の誕生には偶然的な側面があるんですね。物事には偶然的な側面と、必然的な側面があるんですが、僕らはどこまでが偶然で、どこまでが必然なのかを調べているんです。たまたま何かが起きたから恐竜が絶滅してしまった、ということもあって、それは偶然だと思うんですが、そういう現象が起こるための“枠組み”は必然的な側面として、決まっているんですね」

●地球が誕生するにあたって、どんな偶然と必然があったのかがわかったら、ぜひ教えてください。

「こういう研究は楽しいですよ(笑)」

●地球の内部に水があったということを知っただけでも、明日から少し人生観が変わりそうです!

「そうですね!」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 海水から、水蒸気、雲になって雨が降り再び海へ。そんな地球の外側の水の循環は知っていましたかが、まさか地球の内側でも、水の循環が起こっていたとは驚きでした。私たちが住む地球にはまだまだ知らないことがたくさんあるんですね。

INFORMATION

『地球はなぜ「水の惑星」なのか』

新刊『地球はなぜ「水の惑星」なのか

 講談社/税込価格1,080円

 地球がどんなにユニークな星なのか、水が地球の内部でどう循環しているのか、そして月の水のことなど、興味深い話が満載の一冊ですので、ぜひチェックしてみてください!

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. STAR / EARTH WIND & FIRE

M2. GAIA / VALENSIA

M3. AMANDA / BOSTON

M4. DANCING IN THE MOONLIGHT / TOPLOADER

M5. TWILIGHT ZONE / THE MANHATTAN TRANSFER

M6. 瑠璃色の地球 / 松田聖子

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」