2010年12月19日
「気がつけば100km走ってた」 俳優・鶴見辰吾さんを夢中にした自転車の魅力
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、鶴見辰吾さんです。
俳優、そして二代目自転車名人の「鶴見辰吾」さんは先ごろ、実業之日本社から「気がつけば100km走ってた〜二代目自転車名人・鶴見辰吾の自転車本」を出されました。
今回はそんな鶴見さんに、自転車の魅力や、実践的なノウハウなどうかがいます。
自転車は、時間に余裕があるとすごく楽しい乗り物
●今回のゲストは、俳優、そして二代目自転車名人の鶴見信吾さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
●鶴見さんは先ごろ、実業之日本社から「気がつけば100km走ってた〜二代目自転車名人・鶴見辰吾の自転車本」を出されました。タイトルにも書かれているんですが、鶴見さんは“二代目”自転車名人なんですよね。
「そうなんです。“二代目”ということで、絶対に気になるのが、『初代は誰なんだ?』ということですよね。よく聞かれるんですけど、初代は、今はもう亡くなられた忌野清志郎さんなんです。」
●確かに、葬儀のとき、祭壇に自転車を飾っていました。
「僕は実際にお会いすることがなかったんですけど、ハワイにセンチュリー・ライドという、オアフ島で160キロを走るイベントがあるんですけど、そこで1度だけすれ違ったことがありました。あと、二代目自転車名人を襲名したときに、今や僕の宝物になったビデオメッセージをいただいたこともありましたけど、実際にお話をしたことはありません。一緒に走れなかったのは残念です。」
●ちなみに、三代目以降は決まっているんですか?
「三代目までいます。三代目は経済評論家の勝間和代さんです。皆さん、それぞれに受賞した理由があるんですね。初代の忌野清志郎さんは、国内で災害によって、悲惨な状態になったところに、ボランティア活動をするために、自転車で駆けつけようとしたことが評価されて、初代自転車名人になりました。
僕の場合は、今の自転車愛好家の中に女性って少ないんですよ。そんな状況の中で、自分の奥さんを自転車の世界に引き連れることに成功したことが評価されて、二代目自転車名人になりました。もちろん、テレビやラジオ、雑誌等で自転車の面白いところをアピールしたという功績も理由の一つになっています。」
●奥さんを引き込むほどハマった自転車ですが、なぜ自転車にハマったんですか?
「興味のない人からしたら『なんでそんなにハマるの?』と思うと思っているんですが、よくドライブで箱根を通ったときに、箱根の山を自転車で登っている人を見たときに『なんでこんなところで自転車に乗っているんだろう』と思ったぐらいなので、僕も自転車に乗るまでは、そう思っていました。
きっかけは、ゴルフの練習に行くのに、練習場まで自転車で行ったことだったんです。僕は13年ぐらい、横浜に住んでいるんですが、僕は東京で生まれ育ったので、横浜の詳しい地理がわからないんです。ゴルフの練習場まで自転車で行くうちに、『この道があの道に繋がっているんだ』とか『こんなキレイな道があるんだ』など、色々な発見があって、段々とその街が地元になっていく感じがしたんですね。それで『自転車って面白いな』と思ったんです。それから自転車であちこち回っているうちに、『ロードバイクなら、もっと遠いところに行けるよ。今日は横浜から原宿まで行ってきたよ』という友人の話を聞いて、すごく驚きました!」
●横浜から原宿ですか!? 自転車で行けるんですね!
「そうなんですよ!『本当に行けるの!?』って聞いたら、『それほど大変じゃないですよ』と言うんで、翌日行ってみたんですね。すると、本当に行けたんですよ。その達成感がすごく面白くて、そこからどんどんハマっていきました。僕の場合は、違う街に引っ越して、その街で新しい世界が広がっていったということも、いいきっかけだったのかもしれないですね。
それから、自転車を始めたのが40歳手前で、自転車という乗り物に対しての考え方がちょっと変わってきていたということもあるかもしれないです。僕が高校生ぐらいのときに、通学に自転車を使っていたんですね。雨の日も風の日も、授業に間に合わせるために一生懸命漕いでいたんですよ。雨の日だと濡れるし、上り坂だと苦しいし、疲れるので、当時は『車の免許を取ったら、こんな乗り物はおさらばしてやろう』とずっと思っていたんですね。
ただ、40歳ぐらいになって、時間に余裕がでてきてから乗ると、『自転車ってすごく楽しい乗り物だ』と思うようになったんです。時間に追われることなく乗っていれば、体にはいいし、達成感がでてくるし、なにより、交通費がかからないですからね!」
●それはオイシイですね!(笑)
「それはオイシイですよ! だから、自転車に乗ることによって、楽しいことが増えていくんですよ。そう考えると面白くないですか?」
●そうですね! 本当に色々な楽しみ方があるんですね。
「そうですね。無限ですね!」
自転車に乗っていたら、職業や年齢などは関係ない
●これまでお話を聞いていて、自転車に乗ってみたいなという気持ちが少しずつ出てきているんですけど、やはり100キロという長い距離を走るというのはキツイと思うんですね。
「この本のタイトル『気がつけば100km走ってた』というように、100キロってそんなに大変じゃないんです。サイクルコンピュータという、自転車に付けるスピードメーターと走行距離が分かる機械があるんですけど、楽しんで、ゆっくり走っていると、その機械の数字が“100”という数字を示していたぐらい、楽に行けるんですよね。」
●そんなものなんですか!
「私が知っている範囲では、60歳手前で、お孫さんがいるような女性が120キロぐらい走りますよ。」
●そうなんですか!
「自転車に乗っていると、足が太くなると思われるんですけど、長距離をゆっくりと軽い負荷で走っている程度なら、全然太くならないし、むしろ引き締まってきます。欧米では、自転車で引き締まった足を“バイク・レグ”といって、賞賛される一つの表現になっているぐらい、自転車では足は太くならないです。むしろ美しくなります。」
●鶴見さんが初めて乗った自転車って、どのようなタイプの自転車だったんですか?
「90年代にマウンテンバイクがブームになって、あちこちの店でマウンテンバイクが売っていたんですが、僕もそのとき、流行に乗って、マウンテンバイクを買ったんです。そこから月日が経って、結構錆びていたその自転車を引っ張り出して、乗ったのがきっかけで、たくさん乗るようになりました。」
●最初から本格的な自転車ではなかったんですね?
「もちろん、ママチャリから始めてもいいんですよ。ママチャリで長距離を走るイベントに出て、走りきる人もいるんですよね! ママチャリにこだわる人もいるんですよ! ママチャリで大阪〜東京間を走ったりするんです! それも一つの楽しみ方なんですよね。どんな自転車でも楽しみ方はいくらでもあるんです。まさしく、クツ選びと一緒ですね。クツも、運動靴があれば、ブーツみたいなクツみたいに、色々なクツがあるので、色々な楽しみ方がありますよね。でも、歩くことってみんなできるし、おでかけする楽しみは一緒なので、クツ選びの感覚で自転車も選べば面白いと思います。」
●自転車に乗るようになって、自分自身の生活って変わりましたか?
「生活の中で一番変わったことといえば、仲間がいっぱい増えましたね。」
●そうなんですか!? 一人で乗るから、仲間がいるというイメージがなかったです。
「ところが、自転車のネットワークって色々なところに繋がっていて、いっぱい友達ができました。その友達って、“自転車”という共通項だけで繋がっている友達なので、職業・年齢・性別とか関係なく仲良くなれるんです。これは自転車に限らず、同じ趣味を持っている人たちにはできることだと思うんですね。僕の場合、おじさんになってからできた友達なので、その人たちのことを“オジ友”と呼んでいます。来年の流行語大賞に、この言葉を流行らせたいと思っています(笑)」
●“オジ友”ですか(笑)。語呂はいいですね(笑)。
「(笑)。オジ友が増えて、みんな健康になっていくし、色々な新しい発見を共有しているので、その人たちと喜びを分かち合うというのってすごく楽しいんですね。その仲間がいるから、より仕事を頑張りたいと思うし、人に優しくなりたいと思うんですよね。そういう精神的な部分でプラスになっています。」
●ちなみに、そのオジ友は、どういう風に増えていったんですか?
「例えば、よく行くサイクリングコースに休憩する場所があると、そこに人が集まっているんですね。『先週も来ていませんでしたか?』とか『さっき、あの辺り走っていましたよね?』とか『実は○○から来たんですよー』みたいなことから話が始まっていって、別の場所に行ったときに再会したりして、また話しかけているうちに、仲良くなっていきました。」
●でも、集まっている人たちは、いきなりテレビに出ている人が話しかけてきたら、ビックリするんじゃないですか?
「そういうことって自転車に乗っていたら関係ないですよ(笑)。お医者さんもいますし、会社員の方もいますし、学校の先生もいたりして、色々な人がいるんですね。でも、そういうことって、後から知るんですよ。自転車の話とか、色々な話をして、かなり経ってから、相手の職業が分かるんです。とにかく、職業とか関係なく仲良くなれて、笑いあえる。こういうことって最高ですね。」
●体力的にはどうなんですか?
「もちろん、自転車はスポーツですので、体力的には非常にいい影響を及ぼしていますよ。まず、僕は元々太っている方ではなかったので、劇的な体系の変化って感じないんですけど、他の人を例に挙げると、80キロぐらいの体重があった人が、20キロぐらいの減量に成功したりしているんですよ。かといって、無理なダイエットをしているわけでないんです。好きな物を食べて、好きなことをして、気がつけば痩せているんですよ。」
●それって最高ですね! 私も女性なので、ダイエットには気をつけているんですけど、ジムに行って、運動をして、20キロを痩せるというのは、本当大変なことなんですね。
「そして、仕事が終わった帰りに『今からジムに行くのか』と思うと、もちろんストレス発散になって、いいのかもしれないですけど、疲れているときって『ジムに行くのって億劫だな』って思ったりしますよね。でも自転車だったら、“帰る”という行為そのものが運動になるので、ダイエットにつながります。一石二鳥ですよね。だから、続けやすいのかもしれないです。」
走りきった気持ちは、ローンを払いきった時の気持ちと同じ!?
●正しい自転車の選び方や服装については、今回出版された本に詳しく書かれているんですが、その中でも、鶴見さんオススメのものをご紹介していただけますか?
「まずは、今自分が持っている自転車をもう一度見直して、それに乗ってみることから始めてみるのがいいと思います。」
●確かに、家に眠っている自転車が一台あるかもしれないです。
「僕も家に眠っていた自転車を引っ張り出したところからスタートしていますからね。自転車を眠らせたままにするのは、もったいないじゃないですか。近くのショップや自転車屋さんに行けば、整備してくれますよ。タイヤを替えるだけでも全然楽になるんですよ! タイヤやタイヤの空気圧、あとサドルの高さを自分の体に合ったものに調節をしてください。それから、サイクルコンピュータという、スピードと距離が分かる、安いものだと3000円ぐらいで売っているものがあるんですけど、それを付けると自転車が一気に面白くなります。距離とスピードが分かるだけでも、色々な目的や目標ができるので、面白くなります。まずそこから始めて、もっともっと遠くに行ってみたい、もっと長い時間に乗っていたいと思ったら、スポーツ自転車に乗り換えることを考えてみたらいいかと思います。」
●長距離を快適に走るためのウェアもあったりするんですか?
「ありますよ。」
●どういったものがオススメですか?
「最初は抵抗があると思うんですが、なるべく風の抵抗を受けないような、体に密着した服装がいいんですね。そうなると、自転車乗り専用のウェアがいいんですね。それもショップやスポーツ用品店に売っています。なるべくバタつかないものがいいですね。」
●風でバタバタしないような服がいいんですね。
「また、自転車って最初は寒くても、走っているうちに段々暖かくなってくるので、汗をかいてくるんですね。その汗が冷えてくると、体調を崩したりしますので、重ね着が基本です。薄い服をたくさん重ね着していって、体が暖かくなってきたら、それを脱ぐという工夫が必要ですね。」
●これからの季節は、重ね着で暖かくしていくことが大事なんですね。
「そうですね。真冬でも、2〜3キロ走れば、すぐ暖かくなってきます。」
●今回出版された本の中にたくさんのコースが紹介されているんですけど、番組を放送している放送局は千葉にありますので、鶴見さんがオススメする、千葉から行けるコースを紹介していただけますか?
「本の中でも紹介しているコースに“千葉県・南房総コース”があります。僕は横浜に住んでいるんですけど、東京湾フェリーで久里浜から金谷港まで行って、そこから走るコースなんです。このコースは信号が少ないコースで、千葉の仲間とよく走ります。その中でオススメのものがあるんですけど、金谷港から長澤街道を通って房総半島を走るんですけど、“三芳村 道の駅”というところに“ビンゴバーガー”という、大きくて、肉汁がガバっとでてくるような、焼きたての分厚いハンバーグが入っているハンバーガーがあるんですよ。」
●それは美味しそうですね!(笑)
「色々な種類があるんですけど、それをフェリーの中で『○時頃に着きますので、12個作っておいてください』と、あらかじめ注文しておくんです。大勢で行くので、いきなり行くと、お店も大忙しになるので、あらかじめ電話をしておいて、その時間に間に合わせるように、みんな頑張って漕いで、到着したら食べて、帰ってくるという感じですね。」
●それはいいですね! 自転車にカロリーを消費した後に食べたいですね! レースも本の中にはたくさん紹介していらっしゃいますけど、レースに参加する上での注意点ってあるんですか?
「レースといっても、ルールやマナーなど、最初に注意することはたくさんあるので、まずはレース経験者の方と一緒に練習を積んで、危険を回避したり、コツを覚えてから参加する方がいいですね。その中で、初心者の方が出場しやすいレースといえば、“ヒルクライムレース”といって、山をひたすら登っていくレースがあるんですね。」
●それって辛そうですね。
「辛いんですけど、走り終わった後の達成感は何物にも変えられないんですね。有名なのは“Mt.富士ヒルクライム”という、川口湖の近くで毎年6月ぐらいに開催されているレースがあるんですけど、それには5,000人近くの自転車レーサーが集まるんですね。“富士スバルライン”という、5合目まで登る約24キロの有料道路を借り切って、みんなで一斉に登っていくんです。24キロの山道を登っていくのはキツイんですけど、そのレース中に色々なことを考えるんですよね。僕はいつも『なんでこんな苦しいことをやるんだろうな。止めときゃよかったな』と考えるんですけど、ゴールするとすごく達成感を感じるんですよね。
その気持ちって、家のローンを払いきった時の気持ちと同じなんじゃないかなって思うんですね。毎月家のローンを払っているお父さん方は時々くじけそうになると思うんですけど、払いきった時に『ここは俺の家だ! 俺がこの家の主なんだ!』というような達成感があると思うんですね。それに近いものがヒルクライムレースにもあって、それを一度味わうと、止められないですね。このレースが初心者にオススメポイントは、辛いんですけど、スピードがそれほど出ないんですよ。だから、たとえ転んだとしても、膝とか肘を擦りむく程度で、大怪我にはならないです。なので、レースの雰囲気だったり、マナーなどを学ぶという意味でも、最初のレースにヒルクライムレースというのはオススメです。」
“LEGON”の仲間と一緒に、 日本の自転車への環境をよくしていきたい
●鶴見さんは今後も自転車を乗り続けるかと思うんですが、自転車に乗る上で新たな展開とか活動などの予定ってありますか?
「僕はこれまでロードバイクという種類の自転車ばかりに乗ってきましたが、来年からはマウンテンバイクに乗って、もっと自然に触れてみたいと思っています。」
●なぜそう思ったんですか?
「元々自転車が好きなので、色々な種類の自転車に乗ってみて、その楽しみ方を味わってみたいというのが一番の理由です。マウンテンバイクで走るような道を一度通ったときに、僕の奥さんが『マウンテンバイクに乗りたい』と言ったので、やっぱり奥さんと一緒に楽しみたいという気持ちもあるので、『2011年はマウンテンバイクに挑戦してみよう』と思いました。」
●サイクリングロードを通るときの自転車と、自然の中を走る自転車って違うんですか?
「違うと思いますよ。道があるところを走るのは楽なんですよ。だけど、マウンテンバイクは、道でないところを走るので、自分で切り開いていかないといけなくなるので、より冒険心をくすぐられる乗り物なんですね。転ぶ機会も多いらしいですけど、気をつけながら楽しんでいこうと思っています。」
●鶴見さんは“LEGON”という仲間と一緒に走ることも大切にしていると思うんですけど、“LEGON”というグループはどのようなグループなんですか?
「自転車に乗り始めてから気がついたことがありまして、それは自転車を取り巻く環境が、いまひとつよくないように思えるんですね。自転車専用道路はないし、駐輪場も少ないんですよね。今、欧米や他の国では、自転車に向けて環境を整えているんですよ。自転車を使っている身としては、日本も、もっと自転車への環境をよくしてもらいたいと思っているんですね。 ただ、今自転車に乗っている人でルールやマナーを知らない人が多いですね。悪気はないんですけど、自転車が車道を逆走してしまったり、信号を守らなかったり、中には、自転車は信号を守らなくていいと思っている人もいるんです。自転車でも信号は守らないといけないです。そういったことを我々自転車乗りが地道に守っていって、『自転車に乗っている人たちっていいじゃないか。僕たちが普段使っている道路を少し分けようじゃないか』と思ってもらえるように、仲間を作ったのが“LEGON”なんですね。お互いに情報交換をしたり、練習をしたりして、切磋琢磨してオジ友を広げているんですね(笑)」
●(笑)。LEGONには、女性の私も入っていいんですか?
「もちろんです! LEGONの中には女性の方もいらっしゃいます。男性メンバーの奥さんも入っているので、女性大歓迎です!」
今度は、私もそのLEGONに入って、一緒にツーリングに行きませんか?
「いいですね! メンバーのみんなも優しくしてくれると思いますよ(笑)」
●(笑)。そのときもまた、色々と教えてください。今回のゲストは、俳優、そして二代目自転車名人の鶴見信吾さんでした。ありがとうございました。
|