2018年12月22日

総集編「ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2018」
第1弾〜学び、感じる〜

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンは、総集編「ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2018」第1弾! 今年2018年の上半期に出演してくださったゲストの中から、番組スタッフ全員が悩みに悩んで、なんとか選び出した4人の、また聴きたいコメントを再編集してお届けします!
 今回は、加曽利貝塚博物館の学芸員・米倉貴之(よねくら・たかゆき)さんによる、縄文人のエコライフ。写真家・水口博也(みなくち・ひろや)さんの、シャチの社会性について。自然音録音家・ジョー奥田さんの、夜の森のマジック・モーメント。そして、モデルでフィールド・ナビゲーターの仲川希良(なかがわ・きら)さんが体験した、雪山のドラマチックな朝焼けのお話をご紹介します。

縄文エコライフ!?(米倉貴之さん)

※まずは、今年2018年の1月に放送した、シリーズ「縄文人のLIFE STYLE に学ぶ!」第2弾〜日本最大級の貝塚、加曽利貝塚の取材リポート〜から。
 実は以前から、この番組では縄文時代に注目しています。縄文時代は約1万年に渡ってその時代が続いていたと言われています。それだけ長きに渡って暮らしていたということは、そこには私たちの暮らしのヒントにもなることがたくさんありそうですよね。
 そこで、加曽利貝塚にそのヒントを探るべく取材に行ってきました! 国宝に匹敵する、国の特別史跡に指定された加曽利貝塚なんですが、その周辺にはなんと、縄文人が約2000年暮らしていたそうです! なぜそれだけ長い期間、その地で暮らすことができたのか。加曽利貝塚博物館の学芸員・米倉貴之さんにうかがいました。

「加曽利貝塚の場所がキーワードになってくると思います。海にも行きやすく、そして山にも森にも近いという環境なので、例えば山の資源が取れなかった時には海の資源を取る、というように、資源の利用を幅広くできたというのが加曽利貝塚の立地の特徴だと思います。こういった環境を上手く利用して縄文時代の人が生活をしたということが、ムラが2000年間続いた要因のひとつではないかな、と思います」

●本当にすごいですよね、2000年間ですもんね! それだけの長い期間、ここで生活できたっていうのは、豊かな資源、そしてやっぱりエコライフっていうんですかね、無駄にしないようなライフスタイルがよかったんでしょうね。そのあたりも、研究をされていると強く感じますか?

「そうですね、特に加曽利貝塚の場合ですと、まず、貝でいうと“貝刃(かいじん)”というものがあります。これは魚の鱗を取るために使ったのではないか、というのが今の有力な説ですね。あとは、鹿の骨や角を使って、狩猟の際に使う矢の先とか、魚を突くために使うモリなど、このような物に加工して狩猟の道具としても使っていますね」

●やっぱり、“無駄なく使う気持ち”というのが、縄文人にはあったんですかね?

「そうですね。やはり限られた資源の中で、それをどれだけ上手く利用するかというのは、縄文時代の人はかなり気にしていた部分じゃないかなと思います。特に、千葉県は石器に使うような“石材”というのが、なかなか採りづらい県なんですね。なので、加曽利貝塚から見つかっているもので、例えば石で作られた斧が壊れてしまったようなものでも、新たに加工して利用したり、石を研ぐ“砥石(といし)”に転用したりしているんですね。壊れた物も無駄なく利用するという、縄文時代の人の“エコ”ですね。そういうのが、出土した遺物から読み取ることができます」

●なるほど、そうなんですね。その中で、土器の文様だったり、アクセサリーだったりと、遊び心というか、生活を楽しんでいたんじゃないかな、ということも感じました。

「“縄文時代の人”と聞くと、一般の人だと“狩りをして、けむくじゃらな人”っていうイメージを持ってしまうんじゃないかなと思うんですけど、実際に加曽利貝塚で見つかった縄文時代の、そういったエコな暮らしを見てみると、意外と現代の人たちと変わらない部分もかなり持ち合わせていたんじゃないかなと思いますね」

●そこから私たちが学べることは、どんなことでしょうか?

「資源を無駄なく使うというのは、一番身近で、学べる部分じゃないかなと思います」

シャチはマザコン!?(水口博也さん)

※続いて今年2018年6月の放送から、写真家の水口博也さんです。水口さんは世界中の海をフィールドに、主にクジラやイルカ、シャチなど海洋哺乳類の撮影を続けてらっしゃいます。特に35年にわたって撮影と観察を続けているシャチへの思いは強く、今年はそのシャチ研究の集大成ともいえる本『世界の海へ、シャチを追え!』を出されました。
 シャチは海の生態系のトップにいるため、とにかく強いイメージがあるかもしれませんが、実は、シャチの子供はそんなイメージとは全然違う一面があるようです。

「シャチは哺乳類ですから、お母さんとの絆は大変強いんですね。実際におっぱいをもらうのは1年半くらいなんですけど、基本的にはお母さんと一緒に暮らすことが長いんです。世界的なシャチの生態が100%わかっているわけではないんですけれども、いくつかのよく調べられている海でいえば、お母さんの群れで一生を過ごすというシャチも結構多いです。なので、おっぱいをもらわなくなっても結局、社会や家族のつながりとして、死ぬまでその群れで過ごすということが割と多いです。
 子供がメスであれば、いずれは自分が子供を持ちますよね。そうすると少し、お母さんの群れから離れることもあります。けれども完全に離れてしまうわけではなくて、ある程度はやっぱり近いところにいるんですね。男の子は完全にお母さんにべったりなので、どんなに成長してもお母さんの群れにいます」

●マザコンなんですね(笑)!

「マザコンですね」

●基本的には群れで暮らすんですね。シャチってすごく強いので、群れで暮らさなくても十分生きていけるんじゃないかな、なんて思っちゃうんですけれども、そうじゃないんですね。

「実際には(独りでも)生きられるかも知れないですね。ただ、やっぱりイルカだとかシャチっていうのは、群れで暮らすことを基本に進化してきたような生き物なので、シャチの家族の絆っていうのは、多くの動物が持つ絆の中でも、相当に強い絆だと思います」

●具体的に、すごく絆を感じたエピソードはありますか?

「ひとつはよく観察している場所で、カナダ・アラスカの太平洋側に棲んでいるシャチですね。このシャチはお母さんとおばあちゃんを中心とした群れでずっと棲んでいます。一番長く生きているところでいうと、四代ぐらいが共存してひとつの家族を作っている群れがいるんですね。つまり、ひいおばあちゃん、おばあちゃん、お母さん、子供ですね。
 本来、多くの動物はお母さんが子供を育てるんですけれども、シャチはたまに、おばあちゃんも面倒をみるんですよ。なので、おばあちゃんっ子なシャチもいる。そういうのは、なかなか他の動物では見られないところですね」

●不思議ですね! 本能で子供を育てるのはわかるんですけど、おばあちゃんも孫を育てるんですね。

「これは本能じゃないんです。学習なんです。おばあちゃんが育てるというのはなぜかというと、これはまさにおばあちゃんの知恵袋で、若いお母さんだと上手くいかないところをおばあちゃんが手助けすることがあるんですね。
 最近分かってきたのは、シャチの場合、子供を産まなくなってからが、すごく長生きなんです。面白い論文があって、シャチには更年期があるっていう論文が最近出ているんです(笑)。つまり、その期間は何かというと、家族や社会に自分が生きてきた能力を還元しているんですね。だからそれは本能ではなくて、そこで学ぶことはお母さんが学ぶこともあれば、子供が学ぶこともあるけど、学習で得たもので相当生きていっているんです。そういう意味でも、私たち人間に近いと言えるかもしれません」

●学習できるっていうことは相当、知能が高いんでしょうね。

「そうですね。難しいのは、知能っていう言葉を使うと、僕たち人間の物差しで測ってしまうので、極端にいうと計算ができるかとかが関係してきてしまうんですが、(人間とシャチとでは)物差しが違うので、知能や知性のあり方ってずいぶん違うとは思うけれども、それをひっくるめて言えば相当知能は高いんだろうと思います」

●この前、たまたま “人間は年寄りをいたわるようになって、すごく思いやりの心ができたことによって生き延びられた”っていう内容のテレビ番組を見たんですが、その考えでいくと、シャチも思いやりの心があるということですね。

「本当にその通りですね。イルカとかシャチの頭が大きくなってきた一番の要因って何かというと、やっぱり社会性なんですよね。社会の中でどうやって上手くやっていくか。
 それまでの動物っていうのは、エサをいかに上手く獲るかとか、敵からいかに上手く逃げるかっていうのが、進化を推し進める一番大きな力だったんですね。ところが、人間やイルカ、シャチがそうなんですが、あるところからもう、エサを獲るとか敵から逃げるって普通にできることなので、社会の中でいかに上手くやっていくかっていうことが、進化を推し進める大きな原動力になっている。それがやっぱり、大脳を大きくしていったんですね。
 だから、社会の中で上手く振る舞えるシャチが、一番優れたシャチだったりするんです。それは、ある意味で人間と同じですよね」

漆黒の森、月光のシャワー(ジョー奥田さん)

※続いては、今年2018年5月にご登場いただいた、自然音録音家・ジョー奥田さんです。ハワイ島の森に暮らす奥田さんは、ボルケーノの森の、1日の移り変わりを特殊なマイクで録音し、1時間のCD『KILAUEA FOREST 24HOURS』として発表されました。

 ところで「マジック・モーメント」という言葉、聞いたことありますか? 実は奥田さんは著名なアーティストを手がけてきた音楽プロデューサーでもあるんです。スタジオなどで録音をしている際に、楽譜通りにきちんと楽器を弾けたかどうかではなく、それを超えた特別な瞬間に立ち会ったことがあるそうです。それを「マジック・モーメント」と呼んでいます。
 そんな奥田さんが、奄美大島の夜の森で出会った特別な瞬間、「マジック・モーメント」のお話をしてくださいました。

●今までどんなマジック・モーメントがありましたか?

「自分の中で、今でもこれを続けている一番大きな原動力になっている体験だと思っているんですけど、奄美大島の夜中の森に行ったことがあるんですよ。それまでは、夜の森っていうのは行かないことにしていたんです。まず、危ないということ。それと、これは自然を相手にしている方ならどなたも同じことを言うんですけど、夜の森には夜の森の神様がいるんですよね。その怖さというか、そういうのがあったので、夜の森に行くことはなかったんですけど、最初に奄美大島に行った時に、森や自然の写真ばかり撮っていらっしゃるツネダさんという方と知り合いになって、その方が夜の森の入り方を教えてくれたんです。一緒に連れてってくれて、“あ、こうやって入って行くんだ”というのがわかったんです。

 それで初めて、一人で夜中の森に入って行った時のことなんですけど、その時は満月の夜だったんですよ。ただ、雲が厚くって、真っ暗だったんですよね。それで、マイクを立てて録り始めるんですけど……もう、ともかく怖いんですよ! ヘッドフォンでモニターをしながら録音をしているわけじゃないですか。普段聴いている時よりももっと大きい音で聴きますから、もっと遠くの音だったり細かい音、小さい音も全部、克明に聴こえるわけですよね。
 そうすると、森の気配っていうのがわかるんですけども、それは、森の生き物たち全員が僕のことを見ているっていうことだと気が付いたんですね。(僕は)森の中の“異物”じゃないですか。その異物に対する緊張感っていうのが森の中にあるっていう状況、それに気が付くんですね。その中で、そのままずっと録音し続けるんです。

 本当に、自分の人生の中で体験したことのない暗闇なんです。手も見えませんからね。そういう状況で録るんですけども、本当に怖くってじーっとして、どれくらいの時間が経ったんでしょうね……。30分か1時間ぐらいだと思うんですけども、自分にとってはもっともっと長く感じていましたね。そうするうちに、動物たちが緊張を解く瞬間があるんですね。おそらく、“こいつは大丈夫なんだろうな”っていうことだと思うんですよね。そうすると、森の生き物たちが動き始めるんですよ。その様(さま)がもう、素晴らしくって…! なんて言うんですかね…今まで体験したことのない、生命の力と美しさ。
 そして、“すごい…!”って思いながら録っている時に、厚い雲が動いて、月が出てきたんですよ。月の光が木漏れ日みたいに、シャワーのように森の中に降ってくるんですよね。その瞬間、自分が森の中で体験したことの一連の、その最後に満月の光のシャワーが森の中に落ちてきたことで、自分がすごく森に受け入れられたというか……。その時の体験っていうのが、自分にとって一番大きな原動力になっていますね」

太陽ってすごい!!(仲川希良さん)

※ラストにご紹介するのは、今年2018年6月にご登場いただいた、モデルでフィールド・ナビゲーターの仲川希良さんです。仲川さんは今年『山でお泊まり手帳』という本を出されました。山好きな仲川さんが経験をもとに、女子目線で書いた初心者向けの本。「山小屋泊」と聞くと、ちょっとハードルが高いと思う方もいるかもしれません。でも実は、日帰りよりも余裕があるスケジュールで行動出来るので、女性や初心者の方にこそオススメなんだそうです!
 そんな仲川さんが、山に泊まった際に一番好きな時間をうかがいました。

「そうですね……山の朝焼けを見ること、ですかね。“朝が来た!”っていうのを、山にいるともの凄く幸せに感じるんですよ!」

●普段、家にいる時よりも?

「そうですね。本当は普段からそういう風に感じられたらベストだとは思うんですけど、なかなか朝焼けを自分の家から見ることって、なくないですか?」

●確かに!

「その時間はまだ寝ていたり、もしくは早くに仕事に行かれる人だと、バタバタ準備していらっしゃる時間帯だったりとか……。なかなか“朝が来たー!”っていうことに集中できる時間って、日常では持つことができないんですけど、山は基本的に、安全面についても、暗くなったら行動せずに休んで、明るくなったら行動する、というように、動物的に凄く正しい時間割りで1日が進んでいるんですよね。
 なので、暗くなってきたらその環境に対して恐怖を感じるというか、“あ、私は今、外に行ってはいけない時間帯なんだな”っていうことを考えて、小屋やテントの中に入ってお休みする。そういう時間を一晩過ごした後に、明るい陽がパーッと昇ってくると、“あー、よかった! 朝が来た! 私が動いていい時間が来た!”っていう気持ちになるんですよね。人間として生活できる時間帯が来たという気持ちになるので、朝が来たという、そのことだけで凄く嬉しいものとして感じられるんです。山で朝を迎える瞬間っていうのは、まっさらな時間が、私の前にまた広がっている、という嬉しい気持ちになりますね」

●今までに見た中で、忘れられない朝焼けはありますか?

「全部魅力的なんですけど、ひとつ挙げるとしたら、雪山で迎えた朝日っていうのがやっぱり格別でしたね。北横岳っていう所の山頂で迎えた朝日なんですけど、山頂のすぐ下にある“北横岳ヒュッテ”っていう所で一泊したんですね。そこも美味しいお鍋がたっぷり食べられる素敵な小屋なんですが、そこに一泊して、まだ夜が明ける前の青白いような森の中、しかも雪が降っていた時期だったので、森が全部、白なんですよ!

 もう、見えるもの全てが白。それが青白く染まっているような、夜が明ける前の森の中を抜けて山頂まで上がって、“あっちの方から出るかねぇ?”なんて言いながら朝日を待って、さすがに雪なのでちょっと寒くてまつげが凍ったりとかもしているんですけど、そういう寒さに耐えながら待っていると、向こうの山並みからプツっと、朝日の最初の一粒が出てきて、それがあっという間に点から線になって、遠くの方から景色をブワァーーって赤く染めて出てくるんですよ!

 もちろん、普段の山でも朝日が景色を染めていくのは凄く美しいんですけど、雪山だと真っ白な景色を赤に染めていくっていう、凄くドラマチックな展開が見ることができて、その赤い光の中に自分がバッと入る瞬間っていうのがあるんですね、“私も光の中に入った!”っていう。その瞬間に、それまで寒かったはずなのに、体がぐわぁっと熱くなって、凍っていたまつげも一瞬で溶けるんです。あと、太陽ってすごい! 美しさももちろんですけど、太陽が持っている力強さっていうのも、より一層雪山の中だと感じることができて、“あぁ、太陽があるって、ありがたいな”っていうのをしみじみと感じた朝日でしたね」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 加曽利貝塚の学芸員・米倉さん、シャチの写真を撮り続けている写真家・水口さんには「私たちの生きるヒント」を、自然音録音家・ジョー奥田さん、モデルでフィールド・ナビゲーターの仲川希良さんには「自然の素晴らしさと美しさ」を教えてもらった気がします。

INFORMATION

 今回、再登場いただいたゲストの最新情報などは、下記のサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. Flyways / moumoon

M2. 狩りから稲作へ / レキシ feat.足軽先生・東インド貿易会社マン

M3. CARIBBEAN BLUE / ENYA

M4. グッジョブ / GAKU-MC

M5. THIS MAGIC MOMENT / THE DRIFTERS

M6. HERE COMES THE SUN / THE BEATLES

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」