2010年5月2日
「鎌倉で花を撮ろう」近藤さんが魅了された“鎌倉”と“花” 〜エッセイスト・近藤純夫さんをゲストに迎えて〜
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、近藤純夫さんです。
ケイビング、そしてハワイのスペシャリストとして何度も出演していただいている、エッセイスト・翻訳家の近藤純夫さんは、この度、平凡社より「 鎌倉で花を撮ろう 」を出版されました。そこで今回は、近藤さんから、鎌倉で花を撮影するポイントや、花巡りコースのことなどうかがいます。
ハワイに魅了された理由とは?
●今回のゲストは、エッセイスト・翻訳家の近藤純夫さんです。初めまして、よろしくお願いします。
「初めまして。よろしくお願いします。」
●近藤さんは、ケイビングのスペシャリスト、そしてハワイのスペシャリストとして、この番組に何度も出演していただいていますが、今回初めてお会いするので、基本的なことを質問させてください。ケイビングって何ですか?
「ケイブって分かりますか? 洞窟なんですけど、ケイビングというのは、洞窟の中に入って、探険することなんですね。探険もするし、調査もするということで、世界中のあちこちに行っていたんですけど、最終的には、ハワイの洞窟を集中して探険するようになったのが、ハワイと付き合うようになったきっかけで、そこから、ケイビングのスペシャリストから、ハワイのスペシャリストになりました。」
●そういう流れがあって、最初はケイビング、そしてハワイのスペシャリストになったということですね。
「おまけなんだけど、ハワイ語で洞窟のことをなんというかというと、“アナ”って言うんですよ。」
●日本語と同じじゃないですか(笑)。
「そうそう(笑)。そういうところも、ハワイを気に入った理由の1つですね。悪いことばっかりしているので、『“穴”があったら入りたい』っていつも思っていますね(笑)。このぐらいにしておきます。」
●(笑)。洞窟探険がケイビングだということなんですけど、私が知っている洞窟って、鍾乳洞っていう洞窟なんですね。階段を降りていくと、氷柱のような岩がキレイに並んでいるというイメージなんですけど、実際のケイビングというのは、そういった鍾乳洞のような洞窟に入っていくんですか?
「洞窟って、簡単にいうと、3パターンあって、1つ目は、今言ったような鍾乳洞のような、石灰岩からできた洞窟。2つ目は、火山の溶岩がつくる、火山洞窟といわれる洞窟。3つ目は、波が削ってできた、海蝕洞という洞窟。日本には、この3パターンの穴があります。海外には、氷河がつくる洞窟もあるんです。氷の中に洞窟があるんですよ。」
●寒そうですね(笑)。
「(笑)。でも、ブルー一色で、すっごくキレイですよ。」
●それは、行ってみたいですねぇ。でも、その氷河の中の洞窟に行くというのは、すごく大変ですよね?
「もちろん、ロープと、アイゼンという、鉄の爪のようなものを靴に付けて、垂直に降りていきます。」
●真下に降りていくんですか?
「そうです。水がすぐそばにあるから、グルグルと巻いて入っていきます。だから、すっごくキレイな縞模様の線ができているんです。それが濃いブルーと薄いブルーと白がグラデーションになって、底までずっと続いていきます。それは、CGで作ったと錯覚するぐらいキレイなんです。」
●今、お話を聞いただけでも、すごく美しいところなんだろうなと思うんですが、ハワイに行ったのは、その後ですか?
「そうですね。ハワイは、溶岩みたいなのが流れているのを見たら、吸い寄せられちゃうんですよ。何ともいえない、あの色を見ていたら、1〜2時間ぐらい、あっという間に経ってしまっているんですね。自分では5分のつもりが、昼に行ったのに、夕方になっていたんですね。それぐらい見惚れてしまうというか、すごい迫力で、それがハワイに吸い寄せられた理由だと思いますね。」
●ちなみに、何ともいえないと言っていましたけど、赤い色ですか?
「ロウソクと同じで、赤い色が濃いほど温度が低くて、黄色とか白など明るい色になるほど温度が高くなるんです。溶岩って、中に入っている成分によって変わってくるんですけど、ハワイの溶岩は1000度〜1200度ぐらいなんですね。サウナで1200度なら火傷しますよね? 乾燥しているということが大前提だから、もし、波や水が来たら、一気に蒸発するんですね。水蒸気って、気体のように見えるんですけど、気体の手前の状態なんです。本当に水が気体になると、同じ1000度になると、あっという間に溶けてしまいます。そういう場所なので、危険は危険なんだけど、色が変わっていく感じとか、溶岩がゆっくり流れていくのを見ると、どんどん吸い寄せられてしまうんですよね。」
鎌倉とハワイ
●近藤さんはこの度、新刊「鎌倉で花を撮ろう」を出版されるということなんですが、「あれ? ハワイでも洞窟でもない」と思いました。
「洞窟とハワイがどう関わるのかという話がさっきありましたよね。そして、鎌倉とハワイはどう関わるのかという話をしたいんですが、今は、お金を稼ぐのに大変な時代ですよね。僕はそれまで、カメラマンと一緒にハワイに行っていて、写真はカメラマンに撮ってもらって、僕は取材をするということをやっていたんですけど、今は、デジタル・カメラがある時代ですから『自由度もあるし、自分で撮った方がいいかな』と思ったんですね。『じゃあ、勉強しよう』と思いまして、僕は横浜に住んでいるので、鎌倉まですぐなんですよ。ちょっと休みを利用して、写真の腕を磨くために、鎌倉に行っていたんです。『こういう風に写真が撮れるよ』ということを出版社に言って、『ハワイの新しい花の本を出したい』と言ったら、『それはいいから、まずこっちから出そう』ということで、できた本なんです。ただ、色々な花の本があるけれど、この本は、絶対的に自信があることが1つだけあるんです。それは、何十回も鎌倉に通って、それを何年も繰り返したので、どの花が見れる確率が1番高いかが、僕ははっきり分かっているんです。だから、見ることができる確率が高い花から順番に載せているので、ここに載っている花は絶対見ることができる。逆にいうと『あの花ってなんという花なんだろう』って思って本を見ると、数が多くなくても、必ず載っているんです。花の名前ってなかなか分からないでしょ?でも、この本を見ると、分かるようになっているです。この間、試しに、自分の本を持っていって探してみたら、9割ありました。」
●本を見させていただいたんですが、たくさんの花が載っているんですけど、全部で何種類あるんですか?
「この本では260種類載っています。800種類ぐらい撮った中の260種類なんですけど、この本があれば、95パーセントぐらいはカバーできます。」
●その260種類が身近にある花ということなんですね?
「そうですね。もちろん花によっては、1週間で散ってしまうものもあるし、年中咲いている花もあるから、その月に必ずあるわけではないけれど、大体あります。」
●そう考えると、鎌倉って花の都だったんだなって思いますね。
「そうでもないんですよね。」
●え!? そうなんですか?
「ハワイって、花がたくさんあるんですけど、ほとんどハワイの花じゃないんです。外国から持ってきた花なんです。プルメリアやブーゲンビリア、ハイビスカスなど、みんなハワイの花じゃないんです。」
●そうなんですか!? ハイビスカスって、ハワイのフラダンスを踊るお姉さん方が付けますから、ハワイの花だと思っていました。
「一部ですけど、ハワイ固有の花で“コキオ”っていうのがあるんですね。ハワイ語でハイビスカスのことなんですけど、7種類だけあるんですね。だけど、山の中にあって、ワイキキとか、そういうところには一切ないんです。ワイキキになるハイビスカスは、ハワイアン・ハイビスカスといって、園芸品種なんです。ハイビスカスって香りがないでしょ? 固有種は、嗅いでいると離れたくなくなるぐらい、すごくいい香りがするんです。ハワイの固有種の花って、みんな素晴らしく、いい香りですよ。そういうものがあるのと同じように、鎌倉も昭和30年代半ばぐらいまで、花は少しあったけれど、基本はお寺だったんですね。檀家さんが居て、お参りに来る方がいるというところで、花を見にくるところではなかったんです。ところが、鎌倉も『人がもう少し来て、街を活性化したい』という思いがあったんですけど、あるとき、ananみたいな雑誌を出している出版社が、お寺とコラボレーションをして『もっと色々な花を植えて、女の子を呼べるようにしませんか?』ということで、創刊当時、大特集をしたんですね。それを見た女の子たちが、雑誌を持っていくようになってから、どのお寺でも、どんどん活けるようになって、今では業者も入って、四季折々の花が咲いていますね。あれって、ただ咲いているわけではなくて、株を他のところから持ってきて、入れ替えたりしているので、すごく手間がかかるんです。そういう風にしてきて、今の鎌倉の花があるんです。」
●知らなかったです。
「あと、鎌倉には、ハワイと同じ花が数十種類あります。」
●今は、不景気ですから、ハワイに行かずして、ハワイの花が楽しめる街なんですね。
「そうですね。鎌倉に由比ヶ浜があるんですけど、そこの人たちは、三浦海岸も含めてですけど、『自分たちは、日本で1番ハワイに近い場所に住んでいる』と言っているんですね。地理的に1番近いので、“ハワイに1番近い土地”と市民自体も思っていて、ハワイに関するイベントがたくさんあるんですよ。例えば、葉山町では町を上げてイベントをやったりしているので、意外と鎌倉とハワイって、共通点が多いんです。」
近藤さんのオススメ花巡りコース
●ゴールデンウィークにオススメする、この本に載っている花の写真が撮れるコースがあれば教えてください。
「この本は月別に花を紹介しているんですが、5・6月に載っていたとしても、いつも咲いているものもありますので、5・6月の場合は3・4月と、先の7・8月の花も見ながら、行けばいいんですけど、1番いい時期は5月の下旬から、鎌倉が1番賑わう時期なんですけど、アジサイが咲くんですね。全部の花を見ようとすると、200〜300種類は見ることができます。」
●アジサイだけでですか?
「そうです。アジサイだけでもたくさんの種類があるんですよ。この本の中には、その中でも代表的なものを20種類ぐらい載せていますけど、たくさんのアジサイがあって、それぞれに名前を付けているんです。例えば、小さい星型のアジサイがいっぱい咲いていたら“花火”とか付けたりすると『確かに、線香花火のようになっているな』って思えたり、真っ白だと“富士の白糸の滝”とか、そういう名前を付けたりして、イメージを彷彿させるようなものがたくさんあります。有名なお寺になってくると、ものすごい人が多くて、『何分待ち』っていうのが出るんですよ。」
●よくニュースにもなりますよね。
「そうですよね。だから、そういう有名どころが見たいときは、混むのは10時ぐらいからですから、朝8時半ぐらいに着くようにすれば、ピークでも比較的ゆっくり見ることができます。そうじゃないと身動きがとれないですよ。」
●通勤ラッシュのような感じですね(笑)。
「そうですね(笑)。ただ、有名どころのお寺って4つぐらいしかないから、そこを外しても、アジサイはどこでも咲いていますので、静かにゆっくり見たいなら、別のお寺に行くという手もありますね。鎌倉を知らない人には分からないお話かもしれないけれど、鎌倉駅の1つ手前に北鎌倉駅という駅があって、そこにはすごく有名な円覚寺という大きなお寺があって、さらにその隣には明月院というお寺があります。明月院も、アジサイで有名なところなんですが、広さが円覚寺の何分の1もない、小さなお寺なので、すごく混みます。でも、そのときって円覚寺はガラガラなんです。でも、円覚寺の中には、たくさんのアジサイがあるから、ゆっくり見たいという人は、円覚寺に行った方が、静かに楽しめますね。色々なやり方はあると思います。」
●具体的に、鎌倉の駅を降りてから、どこに行けばいいというものがあれば教えてください。
「鎌倉だと、北鎌倉と鎌倉の2つの駅があるので、どちらでもいいんですけど、北鎌倉で降りた場合は、大きなお寺が6個ぐらいあるんですね。鎌倉五山といって、有名なお寺にレベルが付いていて、5つあるんですけど、その内の4つが北鎌倉にあるので、まず降りて、円覚寺に行くというルート、それと、地図で見て、線路の右側に円覚寺があるんですが、左側に東慶寺というお寺があって、花のお寺で有名な、女性の住職さんのお寺なんですね。その下に浄智寺というお寺があるんです。東慶寺と浄智寺に行くか、円覚寺と明月院に行くか、さらに2番目に大きな建長寺というお寺があります。けんちん汁を作ったのは建長寺なんですけど、全部禅寺です。この5つのお寺は、どこもすごく人気があるし、キレイなので、北鎌倉では、これらに是非行ってみてください。全部見るには時間がかかるので、どこかピックアップして、『混んでいるな』と思ったら、他のところに行くとか、『花がキレイだな』って思ったら、ちょっと入ってみるとかしてみるといいと思います。1番遠い建長寺でも、15分も歩けば着きますので、全部すぐ近くにあります。」
●雨の日に行くといいのかもしれないですね。
「そうですね。あと、アジサイって咲いている期間が長いんですね。だから、7月に行っても、まだ咲いているというところがあるので、無理をしてピークに行かなくてもいいかなって思いますね。」
●時期を少し外してということですね?
「そうですね。アジサイって、種類が4つぐらいあるんです。最初にヒメアジサイ・ヤマアジサイというものが咲いて、ガクアジサイとセイヨウアジサイが咲いて、ウズアジサイが咲いて、最後にタマアジサイが咲くんですね。そうなると、ピークは6月ですけど、5月の中旬から9月の下旬ぐらいまで、何かしらのアジサイが咲いています。」
●では、夏前までは結構楽しめるんですね。
「そうですね。少なくても7月の頭ぐらいまでは、どこにでも咲いていますね。」
●そうなんですか。梅雨の時期だけだと思っていたので、意外でした。
「同じ境内でも、こっちが枯れても、あっちが咲いているという風に、一緒に咲くというわけではないです。」
●アジサイって同じ種類でも、場所によって色が違うじゃないですか。あれはどうしてなんですか?
「それはですね、土の中の酸性度とアルカリ性度で決まるんです。なので、成長途中でも色は変わるんです。基本的にアジサイって、同じ色では終わらないんです。最初はグリーンから白っぽくなって、そこから赤系になったり、青系になったり、中間の藤色になったり、ピンクになったりとか、それは土の影響を受けるんですね。逆に言うと、土をコントロールすれば、途中からでも色を変えられるんです。」
近藤さん流、デジカメ・ワンポイント・アドバイス
●花を楽しむだけではなくて、写真を撮りたいという方もいると思うので、是非アドバイスをお願いします。
「皆さん鎌倉に行けば、お寺と花と一緒になって撮りたいって思いますよね。そういうときに、2つだけ簡単に上手く撮れる方法を教えましょう。」
●教えてください。
「1つは『撮るよー』っていうと、お連れの人が背景に入って撮りますよね。そうすると、ずっと遠くのお寺の下に立ったり、そこからちょっと前に来たりすると、撮った後に見たら、米粒のように小さく写っていて、その人の顔の表情が分からなかったりしますよね。そういうときは、建物が遠くても構わないから、思い切ってすぐ近くまで来てもらうと、本人の表情もお寺も入るんです。これは、一眼レフのような高級カメラでは撮れないんです。コンパクト・カメラの方がピントの合う範囲が広いから、両方にピントが合うんですね。これはコンパクト・カメラならではの撮り方なんです。もう1つは、花とか葉っぱを入れて撮るときに、わざと太陽に向かって撮るんです。」
●それだと逆光になりませんか?
「そうです。逆光になります。太陽を撮るのではなく、太陽とカメラの間に葉っぱと人が入ると葉っぱが透けて、キラキラと輝いて、すごくキレイに写るんですよ。そこに人がいても、その輝いているのが、その人を宝石で包んだような感じの、華やかな感じになるんですね。その撮り方にはもう1つ特徴があって、太陽に向くと、影がなくなるので、顔がキレイに写るんです。」
●それはありがたいですよね。
「この2つを試してみるといいと思います。」
●その他にも、たくさんのポイント・コツなどがたくさんあって、コツだけでも月毎にあって、最後にまとめて『簡単カメラ塾』というのもありますので、是非この本を持って、鎌倉に行っていただければと思います。
「地図も載っていますので、この本を持って、オススメコースを使って、行っていただければと思います。」
●実は私、リコーのCX2というデジカメを買ったばかりなんですよ。
「なんと、僕の同じカメラを使っていたんですね。」
●え!? そうなんですか?
「色が違って、僕は黒で、長澤さんはピンクのカメラですけど、同じカメラですね。」
●すごく運命的なものを感じます(笑)。
「多分、それだけでもいい写真が撮れそうな感じがしますね(笑)。というのは、僕の本の中に、CX2を使って撮った写真がいくつも入っているんです。」
●そうなんですか!? じゃあ、このカメラを持っていけば、近藤さんみたいないい写真が撮れるということですか?
「さっき言ったコツを思い出していただければ撮れると思います。この本でのコツって、1ページに1個しか書いていないんです。『あれをやった上でこれをやる』ということがないんです。1個だけ注意をすれば撮れるというものばかりです。」
●それはありがたいです(笑)。
「そうでしょ?(笑) 頭に1個入れたら前のことを忘れてしまうっていうことがあるじゃないですか。それがないんです。」
●私にもできそうです(笑)。
「そうです(笑)。『○○でもできる』というやつですね。」
●よかった(笑)。安心しました。それでは、「鎌倉で花を撮ろう」を片手に、このカメラを持って、鎌倉に行きたいと思います。
「せっかく、鎌倉に行って、目に焼きつけてくるんですから、他の人たちと共有できたらいいですよね。だから、キレイな花の写真を撮って、持ち帰ってください。」
●そうですね。じゃあ、スタッフに見せるために、たくさん撮ってきます!
「いいですね。『すごいじゃない』って言ってもらえたらいいですよね。」
●最高です(笑)。次回は、このカメラで鎌倉の花の写真をいっぱい撮ってくるので、是非チェックして、アドバイスをいただけますか?
「もちろん! 楽しみにしています。」
●よろしくお願いします。というわけで、今回のゲストは、エッセイスト・翻訳家の近藤純夫さんでした。ありがとうございました。
|