2010年6月6日

島系環境ライター・有川美紀子さん
小笠原電話レポート第12弾・2010年5月編

有川美紀子さん

 THE FLINTSTONEでは2009年6月から、小笠原で“島系環境ライター”として活動されている有川美紀子さんに小笠原特派員として、月に1回、電話でレポートを入れていただいているんですが、今回はどんなことをレポートしてくれるのでしょうか。さっそく呼んでみましょう。

●有川さーん!

「はい、よろしくお願いします。」

●よろしくお願いします。

「今回はまず、この声を聴いてください。」

(ここで、人間がうなっているような声が聴こえる)

●この声は鳥の声ですか?

「人間がうなっているように聴こえるかもしれないですが、この声は、小笠原に生息している、オナガミズナギドリという水鳥の鳴き声なんです。」

●オナガミズナギドリですか?

「はい。よく聴くと『ウーウー』と、悲しげにうなっているような声と、ときどき『クックック』と聴こえる声があるんですが、『クックック』と鳴いているのは、アナドリという、別の鳥です。同じところにいたので、声を録ったらアナドリの声まで録れたんです。」

●でも、鳥っぽくない鳴き方ですね。

「主に夜に鳴いているので、正体が分からないと怖いですよね(笑)。ウミドリって、休むときや寝るときなど、一生のほとんどを海面で過ごすんですが、繁殖の時期だけは陸にきて、つがいになって、巣を作って、卵を産んで、育てて、巣立たせる。そこまでを陸で行なうんですね。」

●オナガミズナギドリって、どういった姿をしているんですか?

「ウミドリの中では中型で、黒茶色のような毛色をしていて、お腹は少し白くなっていますね。小笠原では、数が1番多いウミドリで、おがさわら丸に乗っていたり、ははじま丸に乗っていたりすると、他のウミドリも船の周りを飛んでいます。」

●小笠原では、普通に見ることができる鳥なんですね。

「そうですね。そして、繁殖の時期になると、陸に上がってくるんですけど、大体は無人島に上がって、巣を作るんですが、母島は珍しくて、有人島でありながら唯一、オナガミズナギドリとカツオドリという同じウミドリの仲間で、オナガミズナギドリより体が大きいウミドリがいるんですが、それらが巣を作る場所なんです。」

●なるほど。最近では、トキの繁殖が注目されていますけど、オナガミズナギドリやカツオドリって、順調に繁殖をしているんですか?

「ところが最近、問題になっていることがあるんです。それは、人間が連れてきたネコが捨てられて、野に入って、野ネコになってしまって、そのネコがお腹を空かせて、繁殖地に行って、鳥を襲っていたということが分かったんですね。『ここままだと、有人島で唯一繁殖しているところが危ない』ということで、島の人たちが立ち上がり、村役場や東京都が徐々に協力してくれるようになって、今では、ウミドリの繁殖地にネコが入らないような工夫を2つしているんですね。1つは、ネコを捕獲しています。2つ目は、ネコが繁殖地に入らないように、周りに柵を作る。そういうようにして、ウミドリたちを守っています。
 1度、ネコに襲われた経験があるので、ナギドリは傷の手当てをした後もまた戻ってきてくれて、巣を作っているんですけど、カツオドリは用心深いのか、その一件があってからは、まだ巣を作っていないんです。そこで、カツオドリを安心させてあげるために、今年からカツオドリの模型を置いて『安全な場所だから、戻っておいで』という風にして、カツオドリに場所のアピールをしている最中です。」

●では、これからそういう活動が実を結んで、どんどんウミドリが戻ってくるといいですね。

「そうですね。1点だけ追加しておきますと、小笠原が初の事例だとおもうんですが、ネコがその後、幸せになるような道筋を作っていまして、例えば、捕獲した後に、ネコがどうするのか、すごく気になると思うんですが、小笠原では、東京都獣医師会がネコを引き取って、野生化しているネコを手なずけて、人間の手に里子として出すというような形で、ネコへのケアもしています。だから、鳥もネコも幸せで、生物多様性の面からもいいという、小笠原がそういうシンボルになればいいなと思っています。」

●なるほど。有川さんありがとうございました。

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