2019年1月26日

「坂本家 6大陸 大冒険」!
〜親子4人で自転車旅! 第4ステージ・アジア編〜

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、自転車の旅人・坂本達さんです。

 坂本さんは1968年生まれ、東京都出身。7歳から11歳までお父さんの仕事の関係でパリに暮らし、そこで見た世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」に魅せられ、すっかり自転車の虜に。早稲田大学卒業後にミキハウスに入社。そしてなんと、20代後半から30代にかけて(95年9月から99年12月まで)、会社員でありながら、4年3ヶ月の有給休暇を取って、自転車で世界一周5万5千キロの旅を成し遂げたんです。

 そんな坂本さんは現在、家族4人で、自転車で世界を旅するプロジェクト「坂本家 6大陸 大冒険」を進めています。今回はそんな坂本家の大冒険から、昨年2018年にチャレンジしたアジア編についてうかがいます。

自転車乗りのコミュニティ

※8年かけて行なうプロジェクト「坂本家 6大陸 大冒険」は、すでに2015年から始まっていて、第1ステージのニュージーランド編(2015年10〜12月)、第2ステージのヨーロッパ編(2016年6〜9月:スペイン、ポルトガル、スイス)、第3ステージのカナダ、アラスカ編(2017年6〜8月)、そして去年2018年に第4ステージのアジア編(2018年6〜8月:ネパール、ブータン、マレーシア、ブルネイ)が終わりました。
 当番組は以前からこのプロジェクトに注目していて、定期的に坂本さんにお話をうかがっています。ステージが進むごとにふたりの息子さんがどんどん逞しくなっていくので、その成長も楽しみのひとつなんです。

 前回の旅では、下のお子さんはお母さんの自転車に引っ張ってもらっていたんですが、今回の旅ではひとり乗りの自転車で頑張ったそうですよ!

「去年2018年から“自分の自転車で漕ぎたい!”ということで、(次男が)単独で走ることになり、それで距離が稼げなかったっていうのもあるんですけどね(苦笑)」

●上のお子さん(長男)も5歳の時に自転車を漕ぎ始めましたよね。

「そうですね、長男も5歳で(自転車)デビューしたんですけど、冒険心と瞬発力があるので、それでなんとか(笑)。家族のムードメーカーにもなってくれましたし、いく先々で手を振ってニコニコしているので、それで助けられることも多くて、彼の力は大きかったですね(笑)」

●頼りになったんですね!

「そうですね、みんなそれぞれ持ち味が違うというか、違う分野でチームになって頑張っていたような気がしますね!」

●家族なんだけど、それぞれの役割があるチーム、っていうのがなんか、いいですね!

「そうなんです、そうなんです! 愛想振りまき担当の次男でしたね」

●ちなみに、お兄ちゃん(長男)はどんな役割なんですか?

「長男は責任感が強くて、弱音は吐きたくない子なので、去年はお母さんの自転車を川で押したり、道が分かれていたら先に行って、“こっちだよ!”って道を教えてくれたりとか……。重たい荷物を去年から持ち始めましたので、長男も凄く成長しましたね」

●そういうのって、もともと持っているそれぞれの素質があると思うんですけど、旅をすることによってその素質が開花するといいますか、よりその子のいいところが伸びたりするんですかね?

「そうですね。本当にふたりとも違う性格で、英語も習わせていないし、本当に普通の生活をしているんです。けど、環境の中でヒントを出すというか、去年、一昨年くらいから宿を見つける時に一緒に長男を連れて行って“きょうはどこに泊まる?”と言って選ばせたりとか、“こういう場面では、どうする?”とか、わからないなりにも地図を見ながら、“きょうはこんな道なんだけど、どこまで行く?”とか……。白紙の状態から一緒に話す機会を凄く作っていたので、なんとなく“こうしたらいいんじゃないかな?”っていうのを(わかっていったんじゃないかな)。
 要は、私の背中を見せる3ヶ月ですかね、年間3ヶ月の遠征なので。背中を見せる教育っていうと言い過ぎなんですけど、そういうのを見せてきたつもりなので、一緒に考えたりしてくれたんじゃないかなと思いますね」

●ホームステイもされたんですよね。

「はい、ネパール、ブータン、マレーシア、ブルネイですね。どの国でもまず、家族でいるっていうことで珍しがられまして、いろんな人がいろんな人を紹介してくれて、“そんな小っちゃい子がいるんだったら……”って泊めてくれる人もいました。
 あと、自転車乗りのコミュニティがマレーシアとブルネイにあるんですが、自転車が結構メジャーなスポーツになっていて、そこの人たちが、“こんな日本人がいるから、泊めてあげて!”って言って紹介してくれたりとか。主に子供がいる家庭に呼んでもらえることが多くて、自分たちの家にいながら、自分たちの子供に世界の勉強をさせてあげられるというか、そういう意味で私たちを喜んで泊めてくれました。
 一回泊まると2〜3泊ぐらいさせてもらえて、そうすると子供たちは言葉が通じなくても本当に仲よくなってくれるので、そうすると親も嬉しいし、そんなのが各国であって、今年は13家族の家に泊めてもらって、お世話になりました(笑)」

●13カ国ですか!? もう、じゃあ世界中にホストファミリーがいますね!

「そうなんですよ! 自転車のコミュニティがあるんですけど、そのコミュニティに参加している私たちの家族に、外国からも(旅人が)来るんですね。ですから、この間はイギリス人とスイス人のカップルが私の家に泊まりに来たんですけど、“行ったら泊めてもらう、来たら泊めてあげる”っていうのがあってですね、それも凄く(いいですね)。この世界だからこそ、SNSで繋がることができるからこそなんですけどね」

●やっぱり、サイクリスト同士って通ずるものがあるというか、仲間意識みたいなものは結構あるんですか?

「そうですね、私たちの必要としている情報って、車を運転している人たちにはわからないような、例えば“この道がいいよ”とか、みんな親切に教えてくれるんですけど、“あ、それは自転車じゃちょっと、特に子連れだと無理なんだ”っていう情報とか……。自転車の修理の道具とかパーツとかが(サイクリストの家には)大体揃っていますんで、私の家にも揃っていますから、サイクリストの必要な情報とか、まず着いたら洗濯したいとか、そういうことを共有しているので本当に助かりますね」

国王とアフタヌーンティー!?

※実は今回の旅の途中、あるスペシャルな出来事があったそうなんです! その舞台は、微笑みの国ブータン。一体どんなことあったんでしょうか?

「実は私、世界一周をしていた時にブータンを1ヶ月ぐらい走っていまして、その時の縁で、私立の幼稚園の設立の支援をずっとさせてもらっていたり、大学で授業を受け持っていた時は、学生をスタディツアーでブータンに連れて行ったりと、ブータンとは長い付き合いがあったんですね。
 あと国王は自転車好きで、ロードレーサーに乗っていて、それで通勤したりもしているんです。今は第5代なんですけど、第4代国王も自転車に乗っていて、環境に配慮している国なので(自転車が)好きで、それで今、王子が3歳ぐらいになっていると思うんですけど、そういうこともあって“もしかして(国王に)会えるかもしれない……!”と、妻と夢を膨らましていたんですよね。

 そしてブータンに着いたら、すぐにテレビや新聞に取材されて、帰国前日に王室から電話がかかってきたんです。もうブータン人の友だちはみんな腰を抜かして、“そんなことあり得ない!”って言われましたね。それで、パレスに行く、つまり(国王の)家に行くっていうことで、民族衣装を貸してもらいました。
 行ったら、家族でチャレンジしているっていうことに凄く感動してくれて、途中から王妃が現れて、3歳の王子もやって来て、結局1時間以上、アフタヌーンティーをすることになったんです。もう本当に普通に接してくださって、自転車の話から子育ての話とか、日本の話、ブータンの話と凄く盛り上がったんです。
 子供たちにはスイカジュースを出してもらって、次男が“スイカジュース、嫌い!”とか言い始めて、心臓が止まるかと思ったんですけど、幸い、あまり通じていなかったみたいで(笑)。でも長男はさすがにその場の空気から、王様のこととか、どういうことかっていうのを感じていて、本当に嬉しそうな顔をして……。

 最後は、当然カメラとかスマホはセキュリティの関係で預かってもらっていたので、一切持っていなかったんですけど、王室のカメラマンが写真を撮ってくれて、そんなプレゼントもいただきました。王妃も“そんな小っちゃい子と一緒にチャレンジするのって本当に素晴らしい、凄くインスパイアされたわ”とまで言ってもらって、私たちにとっては本当に特別なプレゼントになりました。
 私の子供にも、“今年はどこが一番よかった?”って聞いたら、“やっぱりブータンで王様に会って、優しくてカッコよかった!”とか言っていてですね、自転車というのと家族っていうのがあったからかなと思うんですけど、そんなこともありました(笑)」

●じゃあ、もしかしたら将来的に一緒に自転車でツーリングなんていうこともあるんじゃないですか!?

「もう、実はそんな話も盛り上がってですね、“今度来る時は旅行者としてではなく、ゲストとして、つまり友だちとして来て欲しい”と言ってもらって、子供たちともそんなことができたらなっていう話になっていますね! 王様は各県を自転車で周る計画があるらしくって、そんなことまで話していました。いつか実現したらなぁ、とは思っているんですけどね(笑)」

子供の成長、経験の力

※“長い時間、一緒に家族と旅をすることで子供たちの成長を感じられるのが嬉しい”とおっしゃっていた坂本さん。今回の旅ではどんな成長を感じたのでしょうか。

「とにかく子供の成長に長く携われるというか、それは幸せなことなんですけど……。長男が凄く人見知りで、幼稚園に行き始めた頃から多分、一年以上は挨拶ができなくて、目が合わせられないんですよね。知らない人に話しかけられたりすると、ずっと黙っちゃって……。
 毎年、海外に行くと“頑張ってるね!”と、とにかく自転車に乗っていることで褒められるのが凄く自信になったと思うし、走るのとかもクラスで速くて、幼稚園のころはずっと一番だったんですね。そういう、体力面で褒められたりするのが海外で多かったんです。去年から小学2年生なんですけど、やっぱり人前で話す発表とか、日直とか全部“ヤダ、ヤダ!”って言っていて、1年生の頃は朝、泣いていたりしてたんです。

 けど、帰国して9月に学校に行った時に、担任の先生が長男に“今回、ブータンで凄い人に会ったんだって!?”って話を振ってくれて、“実は王様のパレスに家族で招待されて、そこで王様に出会った”って言ったらもう、クラスの子が“うわああああ!!”って盛り上がったんです。王様っていうと、とにかく凄いし、会えるはずがない。そんな人に会ったっていうことで凄いことになったらしく、それで長男が気をよくして、あの彼が授業で1時間、喋ったんですって!」

●ええ!?

「それを後で、私たち夫婦が聞いて本当にびっくりして! 先生の誘導がまず上手ですよね(笑)。それで盛り上がって、子供たちが長男に、“何を食べたの?”“どんなところに泊まったの?”“どんな動物に会ったの?”とか、いろんな質問をしてくれたんですね。
 今、人の発表をメモするっていう授業をやっていて、“活きた教材”みたいな意味で言ってくれたらしくって、どこかから資料を持ってくるよりも、クラスの子が頑張っていたっていうのを質問して聞いたほうがいいっていうので、先生がうまく授業に取り入れてくれたんです。タイミングもよかったと思うんですけどね。

 僕は“経験の力”だと思うんですけど、経験すると自分の言葉で喋れますし、自信になるので、本当に経験を凄くたくさん(したからだと思います)。もちろん大変なことも多かったし、何度も泣いていたりしていたんですけど、その経験が子供をちょっとずつ成長させていったのかなというのを、凄く思いましたね」

●じゃあ今、自分のお子さんを“ちょっと私の子、人見知りだわ”とか“内向的だわ”って思っているお父さんお母さんがいらっしゃったら、一緒に旅に出ていろんな経験をさせてあげるっていうのはよさそうですね!

「いや〜、本当にそう思いますね! 特にやっぱり、自転車で褒められていたのが励みになったらしくって、ヨーロッパに行った時はみんなに“カンピオン、カンピオン!”つまりチャンピオンって言われてて、次男が“お兄ちゃんがチャンピオン、チャンピオンって言われてる”ってヤキモチを焼いて、“俺もひとりで乗ったらチャンピオンになれる……!”って言って物凄く早く自転車に乗れるようになったんですよね。だから、なにか得意分野を持って褒められることで自信を持って、恥ずかしがり屋だったのがなくなっていったんじゃないかなと思います」

家族で自転車旅、そのコツを伝授

※最後に、親子で自転車旅をする時のコツなどをうかがいました。

「まずはもう安全第一で、とにかく交通事故とかが怖いので、怪我とかには注意ですね。私たちはまだ子供が小さいので、極力、自転車専用道路があるところを選ぶんですが、海外ではもちろん、そういうところばかりではないです。
 ただ日本には、しまなみ海道っていう、本当に整備されていて、サイクリストの聖地みたいな感じになってレンタサイクルも充実しているようなところがあるんですけど、まずはそういう安全なところに行って、もしできたらお母さんも自転車に生活用具を積んで、一緒にキャンプをする。
 ただ、子供って集中力はあってもすぐに途切れるので、私たちも涼しい午前中に走り始めて、お昼にはもう走行をストップするようにしています。子供はやっぱり、私の子も自転車はそんなにまだ好きなわけでもないので、途中でボール遊びをしたり、公園があったら必ず遊ばせる。大事なのは、おやつ!」

●(笑)。

「何キロ走ったら、おやつを食べる、とか。普段から私の家ではあまり甘いものを食べさせないようにしているので、旅先でこれがあると頑張れるって言うんですけど(笑)。そういう小さい子の楽しみをところどころに作って、とにかく無理をさせずに。
 私が毎年気をつけているのは、“また来年も行きたいね!”と言わせるような、感じさせるような楽しみをいっぱい入れる(笑)。自転車がメインにならないように。これはもう、私の1、2年目の失敗で、“自転車だから、いっぱいトレーニングをしなきゃいけない”と思って、第1ステージの時にトレーニングをしたら、家族みんな自転車が嫌いになって……特に妻が(笑)!! “もう自転車は嫌だ!”って言って、子供も嫌いになっちゃって。
 だから、もうトレーニングは辞めようと。それで妻の考えで、楽しくやろうっていうことで、なんとか戻ってきてくれた感じなので、とにかく子供たちに無理はさせないように、妻にも理解をきちんと得るというのが一番大事で、大変なところじゃないかなと思うんですけどね。とにかく、食べ物と遊びをうまく取り入れて、安全な道を選んで行く。自転車好きは、つい“自転車!”ってなっちゃうのを抑えて、というのが大事かなと思いますね」

●では最後に、今年2019年に行なう第5ステージ、どういった予定になっているのか教えてください!

「“6大陸 大冒険”ということで、今年はオーストラリアに行こうと思っていまして、先住民の地域ですね、できるだけ違った文化を一緒に体験したいと思っています。あと太平洋のどこかの島とかも含めて、今年は走ろうかなと思っています」

●オーストラリアといえば、生き物もたくさんいるし、そのあたりも楽しみですね!

「そうなんです! なんか妻はタスマニアに行きたいとか言っているんですが、ただですね、日本が夏の時、向こうは冬なんですね(笑)。それで冬はちょっと、雨も多いらしいんですね(笑)。まあ、これも旅のひとつですから、楽しんでチャレンジしたいと思っています」

●じゃあぜひ、また帰って来た時には、この番組でもお話を聞かせてください!

「はい、お願いします!」

☆この他の坂本達さんのトークもご覧下さい。

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 ホームステイ先では世界の子供たちに日本の文化を、そして帰国後は日本の子供たちに世界の文化を。坂本家の旅は、まるで世界の子供たちの架け橋のようですよね。そして、次の旅ではお子さんたちがどう成長するのか。今後の大冒険からも目が離せません。

INFORMATION

『100万回のありがとう〜自転車に夢のせて〜』(改訂版)

『100万回のありがとう〜自転車に夢のせて〜』(改訂版)

 ミキハウス / 税込価格2,376円

 坂本さんが2010年に出版した、オールカラーのフォトエッセイの改訂版が、昨年2018年末に出ました。世界一周の自転車旅のエピソードや、帰国後のギニア、ブータン・プロジェクトの様子、そして日本での講演活動など、盛りだくさん! 詳しくは、坂本さんのHPをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. 自転車にのって / never young beach

M2. JUMP / 忌野清志郎

M3. TIE A YELLOW RIBBON ROUND THE OLE OAK TREE
                    / TONY ORLANDO & DAWN

M4. 自転車 / スピッツ

M5. WATCHING YOU / RODNEY ATKINS

M6. 世界中のこどもたちが / HIBARI

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」