2010年1月3日
歌と自然、そしてライフ・スタイルに対するこだわり 〜シンガー・ソングライター 東田トモヒロさんをゲストに迎えて〜
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、東田トモヒロさんです。
熊本をベースに活動しているシンガー・ソングライター、東田トモヒロさんは、自然を意識した生活を送っていらっしゃいます。今回は、そんなライフ・スタイルのことや、去年11月にリリースされたアルバム『Stay Gold』のお話などうかがいます。
生まれ育った熊本の自然を大事にしたい
●今週のゲストは、シンガー・ソングライターの東田トモヒロさんです。はじめまして。よろしくお願いします。
「はじめまして。よろしくお願いします。」
●明けましておめでとうございます(笑)。
「明けましておめでとうございます(笑)。はじめましてですけどね(笑)。今年もよろしくお願いします。」
●初対面なので、今年からよろしくお願いします。多分この番組のリスナーの中には、アースデイ東京などの環境系のイベントや、フェスなどで、東田さんの歌を聞いたことがあるという人も多いと思うんですけど、東田さんって、昔から自然や環境に関心があったんですか?
「僕は、田舎に生まれ育って、当たり前のように山の中を走り回ったり、自然の中で遊んでいたんですよ。それこそ、泳ぎは川で覚えましたからね。それでも、若い頃は都会に憧れたりしましたし、そういう意味では、ごく普通の成長の仕方をしたんですね。でも、自然にどっぷりと浸かって育ったっていうのが、意外と周りにいないんですよね。で、音楽をやりながら色々なところを旅をしているうちに、自分の根っこにある部分というのは、子供の時の体験だなって身に染みるようになったんですね。だから、自然と環境のこと、特に自分が住んでいる熊本を大事にしたいなって思うようになりましたね。」
●東田さんは熊本生まれの熊本育ちで、現在も熊本在住なんですよね?
「そうですね。」
●私、25年ぐらい前に1回だけ、仕事で熊本に行ったことがあるんですが、あまり知らないので、熊本の自然や環境について教えていただけますか?
「熊本は阿蘇山っていう山があって、そこは世界一のカルデラなんですよ。そこが水がめみたいな地形になっていて、阿蘇に降り注いだ雨が地下水となって高遊原(たかゆばる)という場所に蓄えられるんですよね。熊本県民は、ほぼその地下水で生活していて、ほぼ100パーセントと言っていいぐらい、その地下水で水道水が賄われていますね。気付けば、水と森は切っても切り離せない生活をしているんですよね。そういう場所って全国には滅多にないみたいですね。」
●そうすると、都内でお水を飲むと、まずいとまではいかなくても、「違うな」って思いませんか?
「そうなんですよ! それが最初の衝撃でしたね。さっき、都会に憧れていたという話をしましたけど、実は1年半ぐらい住んだことがあったんですよ。そのときに、1番最初にビックリしたのが、“水を買う”という行為だったんですね。『水って買うんだ』って思って、本当に衝撃でしたね。もちろん、熊本の水道水も水道料金を払って、買っているわけですけど、ペットボトルに入った水を買うというのが、今でも衝撃として覚えてますね。そのときに『おかしいな』って思って、今でも、おかしい事じゃないかなって思いますね。」
海にロマンを託している
●東田さんは去年11月にニュー・アルバム「Stay Gold」をリリースされましたけど、実はこのアルバム、山奥のログハウスでレコーディングしたとお聞きしたんですが、この山奥ってどこなんですか?
「千葉の鴨川の近くなんですけど、小塚という地域の森の中に、アトリエが1軒あるんですね。そこでレコーディングしました。」
●そうだったんだ。それじゃあ、ラジオをつければ、このベイエフエムが聴こえる環境でレコーディングをされていたということですね(笑)。
「そうなんですよね(笑)」
●なぜ、その場所を選んだんですか?
「普通スタジオから探すものだと思うんですけど、スタッフを含めて、僕らは場所から探したんですよね。」
●もしかして、サーフィンできる場所ですか?(笑)
「そうなんですよ(笑)。それもあるし、伊豆と鴨川という、僕が関東でも好きな場所を2つ挙げて、その2つで探していたんですね。それで、たまたまなんですけど、鴨川にサーファーの友達がいまして、その友達の知り合いのログハウスだったんですよ。鴨川は好きで、年に1・2回必ず行ってるんですね。で、そこを見にいったら、すごく気にいったんで、伊豆に行くこともなく、そこに決めました。」
●伊豆にも素敵なスタジオがありますよね。
「あるでしょうね。」
●ということは、鴨川は伊豆に勝ったわけですね?(笑)
「そうですね(笑)。そこはスタジオではなかったんですけど、そこで歌を歌って、サーフィンをしながら、レコーディグをしている自分たちをイメージできたんですよね。」
●そのイメージした様子と比較して、実際の様子はどうでしたか?
「想像以上でしたね。色々な設備が整っているスタジオの方がキレイな音が録れて、素晴らしいんですけど、なかなか想像を超えるところまでいかないんですね。でも、僕らが選んだアトリエは、そこでしか鳴らない音が鳴るし、あと、自分が手に入れたかった『雰囲気があるな』と思える、唯一無二だと思えるサウンドが、その場所ではあっさり手に入ったんですね。もっと苦労するなと思っていたんですけど、色々なミラクルがあって、いいサウンドで録れたので、最高でしたね。」
●東田さんにとって、すごく満足のいくレコーディングになったということですね?
「そうですね。場所選びから、サウンドもすごく満足しましたね。レコーディングをやるときに、1番大切にしているのが、歌の表情というか、歌っているときの自分の気持ちなんですね。で、全くストレスがなく、そこで歌えている自分がいて、お客さんがいなかったんですけど、その森のアトリエでバンドも一緒にライブをやったという、そんな感じのリラックスした音が録れました。」
●アルバムの歌詞をじっくりと読ませていただいたんですが、東田さんのが書く歌詞って“風”とか“雨”とか“雲”っていう言葉が多いんですけど、特に“海”という言葉がすごく出てくるんですよ。ストレートに“海”という言葉を使っているものがあって、例えば、「朝の光を浴びて 生まれ変わった海のような瞳で」とか「きらめいた海のようなあの頃」とか「月が太陽をうつす海」などがあるんですが・・・。
「いいねぇ(笑)」
●自画自賛していますけども(笑)、「“海”っていうものが、東田さんにとって、何かを表現するときに一段とイメージしやすいものなのかな」って思ったんですが、どうなんですか?
「カッコよくいうと、そういう風にも言えるんですけど、逃げ場所みたいなところでもあって、“海”というのは、右側が“母”という字に見えなくもないから、女の人のようなものなんですよね。だから、男にとっては、最後の逃げ場所みたいなものだと思うんですよね。あと、とりあえず、海のところまでもっていけば、大きなものに包まれそうな気がするし、海にロマンを託しているという感じですね。」
マングローブの植林活動もしています
●東田さんはサーフィンもされるということですが、サーファーの方たちは、自分のフィールドでもある、海の環境にすごく敏感で、中にはビーチ・クリーンとかも、率先してやられている方も多いんですね。東田さんも多分、ライブ・ツアーも含めて、あちこち旅をしながら、色々なところで海にも入っていると思うんですが、海の環境って変化していますか?
「変わっているってみんな言いますね。僕は1ヶ所にずっといるんじゃなくて、色々なところに行って、サーフィンしているだけなんですけど、みんなは、防波のために投入されているコンクリートだったり、そういうものには敏感ですよね。『なんのためにそんなことするの?』って思うみたいだし、あと、昔の海の地形をよく知っている人は『もっといい波だった』って言うしね。だから、やっぱり陸地と一緒で、海もちょっとずつ人の手が、良くも悪くも加わっているんだなって感じますね。」
●東田さんは2004年から、マングローブの植林活動「bayside camp」のコンセプト・スピーカーをつとめられているということなんですが、これはどういう活動なんですか?
「これは、1シーズンに1回ずつぐらい、イベントとしてライブをやるんですけど、そのライブに来ていただいたお客さん1人につき1本、マングローブの木を植林するというものなんですね。」
●植林は、決まった場所で行なうんですか?
「はい。タイにマングローブの木を植林しています。」
●今までどのぐらいの本数を植林したんですか?
「大体2000本ぐらいですね。」
●これに、関わるようになったきっかけはなんですか?
「これは、たまたまライヴをしているときに、環境のことにすごく関心の高い人たちに出会ったんですね。その人たちが、僕の歌に共感してくれて、僕は環境への活動とかしようと思っていたつもりはなかったんですけど、一緒にやろうってなったときに、そういうアイデアを出してくれて、僕も『せっかくライヴをやるんだったら、ライヴをやって楽しかったなってだけじゃなくて、なにか形になるものとか、誰かの支えになることをやりたいな』と常に思っているので、それを具体化したということですね。」
●東田さんご自身が向こうに行って、マングローブを植林したことってあるんですか?
「まだないんですよ。一度してみたいですね。」
●植林している場所に行かれたことはあるんですか?
「写真とかは見ているんですが、自分では行ってないんですよね。」
●これはやっぱり、その場所で自分でも植えたいですよね。
「そうですね。」
●マングローブって、1本2本っていう植え方をするんですか?
「どうでしょうね。でも、マングローブはすごく繁殖力を持っていて、海の生き物たちもそこにたくさん宿るんですよね。そうすると、海が豊かになりますよね。それで、また生命が育まれてっていう風に循環していく、すばらしい植物だと聞いています。」
●私たちも、フロリダに取材で行ったときに、マングローブのエリアに行ったんですけど、人が入り込めないぐらい、絡まって生えているので、これはカニとかそういう生きものの隠れ場所だったり、棲み処になって、『これは守ってもらえそうだね』ってすごく感じました。この活動はこの先も続けていくんですか?
「そうですね。続けていきたいと思います。」
日常生活は不便なほうが楽しい
●環境問題って、ジレンマみたいなものもあると思うんですよね。水を大事にしようと思って、リサイクルするためのペットボトルとかを水洗いすると、水がもったいないじゃないかっていうこともあるし、じゃあそのままそれらを資源にしないで捨ててしまう、燃やしてしまうと、CO2の問題もあるし、資源の無駄にもなるっていうことになって、こっちを立てればこっちが立たないってことになるじゃないですか。だから、自分ができるところをやるしかないかなって、私もこの番組を通して、色々な壁にぶち当たりながら、最近ではそういう風に落ち着けているんですが、東田さんご自身では意識的にしていることとか気をつけていることとかってありますか?
「夜9時以降は、部屋の明かりをキャンドルだけにしていますね。あと、僕はほとんど洗剤を使わないんですね。洋服と食器と体と頭は、ほぼお湯と水だけで洗っていますね。たまに頭がかゆいときは、環境にダメージの少ないシャンプーとか、友達が作った石鹸とか使って、週に1回とかは洗っていますけど、それ以外は、7、8年ぐらい洗剤を使わないという生活をしているんですよ。なにも問題ないですね。」
●それは、体的にも生活的にも不便も感じないですか?
「そうですね。白いシャツがちょっと黄ばむぐらいのことですね(笑)」
●それはこだわりですからね(笑)。
「それを着こなせる自分でいたいっていう感じですね(笑)。『昔から人って、こんなに道具を使っていたかな』って思うし、『そんなに物って買わなきゃいけないのかな』って思うしね。そういうことをサーフィンが教えてくれましたよね。サーフボードだけであれだけ満足させてくれるし、音楽もそうで、ギターと歌とメロディーという、わずかな道具だけで、人とコミュニケーションがとれて、1日を楽しめますからね。だから、日常生活ももっと不便な方が楽しいと思うんですよね。」
●昔はもっと物がなかったですからね。
「そうですよね。お米をといだ水で食器を洗ったり、体を洗ったりしていたって聞いたことがあるんですけど、すごく理にかなっていた時代があって、それから失われたことって結構多いと思うんですよね。」
●昔は物が少なかった分、それぞれの物を大事にせざるを得なかったんでしょうけど、結果的にはすごく大事に、有効的に使っていたと思うし、そのために知恵も色々と生まれたでしょうしね。逆に今の子供たちって「退屈だろうな」って思うんですよね。だって、考える必要がないじゃないですか。全てのものが目的別に色々揃っているから、それ以外の用途で何に使うんだろうって考えることもなく、生活できちゃっていますからね。
「工夫すれば、すごく面白いですよね。洋服も着古してしまったら、それを今度は子供のオムツに使って、最後は雑巾になって、ボロボロになるまで使ったっていう話を聞いたんですね。そう考えると、捨てられる物は本当はないはずなんですけどね。」
●東田さんは昨年、ニュー・アルバム「Stay Gold」をリリースされたばかりですけど、この先の予定はどんな感じなんですか?
「この先の予定は、去年もやったんですけど、今年もフェスが始まるまでの冬の間、ギター1本で、弾き語りのツアーをやろうかと思っていて、全国各地を回るんですけど、去年とちょっと違うのが、キャンピング・カーをもうすぐゲットするんですけど、そこに寝泊りしながら、それで回ろうかなって思っています。」
●サーフボードも積んでいってね(笑)。
「サーフボードとスノーボートを積んでいきます(笑)」
●そのときは是非、ベイエフエムにお立ち寄りいただいて、ザ・フリントストーンでも生演奏をしていただけますか?
「いいですね。是非、よろしくお願いします。」
●1月3日なので、今年の抱負をうかがおうかと思っていたんですが、きっと今年の抱負は、まずそれをやるというのが第1になりますよね。
「そうですね。月並ですが、1個1個のライヴを大事に歌っていきたいですね。」
●常に「Stay Gold」でいようと・・・。
「そうですね(笑)」
●(笑)。そんなライヴも楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました。
|