2009年9月20日

星空のある風景写真“星景写真”を撮る、武井伸吾さんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、武井伸吾さんです。
武井伸吾さん

 星と人との繋がりをテーマに星空のある風景写真、星景(せいけい)写真を中心に撮影されている、星景写真家の武井伸吾さんをゲストにお迎えし、夜空に輝く星と風景の魅力などうかがいます。

 

自分なりの作品作りを求めて“星景写真家”に

●はじめまして、今日はよろしくお願いします。星景写真って言葉だけを聞くと、「ん!?」って思うんですが、星のある風景ということで、星景写真家と名乗っていらっしゃるのは武井さんだけなんじゃないですか?(笑)

「(笑)。僕がオリジナルではないんですよ。」

●そうなんですか?

「ええ。もともとは天体写真の世界の中に、少数なんですけど、星空のある風景を撮っている人達がいて、そういう人たちの間では星景写真という言葉があるんですよ。ただ、あまり一般的ではないので、よく『えっ?』って聞き返されますね(笑)」

●(笑)。星のある風景を撮り始めたキッカケってなんだったんですか?

「もともとは小学生の頃に理科の授業で習ったのをキッカケに星空に興味を持って、近所にできたプラネタリウムに通ったり、図鑑とか星の本を親に買ってもらって読んで、天文少年というか、ただ星が好きだったんですね。で、写真を撮ったことはなかったんですけど、今から12年前の1997年にへール・ボップ彗星という大きな彗星が地球に近づいたときに、当時、僕は会社員で働いていたんですけど、ちょうど仕事が落ち着いていたときで余裕があったんですね。で、ずっと星から離れていたんですけど、ふと気付いて『星好きだったよなぁ』みたいなことを思い出して、同じタイミングでモンゴルで皆既日食が見られるっていうツアーがあったんですね。で、モンゴルで皆既日食が見られて、ヘール・ボップ彗星も見られるということで、そのツアーに行くことにしたんです。
 で、どうせ行くんだったらと思って、父親が写真をやっていたので、家にあったカメラを持っていって、いきなり撮ったのが最初ですね。星を撮りたいと思ってカメラを持ったんですよね。写真から入ったわけではなくて、最初、入り口が星だったので、カメラを持ったら好きなもの、撮りたいものを撮りますよね。それがたまたま星だったっていう感じですね。で、今でこそ『あれを撮って、これを撮って』ってできるんですけど、最初は普通の写真は撮れませんでしたね。星しか撮れなかった(笑)」

●逆に?(笑)

「はい。」

●でも、天文少年だったってことは、星景写真ではなく、最初は星空を撮っていらっしゃったんですか?

「はい、そうです。いわゆる天体写真ですね。天体写真っていうのは、オリオン大星雲とか、アンドロメダ銀河とか、そういう写真ですね。オリオン大星雲って誰が撮ってもオリオン大星雲に写るんですよね(笑)。それが、だんだん物足りなくなっていって、同時にカメラを2台とか3台使って、天体写真を撮りながらも、行った場所の風景と一緒に星空を撮り始めて、もともと子供の頃から絵を描いたり、物を作って人に見せたりするっていうのが好きだったんですね。そういう星空のある風景を撮っていくと、撮る人によって変わるんですよね。構図とか、星の軌跡を短くするとか伸ばすとか、撮影者の個性が反映されるんですね。で、撮っていくうちに、絵が好きだった気持ちと合わさって、絵心がうずいて『これは楽しいなぁ』と思って、それで段々自分なりの作品作りを始めていったっていう感じですね。」

 

夜空の四季は気が早い!?

●武井さんのお写真を拝見していると、自然の中の風景がとても多いので、そういうところに1人で出かけていきってシャッター・チャンスを待ったりとか、撮影しているわけじゃないですか。怖い経験ってなかったんですか?

武井伸吾さん

「よく『1人で撮りにいって怖くないの?』って聞かれるんですけど、全然怖いと思ったことがないんですよ。で、よく同じことを聞かれるので、どうしてかっていうのを考えた事があって、僕は小学校の頃から星が好きで天文少年だったんですけど、小学生の頃って興味を持ったことってものすごいスピードで吸収するじゃないですか。で、小学校、中学校の頃に88星座とか、一等星の名前とかを全部覚えたんですね。で、それって今も忘れていなくて、それが今の撮影に活きているんですね。社会人になってから勉強したことって大抵忘れちゃっているんですけど(笑)、小中学生のころに覚えたことって忘れていなくて、星の配列とかっていうのが頭の中に入っているんですね。だから、空を見上げると、瞬時に『あの星だ』、『あの星座だ』っていうのが分かるんですよ。だから、初めての土地とか知らない土地に行っても、とりあえず晴れていたら、空を見上げれば知っている見慣れた星があるので、それで安心感を得ているのかなぁと思いますね。だから怖くないのかもしれませんね。」

●武井さんのお写真の中に「夏から秋への架け橋」という作品があって、天の川とか、夏の第三角とか、秋の星座のカシオペアとか、ベルセウス座が写っている写真があるんですけど(ホームページでもご覧になれます)、そこのキャプションに「夜空の四季は少しばかり気が早い」というふうに書かれているんですけど、今見上げると、9月も後半になって、まさにそういう時期だと思うんですけど、星空の四季は気が早いんですか?(笑)

「気が早いんですよ(笑)。夏が終わって、これから秋になりますけど、明け方になると冬の代表的な星座のオリオン座が上がってきているんですね。僕ら、星を知っていると、夏の夜明けにオリオン座が上がって来ると、『あぁ、冬が来たな』と季節を先取りしている感覚になるんですね。で、星座を知っていると、星座を見ただけで季節を感じることができるんですよ。それってちょっと贅沢なことかなって(笑)」

●そうですよね。最近は特に食べ物も服装も季節感がなくなっちゃったじゃないですか。そういう意味で言うと、星空を見上げて、星座を見て季節を感じられるって本当に贅沢ですよね。

「贅沢だと思いますね。」

●そのためにも書く季節の代表的な星座を知っておくだけでも違いますよね。

「そうですね。ちょっと暮らしがリッチになるかもしれませんよね。」

●星景写真を撮るにあたって、月明かりって邪魔になったりしないんですか?

「先ほど言ったような天体写真を撮るときっていうのは、やっぱり月明かりは邪魔なんですね。できるだけ暗い星の光を集めて撮りたいので、天体写真には邪魔なんですけど、星景写真の場合は星だけじゃなくて、地上の風景も一緒に写すので、地上の風景って月がないと逆に何も写らないんですよね。真っ暗でシルエットだけになってしまうんですけど、月の明かりがあることによって地上が浮かび上がって、星と地上が一緒に写るんですよ。月の明かりって学校で習ったと思うんですけど、太陽の光を反射して光っているんですよ。だから、光の性質としては太陽と一緒なんですね。太陽の光がすごく暗くなったと思っていただいていいかもしれませんね。カメラでちょっと時間を空けて撮ってあげるとちゃんと写ってくれるんですよ。」

 

人の気配を入れることによって安心感が生まれる“星景写真”

●武井さんが星景写真を撮り始めて10年以上経っているわけですけど、十数年前の空と今の空を比べて変化って感じられますか?

「十数年前、撮り始めた頃に行っていたロケーションにいまだに行くことがあるんですけど、明らかに東京のほうとかロケーション近郊の大都市の明かりが大きくなっているなぁというのは年々感じますね。見た目にも感じますし、写真に素直に写ってしまいますね。同じだけ時間をかけて撮るんですけど、10年前と比べたら地平線のほうが街明かりで白くボーっと被って写っちゃうんですね。星が消えちゃっているんですね。だから、年々街が明るくなっているんだなぁって感じています。」

●そういう意味では星景写真のベスト・ロケーションってどんどん減っているんじゃないですか?

「そうですね。撮り始めた頃はとりあえず東京から離れようみたいな感じで、長野の山奥とかに行っていたんですけど、今度、あまり離れすぎると名古屋とか長野市とか、次の大都市のほうにまで行ってしまうので、程よい場所っていうのが難しいというか、段々狭くなってきている気がしますね。」

●武井さんが写真を撮られるときって国内が多いんですか?

「ほとんど国内ですね。海外もオーストラリアとかアラスカとか行ったりしていますけど、8割がた国内で撮っています。」

●そのせいもあるのか、武井さんの写真を見ていると、ちょっと懐かしい感じというか、ホッとする風景がそこにあるような気がするんですよね。

「誰も行かないようなところに行って撮るっていうスタイルではないんですよね。例えば、木道とか道とか建物があったりとか、割と自然系を撮る人ってそういう人工物を排除しがちなんですよね。僕の場合、そういうのを敢えて入れて撮っていることが多くて、そういうのを入れることによって自分の気配を入れているっていうか、人の気配を写しているみたいなところがあって、そういうところに感情移入のしやすさというか、安心感みたいなものがあるんじゃないかなって思いますね。」

●それは武井さん独特の星景写真の狙いなんですか?

「そうですね。」

●星景写真ってすごく奥が深いですね。

「本当に深いですね。撮れば撮るほど、『あっちで撮ってみたい』とか『こっちで撮ってみたい』とかって欲がわいてきて、国内でも行ったことないところがまだまだありますし、海外でも夜空を見てみたい魅力的な場所はいっぱいありますし、本当に奥が深いですね。」

●ちなみに今、行ってみたい場所はどこですか?

「オーストラリアがすごく好きなんですよ。何度も行っているんですけど、『今、どこに行きたい?』って聞かれたら、オーストラリアに行きたいですね。」

●それはなぜですか?

「まず南半球ですよね。南半球に行くと、北半球にある日本では見られない星が見えるんですよ。有名なのは南十字星ですけど、天の川も日本では見えない領域があるんですよ。実は天の川の一番明るい部分っていうのは、日本では地平線付近でしか見えないんですね。ちょっと上がったと思ったらすぐに沈んでしまう。だけど、南半球に行くと天の川の一番明るい部分が天頂付近に見えるんですよ。だから、天の川が頭上に見えるんですよ。」

●見上げるとそこに天の川! って感じなんですね。

「そうなんです。で、一番明るいところがボーっと見えるんですね。よく“星明かり”って言うじゃないですか? 本当に星明かりってあるんだなぁって、オーストラリアみたいなところに行くと分かると思います。あたりがボーっと明るくなるんですよね。」

 

宇宙は手付かずの大自然

●武井さんの作品はホームページのほうでも見ることができるんですけど、実は9月19日から新宿のコニカミノルタプラザで「星の降る場所」というタイトルの写真展がスタートしています。チラシやポスターには、テーマとなる写真でしょうか「星が降る道」という写真が使われていて、線路のように2本の板が真ん中を走っています。で両サイドに山があってという写真なんですが、この道をずっと行くと花畑ならぬ、星畑があるような気がして、とっても好きな作品のひとつなんですけど、この「星の降る場所」という写真展のほうでは、何点くらい作品が展示されているんですか?

「35点、展示しています。」

●これは2006年に発売されている写真集と同名の写真展になっていますけど、これにはどういった理由があるんですか?

「その写真集からの代表作と、その後、撮った新作を加えて再構成して展示しているからなんです。」

●武井さんがこの写真展を通して伝えたいメッセージやテーマを教えていただけますか?

武井伸吾さん

「星空って見上げれば毎晩そこにあるんですよね。で、普段、普通に生活していると気がつかないかもしれないんですけど、見上げればいつもあって、常に見守ってくれているような存在。で、実は宇宙って手付かずの大自然なんですよね。探査機が飛んだりはしていますけど(笑)、やっぱり手が届かない存在ですよね。で、そういう手付かずの大自然がいつも頭上にあるってことを知るきっかけになってくれたらいいなぁって思っています。」

●そんな武井さんの次の写真集が10月に発売されることが決定しています。ピエブックスから出る写真集で、タイトルが「星空を見上げて」。この作品はどういう作品に仕上がっているんですか?

「前作の『星の降る場所』と共通するのは、静かで癒しのイメージなんですけど、『星の降る場所』の静けさを持ちつつも、もうちょっとカラフルな、より色々なシーンで見た星空を収録しています。」

●楽しみにしています。来年でもチャンスがあればオーストラリア行きたいという武井さんなんですけど(笑)、これからも星景写真を撮り続けると思いますので、また新しい作品ができたら、番組でも紹介してくださいね。

「はい。よろしくお願いします。」

●今日はどうもありがとうございました。

 

AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 風景が加わることで知らない土地の星空を体験できたり、懐かしい星空を思い出したりできる星景写真。武井さんは絵を描いてらしたそうですが、そんな武井さんの作品は、作品によっては点々と輝く星を捉えていたり、また作品によっては星がまるで雪のように降っている(流れている)ような感じに捉えているものもあり、写真というより絵のような感覚で楽しむことができます。皆さんもぜひ写真展会場で直に作品の数々をご覧下さい。

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星景写真家「武井伸吾」さん情報

写真展『星の降る場所』開催中!
 星空のある素敵な風景写真が35点を展示。
会期:9月30日(水)まで
会場:コニカミノルタプラザ(JR新宿駅東口すぐ新宿高野ビル4階)
入場:無料
 HP:http://konicaminolta.jp/plaza/

次回写真展『星宙夜想』
 これまでの十数年の撮影活動で出会った印象的なシーン、およそ40点を展示予定。
会期:10月8日(木)〜20日(火)
会場:フォト エントランス日比谷
入場:無料
 HP:http://www.fujifilm.co.jp/photoent/index.html

写真集
 武井伸吾さんの現在発売されている写真集は『星の降る場所』。また10月10日には新しい写真集『星空を見上げて』も発売。いずれも「ピエ・ブックス」からの発売となっているのでぜひご覧下さい。

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. STARS / SIMPLY RED

M2. SHINING STAR / EARTH, WIND & FIRE

M3. PROLOGUE OF LIFE / DAISHI DANCE feat. ARVIN HOMA AYA

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. READY TO CRY / SAKURA

M5. DROPS OF JUPITER / TRAIN

M6. 見上げてごらん夜の星を / 坂本九

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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