2010年10月10日
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは、環境イベント「島根県・高津川SEA TO SUMMIT 2010」の取材レポートの第1弾です。取材レポート・第1弾(環境シンポジウム編) |
※清流・高津川 高津川は島根県の西部にある、益田町・津和野町・吉賀町を流れる長さ81キロの一級河川で、92の支流を擁し、日本有数の水質を誇っています。 国土交通省が行なっている水質調査で、平成18年と19年の2年連続で水質日本一に輝いています。 |
※まず最初に、今回の大会長を務められた、溝口善兵衛(みぞぐち・ぜんべえ)島根県知事のご挨拶から、高津川についてのお話がありました。
溝口知事「私は、今大会が開催されている益田市の出身でございます。高津川は、今いる“グラントワ”から離れたところにあるんですが、子供のころは、夏休みになると泳ぎに行ったりして、思い出深い川なんです。子供のころは、何の変哲もない、普通の川だと思っていたんですが、日本の川が経済の発展、産業の進行など、生活が豊かになるにつれて、汚染が進んでくるようになっていく中、昔のままであり続ける高津川が、日本一の水質を誇るという評価をいただきました。しかし、昔はこのような川はどこにでもあったのに、それがどんどん希少なものになっていっていますが、それが世の中の変化だと思っています。
また、高津川はダムのない川なので、本流・支流を含めて、自然のままで残っている川なんです。しかし、それでも生活排水はでてしまうので、経済活動に伴う色々な問題があるのですが、環境を守るために多くの方たちが努力をしてくれています。こうした活動は過去にはあまりなかったのですが、少しずつ輪が広がっている印象を受けます。
そのおかげで、春から夏にかけて、天然の鮎が高津川を遡上するので、全国から釣り人が来て、非常に賑わいますし、秋には藻屑ガニの漁が盛んに行なわれます。また、高津川上流では、清流を生かしたワサビ作りを行なっているところがたくさんありますし、中流部では農地が広がっていて、メロン・イチゴ・トマトなどの栽培が行なわれています。さらに、河口から海へ、川の水が流れていきますが、そこでは、地元の方たちの努力のおかげですが、大きなハマグリが採れます。昔は、浜辺に行くとハマグリがいて、足で砂地をかきわけ、ハマグリを探したものですが、そういうことも少なくなっていたものの、地元の方たちのおかげで、ハマグリが採れるようになりました。いずれにしても、このキレイな清流・高津川を守るために色々な努力を、地元の方々と県民が一緒になって、豊かな自然を守っていきたいと思っています。」
※続いては、初日の環境シンポジウムからC.W.ニコルさんの基調講演の模様です。その講演から、サケに関するお話がありました。
環境シンポジウムは C.W.ニコルさんの 基調講演からスタート。 |
ニコルさん「大昔、世の中は氷や雪に覆われていたんですが、そこから神様が緑を回復させようとしたときに、森を作る仕事をシャケに頼んだんです。そのことを小数民族から初めて聞いたときはまだ20代のころだったから『へぇー。どういうことなんだろう?』って思ったんですが、でも、この話をしっかり聞いたら『なるほど!』と思いました。山があって、雨や雪があって、健康的な森があれば、キレイな水が流れて、酸素がいっぱい混ざって、海まで健康的な水が流れていくと、ミネラルがいっぱい流れていくから、海は健康になるんだと僕たちは知っていますよね。EVERYBODY KNOW THAT!
しかし、考えてみたら、海のミネラルはどうやって森に還るんだろう? 雨や雪にはミネラルはないですよね。実はサケだったんですよ! シャケが海に行って、海のものを食べて、体が淡水に慣れた、立派な体になって戻っていくんですね。そうなると、シャケはエサを食べなくなります。シャケが頑張って戦って、色々なものの犠牲になって、最後に自分が生まれた小川に戻って産卵をして、死んでいきます。見たら『かわいそうだな』って思うかもしれないけど、その死は決して無駄じゃないんです。死んだシャケのうち、数パーセントは川の中に残って、微生物に分解されて、藻になって、その藻(プランクトン)を昆虫が食べて、その昆虫をサケの稚魚が食べることで、稚魚は元気な体になるんですね。」
※この話は続きがあります。サケは森を育む役割を果たしていて、その手助けをしているのはクマなんだそうです。川を遡上してきたサケをクマが捕まえて、森の中に運んでいき、いちばん美味しいところだけを少し食べるだけで、ほとんどは残していくそうなんです。カナダでは、一頭のクマが平均700匹のサケを森にばらまいていくとか。日本では、カナダのような現象があるのか、長澤がニコルさんに直接お聞きしました。
●日本でも、カナダのような現象はあるんですか?
ニコルさん「それはないですね。日本のシャケが上がってくる川は全て止められています。北海道でも止められています。」
●北海道でもですか!?
ニコルさん「だから、クマは減りましたね。ですが、江戸時代〜明治に入ったぐらいまでは、そういうことは絶対にありましたね。日本の場合は人口密度が高いから、山の奥にそういうことがありましたね。だから、日本のクマもシャケは大好きです。ヒグマだけじゃなくて、クログマも、サケがあれば食べますよ。」
●高津川にはダムがない川だということで、水の量も豊富で、キレイですよね。
ニコルさん「いいですよね。」
●やっぱりこれからも、こういう川は守っていくべきですか?
ニコルさん「日本は守るだけじゃなくて作り直さないとダメです。全部やり直さないとダメですね。イギリスは日本と同じように古い国ですが、日本よりも早く産業革命が起きましたよね? 大きな川があったら、当然大きな街があったんです。それなのに、今、イギリスの大きな街に通る川全部にサケが遡上しているんです。
日本もそういうことをやろうと思ったらできるんです。だけど、やろうとしないんですね。この列島には、多様性がものすごく豊かな淡水魚がいたんです。淡水魚も昔の日本の食卓には大事なものだったんです。それが、汚染とか森の伐採とか不注意などでダメになっていったんですが、日本には技術があります。ノウハウがあるから、やり直せば、アジアのエデンの園のようになれると、私は信じています。」
※初日に行なわれた環境シンポジウムでは、モンベルの辰野勇会長が進行役となって、パネル・ディスカッションが行なわれました。
パネリストは、昨年「海洋緑化協会」を設立したシーカヤッカーの内田正洋さん、アウトドアライターの天野礼子さん、そしてシンガー・ソングライターの南こうせつさんです。
まずは、南こうせつさんのふるさとの川に関するお話です。
こうせつさん「僕は、大分県の大分市のはずれにある竹中村という、一級河川の大野川の中流域ぐらいのところにある村の出身です。その中流域から下には支流があるんですけど、そこもすごくキレイなところなんです。昨日、高津川を案内されたんですけど、僕が昔住んでいたときの竹中村を思い出したんですね。僕は61歳で、団塊の世代なんです。だから、僕らが小学生のころって、すごく人数が多かったんですよ。そんな中、夏休みになったら川原に行って、川に潜って、オイカワとかウグイとか、川の魚を追いかけたんですね。魚を採って、夕方家に帰っていくときに、まだ薪でご飯を炊いていたし、風呂もゴエモン風呂だから、あちこちの煙突から煙が上がるんです。夕陽が空を真っ赤に染まった姿は今でも思い出しますね。『夕日』という歌に♪みんなのお顔もまっかっか、ぎんぎんぎらぎら日が沈む♪ という歌詞があるんですけど、その通りですね! 『夕焼け小焼け』という歌の歌詞に♪夕焼け小焼けで日が暮れて♪ ってあるんですけど、あのままの風景で帰っていくんです。家に着くころには、川原にある草の露で服がビショビショになるんですね。あの感覚は今でも覚えてます。
そんな暮らしの中で、いつの間にか歌手になったんですけど、僕が今一生懸命歌っているときや、曲を書くときには、そのときの思い出が基礎になっていますね。」
※続いて、シーカヤッカーの内田正洋さんが、今着目していることを話してくれました。
内田さん「25年ぐらいシーカヤックでずっと日本を周っているんですけど、平成になってから、川や海が徐々に変化してきているなって感じてたんですね。20年ぐらい前に、森里海連関学の基礎になった『森は海の恋人』運動を、漁師の畠山重篤さん(注1)が気仙沼で始めたんですね。そんな畠山さんが一昨年『鉄が地球温暖化を防ぐ』という本を出したんですよ。僕はそれを読んだんですけど、『鉄だったのね』という結論が書いてあったんですね。理論は20年ぐらい前からあったんですが、実証が始まったのは5年ぐらい前からなんです。その実証実験をしているところが、僕が育った家の隣にある山口県立水産高校の水産科学部の部員たちなんです。そこの生徒たちが5年前から、海に鉄イオンを供給するという実験を始めたんです。
実は、20年ぐらい前から、僕が育った町の海から海草がなくなっていたんですね。だけど、鉄を入れたところだけ海草が増えてきたんです。畠山さんの本に出てくる山口県の役所に勤めている杉本さんという方が考えたやり方なんですけど、このやり方は地球を救うんだろうなと思いましたね。」
(注1)畠山重篤さん:この番組にも何度も出演していただいた方で、「山に木を植える活動をしていることで有名な方です。 |
※そして、内田さんのお話を受けて、アウトドアライターの天野礼子さんがお話をしてくれました。
天野さん「内田さんが話していた、気仙沼からでてきた『森は海の恋人』という言葉ですが、森から川を伝って流れてくるフルボ酸鉄というものが、牡蠣を育てていたということを、北海道大学の増永先生が研究していたんですね。ニコルさんが先ほど基調講演で発表していたブリティッシュ・コロンビア大学のトムライムヘンさんが明らかにしたことは、その反対なんです。『森は海の恋人』だったけれど、実は『海が森の恋人』で、サケが自分の体で運んでいた窒素15というものが、森を育てていたんですね。そういう、サケが森を育てていたんだということを、トムライムヘンの調査に同行して分かったんです。その調査に同行して、帰ってきたときに、カナダの少数民族のおばあさんに会ったんですね。『私、日本から来て、こういうことが分かってよかったです』って話したら、そのおばあさんが『私たちは昔から“サケが森を育てている”という歌を歌っていたのよ。先祖代々歌い続けてきた歌詞があるのよね』って話してくれたんです。『そうか! 私たちは科学で分かったことを話しているけど、実は、森に住んでいる人、川に住んでいる人、海に住んでいる人はずっと前から分かっていたんだ』と思いました。」
※パネル・ディスカッションの後、楽屋で南こうせつさんに、高津川を実際に見たときの感想をお聞きしました。
こうせつさん「高津川を昨日案内してもらったんですけど、河口から中流域、そして上流まで行ってきました。高津川はダムがないので、本当にキレイな川でしたね。感動しました。」
●こうせつさんは川に縁があると、パネル・ディスカッションのときに話していましたけど、川の魅力はどのようなところにありますか?
こうせつさん「川って、本当深いんですよね。僕は大分県の大野川という一級河川の中流域のところの村で育ったんですけど、川そのものはもちろんのこと、みんなでよく川原で野球をしたり、春になると、ひばりが巣を作って飛んでいくんですが、そのひばりを追いかけて巣を見つけては卵を産んでいるところを見るということを友達と競い合いあったりして、色々な思い出がいっぱいありますね。川と一緒に自分の人生を作っていったという感じですね。」
※今回、SEA TO SUMMIT 2日目に行なわれるレースに『チーム・ザ・フリントストーン』というチームを組んで出場しました。メンバーはカヤック10キロを担当する、モンベルのエース「田中道子」さん、自転車35キロを担当する、ボサノヴァ・シンガーで自転車のスペシャリスト「小泉ニロ」さん、最後の登山10キロを担当する長澤ゆきの3名。明朝6時にスタートするレースを控え、環境シンポジウム終了後、メンバーが集まり、作戦会議を行ないました。
カヤック担当の モンベル田中道子さん 自転車は小泉ニロさん 登山担当の長澤ゆき |
●環境シンポジウムが終わりまして、いよいよ明日はレースが行なわれますね。
ニロさん「ようやくですね!」
田中さん「ドキドキです!。」
●体調は大丈夫ですか?
ニロさん&田中さん「大丈夫です!」
ニロさん「起きるのが1番の仕事です(笑)。それさえできれば間違いないです。」
●(笑)。確かにそうですね!
田中さん「私もテンションを上げていきたいと思います!。」
●そうですね! 今から作戦会議をしたいと思うんですが、とはいえ、私はコース全体がどうなっているのか全然知らないので、まず田中さんからカヤックのコースがどういった感じで、どの辺りをポイントにするのか、説明していただけますか?
田中さん「まず、高津川の河口からスタートして、益田川の河口までの約2キロ行って、そこで折り返して、高津川の河口付近まで戻ってきます。そこから上流に向かって6キロ漕ぎ上がります。」
ニロさん&長澤「えー!? 長ーい!」
田中さん「今まで川を登っていくということをしたことがないので、私としても未知の体験になりそうです。」
●今回は川を登るというところがポイントになりそうですか?
田中さん「見ていると、川の水が少なくなっていて、コースを間違えると行き止まりになっていたりしているので、とにかく右に行こうと思っています(笑)。」
●(笑)。一応下見はしているんですね?
田中さん「一応しています。」
●カヤックはそんな感じですね。次は自転車ですけど、どんな感じですか?
ニロさん「私も下見をしてきたんですけど、コースは想像していたより激しくないという印象を受けました。もっとすごい山だと思っていたんですね。前半は、気付かないぐらいのゆる〜い坂道が続いていて、最後の山道だけ傾斜がキツそうなので、最後の山道まで余力を残しつつ、安全に走れれば大丈夫かなって感じですね。」
●計35キロですよね?
ニロさん「そうですね。最後の7キロが少し傾斜がキツイですね。一気に150メートルぐらい登るのかな」
田中さん「すごいなー(笑)」
ニロさん「いやいや、川を6キロ登るほうがキツいと思います(笑)。」
●多分、2人がすごくいいタイムを出していただいたあと、最後の登山は、私になる“らしい”んです(笑)。
ニロさん「(笑)。私下見してきましたよ!。」
●そうなんですか!? どうでしたか?
ニロさん「結構激しかったです。長いなって思って、『長澤さん大丈夫かな?』ってモンベルスタッフの方に聞いたんですけど、『ゆっくり歩けば大丈夫でしょう。この高さなら高山病になる心配もないですから』って言ってました。」
●標高差は1000メートルぐらいで、距離は10キロなんですよね。じゃあ、ゆっくり行きたいと思います。
ニロさん「いい汗かいてください」
田中さん「秋っぽくなってきたので、楽しみながら登ってください。」
●そうですよね。気候的にちょうどいい感じですからね。私は川だけ見てきたんですけど、景色が全体的にすごくいいですよね。
ニロさん「本当に川がキレイですよね。」
●本当に自然をたっぷりと感じることができそうなので、私は楽しみながらいきたいと思います。
ニロさん「私も楽しみますよ!」
田中さん「私も、キレイな川をしっかり見たいと思います」
ニロさん「そうですよね! 思い出がなかったなんてことになったら悲しいですよね(笑)」
田中さん「そうですね(笑)。なので、私も楽しんでいきたいと思います。」
●そうですね!
※次週は、そのレースの模様をお送りします。
YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜
今週は島根県・高津川で開催された「SEA TO SUMMIT」取材リポート第一弾として、環境シンポジウムの模様を中心にお送りしました。 |
首都圏から、島根県・益田市へのアクセス方法 益田市、津和野町、吉賀町を含む石見地方の観光情報は「ALLいわみ」のサイトを、高津川については「高津川フレンドリバー協議会」のホームページを、島根県全体の観光情報は「しまね観光ナビ」のサイトをご覧ください。
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