1999年6月26日
ザ・フリントストーン 〜ヴォイス・コラム・スペシャル〜野田知佑さん(カヌーイスト/作家)、椎名誠さん(作家)、風間深志さん(冒険ライダー)、宮崎駿さん(映画監督)、倉本聰さん(脚本家/作家)、C.W.ニコルさん(作家)、横井謙典さん(沖縄在住の水中写真家)、各氏の発言をヴォイス・コラムにまとめました。 政府を監視する必要がある:野田知佑「売っちゃいけないものがある、金に変えちゃいけないものがある。自然とか、海、山、川、自分のふるさとを潰して、金にしちゃあいけないんであると、そこからまずいかなきゃいけないんだ。これは非常に道が遠いですね、精神論になるでしょ。だけど先進国に行けば、みんなそういう想いをひとりひとりが持ってるんですよ、だからダムができない。ニュージーランドにしても、カナダ、アラスカ、あの辺りのとこへ行くと、政府がダムを作ろうとしますが、何百人、何千人の人がすぐ止めてしまうんですね、そんなのダメって。今の日本の状態っていうのは、海山川を一番壊してるのは政府ですよね。こういう国、他にないですよ文明国で。だから、アウトドアといっても、楽しいだけじゃ、もう済まなくなるんですよね。アウトドアの場所の確保、そのために動かなければいけないんじゃないか。別に大きな大義名分はいらないんですね。僕は自分の遊び場がないから、なくなるから、反対している。もう今、日本の川はないんですよ、絶滅してるんですよ。要するに30年前から僕が川下りやってて、もう、川漕ぎたくないなと思いましたね。漕ぎたくなるような川、あと何本ありますかねえ、10本ないですね。それも半分目を閉じて、ゴミを見ないようにして、空を見ながら漕ぐと。今、日本の状況は、絶望的な状況なんで頑張らないといけないんですよ。だからアウトドアを楽しんでいる人は、ちょっと立ち上がって欲しいんですよね。周囲にいっぱいそういう反対運動ありますから、自然保護運動があるんで、ちょっと手伝って欲しいんですよね。」 吉野川可動堰問題/公共工事のむなしさ:椎名誠「僕は日本中あちこち旅しているけれども、地方の風景を見ていると憂鬱でしょうがない。いい例が島ですね。人口200〜300人ぐらいの島だと、漁港も機能してないんです。唯一活気があるのが工事なんです。港の補修工事だとか、道路工事だとか、過疎になればなるほど工事の槌音が響く。だから僕は工事の槌音がどんどん増えてくる地域というのは寂れる前兆だと思うんです。例えば活気のある港、この間、五島列島行ってきましたけど、活気のある人々がたくさんいて、漁船がいっぱい入ってきて、川もとうとうと流れて、川舟が行き来して。機能してるところっていうのは工事音が少ないの。なかなか工事は出来ないってことなんでしょうね。つまりどういうことかというと、吉野川の可動堰を作るということになったら、ここにものすごい勢いで東京あたりの大手ゼネコンが入って来て、すごい勢いでやるでしょう。工事機械が入ってきて、人間達もいっぱい入ってくる。そうして何年間か相当賑やかなことになるでしょう。人が入ってくると、それによって消費力が増すから、何かが儲かるなんていう、ささやかな希望的なことを予測する人もいるんだけども、これ、泡沫なもんですよ、本当に。工事が終わりゃあ去っちゃうんだからね、で、その後になんだか良く解らないものが残って、ああ、あれは一体何だったんだろうかっという、脱力感に似たようなものが、最後は残るんじゃないかなあと僕は思います。」 ヒマラヤに人間と自然の共生を見る:風間深志「ヒマラヤに行った時、ここの気配は、なんでこんなに平和なんだろうって思ったのね。ここの人々は、自然っていうそのものの厳しさや、暖かさも、そういったものを全部乗り越えて生きてる。乗り越えて生きてるってことは、牛も同じだよね、自然を全部受け入れて生きてるよね。ヒツジもそうだよね。だから人も動物も同じところで生きてる。なるほどそれが調和っていうんだ、自然との調和、それがハーモニーっていうんだ、ハーモニーが、なんかわかんないけど、俺に得体の知れない豊かさと平和な気配を感じさせるんだと。これが人間と自然との共存かあ、調和かあって、思ったよ。東京じゃ毎日人ばっかり意識してるよね。あいつより俺の方が教養があるとかさあ、すこしばかりいいもの着てるとかネクタイが似合うとか似合わないとか、俺の方が歳が若いとか、上だとかさあ。こうやって人ばっかり相手にしている以上は、自然との共生とか共存なんてものは、ちょっと疑わしいなあって思ったね。もっと自然の中に生きるべきだと思ったね。自然の中に生きなければ調和なんてあるのかいっていう風に、なんか、笑っちゃうねって感じもいくらかしたね。」 「もののけ姫」を作るに当たって:宮崎駿「今までのいくつかの作品で、『自然に優しい映画を作るジブリ』なんてハンコが押されてムカムカしてたんです。人間と自然の関わり合いっていうのは、優しいとか優しくないっていうようなものじゃない。人間が完全に、徹底的に自然を痛めつけて、その主人になろうとして、そして自分達の生存の根元まで脅かすようになったから、あわてて緑に優しくしましょうって言い出しているだけでね。そして、木を切る人悪い人、木を守る人いい人っていう風な、そういうものの見方では、人間と自然との関係について考え方を深めることはできない。そうじゃないんですよ。殺し過ぎたってことだと思うんですよね。人間のためになんでも殺していいんだって考え方はやっぱおかしいんじゃないかってことだと思うんです。だから人間にとって役に立つから緑を残そうって考え方もあるけど、役に立たないから緑を残そうって考え方にならないと。役に立つ、役に立たないだけで世界を眺めると、自分の女房も役に立たないなあとか、隣の友人が役に立たない、こんなにひしめいて電車に乗ってるやつは自分以外は全部役に立たないっていう考え方に簡単に繋がるんです。ミミズも人もみな同じっていう風な考え方が僕らの先祖の中にどっかにあったんだから、生きるというのは、殺すことなんだっていう、罪の意識を完全に忘れちゃうっていうのは、まあ面白くないですね。でも、自然に優しいっていうその言葉で、くくりたくない、くくられたくないって想いもあるんです。それで、こういうこんがらがった映画を作るはめになったんですけどね。」 文明ということ:倉本聰「ボタンひとつでテレビがついて、部屋が暖かくなったり寒くなったりっていう、そういう風にどんどんどんどん便利になるっていうことは、多分文明だと思うんですよ。文明だってことは逆に言えば、それは自分のエネルギー、筋肉を座ったまま使わないで、頭だけが大きくなっていくってことでしょ。人間の本来持ってるエネルギーを使わないで、地球が溜めてくれた、つまり地球が作ってくれたエネルギーをどんどん消費してますとね、地球のエネルギーって結局は自然ってことですから。例えば石油を使うったって、石油は太陽エネルギーが今まで地球の中に蓄積してったもんですから。地球の自然っていう元金にどんどん手を付けてるってことになるわけですよ。本当は先住民っていうのは、地球の元金が生み出してくれる利子で食ってたのが地球人だったわけですね。今どんどん元金に手を付けちゃってるでしょ。そうすると利子ってものはどんどん減ってるわけですよね。そしたらこの星続くわけないじゃないですか。だけど、ぬくぬくしたい、色んなことしたい、これはどんどんどんどん自然を食い物にしているわけですよねえ、無駄なものまで含めて。そうして後、捨ててくわけでしょ。その状態を際限なく続けてったら、どこかで歯止めをかけなかったら、そりゃあ、この地球は皆さんの子供さんの代、子供の子供は、どういう苦労をするかっていったら悲惨な苦労をするんじゃないですか。森っていうものは、水と空気の清浄っていう僕達に最大なものをくれているわけですよ。森っていうものを、都会の人が考えるように材木の畑という風なものの見方、あるいは、そこへ行くと緑があってきれいですよっていうものの考え方でいると、ものすごく誤っちゃうだろうと思いますね。もっともっと切実なものですよ、森って。」 健康な森:C.W.ニコル「健康的な森がどういう森かというと、生物の多様性、つまり、いっぱいいろんな生き物がいられる森、熊から小さな微生物までが全部大事ですよね。いろんなものがいないとダメです。それが多様性ですね。日本中の自然がものすごいペースで破壊されて、それを愚痴を言うだけじゃダメだと僕は思った。1匹の赤鬼(ニコルさんのこと)が一生懸命仕事して、それで、ひとりの素晴らしい地元の男を雇ってね(松木信義さんのこと)、12年で小さいですけど、美しい森が作れるなら、この国はまだ素晴らしい国に戻せるということです。可能です。Can do it. 自分の回りの食べ物、飲み物はどこから来てるか、もっと強く意識して欲しいですね。それから、皆さんの近くに、絶対小さな自然はあります。近くの小さな川、近くの小さな雑木林、そういうところは、みんなで守るだけじゃなくて、元に戻して欲しいですね。」 自然を復元するということ:横井謙典「自然を元に戻すのは簡単ですよ。例えば、沖縄のヤンバルを元に戻そうとするなら誰も車を乗り入れなきゃあいいし、歩かなきゃいい。3年で全部元通りになります。木が生えて草が生えて、道路なんかない状態になる。100年前の沖縄、僕見たことないです。だけど見せるの簡単。僕がここで留守番してるから、沖縄中の人が全部外へ出てってくれればいい。つまり人間さえいなくなれば、たった6年か7年で100年前の沖縄が見れるんです。だけど、それじゃあ解決にならないでしょ。だから共存共栄をしようと言ってるわけです。人間さえいなくなればすぐ戻ります。ただそれでは困りますよね。人間っていうのは学習してしまうんですよ。学習するってどういうことかっていうと、例えば水道の蛇口をあけると必ず水が出るでしょ。ところが、必ず水が出ると、水が出ないってことを忘れてしまうんです。絶対に水が出るようになったら誰も水がそんなに貴重だとは思わなくなる。植物プランクトンから始まって、家庭から流したゴミ、台所から流した油が植物プランクトンから動物プランクトンに移動して、それがマグロになって自分達が食べてますよね。天に唾吐いているようなものですね。で、子供が出来なくなったり、アトピーができたりとか、色んな問題になってる。分かってるはずなんだから、そろそろ考えないと。」 |
オープニング・テーマ曲
「ARMS / JOHN HALL」
M1. HEAVEN IS A PLACE ON EARTH / BELINDA CARLISLE
M2. EMERGENCY ON PLANET EARTH / JAMIROQUAI
M3. HUMAN / THE PRETENDERS
M4. WHEN TOMORROW COMES / EURYTHMICS
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M5. NATURAL THING / DOOBIE BROTHERS
M6. 未来へ / Kiroro
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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