2005年11月13日

千倉の海に生きるアーティスト/サーファー、澤匡章さんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは澤匡章さんです。
澤匡章さん

 サーフィンに夢中になった青年はふるさとの海に魅せられ、その風景やサーフィンを、絵画やオブジェで表現するアーティストになりました。今回のザ・フリントストーンは、海を描いたシンプルな絵画や、ミニチュアのサーフボードと流木を使ったオブジェを作るアーティスト「澤 匡章(さわ・まさあき)」さんを、千葉県・千倉にある工房に訪ね、お話をうかがいました。

水の流れを見ていても飽きません

●今日は澤さんの工房にお邪魔をしてお話を伺っていきたいと思いますが、まず、澤さんはもともとはメーキャップ・アーティストを目指していたのが、サーフィンにハマってしまい、その道をやめて今では絵なども描くようになり、去年、初めて個展を開かれてそうですが、個展はどうでしたか?

「たくさんの人に来てもらって、初めての個展だったので、基調をしてもらうとか、そういった段取りも分からなかったんですけど、お店の人がちゃんと用意してくれて、来てくれたお客さんの感想とかを読むと、やってよかったなって改めて思いましたね。慣れるまでは恥ずかしかったです」

●今日、この工房にもいくつかの作品が飾られているんですけど、澤さんの作品って写真のような絵もあれば、波、水平線、空っていう色のグラデーションを線で描いているような感じのもあるし、イラストのようなものもあったりして、色々なタッチの作品も作っていらっしゃるんですね。これはどういった理由で表現を分けているんですか?

「これは特に技法にはこだわらず、線が書きたいときにはそれを書いたり、撮った写真の中で、心に残った写真を自分の中で絵にして描いています」

●基本的にはこちらの工房に戻られてから、思い浮かべて描くことが多いんですか?

「そうですね」

●実際に、海辺にキャンバスを持ち出して描いたりっていうことはあまりないんですね。

「そういうことは普段の生活ではないです。ほとんど毎日海に入って、板の上にプカプカ浮きながら波が来る間に色々ボーッと考えたりとか、そういった考えの絵っていうのは、普段の陸で生活している時にはないような考え方とかが出ますので、そういうのが表現できればいいなと思っています」

●澤さんもサーファーですから、サーファーじゃない人の視点で見ろというのは無理かもしれませんけど(笑)、例えば、私がサーフィンをしないで海へ行って浜辺から海を見たときに感じることと、サーフィンをするのに沖に出てプカプカ浮いているときに、同じ波を見ていても同じ風を感じていても感じ方って違うんじゃないかなって気がします。実際にそれを言葉に表現すると、どんな感じなんですか?

「目が良くなるってよく言うんですけど、山を見たときとか水の流れを見たときに、サーフィンを始める前よりは鋭くなったっていうのはありますね」

●いわゆる川の流れとかがよく見えるということですか?

「水の流れをずっと見ていても飽きなくなるとかですね。波が大きいときとかは、セットっていって15分に1回くらい大波が来るんですよ。その水平線のあたりがだんだん影ができてきて、波待ちしている人がみんな沖に向かっていって乗ろうとするんです」

●それが過ぎるとあと15分は来ないんですね。

「そうですね。来たり来なかったりですね」

●波って周期があるんですね。

「周期で動くんです」

●サーファーの人達って朝方とか早い時間に行くじゃないですか。やっぱり、早朝のほうが波がいいから行くんですか?

「風の方向が合っていればコンディションは問題ないんですけど、朝と夕方っていうのは凪ぎることが多いので、風がないことが多いんですよ。だから、それを狙っていく人がいますね」

澤さんの作品

●実は私、初めて実物の作品を拝見するんですけど、見ていると線だけで、私が今見ているのはサックス・ブルーの空があって、白い水平線があって、その下に青い海があって、手前に空と同じサックス・ブルーの線がスーッと入っていて、その1本下に濃いめのブルーがあるという、見た感じとってもシンプルなんですけど、すごく凪いだ爽やかな海景色っていうのが、イラストっぽく線だけなのに、それがすごく感じられました。

「ありがとうございます」

●ブルーが主体の作品が多いですよね。その中でもう1点、薄いブルーの空があって、濃いグリーン系のグラデーションのように海が表現されている真ん中当たりに、クリーム色と薄いオレンジ色の線が入っているんですが、これらの線はどういうものをイメージして描いたものなんですか?

澤さんの作品

「これはズンズン来るうねりが押し迫ってくる線と、割れる寸前の波の線と、割れたあとのスープっていう白い波をイメージして、自分の中で色をつけて表現しました」

「ダイナミックだけど穏やか」な工房です

●澤さんはこちらの工房「GENTLE WAVES」を作ったのはいつ頃なんですか?

「2002年にオープンしました」

●もう3年経つんですね。「GENTLE WAVES」という名前の由来は何なんですか?

「直訳すると穏やかな波っていう意味があるらしいんですけど、僕のイメージでは海を見たときに鳥とかの視線で見下ろした感じ、俯瞰図です。見たときのうねりが入る線が、割とダイナミックなんだけど音がない。穏やか。そういうのをイメージして、そういう絵が好きなのと、コンディションが好きなのと、そういう絵を描きたいのと、それらが全部一致してそういう名前を付けました」

●澤さんはもともと千葉出身だそうですが、千倉にこの工房を構えられた理由は何だったんですか?

「一番最初にサーフィンで海に入ったのが千倉の海だったんです」

●その印象がすごく強かったんですか?

「ええ。あとは、サーフィンをやっている千倉の人達の、のんびりしているリズムがすごく好きなんですよね」

●澤さんが今までサーフィンをしてまわったポイントの中で、千倉以外で千葉のお気に入りのスポットを教えていただけますか?

「館山の平砂浦海岸ですね。あそこはフラワー・ラインっていう3キロくらいの直線があるんですけど、そのフラワー・ラインを挟んで海と松林があるんです。で、海に入る前に高台に登ってそこから海に降りるんですけど、そこの風景がたまらないですね。前を見ると水平線と海なんですけど、後ろをパーッと振り返ると、一面松林になっていて、家の民家とかがあまりないので、すごくいいところです」

●これから、サーフィンをしなくても遊びに行くにも、景色を見るにも・・・。

「おすすめですね」

●サーファーの方は季節関係なしに、これからどんどん寒くなっても海に入られると思うんですけど、一般の人って冬に海って行かないじゃないですか。だから、私なんかはあまり人がいなくて好きだったりするんですが(笑)、澤さんから見る秋冬の海の魅力って何ですか?

「空気がどんどん澄んでくるので、割と遠いところまで視界が広がることが多いのと、あとは水質ですね。夏より水がキレイになるので、って一般の人は水に入ったりしないですけど(笑)、冬のサーフィンはそういうところが魅力ですね」

千倉のスローなリズムが気に入っています

澤さんの作品

●澤さんは絵画だけではなくて、額縁にミニチュア・サーフボードと流木とか貝殻を組み合わせたアートもやっていらっしゃるわけですが、この中に使われている白いサーフボードは実際の・・・。

「サーフボードの素材です」

●このアートは全て廃材で作られているんですか?

「そうです。使っていて折れた板や、海でそのまま捨てていく人がいるんですけど、そういったのを拾ってきて、再利用して、こういうふうに額に入れて飾っています」

●このアイディアというのはどこから思いついたものなんですか?

「これは、一番最初に自分の板が折れたときに、その板がすごく気に入っていたんですよ。それをなんとか、形見じゃないですけど(笑)、自分の部屋でいつも思い出すように記念として自分用に作ったのが最初なんです。で、それをたまたま友達が家に遊びに来た時に見つけて『自分にも作ってほしい』って言ったので、作ってあげたのがキッカケにどんどん広がっていったんです」

●こうやって見るとサーフボードの形も微妙に少しづつ違うんですね。ただ、すごく新鮮なのは、私のイメージのサーフボードって、色とりどりで色々な模様が入ってたりって感じなんですけど、澤さんのアートに使われているのは本当にシンプルで、一見貝殻かなって思えるくらい白いボードなんですけど、これは何かこだわりとかがあるんですか?

「実際に実物のサーフボードを作る工程の中で、このあとにガラス・クロスっていうガラス繊維のクロスを巻いて、樹脂を塗って防水加工をするんですけど、僕、千倉のシェイプをしている工場に見学に行った時に、シェイプされたまっさらのサーフボードの状態が一番僕は好きだったんですよ」

●私もほしいなぁ(笑)。実は、澤さんのホームページでも買えるようになっているんですよね。また、澤さんのサーフ仲間のペンションとかにも絵画も含めて置いてあったり、販売していたりするんですが、1カ所はちょっとしたギャラリーみたいなところまであるっていうのをホームページで拝見しました。

「もともとは駐車場の物置小屋だったんですけど、それをペンションのオーナーと2人でキレイにして、そこを小さなギャラリーとして使わせてくれるっていうことになったんです」

●C cabinでしたっけ? そのギャラリーは千倉の近くにあるんですか?

「はい」

●みなさんも是非、ペンションに泊まられてギャラリーでゆっくりと作品を眺めていただきたいと思います。澤さんは今後も絵画やこういったアートを続けていかれるんですよね?

「はい。続けていきたいですね」

●目標とか、目指すものってあるんですか?

「今の生活スタイル、リズムですね。それがすごく気に入っているので、今後も同じような生活をしていきたいですね」

毎日海に入っていると変化は気付かない

澤さん

●澤さんは毎日、海に入っていらっしゃるそうですが、14年前の海と比べて何か変わった点はありますか?

「それが、毎日入っていると分かんないんですよ」

●逆に?

「逆に。僕、サーフィンを始めて14年になるんですけど、14年前と比べたら明らかに変わったなっていうところはあると思うんですけど、毎日海に入っていて感じることはないですね。昔からサーフィンをやっている年配の方とかは、『僕が始めたときはもっと砂浜があって、波もよかったんだよ』ってよくおっしゃるんですけどね」

●波ってすごく影響を受けそうですもんね。砂が持っていかれたりして底のほうの地形が変わることによって、今までは大きな波が立っていたのが、サーファーにとってのいい波が来なくなるとか、耳年増的に聞いたことがあるので(笑)、そういう意味ではすごく違いがあるのかなって思ったんですけど、毎日入っていると逆にあまり見えてこないものなんですね。

「そうですね。僕は特に鈍感なのかも知れないですけどね(笑)」

●(笑)。海ってどうですか? 夏場は海水浴客などが置いていくゴミもあるでしょうし、海の場合は周辺の人達が汚さなくても、海の向こうから運ばれて流れ着いてしまうゴミってたくさんあると思うんですけど、千倉の海はどうですか?

「台風の時とか潮の関係で満ちてくるときとかは、どっさりゴミが溜まりますね」

●どういったものが多いですか?

「台所用洗剤のプラスチック容器ですね。あとは、レジンっていうプラスチックのもとの丸い米粒大のものがバーッと落ちていたりとかします。それは、色々調べたんですけど、船からそのまま捨てるものらしいんですよね」

●澤さんの作品を見ていると、「そんなゴミなんて存在しないんだ」っていうくらい穏やかな「GENTLE WAVE」が写しだされているんですが、その影にはやはりゴミはあるんですね。この絵のようにゴミもなく、いつも穏やかでちゃんと砂浜もあるような海がずっと続いてくれるといいですね。澤さんはこれからもずっと、千倉でサーフィンをやりながら、絵を描かれていくんですね。

「そうですね。それが希望です」

●個展とかの御予定は今のところはないんですか?

「今年はもうないんですけど、来年の秋に予定しております」

●まだちょっと先なので、それまでは澤さんのサーフ仲間のところで作品を拝見したり、ホームページとかで見ていただければと思います。新しい個展などが決まりましたら教えて下さいね。今日はどうもありがとうございました。


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■アーティスト「澤 匡章」さん情報

澤さんの作品

 千葉県千倉に工房「GENTLE WAVES」を構え、海を描いた絵画や、ミニチュアのサーフボードや流木を使ったアートを手掛ける澤さん。そんな作品の数々は「澤」さんのホームページでも見たり購入することができます。また「澤」さんの作品が展示/販売されている千倉町にあるペンションC cabinの敷地内にある「ギャラリーRAGLAN」を初め、作品をおいてある千葉県内のその他のペンションやショップなども紹介されているのでぜひアクセスしてください。
 尚、東京都内ではサーファー、そしてモデルとしても活躍している「アンジェラ・マキ」さんがプロデュースした、南青山にあるショップ、「maluhia」でも「澤」さんの作品を購入できるそうです。

「澤 匡章」さんのHP:http://gentle-waves.info/index.html

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. SONG OF THE SEA / DAN FOGELBERG

M2. MORE THAN WORDS / EXTREME

M3. 鍵の絵 / キセル

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. FATHER TO SON / PHIL COLLINS

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. SECRET GARDEN / BRUCE SPRINGSTEEN

M6. WAITING FOR THE MOON TO RISE / BELLE & SEBASTIAN

M7. ALL AT SEA / JAMIE CULLUM

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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