2012年7月21日

前澤ファミリーの"生き物大好き"里山暮らし

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、亀工房の前澤勝典さんと奥様・朱美さんです。

亀工房のお二人

 今回のゲストは、アコースティック・デュオ「亀工房」の前澤さんご夫妻です。ご主人の勝典さんがギターを担当し、奥様の朱美さんがハンマー・ダルシマーという楽器を担当しています。ハンマー・ダルシマーというのは、弦を二本のバチで叩き、演奏する打弦楽器で、ピアノの祖先とも言われています。そんな前澤さんご夫妻は、三人のお子さんと一緒に、長野県伊那市の里山に暮らしてらっしゃいますが、その亀工房が先頃、ニュー・アルバム『・・・with you あなたといっしょに・・・』を出されました。今回はそのアルバムの収録曲のお話や、前澤ファミリーの里山暮らしのお話などうかがいます。

自然が日常にあるのが当たり前

前澤ファミリーは現在、長野県伊那市・高遠町に暮らしてらっしゃいます。そこに移り住む前は清里高原に住んでいらして、ご主人は自然観察のガイドとして働いていたそうですが、音楽を専門にやりたいという思いと、もう少し温かいところで暮らしたいという気持ちから、11年前に伊那市に引っ越されたそうです。そんな清里高原と伊那市の里山、生息している生き物にどんな違いがあるのか、お聞きしました。

勝典さん「高原って冷涼な気候なので、生き物の数が他と比べて、少ないんですが、里山は多種多様な生き物がたくさんいますね。例えば、高原にはクワガタムシはいるんですが、カブトムシはいないんですよね。でも、里山に行ってみたら、カブトムシがいたりするんですよ。」

●高原にはカブトムシがいないんですね。知らなかったです。

勝典さん「カブトムシが住むには、ちょっと寒すぎるんですよね」

●他にはどんな生き物がいるんですか?

朱美さん「水田も高原にはないので、水田に生息する虫が見られたりしましたね」

●水田には、どんな生き物がいるんですか?

朱美さん「イモリやカエルはもちろんですし、ガムシや水カマキリといった水生昆虫を見ることができましたね」

●隣にある水田をちょっと見るだけでも、たくさんの生き物を見ることができるんですね! そういった環境の中で暮らしていて、お子さんの反応はいかがですか?

朱美さん「私たちが生き物が好きだから田舎に住みたいという想いがあるので、その影響を強く受けていると思うので、生き物に対して興味があるし、好きですね。生き物を見つけると『なんだろう?』って思って捕まえてみたくなるし、田んぼの前を通ると、覗かずにはいられないみたいなんですよね(笑)。一番下の子は今五歳なんですけど、保育園の帰りには必ず見ますね。あと、桜の木があったら、『何かいるかな?』って思って、見るんですね。それが保育園の行き帰りでの日課になってますね」

●興味がわく対象がたくさんあるというのはいいですね!

朱美さん「それが生活の中にあるっていうのがまたいいなって思うんですよね」

●そうですよね! 都会にいると、行かないといけないですからね。

朱美さん「野や山に行かないと、出会えないものが、日常の中にいるのが当たり前だと感じてくれていると思うので、それがはすごくいいと思いますね」

●生き物に触れるっていうのは、都会に住んでいると、特別なことになってしまいますよね。

勝典さん「わざわざ出かけていかないと触れられないものなので、それが身近に当たり前にあるのは、非常に贅沢なことじゃないかと思いますね:

●子育てをしていく上で、里山暮らしって意味深いものですか?

朱美さん「そう感じますね。田んぼにカエルがやってきて卵を産んで、それがオタマジャクシになって、段々成長していって、手足が生えて、シッポがなくなっていくと、小さなカエルになるんですよね。そういった様子を見られるというのは、すごくいいなと思います。でも、死んでしまったカエルがガムシに食べられてしまって、そこにヘビが来るという残酷な面もあるんですよね。そういう生き物同士の繋がりを感じつつ、受け入れているんじゃないかなと思いますね」

●周りにある自然に色々なことを教わっているんですね。

朱美さん「そう思いますね」

勝典さん「色々感じ取っていると思いますね」

●そう考えると、先生が周りにたくさんいるんですね!

目が離せない高遠町の自然

※前澤ファミリーが暮らしてらっしゃる長野県伊那市・高遠町の季節の移り変わりはどんな感じなんでしょうか。

朱美さん「標高が高い分、冬の期間が長いんですが、それを乗り切ると、桜が満開になるんですね。実は、高遠町って、“桜の里”なんですよ。武田信玄のお城の後にヒガンザクラという桜が咲くんですけど、町中でその桜の木を大切にしているので、高台に上って見渡すと、町一面がピンクに染まっているんですよね。そんな春を迎えます(笑)」

●それはステキですね!(笑)

勝典さん「そして、今度は、山が芽吹いてくる新緑の季節になりますよね。そうすると、セミが鳴き始めます。高遠町では、まずエゾハルゼミが鳴き始めて、次はヒグラシが鳴き始めます。そして、徐々に夏に向かっていくと、ミンミンゼミやアブラゼミが鳴き始めます。そういう風に、セミだけでも、季節毎に変わっていくんですよね」

●秋はどんな感じなんですか?

朱美さん「秋になると、山が紅葉一色になって、いつも目を奪われてしまうような風景を見せてくれますね」

勝典さん「後は、実りの季節でもあるので、山でキノコが採れたり、山葡萄やサルナシなどの木の実がたくさん実りますね。生き物たちは、冬に向けて、実ったものを一生懸命食べてますね」

●その恵みをいただいたりするんですか?

勝典さん「少し分けていただく気持ちで、採ってきて、子供たちと一緒に食べてますね」

●採れたてのキノコとかを使って鍋をしたりするのっていいですよね!

勝典さん「木の実はジャムにしたりしてますね」

●いいですね! それって贅沢な食事ですよね。

勝典さん「これはお金では買えないものですよね」

●ここまで、移り変わっていく四季をうかがっていくと、目まぐるしく変わっていくんですね。

勝典さん「刻々と変わっていくので、目が離せないですね」

●昨日まで咲いていた花が急になくなって、木の実がなっていたりするんですね。

勝典さん「昨日まで鳴いていたカエルが急に鳴かなくなって、別のカエルが鳴き始めたりしますよね」

亀工房のお二人

●里山暮らしって、季節の変化をすごく感じることができるんですね。

勝典さん「そうですね。そういうことをちゃんと分かっていて、感じとることができれば、季節の変化が分かっていきますね」

●里山暮らしをしている方のお話をうかがうと、「里山暮らしって、忙しいんだよ」ってよく聞くんですが、やっぱり忙しいですか?

朱美さん「そうかもしれないですね。その季節じゃないとできないことがあるんですよね。家の後ろに竹やぶがあるんですけど、今の時期って、竹の子がどんどん出てくるんですよね。それをちょうどいいときに倒しておけばいいんですが、ちょっと忘れてしまうと、3メートルぐらいの大きさになっちゃうんですよね(笑)。そこから皮が剥がれて、大きな竹になるんですけど、そうなると、徐々に密集してきちゃいますので、竹の子のうちに倒して、それをいただいたりしています。でも、そうしないと、竹やぶの勢いに負けてしまうので、今の時期は竹の子が食べ放題ですね(笑)」

●(笑)。それは贅沢ですけど、大変なんですよね!?

朱美さん「そうですね。忙しいですね。ちょっとでも気を抜くと、3メートルの竹の子ですからね(笑)」

勝典さん「もはや、竹の子じゃないですよね(笑)」

●(笑)。冬だったら、冬の支度をしたりするんですか?

勝典さん「寒さ対策はしますね。うちは古民家なので、隙間を塞いだりして、冬への備えをしていますね。それがまた大変なんですよね」

●どんな家に住んでいるんですか?

勝典さん「古民家なんですが、昔に作られた家って、夏向けに作られているので、夏は涼しくて快適なんですよね。その反面、冬は非常に寒いんですよね。なので、家の中のスペースはすごく広くていいんですが、夏は広く住んで、冬は暖がとれるところに集まって過ごしていますね(笑)」

●家族が一つの部屋に集まって過ごしているんですね(笑)。

亀の小山が見られる!?

※ご主人の勝典さんは、「日本爬虫・両生類学会」に所属されていて、ライフワークとして淡水に棲んでいる固有種のニホンイシガメ、クサガメなどの暮らしぶりを調査・研究されています。生息環境の悪化や外来種の問題などに心を痛めてらっしゃいますが、そもそもなぜカメだったのか、お聞きしました。

勝典さん「よく聞かれるんですが、子供の頃から亀が好きなんですよね。『どこが好きなんですか?』っていう質問もよくされるんですが、その姿が怪獣のような感じがして『カッコいいな』と思うんですよね。それが好きな要因の一つですね」

●確かに、怪獣のような姿をして、カッコいい感じはしますよね!

勝典さん「“生きたタンク”といった感じがしますよね」

●お二人のアコースティック・デュオの名前も“亀工房”ですよね。

勝典さん「“亀好きがやっている、音楽を作る場所”という意味で、“亀工房”という名前をつけました」

●“亀工房”という名前には、そういう意味があったんですね。自宅でも亀を飼っているんですか?

勝典さん「多少飼ってますね。でも、常に野外で見ているわけにはいかないので、庭に池を作って、そこで亀を飼って、どういう行動を取るのかを観察しています」

朱美さん「多少なんだ(笑)」

●先ほど、朱美さんから異議が入りましたけど、実際はどうなんですか?

朱美さん「見たらビックリすると思います(笑)。天気のいい日にうちに来ると、亀の小山ができていたりするんですよね」

●亀の小山ですか!?

朱美さん「亀はお日様に当たるのが好きなので、甲羅干しをするんですが、それが山のように重なっていって、他ではなかなか見られない光景になるんですよね」

勝典さん「でも10匹ぐらいだよね?」

朱美さん「0が一つ足りないですよ?(笑)」

●ご夫婦で、随分と差がありますよ(笑)。

勝典さん「亀のこととなると、数を数えられなくなるんですよね(笑)」

●間を取って、50匹ぐらいってことですかね?(笑)

勝典さん「そのぐらいにしていただけるといいかと思います(笑)」

●(笑)。それって、夫婦として、何か問題にならないんですか?

朱美さん「日当たりが一番いいところに亀の池を作るので、洗濯物を干すときには、一等地を取られた気分になりますね(笑)」

●亀優先なんですね(笑)。そんなに大好きな亀ですけど、亀を見ているときは、どんな気持ちで見ているんですか?

勝典さん「色々な想いが出てくるんですが、一番は、悠久の時の流れを感じますね。うちで飼っている亀の中で一番長いのは、30年ぐらい飼っている亀がいるんですね。姿がほとんど変わらないんですよね」

●30年経ってもですか!? 確かに、“亀は万年”っていいますからね。

勝典さん「僕って30年っていうと、かなりの年を取ってしまっていますが、亀は全然変わらないので、その姿を見ると、当時のことを思い出したりしますね。亀って、現存しているものの多くが、人間がまだ化石人類だった頃から、既に今の形として存在していたんですよね。なので、人類よりもはるかに歴史が古くて、そこから進化をしていないんですよ。それは、もう進化する必要がなかったんじゃないかと思うんですよね。それだけ地球に適合した生き物だったんだなと感じるんですよね」

●深いですね!

勝典さん「“悠久の時の使者”のような感じがしますよね」

“少しでも寄り添っていたい”という想いが詰まったアルバム

亀工房のお二人

※先頃リリースしたニュー・アルバム『・・・with you あなたといっしょに・・・』に込められた思いについてお聞きしました。

朱美さん「昨年の3月11日に発生した東日本大震災、そして、その後に発生した原発の事故を受けて、直接的な被害を受けた方はもちろんのこと、そうでない方も、心に大きな傷を負ったんじゃないかなと思うんですね。不安だったり、悲しんだりしたんじゃないかと思うんですね。そういった中で、何もできない自分に不甲斐なさを感じました。そういったことから、“少しでも寄り添っていたい”という気持ちから生まれた曲を収録しています」

勝典さん「特に福島は、僕の母親のふるさとですし、僕にとっても、福島は自然の原体験の場所なんですよね。また、親戚や友だちがたくさんいるので、“何か力になれないか”という想いが込められています」

●復興支援のために、寄付もされているんですよね。

勝典さん「主に、CDの売り上げの一部を寄付していて、昨年は友人が関わっていた復興支援団体があって、そこに寄付をしていたんですが、今年は “ふんばろう東日本支援プロジェクト”という団体に、アルバムの売り上げの10パーセントを寄付することになっています」

●私も今回のアルバムを聞かせていただいたんですが、すごく優しい音色なので、被災地の方にもきっと癒しになるんじゃないかと思いました。特に“森のチカラ”が好きで、パワーをもらえるような感じがしました。最後に、リスナーのみなさんにメッセージをお願いします。

勝典さん「今後も末永く、亀工房の活動と平行して、被災地の支援ができればと思っています。各地でライブをしていますので、会場に是非足を運んでいただいて、少しでも被災地の助けになるようなことにご協力いただけたらと思っています」

朱美さん「私たちのできる支援って本当に小さいことなんですけど、それでも続けることで、大きな力に繋げていければいいなと思っています」


(この他の亀工房のインタビューもご覧下さい)

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 今回、初めて亀工房のお二人にお会いしたのですが、その印象はとても柔らかく、ナチュラルな感じを受けました。もしかしたら、その雰囲気は、お二人の優しさはもちろん、自然や生き物に囲まれた里山での暮らしからにじみ出てくるものなのかもしれないと思いました。そんなお二人の作る音楽だからこそ、聴いている私たちも癒される、素敵なメロディーになっているんだと思います。ぜひ、みなさんも亀工房のニュー・アルバムをチェックしてみて下さい。

INFORMATION

亀工房情報

・・・with you あなたといっしょに・・・

ニュー・アルバム『・・・with you あなたといっしょに・・・』

 KAME-KOBO MUSIC / KKM-006 / 定価2625円
ギターを担当されている前澤勝典さんと、ハンマー・ダルシマーという楽器を担当されている奥様・朱美さんのアコースティック・デュオ「亀工房」の最新作。このアルバムは、東北を応援する思いがいっぱい詰まっています。
アルバムの売り上げの10%が「ふんばろう東日本支援プロジェクト」に寄付されます。ギターとハンマー・ダルシマーの不思議な音色に癒されてください。

公式サイト

亀工房の公式サイトでは、最新のライブ情報はもちろん、過去のライブ情報も見ることができます。
さらに、最新アルバムを含む全てのCDを注文・購入することができます。気になった方は是非ともチェックしてみてください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. やさしさに包まれたなら / 荒井由実

M2. A LITTILE WALTZ / DREAMS COME TRUE

M3. 太陽のにほひ / 森山直太朗

M4. LONGER / DAM FOGELBERG

M5. 森のチカラ / 亀工房

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」