2004.01.18放送 「夢」月間第3弾、南こうせつさんの“ドリーミン” ●7年半ぶりの出演になります。早いですね。 「そんなに経ちますか。うーん」 ●そんなこうせつさんが去年の秋に、毎日新聞社から「ドリーミン〜天から授かった『神田川』」という本を出されているんですけど、この番組も1月は「夢」月間ということでまさに“ドリーミン”。 「いいですねぇ。大好きな言葉ですね」 ●ドキッとしてしまったのが、本の最初の方に「40代は要の時期だ」と書かれていたので、「私まさに要の時期 ? 」って(笑)。 「(笑)。そうですよ。自分を振り返ってみてそう思うんですね。よく僕等の頃は30代をサボったら大変なことになる、30代は大事にしないといけないって言われていたのね。でも自分が体験してみると10年ずれているような気がするのね。やはり40代は頑張らないといけない」 ●じゃあ、まさに私は頑張らなければいけない時代に・・・(笑)。 「そうだね。男性の場合は41歳、42歳、43歳って厄年っていうじゃない ? これがあるから物凄いプレッシャーで肉体的にも大変なんだよね。でも『ここをひとつ乗り越えてー! 』みたいなものがあるんだな」 ●前に向かってドリーミンしながらっていうところで、今日は是非この本を中心にお話をうかがっていきたいと思います。冒頭からドリーミン、すなわち夢を描くことの大切さとか、ドリーミン=想うこと、想像することというメッセージから入っているんですけど、まさに夢を描くことっていうのは人にとって大切なんですね? 「凄く大事なことですね。これを失うっていうことは生きることをやめてしまうのと同じくらい、夢を描くっていうのは大事なことで、人に与えられた神様からの唯一の贈り物という感じがしますね。夢を描くことにおいて、また先へ進めるという感じかな。周りと比較しながら自分の場所を探すとか、周りと比較しながら自分は今幸せなんだとか言っている間は永久にそこから抜けられないんですね。幸せというものが、例えばお金持ちになることだとして、自分がずっと『金持ちになってやる。頑張ろう』と思ってやっている間は、ほかにもいっぱい物凄い金持ちがいるから(笑)。だから永遠に幸せになれないんですよ。自分の中で何が一番幸せかということを見極めて、とりあえず明日の夢を描いてそこに行けたらいいなと思う。『今年はカシミヤのセーターだ ! 』と思ったら1年頑張って、カシミヤのセーターがあればいいじゃないか。でも、カシミヤのセーターもほしいし、あのコートもほしいし、ブランドのブーツも買ってやれとか3つくらいあると甘いですね。世間は4つ、5つくらいで動いていますからね。雑誌をパッとめくると『10品くらい手に入れないと、あなたは幸せになれません』って書いてありますからね」 ●しかもワン・シーズン先を行っていますからね。まだ寒いのに載っていたりするのがサンダルですからね。 「その時点で、カシミヤを1個手に入れて『世間は10品くらい手に入れないと幸せになれない』とか言われると、それと比較したら自分は不幸せになっちゃうわけよ。その世間の情報の流れと比較すると、永遠に不幸せになっちゃうわけ。だからそこで『自分はカシミヤなんだからいいじゃん』って決定するわけ。ここが大事なドリーミンなんだなぁ」 ●そう考えるとドリーミン、夢を描くということは頑固じゃないといけない部分もありますね。他人は他人、私は私っていう。 「それカッコイイよ。逆に10品揃えている人からすると『あいつ、何故あんなに自信があるんだろう』って思うんじゃないかな」 ●頑固というよりは「こだわりを持つ」ですね。 「そうかもしれないね。外壁を固めていくっていうところには究極的な幸せはないんだよね。自分の内なるものの中に探りを入れていくと、温かいものとか優しいものとかホッとするものに出会うんだよね。外側って本当にキリがないよ。車を探したって東京は凄いわ(笑)。とんでもない車に乗っているよ。駐車場にはランボルギーニだかボラギノールだか知らないけどさ(笑)、凄い車が停まっていたよ。やっぱりなぁって。自分が外車に乗っても上には上がいるわ。そしてそれを手に入れたら、さらにそれを5台持っている奴がいる。もうキリがないですよね。そんなところに幸せはない。どんなに探してもない」 ●エッセイの中にも書かれているアメリカのニューヨークでのコンサートはどうでしたか? 「去年行ってきたんですが、これは凄く楽しかったですね。きっと20代、30代で行っていたら恥をかかないようにというのが先にたっちゃって、カッコつけて英語の歌を歌ってみたりするんでしょうけど、さすがに50代になるともうそこまで気が回らなくて、とりあえず『俺はニューヨークで歌ったんだぞ』っていう人生の中でニューヨークで歌ったという自分の思い出、足跡を残したかったんですね。そして私は日本人でアーティストなんだ。だから日本語でいいじゃない。是非ニューヨークのみなさん、一番新鮮なおむすびとたくあんと味噌汁を差し上げますのでという感じで行ったんですよね。それを凄く喜んでくれたんですよ。それは揺るぎない自分のものだから」 ●心や日本のスピリットが相手に伝わったんですね。 「そうですね。日本が日本がって言ったわけではないんですけど、僕自身がそういう育ちをしているから、『私』を出したっていう事なんですよ」 ●そのニューヨークでのコンサートでは、南こうせつとはどんな人物なのかというのを観客の誰もが感じられる様なコンサートだったんですね? 「そうだと思います」 ●こうせつさんは今、大分県の国東半島に住んでいらっしゃって、もともと家の周りには木がなかったので、こうせつさんが全部植えられたと聞いたのですが。 「私が住んでいるところはそうです。木がなかったので家を建てたときに同時にワーッと周りに木を植えて、今は周りが立派な森みたいになりました。20年経ちましたから」 ●お庭のデザインをするのがこうせつさんのご趣味だとうかがいました(笑)。 「結構好きですよね(笑)。公園とか街を歩いていると、よく出来た公園もあるし無駄な公園もあるし、街路樹も全部チェックしていますよ」 ●全部チェック!(笑)目がいっちゃいますか? 「チェックしていますよ、もう皇居のユリの木もいいし、外苑前のユリの木もいいし、青山通りのシャンゼリゼ通りと同じトチの木もいいですね」 ●どういう植え方、庭的デザインがいいんですか? 「自然なのがいいのよ。人間が植えるとどうしても見た目を良くしようとしてバランスが良くない。山に学ぶといいのよ。西日本、ウチの方は照葉樹林が多いんですけど、東北の方へ行くと落葉樹林が多いですよね。その植え方を公園でも同じようにするとカッコイイ。でも最近の庭木の中でそれが流行っているんですよ。そして京都の日本庭園はまた一味違うんですよ。厳選されて庭を作っていくと最後にはああいう風になるんだよね。そういうのもあるんですが、僕が好きなのは雑木林そのままを再現している庭ですね。最近凄く増えています。画家のモネとかは自分の土地を買って真剣に庭作りをやっていました。それからミュージシャンもそうですよね。ベートーベンは朝起きたらまず庭や森の中を散歩をしていたそうです。みんなそういうところからたくさんインスピレーションを得ているんですね。木には何かあるんでしょうね」 ●そういう意味で言うと都会の子供達って可哀想ですよね。触れられる木って凄く少ないじゃないですか。 「そうなんだよね。だから公園や原っぱをたくさん作るといいんですよね。街の中を行政が買い上げて原っぱをいっぱい作るといいのよ。小っちゃいころに原っぱがあったでしょ。そこが子供の文化の拠点だったんですよ。そこで社会性を学び、ボスがいたりして、その場所は隣町の強い奴等が『おい、どけどけ』とか来るんだけど、次の日結束して『俺達が先に来たからここは譲れないんだ!』とか言ったりして(笑)」 ●(笑)。やはり学校の校庭とは違うんですね。 「違いますね。コミュニケーションの場だったんだよね。そんなところでもチョウチョが来たりバッタが来たり、スズメがいたりメジロが来たりしていいものだったよ」 ●子供達を少ないながらも公園へ連れていってあげるというのが、せめて今の大人たちがしてあげられることですね。 「そうですね。でも東京は並木が増えてきましたね。力を入れているのかハナミズキの並木があったり、もちろんケヤキがあったりして本当に色々な種類がありますね」 ●こうせつさんご自身も地元の大分県杵築市(きつきし)で並木作りの運動にも関わっていらっしゃるんですよね? 「ええ。行政に何度か申し入れをしまして、ウチの市のメイン・ストリートに並木道を作ろうって言ったのですが、なかなか動かなかったんですよね。そこでみんなで集まって木を植えようということになったんですが、国道だったり県道だったりで許可が大変なんですが、それもクリアしてみんなで1万円ずつ出して100人で100万円集まったんです。何本かしか植えられませんけど、それを10年間続けようということで業者と提携して、業者も一気に1000万円分くらい木を買って今育てているんです。お金が貯まるとバーッと植えてくれって言っているんです。もう100メートル以上両サイドに植えましたよ。モミジバフウという木を植えています」 ●それもひとつのドリーミンですね。今はまだこうだけれどもっていう未来を描きながら・・・。 「ただ、歩道に穴をあけたりする作業は行政がお金を出してくれたんですよ。でも、実現するために夢があるって誰かが言ってましたけど、本当にそうですね。夢を見続ける。夢のいちばんいいところはタダなんですよね。入場料を払わなくてもいいし(笑)。これは見続けないといけないですね」 ●今のこうせつさんにとっての夢は? 「限りなく時間を頂いて、限りなくワガママに過ごしたいですね。何をするかは決まっていないんですけど、ワーッと日差しがあって、そこへ出ていって大きく深呼吸をして、限りなく時間が あって明日も明後日も次もその次も休み休みまた休みで『うわーっ、休みー!』って(笑)。そこから考えていきたいですね(笑)」 ●ツアーがお忙しいと思いますけども、お体には気を付けて下さいね。そしてツアーを終えられたら広いところで限りない時間の中、大きく深呼吸をして・・・。 「そこからまた考える。今はまだ考えられないです。ただその状況があれば、またそこから始まるかなという感じはありますね」 ●また新たなるドリーミンが見付かったときには、また番組でも聞かせて下さい。 「ドリーミンを描くときにはみなさん必ずリスクを背負いますから。リスクをちゃんと払って下さい。そうすると夢が見られます。タダでって先程言いましたけれど、実現するときには必ずリスクが必要ですね」 ●夢を見るのはタダだけれども、実現させるにはリスクが必要ということですね。 「そうです。自分の何かを犠牲にしないといけない。汗とか悩みとか肉体とか、お金かもしれないし、それは宇宙の理ですね。責任と義務を果たさないと夢は絶対に実現しない」 ●今日はどうもありがとうございました。
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