2005年10月30日

トレイル・ランナー、石川弘樹さんに聞く「走る楽しさ」

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは石川弘樹さんです。
石川弘樹さん

 マラソンやトラック競技とは違う、自然の中を走る「トレイル・ラン」という競技に注目が集まっています。今回のザ・フリントストーンは、野山を駆け回る究極のアウトドア・スポーツ、トレイル・ランの第一人者で、国内外の大会で輝かしい成績を残している「石川弘樹」さんをお迎えし、トレイル・ランナーになったキッカケ、そして自然の中を走る魅力や醍醐味などうかがいます。

歩いて山に登ったことはありません(笑)

●トレイル・ランってちょっと聞き慣れない競技なんですけど、この競技のことを詳しく説明していただけますか?

「はい。トレイル・ランという言葉自体も初めて聞くっていう人も多いと思うんですけど、直訳すると登山道や林道やハイキング・コースを、日本では古くからだと山岳マラソンだとか、クロスカントリーって言い方をされていますけど、そういった登山道なんかをトレイルと呼んで、そこを走るからトレイル・ランニングなんです。基本的には、アスファルトを走るマラソンが山の中、オフロードへそのまま入っていったという感じです」

●じゃあ、私たちが山歩きするトレイルを走って楽しむスポーツなんですね。すばり、トレイル・ランニングの魅力はなんですか?

「競技っていうものと、マラソンもそうですけど、レースだけではないじゃないですか。エクササイズ、フィットネスとして、体重を落としたり健康維持のためにマラソンをやったりする感覚で、トレイル・ランニングも遊べるスポーツだと思うんですよね。いきなりなので、『トレイル・ランニングやってみたい!』って思えないかも知れませんけど、自然の中へ入っていくことで景色を楽しめますよね。山があったり、川があったり、湖があったり、動物がいたり、季節によっては景色の色も違うし、気候も違うし、そういったものが楽しめて。山で歩くとか山に入っていくっていうのは、大型のバック・パックを背負って、ハードな山靴を履いて登っていくものっていうイメージがあると思うんですけど、場所によっては全然そんなものじゃなくても、軽装備で入って行くことでスピード・ハイキングみたいな楽しみ方もできるんですね。もちろん、レースであれば順位だったりタイムを求めて早く行きますけど、そうでなければ、自分達のスピードやその時の雰囲気で『景色がいいから写真撮ってみよう』とか『ここで休憩してごはんを食べよう』とか、そういったことをしながら、移動できるところは走ってみたり、早歩きをしてみたりって感じで全然いいんですね。
 山は常に登っているわけじゃないので、下りや平らなところももちろんあるんですね。そういったところっていうのは、充分走れるんですね。僕は逆に、歩いて山を登ったことがないんですけどね(笑)」

●(笑)。そんなトレイル・ランに石川さんが出会ったキッカケはなんだったんですか?

「大学4年までずっとサッカーをしていて、そのあとは実業団などでサッカーをしたいなって思っていたんですけど、大学って色々な情報が飛び交うじゃないですか。バイトをしてみたりとか。その中で、アウトドア・スポーツというものが自分の中に入ってきたんですね。その中で、カヤックをやってみたり、クライミングをやってみたり、マウンテン・バイクをやってみたりしていて、あるとき、先輩から『山を走るスポーツがあるんだよ』ということを教えてもらって始めたんです。でも、その時はトレイル・ランニングっていう感覚ではなくて、紹介してもらったスポーツがアドベンチャー・スポーツで、それを知ったときに、自分、それまでサッカーしかやっていなくて、他のアウトドア・スポーツもかじった感じだったんですね。
 で、そのアドベンチャー・レース時代がとんでもないものだったんですけど、一生のうちで1度はやってみたいなって思ったんですね。その当時って十何年前なんですけど、日本にアドベンチャー・レースのアの字もないくらいだったので、海外に遠征しているチームが、ある雑誌に『こういうチームがこういうレースをしてきました』っていう情報が載っていたくらいで、世にはほとんどそういう情報がなくて、やるにもやれなかったものだったんですね。だから一生に1度はやりたいなと思っていて、自分で真似事をしていたんですよ。自分で山の中を走ってみたり、マウンテン・バイクで色々なところを走ってみたり、そうして続けながらあるとき、古くからある登山競争というものがあることを知ったんですね。で、それに出たことによって、『この世界のほうがアスファルトを走るよりも面白いな』と思って、そっちのほうにフォーカスしていったんです」

●それが何年前くらいなんですか?

「6〜7年くらい前ですね」

●大体の1レースでいうと、走る距離とか時間っていうのはどれくらいなんですか?

「大会にもよりますけど、短いのであれば、登山競争と言われているものだと5キロとか、10キロくらいから1時間以内で終わっちゃうものもありますし、あと、国内で長いレースになってくると、距離にしてみると70キロくらいの距離なんですけど、制限時間が24時間あって、その中でコースを回ってくればいいという大会もあります。海外に行くともっとスケールの大きい大会がもっとあります」

●色々なレベルに合わせて参加できるんですね。

「はい。大分増えてきましたね。以前は、山岳マラソン、登山競争と言われていたものが今、トレイル・ランニング・レースという形で言われてきていますね」

木からヒルが降ってくる!?

●石川さんはトレイル・ランを始めて結構経ちますけど、最初に参加したレースのフィールドって覚えていらっしゃいますか?

「8年くらい前の樹海ですね。初めて行って初めて走ったんです。その頃っていうのはサッカーもやっていたので、アウトドアズ・ウエアではなくジャージで行きました(笑)。『とりあえず走れる格好で来ればいいから』って言われてジャージで行ったんですけど、その時が初めてです」

●今とは何がどう違いましたか?

「秋で紅葉が始まっていて、季節もよかったんですよ。樹海には行かれたことはありますか?」

●はい。

「結構溶岩がガリガリしていたんですけど、秋も終盤で落ち葉が降り積もっていました。落ち葉が積み重なっていることで、硬いところはなくてフカフカで、時間帯もまたよくて、夕方、昼過ぎだったので、木と木、葉と葉の間から優しい光が入ってきて、その静かな中で気心知れた仲間と『ヒューヒュー』言いながら、どこまでも走れちゃうって感じでした」

●そういう走りって楽しいですよね。走っていて『ハァハァ』してきちゃうと、つらいじゃないですか。

「最初は全然つらいものじゃなかったんですよね。どこまでも行けちゃうって感覚だったんです」

●石川さんは、それ以前にもアドベンチャー・レースとかにも出てらっしゃるじゃないですか。これまでに、色々なレースで行った場所、ロッキー山脈、モロッコ、チベット、ネパール、ボルネオ、フランス、香港、中国、国内では北丹沢、八ケ岳、スノー・シューイングのレースでは妙高にも行かれていて、もうあちこちの自然の中を走ってこられたんですね。

「そうですね。行きたいと思ったら行ってますね(笑)」

●その中で1番過酷だった場所はどこですか?

「マレーシアのボルネオってところのレースで、アドベンチャー・レースだったんですけど、アドベンチャー・レース自体が1週間とか10日間とか長期のレースだったんですね。そのマレーシアのボルネオの大会は、ジャングルの中でやる大会だったんです。ジャングルってパッと聞くと動物がいて、ちょっと癒される部分もあるんじゃないかなって思うんですけど、僕が行った時はヒルが強烈にいて(笑)、日本のヒルだと地面を這いつくばって足下に寄ってくるようなことが多かったりするんですけど、向こうのヒルは木の上から降ってくるんですよ(笑)」

●襲ってくる型なんですね(笑)。

「襲ってくるっていうか、ヒル自体の習性っていうんですかね。足音だとか、人間の臭いとか、そういうのを嗅ぎつけて、人がその地域に入ってくれば寄ってくるんですけど、上から下から襲ってきて、その時に関してはジャングルを3日間眠らずに進んでいくんですけど、その間雨も降るし、雨が降ればその水滴と一緒に落ちてくるんですよ。で、ヒルのタチの悪いところが、血を吸ったときに蚊みたいにチクッと刺して腫れるくらいだったらいいんですけど、ヒルはかゆくはないんですけど、吸い口から血を止めないような歯を残すんですよ。1回血を吸うとそこからしばらく血が流れ続けるんですよ。だから、大けがをしているわけじゃないんですけど、全身血だらけなんですよ」

●吸い口からたれてきちゃうんですね。

「はい。だから、ウエアとかが真っ赤っかになっちゃって、靴なんかも色々なところから入ってきて足も吸うんですね。すると、川とか水たまりでグジュッてやると、靴の中から血がジュって出てくるんですよ」

●そんなドラキュラが喜びそうな状況でも(笑)、レースは続いていくんですね。それだけの深いジャングルが、この地球上にもまだあるんだなっていう見方もできますよね。

「そうですね。アドベンチャー・レースを魅力として思ったのが、もちろんキツイことは分かっていたので、それがキツイだけだったら、多分僕やらなかったと思うんですよ。なぜやりたいと思ったかというと、アドベンチャー・レースっていうのは、そういった秘境とか人がほとんど入らないところにコース設定をしてやるものなので、そういったところにはよっぽどのことがない限り、自分は行けないんじゃないかなと思ったんですね。そういったところで自分の好きなアクティビティをしながら、もちろんキツイ部分はあるんですけど、チームですから協力しながら助け合いながらやる。それはすごい魅力だなぁと思ってやりたいと思ったんですよ」

順位やタイムよりも楽しむことが大事

石川弘樹さん

●石川さんは、トレイル・ランがまだ日本ではよく知られていないということで、トレイル・ランをもっと多くの人に知ってもらうための活動も色々されているんですよね。

「はい。もちろん言葉とか文章とか写真で見せても、『こんなところだったら走ってみたい』とか、走るのがいやだったら『こんなところだったら行ってみたい』とか聞くことはあるんですね。でも、僕としては体験をしてもらいたいんですね。それでいて、やっぱり本当に面白いものなんだっていうのを体験してもらって、実際のフィールドに連れていくイベントなどをやったりしています」

●これは年齢的には、子供から大人まで大丈夫なんですか?

「はい。子供から年配の方まで大丈夫です。僕が勧めているのは競技ではないですから、トレイル・ランニングをしましょう、自然の中を走ってみましょうということをやっているので、子供に関しては山道の足場の悪いところを勧めているんですね。過保護っていう言い方は失礼かも知れませんけど、『子供にそんなことをさせて!』っていう親御さんにはちょっと向いていないのかも知れませんけど、やはり悪路を歩く、走るっていうことで、色々なことを考えると思うんですよね。危険回避じゃないですけど、こういったところに着地すればひねりやすいとか、滑るとか、そういったことを考えるので、僕、小さいうちからそういうことをやっておくのはすごくいいんじゃないかなと思うんです。別に科学的根拠も何もないですけどね」

●でも、都会はアスファルトで完全に埋め尽くされて、全て段差もなくスムースに足を運べる状況じゃないですか。そういうところで生まれ育った子供達が、段々バランス感覚が悪くなったりとか、本来持ってなくちゃいけない野生の部分っていうのがどんどん失われているっていうのを聞くので、そういう意味では、トレイル・ランのイベントに参加される子供達も最初は戸惑っていても、すぐに慣れてしまいますよね。

「そうですね。トレイル・ランまでいかなくても、ハイキングなんかをすると、小さい子供のほうがピッタリ自分の後ろにくっついていたりとかして、大人の人がヒーコラヒーコラ言いながら後ろから付いてくるという状況です(笑)。小学校の高学年になってくると興味を持っていて、ハイクに行っても一生懸命付いてくるんですよね」

●例えばキャンプを組み込んだイベントなんかもあるんですか?

「キャンプまではまだ入れてはいないんですよ。日帰りですね」

●手軽に誰でも参加できるっていう感じなんですね。

「そうですね」

●私たち、ザ・フリントストーンもこういう番組をやっているんですけど、白石康次郎さんの西伊豆アドベンチャー・レースをまんまと辞退した組なんです(笑)。

「(笑)。レースになってくると、やらなきゃいけない部分で制限時間もあったりとかしますし、もちろん大会側は選手達に楽しんでもらおうっていう部分もあって、かなり厳しい設定をしていると思うんですけどね(笑)」

●康次郎さん、かなりハードなコース設定してますもんね(笑)。

「レースになってくると引けてしまう部分ってどうしてもあると思うんですけど、そうじゃなくて僕のは『遊びましょう』っていう楽しんでもらうものなので・・・」

●じゃあ、フリントストーンも大丈夫ですね?

「全然、大丈夫です」

●おじさん、おばさん達でも?(笑)

「大丈夫です!(笑)」

温泉目当てでもいいんです(笑)

●私たちも是非、1度やってみたいと思うんですけど、関東の近場のエリアでいいフィールドってありますか?

「関東っていうのは海も山もありで、山なんかは町に隣接してあったりするんですよね。そこまで電車もバスも通っていたりするので、結構、色々なところがあるんですよ。例えば、奥多摩とか、丹沢とか、箱根とか。以前、ハイキングとかに行かれたことはありますか?」

●はい、あります。

「そのハイキングで行かれたところを、軽装備で走ってみてください。過去に行ったことのあるところをトレイル・ランニングという情報なり、知識を知ったということで、ウエアだったり、シューズだったりはどんなものがいいのかというのは後からでも紹介しますので、山に入るっていうことで自然をなめてはいけないということで、必要最低限の装備を持って行ってみてください」

●それでいいんですね!

「それでいいんです」

●そこから始めて、少しづつ冒険を含んだものにしていけばいいんですね。

「そうですね。きっと、そういった感じで行ってもらうと、ハイキングだと丸一日かかったようなところが、半日とか数時間で行ってきてしまうと思います。例えば、そこで走ることで気持ち良さとか、そういったものを感じていただければ多分、ハマっちゃうと思います。あとは、山に行けば温泉とかおいしいものもありますから、汗をかいて降りてきたときには、温泉に入ってゆっくりしてもらうっていうのがいいかと思います(笑)」

●そっちが楽しそうですね(笑)。

「そっちメインでもいいと思うんですよ(笑)。どこどこの温泉があるから、温泉を目当てにして行って、おいしいものもあるし、その近くにフィールドがあれば走ってきたり、ちょっと小走りしてきて温泉に入ると。逆でも僕はいいと思います(笑)」

●温泉も気持ちがいい季節ですし、紅葉も楽しみながら、森林浴をしながら走るといいですね。

「秋なんか最高ですね」

●関東では色々なところがあるとおっしゃっていましたけど、ハイキングでっていうところでいうと、フリントストーンは以前、千葉の富山(とみさん)とかにも行きました。あそこは階段が多くて大変だったんですけどね(笑)。

「(笑)。コース選びをする時に気持ち良く走れるっていうのを基準に選ぶといいかも知れませんね。もちろん階段っていうのは、トレイル・ランニングなので、走ってなきゃいけないっていうのがあると思うんですけど、それは競技だけのことで、遊びで行けば、そういったところは歩いてもらっていいんですね。てくてくとゆっくり歩いていって、登れば降りたり、次の山とかトレイルに着くまでに、ある程度平に下っているところがあると思うんですね。登りは歩いていいんです。そこから走りだす。そんな感覚でいてもらえるといいかなと思います」

●富山は階段しかなかったので、あそこはちょっとやめておくとして(笑)、千葉方面でどこかフィールドを石川さんに一緒に探してもらいたいなと思います。

「トレイル・ランニングをする装備をバッチリ決めて、是非、遊びに行きましょう!」

●その模様は是非フリントストーンで・・・。

「実行しましょう!」

●連れていっていただきたいと思います。石川さんはこれからもトレイル・ランニングを日本で広めていくと思うんですけど、これからやってみたいこと、行ってみたいところはありますか? いっぱいあるんだろうなぁ(笑)。

「そうですね(笑)。まだまだ興味があるんだけど、やり方がわからないとか、やってみたいんだけどどうしたらいいのか分からないっていう人達をどんどんフィールドに連れていく。で、多くの人にトレイル・ランニングを知ってもらうっていう普及活動的な部分でもっと色々なことがやりたいっていうのと、自分としても走りながら世界中を見ていきたいですね。具体的にはヨーロッパのほうを攻めてみたいなと思っています(笑)。アメリカのほうはかなり行って、色々なところを見てきたんですけど、ヨーロッパのほうは見てみたいなと思いますね。あとは南米のほうですね」

●どんどん海外遠征をなさると思うんですが、その合間に千葉でのトレイル・ランのコース探しを是非、実行したいなと思っております。

「そうですね。是非!」

●いつとは言いませんので(笑)、予定は未定ということよろしくお願いします(笑)。今日はどうもありがとうございました。


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■トレイル・ランナー「石川弘樹」さん情報

 「トレイル・ランニング」とは山や大自然のトレイル(登山道、林道)を走るスポーツ。日本では多くのレースが山岳マラソンや山岳耐久レースと称されている。しかし「石川」さんはもっと気軽にトレイル・ランニングを楽しんでもらおうと、現在、日本での普及活動を精力的に行なっている。
 そんな「石川弘樹」さんのホームページには「石川」さんのプロフィールやトレイル・ランの説明、必要な用具などの解説が載っている他、「石川」さんの日記コーナーもあるのでぜひご覧ください。

「石川弘樹」さんのHP:http://www.hirokiishikawa.com/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. ROADRUNNER / JOAN JETT & BLACKHEARTS

M2. RUNNING WILD / SPEECH

M3. JUNGLE / E.L.O.

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M4. GAIA / JAMES TAYLOR

M5. HAVE FUN / THE BEAUTIFUL SOUTH

M6. IT KEEPS YOU RUNNIN' / THE DOOBIE BROTHERS

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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