2002.03.17放送
BEGINの音楽は石垣島の影響大。
メンバーの比嘉栄昇さん、上地等さんを迎えて


beginの皆さん

2002年2月27日にシングル『ボトル二本とチョコレート』、3月21日にアルバム『MUSIC FROM B.Y.G』を、それぞれリリース。デビューして12年になるBEGINにとっての故郷、石垣島とは一体どういう存在なのか興味があって、ゲストとして出演してもらうことになりました。実はこのシングル『ボトル二本とチョコレート』は、BEGINの出身地、石垣島の子供たちとの共演でもあるんですね。
上:「そうです。石垣市立第二中学校のマーチング・クラブの生徒64人とセッションしたんです。」
比:「石垣島に帰るたびに思ってたのは、メジャー・シーンってなんなんだろう、プロ・ミュージシャンってどういうことなんだろうと感じてたんです。というのは、島のおじちゃん・おばちゃんやじいちゃん・ばあちゃんが、三線弾きながら歌ってるのを聴くと、明らかに僕なんかよりレベルが高いところにいるんですよ。かなわないんです。それなのに、レコーディングして音を残すチャンスというのは、僕たちにあるわけで、それはおかしいなと思ってたんです。だから、いつか一緒にできたらと思ってたのが、母校の石垣第二中学の子供たちが、全国大会で金賞をとってるということで、じゃぁ、そのバンドと一緒にやりにいこうぜ、ということで、いったんです。」

実は今年の1月にも全国大会があったと聞きましたけど。
上:「僕らも朝、早起きしまして日本武道館に応援にいったんですけど、これが、僕らの石垣第二中学校、レベル高いんですよ。で、今年も金賞取ったんですよ。」

beginCD1じゃぁ、この『ボトル二本とチョコレート』のメンバーは金賞受賞者たち。しかもそこに先生や父兄も参加しているとなると、公民館でみんながやってるイメージで、あったかいですよね。雰囲気も和気あいあいで?

比:「そうですね。まず、『ボトル二本とチョコレート』というタイトルが中学生にはどうだろうというのもあったんですけど、先生に聞いたら、いいよということで。学校の方も、レコーディングで夜遅くなったりするので、大丈夫かなとも思ったんで、職員室に挨拶に行ったんですけど、ちょうど満月で十五夜の時だったんで、校長先生も飲んでて、話にもならない、素晴らしい状況で、“オー、栄昇も帰ってきたか”って感じで、僕らにしても親戚のおいちゃんがいるみたいな感じで。」

まぁ、先生にとっては生徒とあまり変わらない感じなんですかね。

比:「実際、僕らを指導してくれた体育の先生とか、僕らが所属してた卓球部の先生とかもいて。だからアーティストという存在感はなく、普通の出身校のやつらが来たって感じだったですね。」

沖縄と言うと、子供たちが“オジー、オバー”といろいろなことを教わりながら、今でも、そういう暖かな家族の交流があるところというイメージがあるんですが、実際はどうなんですか?
比:「実際、そんな感じですよ。僕らの子供のころも例えばクツ。かかとを折って、スリッパみたいにはいてると、どこからか全然知らないおばちゃんから頭バンとはたかれて“ちゃんと、履け”とかやられたし。でも、なんていうんだろう。お年寄りを大切にしましょうという、こちら側が何かをしてあげましょうという感覚じゃないんですよ。例えば、沖縄のバスに乗ってて、若い連中が座ってて、おばあちゃんが入ってきたら、“どうぞ”ってやるんだけど、“私は今までいっぱい座ったから若いのが座りなさい”って言うんですね。で、“いやいやばあちゃん、座って”って返す、そういうつきあい方というか、向こうの方が強いから、こっちが何かしてやってるという気持ちはないですね。」
上:「大きい都会だとちょっと照れるんですよ。僕らもそうなんですけど、親切にするのに、少しテレがある。別に照れる必要はないんですけどね。それが沖縄だと自然にやれるというか、なんかそういう雰囲気があるんですよね。」

知らない人と気軽に話をするという、接触が都会だとなくて石垣だとある・・・。

比:「俺、たまに島に帰って感じるのが、時間の流れ方って一定じゃないなと思うんです。やっぱりゆっくり流れてるし、犬なんかすごくゆっくりしてるんです。道の真ん中で全然動かないんですよ、犬が。クルマが待ってるんですよ。しばらくして犬がノソノソ行くと、クルマもブーンと行くみたいな。だから、人間だけじゃないんだと思ったんですよ。島自体にそういうのが流れてるんだ、これでいいんだなぁと思いましたね。そのかわり、祝い事とか、祭りごとが多いので、忙しいんですよ、島で暮らすと。結婚式とかあると、親戚の人たちは踊らなきゃいけないんで、ずいぶん前から練習するし、子供たちは、一ヶ月も前から舞踊研究所みたいな所に、それこそ学校を途中で早退してでも行きなさいと。もう、芸事に関しては厳しいんですよ。特に石垣の場合は、結婚式なんかも普通3〜400人ぐらい集まって、出し物をきちんとやらないといけないんです。そこでカラオケなんか歌おうものなら大ひんしゅくですからね。」

カラオケだめなんですか。
上:「だめ。あれは芸事に入らないんですよ。ちゃんと演奏して歌わないと。それに歌うだけじゃだめなんです。何故か、女装して歌うとかね。僕得意だったんですけどね。で、ギターとか弾きながら歌う。それだと親戚中がウケてくれる。やはり、親戚が多いですから、沖縄という狭いところにたくさん親戚がいるので、行事も増えるし。芸事が達者になるのは、そういうことから来てるんじゃないですかね。」

島全体がひとつの大きな家族ということなんですね。そしてオジー、オバーが本当に大切にされている場所。何か、おじいちゃんやおばあちゃんから習ったことや言われたことで印象に残ってることとかありますか?
上:「じいちゃん・ばあちゃんがよく言ってたことで、今でも好きなのが『ぬちぐすい』ということ。『命の薬』ということなんですけど、いいものを見たり聴いたりすると、『あぁ、ぬちぐすいだねぇ』というんですよ。」
比:「それこそ、赤ちゃんが笑ってるのを見ても『ぬちぐすいだね』って。歌聴いてもおいしいもの食べてもそうだし。」

そういう言葉って残りますよね。私もこの言葉インプットさせてもらいます。番組やってて、それこそ命の薬になるような場所にも色々行きましたけど、初期に行ったところがどんどんなくなっているとすると、それこそ薬がどんどんなくなってしまっているような感じもしますよね。

比:「やっぱり、海とかも僕らが泳いでいた海がもう、泳げなくなってて寂しいなと思うし・・・。」
上:「あと、防波堤な」
比:「防波堤とか悲惨ですよ。いつも僕らが中学・高校の時に悩みがあるとそこに行って話す。ちょっと防波堤行こうといえば、こいつ、何かあるなと、そういう大事な場所だったんですね。ところが5〜6年前ぐらいに帰ったら、その防波堤より先が、埋め立てされてて道のところに防波堤があるわけですよ。そこに座って、“寂しいなぁ、防波堤じゃないなぁ”とかね。でも僕らは石垣島をきれいにしたいと思うし、海に行けばゴミを拾ったりするんだけど、自然はきっともう一回、復活するんだろうと信じてるんです。というか、信じさせてくれるものがないと、ゴミ拾うのもむなしくなってくるし、今はこれだけかもしれないけど、100年後、200年後かもしれないけど、戻るだろうという思いはありますけどね。」

beginCD2ところで、最新アルバム『MUSIC FROM B.Y.G』は、渋谷の伝説的ライヴ・ハウス、B.Y.Gで、ほぼ一発取りで制作されました。いわば、日本のロック・シーンの草分けのような場所で録音されたアルバム。そこにはいろいろな思いがあったようです。
上:「決して間違えてはいけないと、自分に言い聞かせたりすると、いい演奏が出来たりするんですよね。間違っても直せばいいやと思っちゃうと、やっぱりミュージシャンを高めるのに悪影響ですね。意外といいですよ、一発取りって決めちゃうと。凄い集中力ですから。」
比:「多分、曲も詩も作りながら、出来たらすぐ演奏してという状況だったので、あとから考えると、B.Y.Gという建物自体に音楽の主がいるような気がして。32年間もずっと音楽を流しっぱなしにしてきたところで、壁はそのたびに振動してきてたので、いい音なんですよ。で、僕らは変に背伸びすることもなく、その音楽の主が見ててくれるから下手なことするより、正直にやろうみたいな、そんな感じだったですね。」
上:「だからスタジオを抜け出してやるレコーディングもいいかなと思ってますけどね、僕は。」

まぁ、そういう意味で言えば、32年間、音楽の主が宿るB.Y.G。そして、生を受けて33年間になるメンバーが集まってこういう音楽が出来たというわけなんですね。
ところで、以前番組に伊是名島出身で、今も住んでらっしゃる版画家の名嘉睦稔さんが出て下さって、その時のお話で“自分は伊是名島にいて、那覇に出ていったときに伊是名の存在を小さいものと感じ、東京に行って、さらに小さいと感じ、海外に行ったときには本当に小さいものだと思ったんだけど、同時に自分の心にとっては凄い大きな存在であることに気づかされた。伊是名の子供たちにも、早く外の世界に行くことを薦める。そして外から自分の故郷を見ることによって、その良さとか、自分の気がつかなかったことに気がついたりということがある”とおっしゃっていたんですが、お二人にとって石垣島というのはどういう存在ですか?

比:「生まれたところは選べないけど、死ぬところは選べるなって。またこっちに帰って来るかみたいな話をしてたことがあるんですよね。だから、僕は島に帰るつもりだし。でもね、この年になって両親も年をとってくるんだけど、島で暮らしていると、もっと先を知りたくなるんですよ。僕の両親は宮古島から石垣に来たんですよね。で、その宮古島の先はなんだろうって、ルーツを探っていくと、僕も伊是名島にいったんですけどね、この話するとすごく長くなっちゃうんだけど、だから、じゃぁ、今どこにしようかというのは迷ってるんです。石垣島にしようか、でも、伊是名島なのかなぁとか、迷ってる。」

そんなことを思いながらもBEGINの活動は続くわけですよね。まもなくツアーも始まります。

『ボトル二本とチョコレート・ツアー』
5/18
(土)
札幌
クラップスホール
5/22
(水)
渋谷
ON AIR EAST
5/23
(木)
渋谷
ON AIR EAST
5/26
(日)
名古屋
ELL
5/27
(月)
京都
都雅都雅(トガトガ)
5/28
(火)
京都
磔磔(タクタク)
5/30
(木)
大阪
バナナホール
6/1
(土)
大阪
バナナホール
6/2
(日)
大阪
バナナホール
お問い合わせ:かりゆしネット 03-5457-3486
また、このツアーとは別に渋谷のB.Y.Gでも月イチ・ライヴがあるんですが、こちらはそのつど開催日時が決まるという方式ですので、B.Y.Gの方に直接お問い合わせ下さい。
03-3461-8574(17時以降)
比嘉栄昇さんによれば、飲みながら、食べながらの楽しいライヴということですので、皆さんも是非どうぞ。

ニュー・シングル「ボトル二本とチョコレート

TECN-12739/インペリアル・レコード/1,260円/発売中
カップリングは“NHKあたらしい沖縄のうた”になっている「悲しきマングース」と「平助オジー」で、全3曲収録。
ニュー・アルバム『MUSIC FROM B.Y.G.
TECN-30740/インペリアル・レコード/3,045円/3月21日発売
渋谷・道玄坂の伝説のロック喫茶“B.Y.G”の地下フロアで、一発録りでレコーディング。名曲「灯り」を含む全10曲収録。是非、あなたのCDライブラリーに加えてくださいね。
BEGINオフィシャル・ホーム・ページ:
http://www.amuse.co.jp/artist/begin/profile.html
http://www.teichiku.co.jp/artist/begin/index.html

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