2001.11.4放送
イーハトーヴの森コンサート

10月14日日曜、長野県麻績村(オミムラ)にある、イーハトーヴの森というお店で開かれた、ピアニスト林晶彦さんのソロ・ピアノ・コンサートを取材しました。

ピアノの絵林晶彦さんは1955年生まれ。「エヴァンゲリオン」の音楽を手がけたことで知られるピアニストです。その林さんが、今回このコンサートを長野県麻績村で開いたきっかけは、ブナの木にありました。
「去年(2000年)の6月ごろ、ここでコンサートを開いたときに、イーハトーヴの森を経営する草なぎさんに聖山の山頂近くに立っている2本のブナを見せてもらったんです。不思議なことにそのブナは2年ほど前、夢に出てきたブナだったんです。ある日2本の巨木の夢を見て、それが凄く立派な樹で、朝目が覚めた後も涙が出るほど感動したんです。その後、ある画集を見ていたら夢に出てきたのとそっくりな2本の樹が出てきて、びっくりしたんです。で、聖山のブナを見たら、まさしくこの樹だと思って。以来、そのブナをイメージしながら曲を作ったりしていたんですけど、その延長で今回のコンサートをやろうということになったんです。」

ブナの木に導かれるように実現したこのコンサート。林さんのソロ・ピアノ・コンサートが進み第2部。今回のコンサートのためにスペシャルで企画されたのが、ジャン・ジオノ作になる「木を植えた男」の朗読でした。千葉県在住のエッセイストであり、ベジタリアンの思想と料理から、環境、食、生き方を探求している鶴田静さんがこの朗読を担当し、林さんが即興でバックの演奏をつけるというやり方で披露されました。今回実現したピアノと朗読のジョイントは、鶴田さんにとってもはじめての経験だったそうです。

「もともと私は書くほうの仕事をしていますが、朗読、つまり読むというのは、体全体、心全部を使って表現することだと思って、いつか朗読をやってみたいと思ったんです。それが今回実現したわけだから、夢がかなったという感じかしら。特に、今回読ませていただいた「木を植えた男」は、ジャン・ジオノというフランスの作家が書いた作品なんですけど、平和のために一本一本樹を植えるという話が今の荒廃した世の中に必要なことだと思って、フランス語の原書から、作者の意を酌んで私が自分で翻訳したんです。ですから、昔の話なんですが、今の気持で読みました。」

今回のコンサートのきっかけにもなったブナは、イーハトーヴの森の上、聖山の山頂近くにそびえている巨木。イーハトーヴの森を経営する草なぎさんは、以前からこのブナと親しく接し、自ら「ブナの樹大王」と「大王夫人」と名前を付け、ことあるごとに接見していたんだそうです。しかし、去年あたりから、この2本のブナを取り巻く環境に異変が起きました。草なぎさんが語ります。
「去年から聖山の林道に工事車両が入りはじめて、舗装工事が始まったんです。4メートルの道路を造るということで、ブナの樹大王のすぐそばまで工事が入って、路肩を作るために山を削りはじめたんです。このままいくと、ブナの樹大王のところにも達しそうな感じなんです。そうなったらどうなるかは一目瞭然ですよね。心配です。それに舗装が進んで、車でそばまで行けるようになると、いろいろな人が入り込むことになるわけで、根が荒らされる不安もあるんです。この素晴らしいブナの樹のことをたくさんの人に知って欲しいし、たくさんの人に会いに来てもらいたいけど、そうなったらなったで心配でもあるんです。近くにあるブナの原生林にある「森姫」というブナは、観光コースになってしまって、根をたくさんの人が踏んで荒らしたので、今は枯れかかっているんです。」

一口にブナを守ると言っても、そこには難しい問題がたくさんあります。しかし、草なぎさんはブナの樹大王と大王夫人を守ることの意義をこんなふうに語ってくれました。
「ここの地名、“聖”はもともと水源という意味の“ひじ”という言葉をもじったものなんです。つまり、昔は広葉樹が生い茂っていて、豊かな水があった場所なんです。ところが今では天然林を切って、針葉樹である杉や落葉松、ドイツ・トウヒなどを植えている。当然水源としての保水力は落ちています。大王と大王夫人は、300年ほど前の豊かだった聖山の広葉樹林の生き証人だと思うんです。だから、私たちが後世に何を残すかということを考えるとき、この2本のブナを残すということが、大変深い意味を持ってくると思うんです。」

2本のブナに導かれて開催されたコンサート。そこに集まった40名あまりの人々の心にいろいろな感動を残してコンサートは幕を閉じました。

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