2004年12月26日

巨大魚のいるところに楽園あり。浜野安宏さん

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは浜野安宏さんです。
浜野安宏さん

 フライ・フィッシングを愛し、世界のウィルダネスを旅するライフ・スタイル・プロデューサー「浜野安宏(やすひろ)」さんをお迎えし、世界文化社から出された本『世界秘境リゾートで巨大魚を釣る!』にそって、釣りを通して得た考え方や友人、ワイオミングのネイチャー・スクールのこと、そしてアメリカ・モンタナに所有する個人の自然保護区のことなどうかがいます。

釣りの醍醐味はハートアタック

●浜野さんは先月、世界文化社から『世界秘境リゾートで巨大魚を釣る!』という本を出されているんですけど、始めからフライ・フィッシングをやっていらっしゃったんですか?

「いや、もちろん子供時代は親父の跡を継いで、渓流釣りから始まって餌釣りでした」

●フライ・フィッシングをやるようになったキッカケってなんだったんですか?

「キッカケは70年代の初め頃に、仕事に息詰まって家庭も崩壊して、体中が泥水で埋め尽くされているような実感があったんですよね。で、昼間から仕事をしていても眠いし足はだるいし。キレイな水があったら、子供時代に親父とした釣りをもう1回始めたらどうかというのがキッカケですね」

●やっぱり釣りを改めて再開したら、気分も変わったわけですね?

「そうですね。ですから、カナダのカムループスってところで、カムループス・レインボーっていうよくジャンプするニジマスがいるんですよ。それを解禁したばかりの湖で釣ったんですよ、フライで。それもフライなんか全然やったことがなくて、友達から借りていって、なんとなく『持っていってみろ』って言われた道具で、見様見真似で隣の人を真似て竿を振っていたら、キレイな白い魚がビビビーッと飛んだんですよ。テール・ウォークっていうんですけど、それを見てから人生釣り極道街道まっしぐらって感じですよね(笑)」

●(笑)。その出会いがあったからって感じなんですね。

「そうだね。人生も豊かになったしね。今は全然後悔していないばかりか、これで私の老後はますます豊かになるなぁと思っていますね」

●それから1年間は国内外、かなり釣りをされたそうですね。

「ええ。何年釣りをしたかって質問をよくされるんだけど、1年に1回でも何年と数えるじゃないですか。僕の場合は、20年間ワイオミングとモンタナにふたつ家を建てて、その間の国立公園、グランドティトン国立公園、イエローストーン・ナショナル・パークをガイドできるくらい知っているんです。その辺りは200本の川と30個の湖があって、この時間にこの天気でどこだったらどの虫が発生していて、どんな魚が釣れるか全部知り尽くしているんです(笑)。そういう人なので、それを拠点に世界が広がっているという感じですね(笑)」

●本業のお仕事はいつやっているのでしょうか?(笑)

「結構、本業もやっていますよ(笑)。南京、上海、杭州、蘇州と中国のかなり大きなプロジェクトのプロデューサーをやっています」

●じゃあ、仕事をする時はガーッとやって、釣りをする時は「釣りーっ!」と頭を切り替えているんですね。

「そうそう。特に中国っていうのは割と水が汚れているんですね。汚れているっていうかマディーウォーター(濁った水)なんですよ。だから、やっぱりあそこで仕事をしているとクリアーな水があるのでパッと行ってしまうんですね」

●本を読ませていただくと、浜野さんって釣りをなさるスタイルとか、船ひとつとっても、釣り自体にこだわりをもってやっていらっしゃいますよね。

「できたら、この本の表紙は船の上で釣っていますけど、リーフ、ラグーンに入ってくる巨大魚を、すごい勢いで追いかけて釣らなければならない釣りをやっているから船に乗っているけど、ほとんどの場合、僕はキングサーモンでも激流の中で岸から釣るということにシュープリームなゲームを感じているから、アトランティック・サーモンでもシーラン・ブラウンの大きなやつを釣ったのも全部陸なんですね。陸で自分で大地に足を踏ん張って、流れを追いかけるのに陸上を糸を巻きながら走って行ってでも、釣り上げるっていう激闘の釣りなんですよ(笑)。そうしないと、面白さが何百倍も違うんですよ。ボートのエンジンで追いかけるのと、自分の力で糸を巻き取って走って抱き取ったという実感は違うわけです。1匹で十分、その旅は満たされるくらいの喜びがあるんです。船頭が言うところにボーンと投げて釣って、ほとんど船頭に捕ってもらっているようなのは、そんなに喜びがないんですよね。
 ニュージーランドなんかは1日20kmくらいは平気で歩きますよね。ニュージーランドの南島のテアナウという南の果ての、キレイな湖に流れ込んでいる川の浅いところを、ニュージーランドの夏はセミやカナブンが木からポーンと落ちるのを狙っている大物が回遊しているんですよね。その背びれのちょっとした動きを水辺で見つけて、そぉーっと忍び寄っていて、セミとかカナブンのような毛針をポトッと落とすと、背びれがこっちを向いてスーッと来るわけですよ。この時のハートがね(笑)。ハート・アタックっていうのかな(笑)。バーッときた時の、もうハート・アタックですよ。それを何度もやるから心臓に良くないんですけどね(笑)」

巨大魚いるところに楽園あり

●この本のタイトルにもなっている「巨大魚」って色々いると思うんですけど、サイズ的なものではないんですか?

「サイズはその魚にとっての巨大魚ね。例えば、レインボー・トラウトの巨大魚っていたら60cmオーバーだったら巨大魚といえると。アマゾンのピラルクだったら私の身長の180cmくらいないと巨大魚とはいわないですね。あるいは、アユだったら20cm、巨大魚かもしれないですよ。そういうことですね」

●巨大魚にこだわる理由っていうのはなんですか?

「大きい魚っていうのは、バイオ・ダイバシティの頂点にいるわけですよね。ですから、水系のバイオ・ダイバシティの頂点にいると。彼らがいるということは、それだけ自然の多様な水体系が守られているっていうことですよね。そういう美しい楽園があるところに巨大魚がいて、巨大魚がいるところに楽園ありと僕は言っていて、その楽園を旅しているようなものなんですよ。だから、巨大魚がいるところはみんなピースフルで、素晴らしい環境なんですね。だから、決して秘境じゃないんです、本当は。秘境っていうのは都市で堕落した人間の言う言葉なんですよ(笑)。本当に幸せになれるところですね」

●自然破壊が進んでいる今、楽園と呼べるところって世界にどれくらいあるんですか?

「逆に、私達のような割と高貴な野蛮人っていうか(笑)、執念の遊び人っていうか、そういう人達が自然を守っているところがあるんですよ。我々はそのためにお金も使っているし、寄付もしていると。だから、要するに遊ばないと究極の自然の喜びとか楽しさが分からないんですね。
 漁師にとって巨大魚とは単に生産した産物に過ぎない。だから、今いるその環境とは工場みたいなものなんですよ。ただ、それを売り渡そうとすれば簡単に売り渡せるんです。ですけど、私達は金じゃないわけですよね。そのいる環境そのものが貴重なわけで、人間はそれがないと遊べない。それはひとりの人に宿命づけられた運命ですよね(笑)美女がいないとだめな人もいるかもしれないけど、私は巨大魚がいないとダメな人なんですよ(笑)。そのためにはその周りを大事にしてやろう、可愛がろうと思うやないですか。自分で傷つけておいて可愛がろうって変だって素人によく言われるんですけどね。
 しかし、針で渡りあってちゃんとリリースして、そういう体験をした喜びから、『あの巨大魚の棲む環境を守らなければならない』という本当の実感が湧いてくるので、何もしない人より現状を遥かによく知っているわけですね。大袈裟ですけど、我々は地球の限界の語り部というか、そういう役割は担っていると思いますね」

●浜野さんはアメリカにお家を建てられて、ビーバー・スプリングスと命名したモンタナ州に湿原と牧場を購入されているじゃないですか。お家を建てられたのがワイオミング州のジャクソンホールというところなんですけど、この場所を選んだ理由というのは何だったんですか?

「1985年に家族でアメリカ横断旅行を3カ月したんですよ。自分の会社を休んで。3カ月休むということは大変だったんですよ。だけど、何か転換期というか、けじめをつけたいということで横断旅行をしたんですね。その時に一番家族が感動した体験がジャクソンホールだったんですよ。その時にはすごい優れ者同士で導く人がいまして、イヴォン・シュイナードといってパタゴニアという有名なアウトドア・メーカーの創始者で有名なクライマーの彼がいたからこそ、私達はそこへ導かれたと同時に、ダグ・トンプキンスという、今や南米の大自然保護に乗り出して、エスプリという急成長した自分のファッション・メーカーを売りさばいて、南米の自然保護に向かった友達、そのふたりの親友が非常に大きな意味を持っているんです。それで、ここにも次の棲み処を建てようと思ったんですよ。で、まずジャクソンに建てて、23万坪のビーバー・スプリングスを見出して、それを私が保護しなかったら、誰も出来ないと思い始めて買ってしまったんです(笑)」

●23万坪なんて見当もつきません!(笑)

「18ホールのゴルフ場と、ロッジとか一般施設を合わせるとそれくらいになるんじゃないですか」

●はぁーっ(笑)。そこは浜野さんのプライベート保護区?

「完全にそうですね。そこはマスの産卵種を守るためと、私の湖が渡り鳥の休息地になっていますから、それを守るために買ったようなものです。だから、私が遺書を書いて、その場所や物を遺族が保存するっていう制度がありましてね、私の私設自然保護区を登録出来るわけです。そうしたら、子孫も子々孫々になるまで手を付けることが出来ない。だから、私のファミリーはそれを所有することは出来る。しかし、私の遺言通りに保存していかなければならないんです」

『朝日評論家』浜野さん!?(笑)

●浜野さんはビーバー・スプリングスでハマノ・ネイチャー・スクールをやっていらっしゃいます。これは子供メインのスクールなんですか?

「最初は子供相手だったんですよ。ただちょっと限界を感じて、どうしても金持ちの子供だけしか参加できないですね。8月の前半2週間というと飛行機代が高いから。やはり9月に近い月末の方が飛行機代も2分の1くらいになって安いんですよ。その時に、大学生だったらどうかなぁと思って、私は立命館大学の客員教授もやっていますので学生達に言ってみたら、教授も全員賛成で『是非やりたい!』と言うから、20人来たんですね。それはすごくよかったです」

●ある程度、高校生や大学生のように、これからの方向を決めなくちゃいけない子達にとっても、そういう自然体験ってすごく大事なのかなと思いますね。

「同感ですね。高校生や大学生になると、最初に『自分は浜野さんのような人と一緒に自然を歩いてみたい』という思いがありますよね。それで来るからいいんだけど、小学生くらいだと、『親が行け行けと言うから行った』みたいな、行った結果、時々すごいのがナチュラル・ナチュラリストみたいなのが現れるんですよ。それを我々はナチュラル・クライマーと呼んでいるのですが、何も教えなくても手掛かりを見つけ出して岩をスススーッと登る少年少女がおります。だから、大体20人に1人くらいいるんですよね。そういうのって生まれつきの血みたいなものですから、それは見出すのが大変なんですよ。だけど、高校生大学生くらいになると、参加する段階である程度すでに選択しているわけですよね。それから次に、自己体験と照らし合わせながら何かを見出していくっていうことを、これからしばらく大学生相手にやってみようかなと思っていますね」

●釣りを通して浜野さんが得たものって何ですか?

「大きいですね。釣りを通して得たものはまず2人の息子でしょうね。自然保護をやっているうちに、自分ひとりでは出来ないから、子供が産まれたらもっと本気でやろうということで、(奥さんに)男の子を産んでくれと頼んで結婚したようなもので(笑)。女性には申し訳ないけど、男の子がふたり生まれたので『これは神の授かり物だ』と思って、彼らには色々な自然感を教えてきたと思いますね。
 それと、息子もそうなんですけど、僕はフォックス・ファイアーという商品を生み出したし、タラス・ブルバという商品も作ったし、名付け親でもあるし、アメリカの国立公園のNPCA(ナショナル・パーク・コンサベーション・アソシエイション)という協会も作ったし、服を作るために釣りをやっているわけじゃないんですけどね(笑)。
 それからフジカHD1という全天候型の自動露出のカメラも僕が作りました。そういう機能では草分け的カメラですけど、要するになるべく魚を殺さないで写真に残そうと。魚拓にもしないで。そのためには、丈夫で簡単に写って安いカメラが良いということで作ってきたんです。まぁ、デジカメが出来たから小さくてそれを越えるものが出来てきたと思うけどね。
 だけど、釣りを通じて不朽の名作、僕はかつてファッションをやっていたんだけど、その持っていたノウハウを生かして、自然志向型の服も作ることが出来た。市場に残すことが出来た。僕はもう関わっていないけど、そのブランドはまだ活き活きと生きているからね」

●ライフ・スタイル・プロデュースの根底には、釣りや自然を通して得たものがあるんですね。

「そうですね。僕が釣りをやる前にやったバリ島のヌサドゥアというところの、リゾートについての法律を作ったんですよ。その時に一度殺されかかったんですけど、それでも守り通しました。その頃の僕のやったことが、今すごく評価されてきて、タイとかマレーシアとかシンガポールとか色々なところから、あの考え方で高級リゾートをつくって欲しいという、超高級リゾート屋さんみたいな感じもちょっと出てきているんですよね。でも、釣りだけじゃなくて自然好きのライフ・スタイルが、結果としてこの年になって結実してきたという感じはありますね。
 都市の中でも自然を重視したほうが良いと思います。川の流れのように、都市の中でも人が自然に流れるようなストリート、僕は自分で街作りのストリート派と呼んでいるのですが、自然な流れのある街並、僕は都心でもキャット・ストリートという道を育ててきた人間だし、フロム・ファーストという建物から表参道にかけての道を育ててきた人間なので、自然の流れというコンセプトを大事にしてきているんです。
 川面にいつも立っている人間からすると、『これは絶対におかしい』と見えることが、都心だけで仕事をしていると見えなくなってしまうんですよ。だから建築家は絶対に川を見るべきなんです。明け方の光、夕方の光、特に、朝日というのは意識を持ってそこに行かないと見られないんですね。夕陽っていうのは酒を飲みながらでも見れる。夕陽評論家の油井君に言いたいんだけども(笑)、要するに夕陽っていうのはぐうたらな奴でも見られるんですよ(笑)」

●油井さん、言われてますよ!(笑)

「朝日っていうのは覚悟をしなければ見られないんです。特に、釣り人のように暗いうちから待っていれば、いい朝日が見られるんですよ。俺、朝日評論家になろうかなぁ(笑)」
(一同大爆笑)

●(笑)。言ったもの勝ちですからね。次回、番組でお話をうかがうときには「朝日評論家の浜野安宏さん」と紹介させて頂きます(笑)。

「朝日はいっぱい見てるよ。朝日の直前がよく釣れるからね」

●2005年は秘境に行くご予定はありますか?

「いきなり1月にニュージーランドに行きます。去年、釣り逃した大物がいるので。今度はワイフを連れて、懺悔の旅をしようかなと思っております(笑)。その他、大物釣りは来年たくさんあります」

●また、旅のお土産話を聞かせて下さいね。今日はどうもありがとうございました。


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■ライフ・スタイル・プロデューサー/浜野安宏さん情報

『世界秘境リゾートで巨大魚を釣る!』
 世界文化社/定価1680円
 「浜野」さんが先に世界文化社から出されたこの本には、「浜野」さんが釣りのために訪れた秘境リゾートの話が満載。モンタナにある個人の自然保護区や、そうそうたる友人の話も載っていて、読み物としても面白い。釣りに行きたい、その場所に行ってみたい人のために、アクセス・ガイドも載っています。釣り好きのために魚の解説やおすすめのタックルの紹介もあります。ぜひ読んでください。

「浜野総合研究所」
 “街作りのストリート派”浜野さんが代表を務め、ライフ・スタイル・プロデュースを手掛ける「浜野総合研究所」のホームページです。
 (http://www.teamhamano.com/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. FISHING SONG / G.LOVE

M2. HEARTBEAT / ASWAD

M3. AURORA NOVA〜THE WILD PLACES / DAN FOGELBERG

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. 謎かけ歌 / C.W.ニコル

M5. PARADISE / SADE

M6. FISHING IN THE MORNING / DAR WILLIAMS

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M7. OVER AND OVER / SHALAMAR

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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