2012年12月29日

ゴミ拾いはスポーツだ!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、馬見塚健一さんです。

馬見塚健一さん

 “スポーツゴミ拾い”。これを聞いて、どんなスポーツなのか、分かりますか? 「なんだろう?」と思った方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか? そこで、一体どんなスポーツなのか、どうしてそんな活動を始めたのか、どんなルールがあるのかといったことを、「日本スポーツGOMI拾い連盟」の代表理事・馬見塚健一(まみつかけんいち)さんにお話いただきます。

ゴミの質と量を競い合うスポーツ

●今週のゲストは、「日本スポーツGOMI拾い連盟」の代表理事・馬見塚健一さんです。よろしくお願いいたします。

「よろしくお願いします。」

●早速ですが、“スポーツゴミ拾い”とは、どういったものなんですか?

「簡単にいえば“決められた競技エリア内で、チームが力を合わせて、街のゴミを拾って、そのゴミの質と量を競い合うゲーム”のことです。」

●競い合うんですね!

「そうですね。チームで街のゴミを拾って、質と量を競い合い、ポイントが高いチームが優勝という形になります。」

●それは面白いですね! どうして、スポーツとゴミ拾いを一緒にしようと思ったんですか?

「ゴミ拾いって、どこの街でもどこの企業でも社会貢献活動として行なわれてますけど、実際に参加してみると、参加されてる方って大体同じ人ということが多かったりするんですね。みなさん、本当は“いいことをしたい”と思っているんですが、ハードルがちょっと高かったりするので、そのハードルを“スポーツ”というキーワードで越えられるんじゃないかと思って、一緒にしました。」

馬見塚健一さん

●馬見塚さん自身がゴミ拾いをしていた経験とかってあるんですか?

「はい。僕の仲間が社会貢献活動としてゴミ拾いをしていて、そこに参加することもあったんですが、そのときに参加している人が毎回同じような人たちなんですね。その人たちは、そういった意識が高い人たちばかりなので、それはとても素晴らしいことなんですが、そこまで意識がなくても『世の中のために何かしたい』と思っている人はたくさんいるんですよ。でも、ゴミ拾いって、参加しだすと毎回行くんですけど、最初はちょっとハードルがあったりするんですよね。それをスポーツにしたら、友達や仲間と一緒に行きやすくなるんじゃないかと思っています。」

●どんなルールなのか教えてください。

「まず、これはチーム戦なので、一チーム五人以内でエントリーしていただきます。競技時間は60分で、その競技時間にゴミを拾っていただいて、ポイントを競い合います。そのポイントは、ゴミの分別毎に異なっていて、例えば、燃えるゴミ百グラムに付き10ポイントで、燃えないゴミ百グラムに付き5ポイント、そして一番高いのが、タバコの吸殻で、百グラムに付き100ポイントとなります。だから、重量が多いから優勝というわけではなく、ポイントが高いチームが優勝するということになります。」

●なんで、タバコの吸殻が一番ポイントが高いんですか?

「これは、自治体の方々たちからお話を聞いた結果、“タバコの吸殻は非常に拾いづらく、街を汚しているイメージがある”ということで、タバコの吸殻のポイントを高く設定しています。そうすると、目線が低い子供たちはタバコの吸殻を一生懸命拾うんですよね。それを見た参加していない街の人たちは『タバコのポイ捨てはダメだね』という波及効果を生むんですよね。なので、タバコの吸殻のポイントを高くして、みなさんに集中的に拾っていただきます。ただ、タバコの吸殻だけを狙って、他のゴミを拾わないというのは、スポーツマンシップに反する行為なので、そういうことをすると、各チームに審判が一人付いているので、笛を吹かれて注意されます。」

●他にポイントが高いゴミってあるんですか?

「一個につき1ポイントなんですけど、ペットボトルのキャップを別に集めていて、これは最終的にワクチンに変えられるので、そういうことも教えています。そういった中で、街のゴミ箱や収集所からゴミを持ってくるというのは、一番スポーツマンシップに反する行為なので、注意しても聞かない場合は減点で、それでも聞かない場合は退場ということになります。これは競技なので、競技がスタートした途端に、たとえゴミでもそれがターゲットになるので、それを一生懸命探す参加者の様子を見ていると、非常に面白いですね。」

気持ちのいい朝という空間の中にあるゴミ、
なんとかならないかな?

※なぜ、ゴミ拾いを始めたのかうかがいました。

「僕は鹿児島出身なんですけど、東京に出てきたのは30歳のころなんですね。大学生のときに東京で住んでいたというのはよくあることだと思いますが、30歳で東京に出てくるって、あまりいないじゃないですか。そのぐらいに出てきてるので、実感しているんですが、九州と都会の生活って全く違うんですよね。しかも、30歳っていうのもあったので、色々考えることもあったことで、街になかなか馴染めなかったんですよ。当初は起業して上京してきているので、毎日仕事をしながら、日々の生活に追われてたんですよね。ある日、仕事が一段落したときに『この忙しさの中に身を置いて、僕はこのまま過ごしていくんだろうか?』といった感じで、色々なことにすごく悩み始めたんですね。

 そこで、鹿児島に住んでたときと、都会に来たときとの違いを考えてみたら、“自分の時間がない”ことに気づいたんですね。そこから、自分の時間をどうやったら作れるかを考えたら、朝だと思ったんです。夜だと、家帰ってくるのが遅くなったり、お酒を飲んで帰ってくると、自分の時間がなかなか作れないですけど、朝だったら、自分の努力次第で時間が作れると思ったんですね。そこから4時半に起きて、ランニングをやるようになったんですけど、自分の時間を作りたくて始めた早起きが、ランニングをしていると、太陽が昇ってくることで感じる暖かさとか、日が当たるところが徐々に生い茂っていく感じを見たりと、他のことを意識するようになったんですね。そういったときに、目に付いたのが、街のゴミだったんです。『とっても気持ちのいい朝という空間の中にあるこのゴミ、なんとかならないかな?』って思いながら走ってたんですけど、ある日、本当簡単なことなんですけど、『拾えばいいじゃん!』って思ったんですね。

馬見塚健一さん

 最初は、やり始めたらやり続けないといけないと思ってたり、偽善じゃダメだといった意識があったり、拾うからには、目に付いたゴミを全部拾わないといけないといったような気持ちがあったんですけど、あるとき、『そんなこと考えてるより、一個でも拾えばいいんじゃないか』と思って、走りながら、目に付いたゴミだけを拾うことにしたんですね。それをやっているうちに、『あのゴミは利き手じゃない方の手で拾ってみよう』といったような感じで拾ってみたり、ランニングをしながらなので、スピードを落とさないで拾ってみたりして、自分の中でルールを作りながら拾っていったんですね。そうすると、最初は汚いと思っていただけのゴミが、段々とターゲットになっていったので、『これを競技にしたら、今までのゴミ拾いが変わるんじゃないか!?』と思って、スポーツゴミ拾いを始めたんです。」

●街の景色は変わりましたか?

「変わってきますね! それまでの生活って、朝、鏡の前に立って、ネクタイを選んで、今日の予定や昨日のことを思い出したりと、自分のことしか考えてなかったんですけど、朝に時間の余裕を持つことによって、他の人や物、景色や音に意識がいくようになったんですよね。もがきながら始めた早起きによって、新たな道が開けた感じですね。」

思い出と環境意識

※スポーツゴミ拾いの大会には、誰でも参加できるのでしょうか?

「参加資格は特になくて、乳母車を押して参加されるお母さんもいらっしゃいますし、90歳以上のお年寄りの方も参加されたりしています。スポーツゴミ拾いは、“小さいお子さんから高齢者まで、同じルールの中で競い合う”という、一つのルールの上で成り立っているんですね。」

●どういった方が一番多いんですか?

「大会によって変わってくるんですけど、例えば横浜の大会だと、小・中学生がすごく多くて、地方に行くと、高齢者がすごく多くなりますね。でも、盛り上がり具合はどちらも同じぐらいですね。高齢者は高齢者でかなり盛り上がりますし、子供たちは、遊びの中でやるゴミ拾いなので、勝ちを狙うチームがたくさんありますね。」

●親子で参加されることもあるんですか?

「いますね。家族で参加となると、ゴミ拾いが一つのレジャーとなるんですよね。例えば、埼玉の家族が埼玉の大会に参加されて、次の大会が横浜だとしたら、その家族が横浜まで来て、子供と一緒にゴミ拾いをしたりするんですよね。その後に、中華街で食事をして帰ったりすると、子供が思い出の中でゴミ拾いを認識してくれるので、後日改めて横浜に行ったときに、家族でゴミ拾いをしたことを思い出すんですよね。家族で買い物をした思い出はたくさんあると思いますが、それと同じようにゴミ拾いの思い出が作られたりしているんで、これからもっと家族のエントリーが増えてほしいと思ってます。」

●環境教育の面でも、すごくいい影響を与えてるんですね。

「そうですね。事例でいうと、大田区で開催したとき、地元の小学五年生が優勝したんですね。彼らは表彰式で賞状をいただいて、モチベーションが高いまま、会場を後にしたんですね。それを後ろから見ていたら、その子供たちが、タバコの吸殻を拾いながら帰ってるんですよ! 僕たちの合言葉に“スポーツはゴミ拾い”という言葉があるんですけど、その言葉を五人で言い合いながら、ゴミを拾って帰っていくんですよ。会場に来るときは多分、ゴミは拾ってなかっただろうし、ゴミにも気づかなかったと思うんですけど、スポーツとしてゴミと向き合ったことによって、『落ちてるから拾おうぜ!』っていう感覚が芽生えたと思うんですね。それが僕たちにとって、一番印象的なことでしたね。
 また、僕たちが取り組んでいることとして、国立環境研究所というところと一緒に、“参加者の意識調査”を2011年から行なっているんですね。これは“スポーツゴミ拾いに参加した方が、どのように意識が変わっていったのか”を調べていて、2011年のデータを見てみると、一般的なゴミ拾い活動とは違って、スポーツゴミ拾いに参加した子供たちは、環境意識が持続するというデータが出ているんですね。なぜかというと、一般的なゴミ拾い活動だと、終わった後は『気持ちよかったね』で終了するんですが、スポーツゴミ拾いの場合は、終わった後に勝敗があるので、『悔しい!』とか『嬉しい!』とか『また参加したい』という感情が生まれるので、競技への思い出と一緒に環境意識が根付くんですね。それによって、街のゴミをスポーツとして向き合うことができているので、日常でゴミに気づくようになったりしているというデータが取れています。」

●もちろん、ゴミ拾い自体も素晴らしいことですが、もう一回参加したくなるゴミ拾いって、すごく魅力的ですね!

「それって、あんまりないことだと思うんですよね。最近、面白いと思ったのが、ある大学生から『○月○日の大会にエントリーしています。僕たちは練習をしたいので、ルールを教えてください』っていう連絡があったんですね。僕たちは『ゴミ拾いの練習がしたいのか!』って思っちゃいましたね(笑)」

●その時点で、街はキレイになっていきますよね(笑)。

「そうですよね(笑)。これは“スポーツ”というキーワードによって、人の意識が変わってくるということだと思うんですね。」

●他に、参加者からの感想で印象に残っている言葉ってありますか?

「みなさん“スポーツゴミ拾い”というキーワードに興味を持って参加してくれるんですけど、初めて参加される方の多くは『本当にゴミ拾いがスポーツになるの?』って思ってるんですよね。でも、『スタート!』って言われると、みなさん段々夢中になっていって、終わったら『馬見塚君、やっぱりゴミ拾いはスポーツだね!』って言ってくれる方もいらっしゃったりするんですよね。」

馬見塚健一さん

●馬見塚さんがスポーツゴミ拾いをやっていてよかったと思う瞬間って、どんなときですか?

「スポーツゴミ拾いは、地域や場所はもちろん、参加者の年齢層も選ばない競技なので、全国からお話をいただいているんですね。そうなると、知らない土地に行って、知らない人とコミュニケーションを取れますし、同時に、同じ街に住んでいるのにも関わらず、あまりコミュニケーションが取れなかったのが、この競技によって、自治体と企業、婦人会や子供たちがコミュニケーションを取っているところを見ていると、『やっててよかったな』っていう気持ちになりますね。」

●それをキッカケに、この活動がどんどん広がっていくんですね。

「そうですね。おかげさまで、色々なところからお話をいただいているので、自治体と一緒にやることもあれば、企業と一緒にやることもありますし、小学校の生徒会長から『六年生の思い出に、この大会をやりたい』っていう電話があったりするので、それはすごく嬉しいですね。」

※馬見塚さんは、スポーツゴミ拾いの他に、こんな活動もしています

「僕は、ある環境的な社会貢献活動へ何かを掛け算することを仕事のスタイルとして持っています。例えば、僕は今、青山にオフィスがあるんですけど、青山には東京ヤクルトスワローズという球団があって、球団は“街と一緒にシーズンを盛り上げていきたい”という想いがあるので、街にフラッグが立つんですけど、そのフラッグって、選手が変わると、一年で廃棄処分になっちゃうんですよね。その様子を見ていて『どうしてんのかな?』って思って球団に話をしてみたら、『これ処分してるんだよね』って話してくれたので、『これ、いただけないですか?』って相談してみたら、オッケーがもらえたので、いただいて、服飾の専門学校の生徒さんたちと一緒になって、そのフラッグを使った、東京ヤクルトのファンの方たちがファングッズを入れるためのバッグを製作して、それを街で売って、その売り上げを社会貢献に回すという活動をしてます。

 それを“mawaruプロジェクト”というんですが、2010年はオリックス・バファローズさんと一緒にやらせていただきました。そのときは、いらなくなった選手のユニフォームをいただいて、バッグを作ったり、リュックを作ったりして、販売しました。プロ野球選手って子供たちにとってヒーローじゃないですか。彼らが練習や試合のときに着ていたユニフォームが、そういう状態で売られていると、子供たちは欲しくてたまらないわけですよ。そこで、そういったものに値段を付けて売って、その売り上げを社会貢献に回すということで、球団は新たにお金を出す必要はないし、ファンは嬉しい気持ちでその商品を買い、その売り上げで社会貢献をするというプロジェクトをさせていただいています。」

●それによって、もちろんゴミも減りますよね。

「そうですね。選手にとってはいらないものでも、ファンの子供たちにとってはすごく価値のあるものだったりするんですよね。」

●ゴミを拾うだけじゃなく、ゴミを減らす活動もされているんですね。

「そうですね。拾うことも大切ですけど、スポーツゴミ拾いを体験された方たちがそれぞれで感じていただければいいと思っているので、僕たちはあえて口にはしませんが、“ゴミを出さない生活”というのが最終的な目標ですよね。」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 馬見塚さんもおっしゃっていたように、もちろん、ゴミはなるべく少なくするのが一番ですが、出てしまったゴミをこんな風にスポーツのターゲットとして扱うことは素晴らしいアイデアだと思います。ゴミに対する認識が変わっていきますし、何より楽しく続けられるのがいいですよね! スポーツゴミ拾いが更に広まっていくといいなと思います。

INFORMATION

日本スポーツGOMI拾い連盟

 スポーツゴミ拾いに興味を持った方は、ぜひ「日本スポーツGOMI拾い連盟」のオフィシャル・サイトをご覧ください。ルール説明やこれまで開催した大会のリポートの他、自分の町や学校で開催してみたい方や、大会に参加して体験したい方、活動をサポートしたい方向けに、それぞれの手引きページもありますので、参考にしてみてください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. TO THE END / BLUR

M2. I LOOK TO YOU / WHITNEY HOUSTON WITH R.KELLY

M3. TWO HERATS / PHIL COLLINS

M4. MORNIN’ / AL JAREEAU

M5. BRIDGE OVER TROUBLED WATER / SIMON & GARFUNKEL

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」