2008年12月21日

アース・コンシャスなシンガー・ソングライター、
ジャクソン・ブラウンをゲストにお迎えして

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンはジャクソン・ブラウンさんのインタビューです。
ジャクソン・ブラウン

 今週のゲストは、アメリカを代表するシンガー・ソングライターのひとり、ジャクソン・ブラウンです。1972年のデビュー以来、常に高い評価を受けてきたジャクソン・ブラウンは、政治や社会に鋭い視線を向け、原子力発電の反対運動や環境保護活動にも熱心に取り組んでいる社会派のシンガー・ソングライター。そんなジャクソン・ブラウンが今年10月に、6年ぶりのスタジオ・アルバム『TIME THE CONQUEROR〜時の征者』をリリース。そして先月、4年ぶり、11回目の来日公演を行ないました。
 先日、都内のホテルに滞在中のジャクソン・ブラウンにインタビューし、社会や環境の問題、そして、彼が所有する牧場のお話などうかがってきたので、今回はその時の模様をお送りします。

アルバム制作やライヴ活動を通して環境保護に協力している

●10月に発売されたジャクソン・ブラウンのニュー・アルバム『TIME THE CONQUEROR』は、通常のプラスティック・ケースではなく、再生紙を使ったこだわりの紙ジャケットなんですが、まずは、そのへんについて聞いてみました。

『TIME THE CONQUEROR〜時の征者』

「なるべく環境に配慮するよう心がけているよ。わたしもレーベルのスタッフもみな出来る限りのことをするように常に努力しているんだ。例えば、今回のアルバム・ジャケットのようにプラスティックを使わず、丈夫なケースを作るにはどうすればいいかなど、みんないつも真剣に考えているよ。
 ちなみに、日本盤のジャケットはアメリカ盤とはちょっと違うね。アメリカ盤はくりぬいた部分にCDが収められているんだけど、こうやってみると日本盤の方がいいな〜。わたしはこっちの方が好きだよ。
 まぁ、それはいいとして、わたしは『1% フォー・ザ・プラネット』という団体のメンバーでもあるんだ。この団体はイヴォン・シュイナードが設立したもので、メンバーは年収の1%を寄付することで、環境の保全や保護活動に役立ててもらう、というシステムになっているんだ」

●そんなアース・コンシャスなジャクソン・ブラウンは、先月4年ぶりの来日公演を大成功させましたが、実は、今回のワールド・ツアーのアメリカでの日程では、限定数のチケットが「グアカモレ基金」を通じて発売されたそうです。この「グアカモレ基金」とはどんな団体なのか、聞いてみました。

「グアカモレ基金はわたしたちが色々な形で関わってきた団体で、グアカモレ・プロダクションはこれまでわたしやボニー・レイットがやってきた多くのベネフィット・コンサートのプロモーションもしてきたんだ。この団体を運営しているトム・キャンベルとは長い付き合いで、70年代にはわたしたちが行なった、原子力発電に反対するノー・ニュークスといったミューズ・コンサートをプロデュースし、その後もわたしが関わった多くのベネフィット・コンサートをプロデュースしている人物なんだ。とにかく彼はそういうことが得意だし、コミュニティをまとめるのもとてもうまいんだよ。  ただ、グアカモレ基金の活動はプロダクション業とはちょっと違っていて、コンサートのプレミアム・チケットを、若干高値で売る権利を彼らに与えるというものなんだ。つまり、単純にいい席が欲しい人やわざわざ遠くからコンサートに来る人など、ある程度、お金を持っている人たちはこのプレミアム・チケットを購入することで、いい席をゲットするだけでなく、基金を通して意義のあることに貢献できるというわけなのさ。
 ちなみに、集まったお金を寄付する団体はそのときどきで違うけど、基金が厳選して寄付する先を選んでいる。ただ主に、生態学的な活動をしている団体か、人権問題に取り組んでいる団体。そのふたつが多いかな」

今こそ、問題解決へ向けて、みんなで団結すべき

●今、私たち人類が抱える一番大きな問題は地球温暖化と言われていますが、ジャクソン・ブラウンが今、一番関心のある問題はなにか聞いてみました。

ジャクソン・ブラウンさん

「地球が今、直面している一番の脅威は温暖化だと思う。ただ我々は温暖化以前にも色々な環境破壊の問題を抱えているし、貧困の問題や多くの先進国が戦争によってその経済を発展させているという問題もある。ただ“脅威”という意味で一番指摘しやすいのはやはり温暖化現象。グリーンランドの氷が危機的な早さで溶けていて、その結果、難民や飢餓といった問題を生み出す・・・。みんなが認識しなければならないのは、地球温暖化が今言ったような色々な問題やビジネスとも絡み合っているということ。
 実は世界がひどい状況になっている一番の原因はビジネスなんだよ。我々の社会はビジネスで成り立っているわけだけど、問題はビジネスのやり方。利益ばかりを追求するシステムに問題があるんだ。みんなビジネスを大きくして子供たちに残したいと思っているかもしれないが、その結果、子供たちや人類全体にもっと大きな問題を招いていることを全く考えていない。そこがややこしいところなんだよね。
 知っての通り、アメリカは京都議定書には賛同しなかった。今でも毎日のように新聞で論争が繰り広げられているんだ。アメリカのビジネスマンの中には、自分たちは世界中の25%もの燃料を消費しているから削減する量も多くなるわけで、『それは不公平だ!』なんて、信じられないような主張をするヤツらもいるんだよ。頼むからそんな欲深い、病んだ考え方は止めてくれ! 我々には問題を解決するという、それ以上に大切な義務がある。『このまま問題を放っておけば、おまえらのような人間も存在できなくなるんだぞ!』って言いたくなるよ。
 みんなでチャレンジし、この問題に立ち向かわなければならない。私たちにとって一番のチャレンジは、問題解決に向けてみんなが団結しなければならない。そういうことかもしれないね。
 今回のアメリカ大統領選で幸福感に満ち溢れていたときでさえ、お金のことを心配しているやつらがいたんだ。金持ちほどお金を無くすのではないかという心配が増すんだよね。幸い、わたしはそういった面では無頓着な方で、あまり気にならないんだ。わたしは恵まれていて、必要以上のお金を持っているけど、なるべく意義のある使い方をするよう心がけているんだ。
 それにわたしの場合は、これまで自分の財産以上のお金をチャリティーなどで集めることができた。ある意味、自分が持ったこともないような大金を使うことができたんだ。つまりお金を集め、大事な活動をしている人々に直接寄付することができたんだ。
 ただ、ビジネスをやっている人たちはマインドが全く違うし、彼らなりに正当な言い分もあるようなんだよね。別に彼らをバカにしているわけではないけど、彼らのような人たちに、世界はひとつなんだということを分からせるという難問は、みんなで取り組まなければならない試練だと思うんだ。
 もうひとつ、何よりもうまくいっていないのは資本主義。この惑星に起きていることを見れば一目瞭然だろ? 飢えに苦しんでいる人や、簡単に治せるような病気で死んでいく人が数えられないほどいる一方、地球を無下に扱っている人間に対して、誰も何もしていない。そんな状況で資本主義がうまくいっているなんて言ってほしくないよ。
 ちなみに、資本主義は民主主義の類似語ではないよ。民主主義と資本主義は同じではないんだ。多くの場合、資本主義は法をねじ曲げてみんなが平等だとか資源が正当に利用されているように見せかけているだけなんだよ。
 とにかく我々が抱えている問題はとても複雑だから、できるだけ多くのことを学ぶ必要があると思うんだ。わたしも経済学や政治といった、あまり興味のないことも学ばなければならないと思っているよ」

「食」に対してもっと関心を持ち、考えよう

●前半の話にもあったように、ジャクソン・ブラウンは地球規模の様々な問題に関心を持ち、更には、自らの曲を通して人々の意識に訴えかけています。

ジャクソン・ブラウンさん

「環境問題という特定のテーマで書いた曲がどれほどあるかは分からないけど、環境問題はわたしの曲で触れている思想と決して無関係ではない。すべて絡み合っていると思うんだ。この世の中で自らいい人生を送りつつ、同時に、周りの人たちにも善をもたらすような生き方をする。この世界で自分の居場所を見つけるという探求は一生かかるものだと思う。でも都会に住んでいると、我々人類は何層にも連なって形成されているこの惑星の表面上にある、薄い層の中で生きていることを忘れてしまうんだ。だから時には裸足で砂の上を歩いたり、土の上に座ることも必要だと思うんだよね。
 最近、わたしは都会で農業をやることをよく考えるんだ。庭で食べ物を育てる方法などについてよく考えているよ。というのも、アメリカだけではなく、工業国に暮らす多くの人は、自分たちが買っている食べ物がどこから来ているのか全く知らないんだ。もちろんどこかの農場から送られているというのは分かっているけど、農薬が使われているのか分かっていないし、熟しきってから収穫されているのかどうかも知らない。例えば、トマトは、店頭に並ぶころ真っ赤に色づくように、緑のうちに収穫されている。だから店先に並んだトマトは見た目はうまそうだけど、味はイマイチなのさ。もっといえば、わたしたちが食べているものは、時に何千マイルも離れたところから運ばれてくる。また、わたしたちが飲んでいる水はどこか遠い国の泉から汲んできたもの。このグラス1杯の水を得るために、どれだけのジェット燃料を使っていることか・・・。そういったフード・マイレージをどれだけ減らせるかという問題は、きっと日本でもみんな考えていると思うけど、今アメリカでは地元の農産物を食べるということが非常に注目されているんだ。
 あと、化石燃料を得るのがどんどん難しい時代になってきている。そしてオイル・ショックのため、食料難に苦しむ人たちが出てきたり、燃料費のアップで経済的に苦しむ人たちも出てきている。そういう意味でも自宅の庭や屋上、バルコニーなどで自分で食べ物を育てるにはいい機会だと思うんだよね。もちろん手間はかかるけど、その価値はあると思うよ。自分で食物を育てることで地球の生態系を身近に感じられるようになるし、飢餓で苦しんでいる人たちの気持ちや、食べることの大切さをより理解できるようになると思うんだ。そういったことは店でラップされたものを買っていては気づきにくいものなんだよ。でもこれらはとても大切なことで、みんなが考えるべきだと思う。
 でも地元で採れないものが好きだったりすることもあるよね。遠くから運ばれてくる材料が必要なこともある。それはそれでいいと思う。すべてを諦める必要はないし、そんなことありえないとも思っているよ。ただもしかしたら輸入しているものの中には地元で作れるものもあるかもしれない。例えば、日本にあるあの赤い豆。アヅキ? わからないけど、もしかしたらアヅキをカリフォルニアで栽培できるかもしれない。
 とはいえ、カリフォルニアには日本から輸入した魚を使った料理が専門のレストランもある。そういった店を止めろとは言わないよ。あれはあれで素晴らしいと思う。でも例えば、チキンや卵を何千マイルも離れたところから輸入しなくてもいいんだよ。そういった通常のものは地元で作ればいいし、そういうことを推進すべきなんだよ。
 実は、南カリフォルニアは人口が少ないんだ。ロサンジェルスのサウス・セントラル地区もそうなんだけど、活用されていない土地がたくさんあるんだよ。そういった廃虚や空き地を使って農場をやればいいと思うんだよね。カリフォルニアには都市部で農業を推進する団体もいくつかあるし、ファーマーズ・マーケットもある。日本には生産者から直に野菜などを買えるファーマーズ・マーケットってあるのかい? サンタモニカにはそれがあって、曜日ごとに色んな町でマーケットを開催しているんだ。でもイーストL.A.やサウス・セントラルといった貧しい地域にはファーマーズ・マーケットがなく、みんなが買っている店には遠くから運ばれてくる野菜しか売っていないんだ。とにかく、わたしはこういったことにも関心を持っているんだよ」

次の計画は都会での自家発電プロジェクト

●実はジャクソン・ブラウンは南カリフォルニアに、とてもエコな牧場を持っているんです。

ジャクソン・ブラウンさん

「確かに牧場だけど、別に食物を育てたり家畜を飼ったりしているわけではないんだ。何頭か馬がいて、ちょっとした菜園があるだけなんだよ。実は牧場のある場所に電気が通っていなかったから、単純に、当時あった太陽光発電と風力発電を使うことにしたんだ。これはうちが特別だったわけではなく、近所の人たちもみんなやっていたことなんだよ。メインロードの近くに住んでいる人たちはそこから電気を引いていたけど、わたしが所有している渓谷の方までは電線が延びていなかったし、牧場には多くの人が住んでいるから電気が必要だった。ただ、当時のわたしは原子力発電に反対していた。今も考えは変わっていないよ。だから持続可能でクリーンなエネルギーを推進する活動を続けているんだ。
 そんなこともあって、当時わたしが考えたことは、もし本当にクリーンで持続可能なエネルギーがいいと思うのであれば、自分も実践すべきだということだったんだ。それで牧場に風力発電を取り入れた。とはいえ、あの大きくて優雅に回る風車ではなく、うちにあるのは、フォッフォッフォッフォッって音を立てて回る小さいやつなんだけどね。でも十分に電気を作り出すことができるんだ。それで充電しておくバッテリーもたくさん用意した。そのバッテリーもどんどん高性能になり、今ではすごくいいバッテリーを手に入れたんだよ。
 テクノロジーはこの20〜30年で緩やかに進歩していった。わたしが牧場を所有して25年になるわけだが、その間、機会があるごとにシステムを進化させていったんだ。システムに関しては、わたし自身はよく分かっていないからもっと勉強しなきゃいけないと思っている。実は、以前、牧場にいる電気システムの専門家がわたしに参考書をくれたことがあって、その本には電気を作る基本的な事から全てが書かれていたんだけど、わたしはギタリストだからね(笑)、そういうことはよく分からないんだよ。わたしに分かっていることは、25年もの間、全く電線に繋がっていない牧場を自分が所有していること。そしてそのためにかかった経費は、電線を引いて電力を買うのと変わらない金額だということ。
 実はこの10年の間にわたしが所有する渓谷まで電線が延びて、牧場にも電気を引くことが可能になったんだけど、全く必要性を感じなかったんだ。今までのスタイルの方が楽しいし、小型の風力発電機が太陽の光を浴びながら電気を作っている姿はとても美しくて、わたしは大好きなんだよ。
 わたしの次の計画の一つは、都会でも自家発電を実践すること。田舎でできることを都会で出来ないはずがないと思うんだよね。電線を外して・・・、または、街に電気を売ってもいいかもしれないな。電気メーターを見に来る人がいるわけだから、電気代を“請求する”ためにメーターを読むのではなく、電気代を“支払う”ためにメーターを読んだっていいはずさ。自家発電によって作り出された必要以上の電力は買い取ってもらうのさ。例えば、ピーク時に120%の電力を使った場合は供給会社から足りない分を買い、あまり使わない時間帯の電力は買い取ってもらう。牧場ではバッテリーが必要不可欠だけど、街中ではバッテリーはいらない。単純に電線をつなげばいいのさ。
 とにかく都会での自家発電プロジェクトは進めたいと思っているんだ。来年あたり兄弟で所有しているわたしの実家で試してみたいと思っているよ。よくは分からないけど、20年前ほど費用もかからないと思うんだよね。まぁ、実現したら君たちにも知らせるよ」

AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 自然/環境に限らず、どんな問題を解決するにも一番大切なことは行動すること。いろんなことを勉強し、音楽を通してだけでなく、自らのライフスタイルを通して行動しているジャクソン・ブラウンは本当にすごい! 見習わなければって改めて感じました。
 ちなみに、もう一つ彼のすごい点は、ヘアスタイルもファッションも、吸い込まれそうな澄んだ瞳も昔と全く変わっていないこと(笑)。実は、私はジャクソン・ブラウンにお話をうかがうのは今回4度目だったのですが、ちょっぴりおヒゲに白髪が混じっていたのとシワがちょっと増えた以外は全く変わっていないのにビックリしました!
 そんな彼はいずれ本を書きたいと話していたのですが、勉強熱心で哲学的なところもあるジャクソン・ブラウンが書く本って、すごく難しそうですよね(苦笑)。

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シンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウン情報

『TIME THE CONQUEROR〜時の征者』

最新アルバム
TIME THE CONQUEROR〜時の征者

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-2004/定価2,520円
 ジャクソン・ブラウンの6年ぶりとなるスタジオ・アルバム。番組でオンエアしたタイトル・トラックを含め、日本盤のみのボーナス・トラックとして、デヴィッド・リンドレーを迎えてのライヴ・ヴァージョンによる「LATE FOR THE SKY」など、計11曲を収録。とても内容の濃い作品で、重い題材の曲もありますが、キャッチーなメロディーのラヴ・ソングも収録されています。
 

 ジャクソン・ブラウンのホームページ(英語):http://www.jacksonbrowne.com/

 ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルのサイト内ジャクソン・ブラウンのページhttp://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/SR/JacksonBrowne/index.html

 1% FOR THE PLANETのホームページ(英語):http://www.onepercentfortheplanet.org/en/

 グアカモレ基金のホームページ(英語):http://www.guacfund.org/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. TIME THE CONQUEROR / JACKSON BROWNE

M2. THE TIMES THEY ARE A CHANGIN' / JAMES TAYLOR, CARLY SIMON & GRAHAM NASH

M3. DOCTOR MY EYES / JACKSON BROWNE

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. JUST SAY YEAH / JACKSON BROWNE

M5. ROCK ME ON THE WATER / JACKSON BROWNE

M6. OFF OF WONDERLAND / JACKSON BROWNE

M7. POWER / JOHN HALL

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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