2005年11月20日

若き校長先生、カインドリー・スクールの川本光さんを訪ねて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは川本光さんです。
川本光さん

 千葉県安房郡白浜町に子どもたちの憩いの場「カインドリー・スクール子ども村」を立ち上げた若き校長先生「川本光」さんに、スクール設立の目的や活動内容などをうかがいます。カインドリー・スクールの目の前は海で、自然体験も盛んに行なっています。また近年、誰もが抱える心の問題を解消する方法などもうかがいました。

カインドリー・スクールの子達はイルカ的!?

●今日はカインドリー・スクールにお邪魔をしていて、周りには子供たちが興味津々で集まっていますけど、そもそもこのカインドリー・スクールというのはどういう学校なんですか?

川本さん「自分らしく生き抜く力をつける学校です。今の世の中はきれい事だけでは通用しないので、自分を磨きながら、もちろん日本社会で生きていくためには高校に行って、大学に行って自分の夢をつかむためのステップとして、学習面、心の面、そして自然体験の面という三局面からサポートしているというのが当スクールの特徴です」

●設立はいつぐらいなんですか?

川本さん「去年の1月です。まだ2年弱ですね」

●川本さんはハワイでイルカの研究もされていたそうですね。

川本さん「はい。大学1年生の時に単身ハワイに渡りまして、オアフ島で自然のイルカを使って、世界中の心の病んだ人達や、自閉症の子供たちとか、色々な心の傷を負った人達とかも、人種や宗教を問わず色々な人が自然のイルカと戯れることで、元気になっていくということをされている方がいらっしゃったんですね。その方はイルカとコミュニケーションが出来て、その方が太平洋にドボンと入ると、何百頭というイルカがバーッと集まってくるんですよ。そこに心が病んだ人達が入っていくわけです。すると、病んだ人のところには、何の調教もされていないイルカ達が集まってくるんですよ。私なんかが初めて入っても、イルカ達は全然来ないんですよね。それは何故かっていうと、私はある程度健康であるし、人間界のものとか、大人の都合とか、そういった汚れたものを心の中に持っていたので、イルカはそれを察知して来なかったんですね。私は一週間くらいかかりましたね」

●そうですか!

川本さん「心を真っ白にして、人間界のものを全て捨て去って、『海の世界に入れさせてもらいます』っていう気持ちにならないと、普通の健康的な方だったら、なかなかイルカは来ないということなんですね。そういうことも含めて、色々学んできました」

●それは、このカインドリー・スクールをやっていて、参考になるなっていう部分はありますか?

川本さん「非常にありますね。ハワイに行ったことが、私の人生、運命を大きく変えたっていうのは間違いなくて、一番何に役立っているかというと、実際に私もこの学校では学校に行けない子とか、家に籠っちゃっている子のところに私一人で交渉をしに行くわけです。ネゴシエーター(交渉人)になって、ドア越しに色々と話とかをするんですけど、私と話した子達は30分話せば何年も籠っていた子とかも、みんな出てくるんですよ。今、教育界は『なぜ、あの若者にそんなことが出来るんだ!?』と話題になっているみたいで、私は何の知識も教養もない人間なんだけど、そういうことが出来る。それはなぜかっていうと、これは経験した私だけが感じ取れるんですけど、ハワイのイルカ達から学び受けたことで、それは無償の愛なんですね。イルカと話すときと同じ境地に自分を持っていくわけです。分かりやすくいえば赤ちゃんの状態で、その子に語りかけていくんです。すると、特別で複雑なカウンセリングの用語とか、難しいことを言わなくても、『もう大丈夫だよ。光先生と頑張っていけば、君らしい人生を生きられるからね』ってストレートに全身全霊で声をかけてあげれば、終わることなんですね。なかなか信じがたいことなんですけど、実際、この1年間で88組の色々な親子と出会ってきて、全て見事に復活を遂げてきたんです。もちろんカインドリー・スクールにもそういうお子様もいらっしゃいますし、学校から帰ってきてここで心の教育、心を強くしたいというお子様もいらっしゃいます」

●ある意味、カインドリー・スクールで川本さんと接している子供たちは、イルカ達のような感じなんですね。

川本さん「そうですね。イルカ的ですね」

●イメージとしてはリードする側がイルカになってという横柄な感覚で接することが多いと思うんですけど、それをやると川本さんが野生のイルカと出会おうとしても、イルカがなかなか寄ってきてくれないのと同じ状況になる。相手がイルカなんだというふうに思うと、こちらの心を開いていかなきゃいけないということなんですね。

子供が子供を教育する場

川本光さん

●今、私の前には元気な子供たち、イルカ君達がたくさんいて、さっきも話をしているときに「僕もやる!」とか、「手伝う!」っていう声も聞こえてきてますけど、ここカインドリー・スクールの一日というのを簡単に教えていただけますか?

川本さん「午前中は、学校に行けない子とか家にいる子のところに交渉をしに行ったりとか、学校にあともう少しで行けそうな子の手を引っ張って小中学校に連れていってあげたりとか、そういった活動をして、昼からは無事、学校に行けるようになった子とか、部屋から出られるようになった子がカインドリー・スクールには来て、ここで勉強や自然教育や心の勉強をしていきます。そして夕方からは進学塾に早変わりして、難関大学とか難関高校を目指す子供たちが勉強をするっていう感じです。だけど、ここのすごいところは、そういった子供たちも、あと一歩で学校に行けそうな子供たちも、全然学校に行けそうではない子供たちも一緒に勉強をしているというところなんですよ。夕方からは」

●今、私の前で深くうなずいている男の子達がいますけど、そういうことなんだね。

川本さん「これがすごいことなんですよね。ここでは子供は全て平等です。どうしても学校に行けないとかいうと、まだ社会的な色々な見方をされる部分があります。でも、『僕はそうじゃないんだよ』って訴えたいので、やはり学校に行って勉強を頑張れる子もそういった子供たちを思いやれる。また行けない子も学校に行って頑張って勉強をしている子供たちと接することによって、僕たちに足りないものは何なのかということを学ぶ。そして、幼稚園の子は高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんを慕う。高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんは、将来、保育士になりたい子がいて、その子達は実際に教育実習の場みたいなもので、そこで勉強の合間でお互いを教育する。だから子供が子供を教育する場なんですよ。そういう学校です」

●そんな人と人との学びあい、教えあいという場に自然教育、自然体験というのもかなり大きく入ってくるかと思うんですけど、そういう自然体験はどういう部分で関わってくるんですか?

川本さん「特徴としては目の前に海があるからって、『明日、海に行くぞ!』って言って海に行くのではなくて、カインドリー・スクールの日頃の何気ない日常生活の中で、『あ、今この子は海に引っ張っていったほうがいいな』っていうタイミングを、その子の表情や心のタイミングを見て、本当に海が目の前なので手を引っ張って海を見せてあげたりとか、寒いんですけどボディー・ボードをしに行ったり、サーフィンしたりとか、そういった突然、子供の一瞬の隙を逃さずに行なう活動を自然を使ってやると。で、自然を使うことによって、子供たちは本当に素直になり、心が豊かになって、自分らしくなれる。するとまた、自分の夢に向かって、何倍もの活力を生みだして頑張っていく。それを実践として目の前の大自然を使ってやらせていただいています」

●そのフィールドに、山ではなく海を選んだというのも、川本さんのハワイでの経験やイルカとの体験が一番心に残っているというところからきているんですか?

川本さん「はい。そうですね」

自然体の自分を知っておくことが大事

●こちらでは夏にキャンプをやっているというのをホームページで拝見したんですけど、これはどういった感じのキャンプなんですか?

川本さん「全国から、もしくは千葉県内からのお子様が週末を通じて、ここ白浜や館山の現地の子供たちと交流をするという場を作ってあげたいなという思いがきっかけで始めているんですけど、実際、夏もそういった形でやりまして、地元の子供たちが『地元のことは僕たちがレクチャーするよ』と、米を炊くことから海の美しいポイントまで、また泳ぎ方、シュノーケリングの仕方、あとはテントの張り方とか、全てにおいて地元の子供たちがキッズ・ティーチャーとなって、県外から来る子供たち、市街地から来る子供たちをレクチャーしていくというのが、このキャンプの特徴です」

●ちょっとここで、そんな子供たちにもお話をうかがってみたいと思います。

★       ★       ★

マツザカ君とナミカさん

●カインドリー・スクールのスクール生のお2人にも来ていただいたので、お話をうかがいたいと思います。こんにちは。お名前を聞いても大丈夫?

マツザカ君「はい。マツザカリョウマです」

●あなたは?

ナミカちゃん「ナミカです」

●よろしくお願いします。毎年、カインドリー・スクールでは夏に他県の人達とかも呼んでキャンプをやるとうかがったんですけど、お2人はリーダーとして活動されたそうですね。このキャンプってどういうことをやるんですか?

ナミカちゃん「海に行ってボディー・ボードをやったり、みんなで泳いだり、貝のペンダントを作ったりして、みんなで昼食とか夕食とかを協力しあいながら作ったりしていました」

●リーダーって大変でしょ?

マツザカ君「はい」

●どういうところが大変でしたか?

マツザカ君「仲間を集めたり、みんなで協力をしたり、声を掛け合ったりというのが大変でした」

●大勢集まると、みんなやりたいことをやったり、あっち行っちゃったりこっち行っちゃったりして、集めるのってなかなか難しいよね?

ナミカちゃん「そうですね」

●そういうときは大きい声を上げて「こっちだぞー!」とかって言いながらやるの?

ナミカちゃん「小学校3年生とか小さい子もいたので、言うことを聞いてくれなくて嫌で自分が泣いちゃったんですけど(笑)、でも、最終的にはみんなまとまってくれて、最後には楽しかったという意見も多かったので、来年もまたやりたいなと思います」

●今年やってみて、来年やるにあたって「今度はこういうことをやってみようかな」とか、「こういうところをもっとこうできるよな」っていうのって何かありますか?

ナミカちゃん「今年は初めてキャンプに参加して、リーダーを務めたので、全然、話すことも苦手でみんなをまとめられなかったから、来年は高校生なので先頭に立てたらいいなと思います」

●キャンプだと夜は怖くて泣いちゃう子とか、なかなか寝てくれない子もいたんじゃない?

マツザカ君「うるさい人もいました(笑)」

●(笑)。来年も頑張って下さいね。どうもありがとうございました。

マツザカ君&ナミカちゃん「ありがとうございました」

★       ★       ★

●リーダーだったというお2人にお話をうかがいました。マイクを向けられてちょっと緊張している部分もありましたけど、来年はもっとリードできるようになりたいという心強い言葉もありました。今、先生の横にも何名かの生徒さんがいますが、ここにいるときって楽しい?

男の子達「うんうん(声に出さず力強くうなずく)」

●どんなことをしているの?

男の子「僕は自然塾しか来てないんです」

●自然塾ではどういうことをしているときが楽しい?

男の子「シュノーケリングの練習とか、ログハウスを造ったりしているとき」

カインドリー・スクール

●ログハウスを造ったんだね! みんなが入っていってる本部事務所みたいなのがそう?

川本さん「そうですね。子供たちが造りました」

男の子「ちゃんと命綱もついてるんだよ」

●すごいねー! 横も工事中のようになっているけど、これも造っているの?

男の子「これは材料です」

●(笑)。そこにも新しいのを造るの?

マツザカ君「はい。新しい教室です」

●新しい教室はいつごろ出来る予定なんですか?

川本さん「12月の頭くらいですね」

●では、年内中には完成するんですね。

川本さん「子供たちと組み立てていきます」

●いいですねー! じゃあ、君たちもこれからいっぱい手伝って、怪我しないようにね。まいっか、少しぐらい怪我しても、赤チン塗っとけばすぐに直るもんね。頑張ってね。どうもありがとう。

川本さん「ありがとね」

●キャンプにしても普段にしても、先生も笑っちゃうくらいタジタジになっちゃいますね。

川本さん「そうですね。自然体がいいですよね。自然体ということは、一番自分らしくいるという状態なので、その状態でいればいつも100パーセントの力が発揮できる。その自分を知っておくということが大切なんですよ。そのまま大人になっていくと、大人になったときでも常に一番いい状態の自分を出せる。すると、いい人にも巡りあえるし、いい自分を発揮できればいい職にも出会えるだろうし、素敵な仕事も出来るしっていう、そういうのが繋がっていくことを願っています」

子供達が幸せになることが夢

川本光さん

●キャンプの時には県外の人達や、普段あまり接していない人達をおもてなしするホスト役として、スクール生達が活動したわけですが、先生から見てどんなことを感じられましたか?

川本さん「一番感じたことは、普通、キャンプっていったらバーベキューとかシュノーケリングとかイカダ作りとか、そういうのは大人が用意しているものなんですね。だけど、それを子供が子供に教えてやっていくんですね。だから、実際に県外の子達と地元の子達が接触する部分が非常に多いんですよ。で、多いがゆえに良いときもあれば、ずっと一緒にいた仲間のように思いっきりケンカをするときもあるんですよ。涙を流しあってケンカをするときもあるんですよ。だけど、それが2泊3日を通じて、3日目になって少しずつ本当の絆っていうのが出てくるんですよね。そしたら、ただの『イカダに乗る』っていうことにおいても、『一緒にのろうぜ! お前と一緒に作ったもんな! あの時はケンカしたけど、今日こうやって2人で乗れて楽しいよな』というすごい言葉が出てくるんですよ」

●実際にそういう言葉が出てくるんですね!

川本さん「そうなんですよ。そしたら、帰りに地元の子達が館山の駅まで見送りをするんですけど、もう感動のフィナーレです。子供たちが作り出すキャンプによって、県外と地元の子供たちによって、普通のキャンプとは違った結果がありますね」

●このカインドリー・スクールはもう少しで2年になるんですよね。今後の目標、抱負を聞かせていただけますか?

川本さん「実際、今ここに来ている子供たちに対して、精いっぱいに愛情をかけてあげたいなと思います。目の前にいる子供たちに幸せになってほしい、自分らしく生きてほしいっていうことが一番の夢ですね。この子達が高校生や大学生や社会人になったときに、立派に生きてくれることが、私達が築いてきたことの一番証明になるかなと思いますね。それを楽しみにしています」

●今、子供だけではなく、大人も心を病んでしまったり、心を鬱の状態にしてしまっている人が非常に多いじゃないですか。色々なケースがあるので一概には言えないと思うのですが、元気を出すためにはどうすればいいですか?

川本さん「僕のやり方なんですけど、僕は自分が究極に苦しいときは、アフリカの子供たちとか、食べ物とかが少なくて小さいときに死んでしまうような途上国の国々の子供たちを思い浮かべるんですね。究極に苦しいときこそ、相手を思いやる。自分の状態がいいときっていうのは簡単に相手を思いやることっていうのが出来るんですけど、僕の場合は本当に自分が苦しくて最低の状態の時は、『でも俺はこんなにいい服を着させてもらって、こんなに素晴らしいところで働かせてもらって、子供たちの笑顔をもらってやっているだからな』って思うんです。でも、この瞬間にも目の涙を涸らしながら、でも『お母さん、生んでくれてありがとう』って言って、顔にはハエがたかって、お腹を膨らませて亡くなっていく子供たちは沢山いるわけで、そういうのを感じ取ると、グッと頑張れますよね。私はいつもそうやって再生しています。自分の中で勝手に解釈して」

●そして、そんなアフリカの子供たちが暮らしているところに海が繋がっているわけですからね。

川本さん「そうなんですよ。海がきっと国境も文化も宗教も越えて、いつかひとつにしてくれるんじゃないかなと思います」

●フリントストーンも来年の夏のキャンプには是非遊びに来て、実際にイベントの模様をレポートさせていただきたいと思います。これからも是非、頑張って下さい。

川本さん「そうですね。ありがとうございます」

●今日はどうもありがとうございました。

川本さん「ありがとうございました」

●みんなもありがとね!

子供たち「はーい!」

川本さん「(笑)」


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■「川本光」さんが校長を務める
 『カインドリー・スクール子ども村』情報

 千葉県安房郡白浜町にある「カインドリー・スクール子ども村」は2004年1月に開校。その教育理念は「心豊かで、思いやりのある人。自分らしく“生きぬく勇気と力”を持つ」。そのために、豊かな自然を教材に、子どもたちが背負っている荷物を下ろせるような時間と空間を創造することを一番大切にしている。
 地元の自然を活かした、子どもたち為のキャンプ・イベントなども行なっている「カインドリー・スクール子ども村」では学習指導のできるスタッフを募集中。詳しくはHPをご覧になるか「川本」さんに電話でお問い合わせください。

カインドリー・スクール子ども村のHP:http://www9.plala.or.jp/kindly-school/
「川本光」さんの電話番号:0470-38-5020

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. やさしさに包まれたなら / 荒井由実

M2. OPEN YOUR HEART / WESTLIFE

M3. RETURN TO INNOCENCE / ENIGMA

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. TAKE A WALK / EDIE BRICKELL

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. 森の中で・・・ / イルカ

M6. 思いきり 笑って / DEEN

M7. IMAGINE / JOHN LENNON

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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