2017年12月16日

荻原次晴〜家族に想いを馳せる山〜
次晴「登山部」高尾山ハイキング密着取材リポート!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、スポーツコメンテーターの荻原次晴(おぎわら・つぎはる)さんです。

 スキー・ノルディック複合の元選手として活躍した荻原さんは、6年ほど前に次晴「登山部」を作り、部員とともに日本百名山の完全制覇を目指しています。
 今回は、そんな次晴「登山部」の高尾山ハイキングに密着! 次晴さんの山登りへの思いや、部員19人が参加した親睦ハイキングの模様を、年間300万人も訪れる世界一人気の山、高尾山からたっぷりお届けします。

「いろはの森コース」を歩く

※取材当日、JR高尾駅に集合した、私たちスタッフと次晴「登山部」は、バスで日影沢キャンプ場まで移動し、そこでコース説明を受け、みんなで準備体操を行なったあと、部長の荻原さんに出発前にお話をうかがいました。

●荻原さん、おはようございます!

荻原さん「はい、おはようございます!」

●いや〜今日は本当に、登山日和りのいい天気になりましたね!

荻原さん「もう、空を見上げると雲ひとつない、青空ですね」

●次晴さん、きょう登るコースはどんな感じなんでしょうか?

荻原さん「きょうはですね、“いろはの森コース”を歩きます。こちらは所要時間が一時間半ぐらいですかね。高尾山はすごく自然が豊かですからね。そういった森の木々を見ながら登る、といった感じでしょうか。このコースは、頭文字が“い・ろ・は・に……”に当たる樹木を楽しみながら歩けるということですね。だから、“い”から、“ん”まであるそうですよ! “ん”って何ですかねぇ?」

●何でしょうねぇ(笑)。じゃあ、その答えを探しながら登って行きますか!

荻原さん「はい、じゃあ行きましょう!」

※ということで、今回は「いろはの森コース」から登り始めました。このコースは、途中途中に樹木の説明などが書いてあるパネルが設置してあり、それを見ながら歩ける、気持ちのいい林道なんです。

●このコースに、“いろは”にちなんだ木々があるということですけど、次晴さん、ひとつ見つけましたよ!

荻原さん「ヒノキ!」

●こういう風に書いてあると、木の名前も覚えながら登れて楽しいですね。

荻原さん「でも、これがまた不思議なもので、山の花々もそうなんですけど、ひとつ覚えると、ひとつ忘れるんですね。だから、僕は山を歩きながら仲間に“これ、◯◯だよ”ってお花の名前とか教えてもらうんですけど、なかなか覚えらんないですよね〜」

●(笑)。じゃあ、こういう風に書いてあるといいですね!

荻原さん「この木も、ヒノキって書いてなかったら、“スギとかマツかなぁ”って思っちゃいますね。ですから、このように“いろはにほへと”にちなんだ樹木があるということですね」

●じゃあ、また次を探しながら行きましょうか!

荻原さん「次は何があるんですかね〜?」

※しばらく歩くと、また別の木を見つけました。

●これはわかりやすいですね。

荻原さん「クリの木!」

●でも、このパネルがないと何の木だかわかんないですよね。

荻原さん「そうですね。特にこの時期は紅葉も終わって、葉っぱも落ちちゃってますからね。でも、わかりやすい木を見つけた時は嬉しいですね!」

●そうですね! 「ああ、“く”は、クリの木なんだ」って思うと嬉しくなりますね!

※でも、この「いろはの森コース」は高尾山のコースの中ではいちばん急な傾斜だそうで、けっこう息があがりました。そんな急斜面を上がりきると、木漏れ日の当たる、なだらかな稜線に出ました。

●(はぁはぁ……)気持ちいいですね!

荻原さん「木漏れ日がまた、いいですね」

●キラキラしてますよね。

荻原さん「特にこの時期は寒いですから、木漏れ日の中でも太陽を浴びると、ふわっと暖かい感じがありますよね」

●そうですね、太陽の暖かさのありがたみを実感できますね。

荻原さん「やっぱり人間には太陽の明かり、暖かさっていうのは必要だと思いますね。今の時期に北欧のフィンランドの、さらに北のほうに行くと、そこは白夜とは反対の、一日中ほとんど真っ暗な時期なんですね。僕も選手時代に、そういうところに何度も行きましたけれど、やっぱり陽に当たらないので肌が白くなっていくんですね。なんか、元気がなくなっていく感じがあるんですよ。それで、久しぶりに日本に帰ってきて太陽の陽を浴びると、また充電されていって元気になる感じがありますね」

●人間もやっぱり、ソーラー電力じゃないですけど、太陽の力をもらっているんですね。

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次晴直伝、山登りのコツ!

●山登りのコツって何かありますか?

荻原さん「登りのコツは、小股で歩くことですね。この道は割と整備されていますので、ちょっと階段っぽくなっているところもありますけれども、今回歩いている道にある段差の一段一段は、高いじゃないですか」

●そうなんですよね。

荻原さん「それを頑張って(大股で)登ると疲れちゃうので、例えば段差と段差の合間にある、石とかの上を歩いてもいいんですよ。ですから、“よっこらせっ!”って体力を振り絞って歩かないようにするといいですね」

●わかりました。これ、もっと早く聞いとけばよかったかな(笑)。ここからは小股でいきたいと思います! 次晴さんはこれくらいでは全然息もあがらないですか?

荻原さん「そうですねぇ……まだ寝起きみたいな感じですかね」

●さすがです(笑)。もう私、さっきから息があがっちゃってるんですけれど、やっぱり体の使い方とかは、スキーをやっていた時と同じような使い方だったりするんですか?

荻原さん「スキーの場合は、重心の位置がすごく重要なんですよ。スキーを滑らせる時っていうのは、自分の足の後ろでしっかりスキー板をべタッと踏みつけた瞬間に、スキーって一番滑るんですね。そのためには腰に、自分の体重がしっかり乗っていること。登山も、“上半身”っていう重〜い荷物を上に運ぶ運動の連続ですから、やっぱり上半身の荷物が腰にドシッと乗っている時に、体が一番軽く感じるんですね」

●あ〜、そういうことか!

荻原さん「安定しているっていうことですね。ですから、バランスが悪くなると急に自分の体が重く感じるんで、上り坂の時は重い上半身を前へ前へと進めて行くイメージですかね」

●そういう時は重さが腰に乗るように、少し前かがみがいいんでしょうか。

荻原さん「そうですね、少し前傾気味でもいいと思います」

●はぁ、はぁ……

荻原さん「息、あがってますね!」

●心肺機能も衰えているのかなぁ、体の衰えを感じています(笑)。

荻原さん「ああ〜、日頃から運動していないと、どうしてもね。ですから、登山も久しぶりに行くと、僕でもやっぱり疲れますよ」

●そうなんですか!?

荻原さん「ですから、そうならないように日頃から自宅の近所をジョギングしておくとか、そういうことはしていますね」

目標は日本百名山の制覇!

※次晴さんが部長の、次晴「登山部」は、いつ頃出来たのでしょうか?

荻原さん「2011年の夏から始めました。1991年の長野オリンピックの後に引退をしてですね、まずはじめに“歩くスキーツアー”を始めたんですよ。
 僕たちがオリンピックに出たことで、クロスカントリースキーっていう、“ガンバリズムの極致”って言われていた状況をどうにかできないかなと思ったんですね。歩くスキーって、本来は“スキーを履いた雪上のハイキング”なんです。
 でも、日本でクロスカントリースキーの様子がテレビで放送される時って、いつも(双子の兄)荻原健司さんとかの、全身から湯気を出した機関車のように森の中を走るような場面なんですよね。あれを見ちゃうと多くの方は、“あれは出来ないな……”と思っちゃうんですね。
 でも、本来はハイキングですからね。そういうのを皆さんに知ってもらいたいし、チャレンジしてもらいたいなと思って、歩くスキーツアーを始めたんですよ。冬に仲間と歩いているうちに、“今度は雪のないシーズンにもみんなで集まって山歩きしませんか?”っていう提案をいただいたんですね。それから夏の山歩きも始めました」

●今、部員は何人ぐらいいらっしゃるんですか?

荻原さん「延べでいうと、全国に300人くらいでしょうかね」

●普段から活動している部員は何人ぐらいいらっしゃるんですか?

荻原さん「一回のツアーにつき、参加部員が15名から20名ぐらいで調整をさせていただいているんですね。というのは、特にアルプスなどの険しい山に行きますと、大人数で歩いていると他の登山客に迷惑をかけてしまうので、ある程度、参加人数は制限させていただきながらやっています」

●きょう感じたんですけど、部員の方たちの性別や年齢も本当に幅広いですよね。

荻原さん「それこそ、お子さん連れのご家族で参加される方もいれば、次晴『登山部』の中心は、40代のOLさんが中心ですけども、上は70代の方もいらっしゃいます。みなさん、お元気ですよ!」

●そうなんですね! そしてやっぱり、最終目標は日本百名山(*)の制覇なんですか?

荻原さん「そうですね、ひとまずは百名山ですね。百名山が終わると、多分、“次は二百名山、三百名山、行きたいなぁ”という気持ちになってくると思うんですよ。それ以外にも日本にはいい山がいっぱいありますからね。まぁ、このチャレンジは一体いつ終わるのか、という感じですけど。ひとまずは、百名山!」

*日本百名山:登山家で作家の、深田久弥(ふかだ・きゅうや)さんが、1964年に出版した本『日本百名山』で紹介された山のリスト。実際に山を歩き、山の品格、歴史、そして個性などを基準に選定されました。筑波山から日本一の富士山まで、多種多様な山があります。次晴「登山部」は現在、63座を制覇しています。

部員に聞きました。「山の魅力は?」

※今回は、アルパインツアーサービスの山岳ガイドさんと部員19人とともに、高尾山の親睦ハイキング! ということで、参加者の皆さんにもお話をうかがいました。まずは、東京都内から来られた森聖子さん。

●山登りを始めたきっかけは何だったんですか?

森さん「もともと私は、荻原兄弟のファンだったんで、次晴さんがスキーのツアーを始めた頃から参加しています」

●スキーから山登りに移行したんだと思うんですけど、山登りの魅力ってどんなところですか?

森さん「普段は東京の狭いお家に住んでいるんですけど、そういうことをすっかり全部忘れちゃうような……。“家が狭くても広くても関係ないや!”みたいな気持ちになるところですかね」

※続いて、ムームーさんにお話をうかがいました。

●きょうはどちらから来られたんですか?

ムームーさん「横浜から来ました」

●この、次晴「登山部」に入部されたきっかけは何だったんですか?

ムームーさん「日本で2番目に高い“北岳”という山があるんですけども、その山に登るには、自力ではちょっと難しいかなと思い、ネット検索をしたところ、次晴『登山部』に当たりました」

●山登りの魅力って、どんなところですか?

ムームーさん「足を一歩一歩進めたら、山頂にいつかはたどり着くことと、自然を体感できること。あと、山のお仲間に会えることです」

※最後に、東京都内にお住まいの藪本直人・真由美ご夫妻にお聞きしました。

●ご夫婦で参加されていますが、この次晴「登山部」はどうですか?

直人さん「楽しいし、ツアーの人がしっかりしていて安全だし、結構きつい山も行ったんですけど、安全に連れて行ってもらっていますね」

真由美さん「ですね! 安全だけは絶対に確保してくれますね。あと、体力的についていけるかどうかの判断もして下さいます。ツアーリーダーたちも、ダメそうだと思ったら“連れていけない”“体力をつけてからじゃないと、ダメ!”ってはっきり言ってくださるんで、そこは安心ですよね」

●では最後に、改めて山登りの魅力ってどんなところなのか、それぞれ教えていただけますか?

直人さん「いつも登るときはきついんだけど、やっぱり頂上に立った時の爽快感というか、そういうところじゃないですかね」

真由美さん「私も同じですね。やっぱりきょうみたいにお天気が良くて、周りがよく見えればすごくいいし、ガスってて周りが何も見えなくても、それはそれで、“また今度来た時に、天気のいい時に登りたいよね”っていう目標のようなものができるので、登れる限り、登りたいですね」

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山が育む家族の「絆」!

※今回、私たちが登った高尾山は、世界一人気の山ということで、海外のかた含め、多くの観光客が来ていました。そして、山頂で30分ほど休憩したあと、3号路をくだり、ケーブルカー「高尾山駅」で、この日のハイキングは終了。およそ3時間の楽しい時間が過ぎました。

 最後に、どうして荻原さんが山登りを始めたのか、うかがいました。

荻原さん「両親の影響ですね。僕の親父とお袋が、大の登山好きで、僕が子どもの頃、週末ともなると、地元は群馬の草津温泉ですが、その周辺、関東甲信越にあるあちこちの山に“連れられて”行ったんですね。子どもの頃は、それが嫌だったんですよ。
 何が一番嫌だったかっていうと、両親はのんびり山歩きをするんですね。僕と兄である荻原健司も一緒に行った時に、僕らは山のお猿さんみたいなもんですから、ぴょんぴょんと登っちゃうんですよ。そうすると両親を山頂で一時間ぐらい待ってなきゃいけないんです。下山も同じことですよね。その待っている時間がすごく退屈で、山に行くのが嫌だったんです。
 けど、その後、選手になって、山がトレーニングの場所に代わり、また国際大会などで海外に行った時に、特にヨーロッパの山並みを見て、“すげーなぁ……”って感じていたんですね。それで、いつかスキー選手を引退する時が来たら、ゆっくり山歩きをしてみたいなと思ったんです、日本にはいい山がいっぱいありますしね。特に僕はミーハーなんで、“どうせ登るんだったら、有名な山に登りたいな”っていうことで、百名山の制覇に挑戦しています」

●もう、選手の頃から「山に(ゆっくり)登りたい」という気持ちがあったんですね。選手の時にはスキーを履いて山の中を移動していたわけじゃないですか。スキーを脱いで、自分の足で歩くと、何か違いはあったんじゃないですか?

荻原さん「あります、あります! やはり選手時代は、山といえばトレーニングか試合会場みたいなイメージでしたね。ですから、とにかく前へ前へ、ゴールを目指して疾走するのが、僕にとっての選手時代の山だったんです。けれど今はもう、一歩一歩のんびり、時には振り返りながら、別に誰とも競うわけでもなく、どっちが速く行ったって偉いわけじゃないし……。人と競い合うのはもう20年ぐらいやったんで、いまは本当にのんびりとみんなで会話を楽しむとか、そういうことを楽しみたいなと思いますね」

●そうすると、山に対する考え方なども変わってきましたか?

荻原さん「子どもの頃はねぇ、それこそ“田舎生まれで山育ち”っていうと、ちょっと自分を恥じるような気持ちでしたね。特に、高校を卒業して東京の大学に出た頃は、群馬の山の出身をあまり言いたくないような時期もありましたけど、今は本当に、山の中で育ってよかったなと思うし、山で生まれたことを誇りに思っていますね。
 百名山についても、やっぱり僕の両親の影響がすごく大きくて、僕の両親はもう日本の山を1500から1600ぐらい登っているんですよ。現在、僕は百名山のうち、ようやく63を登った程度なんですけど、それでも僕の両親が歩いた63の道を、僕自身も歩けているという……なんか不思議な気持ちというか、幸せというか、間接的な親孝行というか……そういうものを感じているんですよね。ですから将来、子どもが大きくなったら、子どもたちだけで歩くのか、家族で歩くのかはわからないですけど、そういう、いい連鎖が起こればいいですけどね」

●山に、家族の絆みたいなものを感じているんですね。

荻原さん「僕自身も山の中で育ってきて、仕事柄、一応東京の都会暮らしみたいなことをしていますけど、やっぱり山の中にいる方が自分にとっては居心地がいいし、自然体でいられるし、やっぱり人間は、自然の中にいる時に本来の自分が出るような気がするんですね。
 特に、自然の中で困難な状況になった時に、お父さんのポテンシャルが最も試される瞬間だと思うので、今後、家族で自然の中に入った時に何かが起こるかもしれないですけど、そういう時に僕自身が力を発揮しなきゃいけないし、いい絆ができればいいなと思いますよね」

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YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

「あの時娘を怒りすぎたかな」「本当は優しいお父さんになりたいな」
次晴さんは山を登る時、こんなことを考えながら登っているそうです。
もしかしたら山は日頃の自分と向き合える場所なのかもしれませんね。

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INFORMATION

次晴「登山部」情報

 荻原次晴さんが部長を務める「次晴『登山部』」。現在、日本百名山の63座を制覇しています。来年は3月に北海道の雌阿寒岳からスタート! 4月には岩手県の早池峰山と、月に一回の予定となっています。
 詳しくは「アルパインツアーサービス」次晴「登山部」のサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. PICNIC / YAEL NAIM

M2. GOOD DAY SUNSHINE / THE BEATLES

M3. Beautiful / Superfly

M4. ILE AIYE〜WAになっておどろう / AGHARTA

M5. TOP OF THE WORLD / THE CARPENTERS

M6. 糸 / 中島みゆき

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」