2002.8.18放送
自然派シンガー、スーザン・オズボーンを迎えて


皆さんは『リトル・ターン』という大ヒット小説をご存知ですか?実は、この小説は、“絵本”という形をとっていて、原作はブルック・ニューマン、日本では、作家の五木寛之さんが翻訳を担当されているんですが、ちなみに、リトル・ターンとはコアジサシという鳥のことなんですね。
 物語では、大空を自由に飛んでいた主人公のコアジサシが、体には全く異常がないのに、ある日、突然、飛べなくなってしまうんです。そして 飛べなくなった原因が、自分の内面にあるのではないか、と考えたそのコアジサシは、海岸で暮らすようになるわけなんですが、それまでとは違った視点から物事を観るようになった結果、様々な発見をするんです。そしてそんな中、ある奇妙なカニとの出会いによって、本来の自分を取り戻し、大空へと戻っていく、というお話なんですが、実は、このカニさんの言葉や質問は、実際には物語の中でコアジサシに向けられたものなんですけど、読んでいるうちに、まるで、自分が言われているように感じたり、投げかけられた質問のように感じてしまうという、かなり深い内容なんです。そんな小説『リトル・ターン』をテーマに、『リトル・ターン〜ミュージック・アルバム』を発表したのが、今週のゲスト、自然派シンガー「スーザン・オズボーン」さんです。

 
●スーザンが取り組んだこの『リトル・ターン』のプロジェクト、これはサウンドトラックと呼んでいいのでしょうか。スーザン自身はこんなふうに考えていました。
「前回の『静物画』の時はクラシックのメロディにイメージで歌詞をつけていたんだけれど、今回は『リトル・ターン』という小説の内容に沿った歌詞をつけていったの。だから前よりは一歩難しくなったといえるわね。」

●なんでこの本『リトル・ターン』を取り上げたんでしょうか?
「まぁ、この時代、こういったストーリーに永遠に愛されているクラシック音楽の魅力と私の歌を融合させるというレコード会社のアイディアがあって、このプロジェクトができたの。」

●今回は小説という題材が決まっている分だけ、作りやすかったんじゃないかとも思いますが、実際はどうだったんでしょう。
「自由な発想での選曲、作詞が出来た前作と違って、今回は、物語のニュアンスに合う曲を選ぶという作業、そして物語に沿って歌詞を書いていくという作業があったので、難易度はアップしたわね。それともう一つ、私にとってはチャレンジだったのは、『 リトル・ターン』という本の原作は英語で書かれていて、それを日本語に翻訳しているわけですから、翻訳された日本語でのニュアンスが、英語の原作とは違っている可能性もあるし、日本人が、日本語バージョンを読んでどんな印象を受けるのか、など、想像しながら、更に、翻訳された詞のことも考えて英語で詞を付けていく、というかなりややこしい作業だったのよ。」

●昨年の9月11日にテロ事件があって、今、音楽が平和の象徴になっていたりすることがあると思いますが、スーザンは常に心の平和を訴えていますよね。その点で何かメッセージはあるのでしょうか?
「たくさんあるわ。でも一つに集約できることは、平和というものは内に秘められているもの。それぞれが自分の中をみて、己を知ることが何よりも大切だと思うの。そこからすべてが始まる。私は仕事じゃない。私の考えそのものが私でもない。私は女でもなければ男でもない。私という何かがあなたという何かと全く同じなの。その何かという中で、同じものが必ずあるの。」

●私は女じゃなく仕事じゃなく、私の考えでもないとなると、じゃぁ、私はだれ?と思ってしまいますけど・・・。
「そのとおり。その質問をまず自分自身に問いかけるの。そして静けさの中に身を置いて考える必要があるんじゃないかと思うの。」

●さて、実はスーザン、今回の来日で富士山にも行っています。最初に富士山に訪れたのが1989年ということですが、久々の富士山はどうだったんでしょうか。
「まずは天河神社の宮司さんがかがり火をたいて、チベットの僧たちが声明をおこない、その裏ではテクノやレイヴの音楽がかかっているという、かなり異様な雰囲気を体験したわ。ショーは真夜中に始まって、私の出番は朝4時だったんだけど、まだ日の出の前で、暗い中、じっと目をつむって歌い始めたんだけど、ふっと目を開けると陽が少しずつ昇り始めてて観客の顔が見え始めたの。そのあとあらためてチベットの僧たちを迎え入れて彼らのチャントに乗せて“アヴェ・マリア”を歌ったの。そうしているうちにどんどん太陽が昇って振り向いてみると雲がまるで山のようなシルエットになっていて、その合間からオレンジ色の太陽が昇っていって、富士山がピンク色に染まり、みるみる内に太陽は大きなオレンジ色のボールになっていくのね。ホントに素晴らしかった。
 あぁ、一つ言い忘れたけど、今年は国連の国際山岳年なの。だから、今回の富士山でのイベントを皮切りに、1年間に渡って山を見直すというか、山に関わる者、そして水に関わることにスポットを当てて考えていこうという色んなイベントが世界各国の様々な山々で行なわれていくことになっているの。これは世界中の人々が、身近な山に出掛け、普段は、忘れてしまっていること、つまり、“山と私たちの生活との繋がり”という、とても大切なことを再認識するためのいい機会になるのではないかと思うわ。」
 
さて、スーザンが感動したという富士山の夜明け。とてもきれいだったということなんですが、そんな話を聞いて、つい思い出してしまうのが、“富士山のゴミがあまりにもすごすぎる”という理由で世界遺産に選ばれなかったという事実。志のある方々のおかげで、富士山の清掃は進んではいますが、日本の象徴の山が、ゴミ山となっているという事実には、正直ショックでした。

●富士山に限らず、山をきれいにするということに関して、スーザンはどんな風に考えているんでしょうか。
「まず、山と親しむこと、山を知ることが大事ね。例えば自分の家の蛇口をひねって出てくるこの水がどこから来るのか、あるいは電気がどこからもたらされるのか、あまりにも普段私たちは考えなさすぎると思うわ。だからそういうところから、山がどれだけ大切なものなのか、山を保護したりきれいにしたりすることを含めて大切にしていかなければいけないのか、実感していけば山もきれいになっていくと思うわ。私は今もたくさん水を飲んでいるけれど、21世紀は水戦争になるかもしれないでしょ。たくさんの水を買い占めて商売することも出てきているし、水については何かプロジェクトをたてて、私なりのメッセージを送れれば、と思ってる。4つの原則、空気・水・土・火という要素には私たちは毎日お世話になっているのに、時にはそれを忘れてしまう。こんな大事なことなのにね。」

是非、水をテーマにしたスーザンの歌、聴きたいと思います。


リトル・ターン〜ミュージック・アルバム
/スーザン・オズボーン
ポニーキャニオン/PCCY-01578/¥2,940
大ヒット小説の『リトル・ターン』の世界がスーザンの優しい歌声で広がる、心に響く1枚です。チャイコフスキー、モーツァルト、メンデルスゾーン、フォーレ、ヘンデルといったクラシックの名曲に、スーザンとだんなさんのデイヴィッドさんが小説のストーリーを勘案して歌詞をつけていった、新しいタイプのクラシック・ミュージックといえるかもしれません。本を読まれた方はもちろん、読んでいないという人もスーザンの心のメッセージを受け取って下さい。

浜辺の歌〜ベスト・セレクション/スーザン・オズボーン
ポニーキャニオン/PCCY-01541/¥2,310
TOYOTAエスティマのCM曲として現在放映中の『浜辺の歌』を始め、『ガイア・シンフォニー〜地球交響曲』の挿入歌などスーザンの代表曲を集めたベスト・アルバムです。どの曲にもスーザンの優しさがにじみ出ていて、聴いているだけでホッと安心できる、ゆりかごのようなアルバムです。

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